幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

いくら気にしないって言っても限度はある

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 無駄にテンションを上げて無理に場の空気を持たせた結果、信照と圭希は日付の変わる頃には眠った。
 なじみは少し失神していたし、俺も別段眠たくなかったのだが、ひとまずは俺たちも眠り、翌日は4人でさっさと帰宅した。

 駅で解散したときの解放感ときたら中々のもんである。

「名目上はダブルデートだったはずなんだが・・・罰ゲームを受けた気分だ」
「まあ・・・そうだね・・・」

 正直、擁護できない。
 苦笑いでたどたどしく声を絞り出すなじみからはそんな心情が声となって聞こえてきそうだ。

 夫婦喧嘩は犬も食わぬとはよく言うが、痴情の縺れはそれ以上に面倒臭い。
 一番面倒臭かったのは、その最終盤で圭希が俺をその縺れに巻き込もうとしてきた点である。マジでやめて欲しい。

 突入と同時にこの様なのだから、今年の夏休みはお先真っ暗だ。

 今の予定だと実家に帰る他には、渡辺のボスに会うとか言うのもあったな。アレは日程不明だが。
 そういや部長はオーディション受けるつもりなんだろうか。俺は正直どちらでもいいので、判断は部長に丸投げしたわけだが。

 現時点ではこんなところだが、冒頭がダブルデートと言う名の罰ゲームでは期待値は低そうである。

 余裕のあるうちに宿題を片付けておかないと、命に関わりかねない。
 比喩抜きで、と言うのが最悪な点だ。



 だがそんな予想を裏切ってか、次に起きたことは随分と穏当な代物だった。

『安心院さん! ナンパ手伝ってください!』
「跪いてヒンヒンと鳴け」
『ヒンヒン!』
「よろしい、却下だ」

 ブッ。

 掛かってきた電話を切った。
 なじみが昼食を作るのを宿題を片付けながら待つ、ある種の完成された時間がこの様である。

 命の危機は無いのだから穏当っちゃあ穏当だが、出来ない相談など初めからしないで欲しい。

 一体俺のどこをどう見たら浮気すると思うんだ?
 うん、微との情事をありのままに見たらだな。ぐうの音も出んよ。

 っと。またかかってきた。

「なに?」
『安心院さんなら釣り餌になる上に既に売約済みだから競合も起きない! 最高のキャスティングだとは思わんかね!?』
「理解はするけど、特に俺にうまあじが無いんだから受ける意味ないだろ。むしろ浮気疑われる分まずあじだろ」
『そういうと思ってきっちり報酬も用意してあるぞ! なんと焼き肉一回奢り!』

 ブッ。

 いるか。飯の類はなじみで間に合っとるわ。

 うわまた来た。

『わかったわかった欲しがりさんめ。新品のS字フックに変えてやるよ。えーい持ってけ泥棒、30個セットだ!』
「そんなにいらんわ。必要だとしても買うし」
『じゃあ何が必要だってんだよ!』
「何用意されてもやらん。というかそもそもお前誰だ」
『今!?』

 だって用件聞く前から一瞬で切る気だったし、確認もしてなかったし。

『俺は本堂ほんどう百引ももひきだ。絡んだことなかったな、そういえば』
「絡んだことない奴にナンパの手伝いなんざ頼むな。というかどうやって番号知ったんだ」

 いや、そういえば前にバラまいたな。
 コネつくりの一環だったが、多分もういらないので忘れていた。

『ぜひホモ君と呼んでくれ!』
「いや距離の詰め方バグりすぎだろ。ケツワープでもしてんのかと思ったわ」
『だってこの夏に彼女欲しいじゃねえかよー』
「他を当たってくれ。じゃあな」

 ブッ。
 ついで着拒設定もしておく。

 ああもう、この問題どこまでやったっけ・・・。

「ご飯できたよー」
「んあ、ありがとう」

 広げた宿題をぱっぱと片付け、なじみの運んできた牛丼を置く。

「ケーくん」
「どうした?」
「浮気は仁科さんと部長さんぐらいで止めておいた方が・・・」
「ちっげぇよ!」



 思わず声を荒げてしまった。

 全く。何が悲しくてあんな合法ロリと浮気せねばならんのだ。
 好ましくはある。その点は間違いない。だが性的な目で見るには凹凸が足りない。

 勿論俺はそう言う事専門の超能力者だ。致せないという事は無いにせよ、出来るとやるは違う話だし、やるとやりたいもまた別だ。

 割とボロクソに言ってしまったが、それでも好意的である事に間違いはない。
 だから部長からその話を通された時も別段鬱陶しいとは思わなかった。

『というわけで、僕はあのオーディションの話、受ける事にしたから。安心院君にも付き合ってもらうよ』
「ええ、良いですとも。受験でヒイヒイ言うのは部長ですからね」
『・・・どうしてそうやりづらくなるようなこと言うのかな、君は』
「事実だと思うので」

 受け取った日時は、余裕こそあるが、同時に思ったよりは迫っていた。
 きっと相当悩み抜いたのだろう。丁寧に描写するなら単行本半分くらいの文量が必要な程、葛藤したのだろう。実家の洋食店とか、それこそ受験云々の話もあるのだし。

 だがこれはオーディション。
 受かるとは限らないし、むしろ落ちる可能性の方が高い。スカウトを貰ったという点を加味しても半々といったところだろう。
 ならばとりあえず受けるだけ受けてしまえば損にはならない。良い経験にはなるだろう。

 そんなある種捨て鉢な発想があるのかもしれない。

 まあ一番のリスクは部長が負うのだ。
 ならば俺のリスクなど些細もいいとこ。付き合えと言われてはそうしなければな。

 ただ一つ問題がある。
 そのオーディション会場にピアノが置いてあるかどうかだ。



 渡辺から電話があった。どうやら上司に会う日程が決まったから、連絡しに来たらしい。
 オーディションの後日で予定の無い部分だったので承諾。

 これにて当面の予定は大体わかった。
 まずなじみと実家に帰り、その後部長とオーディションへ、更に後日渡辺の上司と面接だ。

 思ったより忙しい夏休みになってしまった。
 いや、これぐらいの予定があるのはままあるのだが、もっと纏まった大きい休みが欲しかったのだ。
 ちょっと我ながらくだらない思い付きがあったので、試してみたかっただけだが・・・思えば前半に固まっている。宿題の状況によっては十分試せはするだろう。

 ナンパはしない。

 だが、実家に帰るのもすぐという訳ではない。
 一応荷造りはしているがこれは単純に先んじただけだ。実際にはまだ数日程度の猶予がある。

 ではこの猶予ある数日で何をするか。
 当然宿題だ。こいつを片付けないと先の『思い付き』も十全には没頭できない。

 ちなみに実際に今俺がやっているのは家事である。
 宿題はなじみの分もあるのだから、なじみが時間を確保できないと片付かない。
 それでも、と言わんばかりに家事をやりたがったが、当然却下だ。先に宿題を片付けてくれないとこっちの気が引けるし、物理的に時間が必要だ。

 答え丸写しみたいな裏技を使わない限りは、そこそこ時間が掛かるのだから。



 一段落して、夕飯。
 とりあえず当面の予定をざっと言い合っておく。

 俺が言った予定は先程と同じ様なものだ。渡辺の超能力者云々の話はバイトって事にしておいたが、それ以外は日程から内容まで正確に。

「私はケーくんと一緒に居る以外は何にも・・・あっ」

 なじみは何かに気付いたようで茶碗を置く。

「なんかあったのか?」
「うん。えーと・・・なんて言ったら伝わるかな。こう、趣味で漫画描いてる人たちのイベント? みたいなのがあるの。自分で描いた漫画をフリーマーケットみたいに売る、みたいなイベント」
「ああ、コミケな」
「知ってるんだ」
「有名どころだしな」

 あとは例大祭? とかいうのも聞いたことがある。何が違うのかは知らん。

「私は別に行く気なかったんだけど、部の方針で何グループかに別れて出る事になってるんだって」
「随分積極的なんだな」
「で、私は一人で一つのグループって事で行くんだけど、男手も必要だろうからケーくんにも付いてきて欲しいんだよね」
「別に良いが、いつ?」
「えっとねー」

 日程は実家に帰った後とオーディションの間らしい。
 冒頭のみとはいえ、スケジュールが凄い詰まり方してるな。

 ていうか当然の様に一人で一グループとかやるんだもんなぁ。一途と言うか、防御力高いというか。
 その一途の宛先が俺というのは改めて考えると興奮してきたな。飯終わったら誘うか。

*

 沸かした風呂に別々で入り、それぞれうちわで扇いで体を冷ます。

「流石に暑くなってきたな」
「もう七月下旬だからね。お風呂上りでも汗かいてまたお風呂入りたくなるよ」
「いい加減一緒に寝るの止めた方が良いのかね。熱中症になりそうだが」
「一緒に眠りながら死ねるならそれはそれで」
「死んだら一緒に居れないだろうが」
「それもそっか」

 日常会話で唐突にヤンデレ入るから油断ならん。
 反射的に返しができるだけの慣れと素養が無いとなじみとは付き合いきれないだろう。

「私はやめたくないなぁ。やっぱり一人は寂しいから」
「やめたくないのは俺だってそうだが、健康を考えるとな。エアコンなんて今の時期から付けてちゃ電気代もバカにならんし」
「ていうかベッド一つしかないじゃん」

 お前の本来の部屋に戻ったらほぼ新品同然のベッドがあるがな。

「そこは俺が床で寝るってことで」
「ダメ。それなら私が床で寝る」
「流石にそれは気が引けるんだが」
「私だってそう」
「そりゃそうか。じゃあ・・・」
「涼しくして寝る、でいいんじゃないの?」
「まあ、他にないか」

 実際問題、これ以外の解決策はもうエアコンとか文明の利器に頼らざるを得ない。
 扇風機は今無いし。後で実家から送ってもらおう。

「じゃあとりあえずこの肌布団は余所に置いておくとして」
「マットレスは、無理か。代わりもないし、これ余所置きするんなら床で寝るのと大差ないし」
「シーツもそのままだね」
「タオルケット・・・も、実家だな。ひとまずこんなところか」

 そんな事を言いながら、すっかり湯冷めした体を一つのベッドに沈める。
 ここで上から何も掛かっていないのは中々新鮮な感覚だ。

「そういえば、まだ一つあったか」
「何が?」

 いつも通りに腕を絡めるふりをして、腰回りの方からなじみのパジャマの中へ手を突っ込む。

「ひゃっ!?」

 ざわざわと感覚が這い上る様、ゆっくりと両手を持ち上げ、上半身を下着姿にする。
 あらわになったナイトブラは酷く地味なデザインで、この展開がなじみにとって予想外である事の証拠だった。

「ケ、ケーくん・・・これだと、もっと暑くなっちゃうよ?」

 なるほど確かにその通り。全く持って正論である。ぐうの音も出ない。

 なじみが、期待と歓喜の表情を浮かべていなければ、の話だが。

 既に臨戦態勢を整えたなじみの体は体温が高まっており、全身の血行が良くなることで分厚いナイトブラ越しにでも浮かび上がるほど乳首を肥大化させている。
 両足を擦り合わせているのだって、この至近距離では丸わかりだ。

「もっと暑くなろう」
「・・・うん」
「二人っきりで、な」
「うん!」

 嗚呼、意識の外に追いやっていたと思っていたが。
 それでもどこかで圭希が邪魔だったのだろう。

 二人きりの今は、解放された気分ですらある。

「クーラーっていつぐらいを目途にする?」
「んー、できれば8月までは粘りたいなぁ」
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