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悪い人
04※
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この先は長い。とにかくあいつらから逃げるためにこの都市を出てここから離れた田舎町へと向かう算段になっていた。
少し眠るか。とっぷりと日も暮れた外を確認して、そう目を瞑ろうとしたときだった。走っていた馬車が止まるのだ。
関所に着いたのだろうか、そんなことをぼんやりと考えていたときだ。いきなり荷台の扉が開いた。
「な……――ッ」
なんで、と反応するよりも先に現れた人物に血の気が引いた。
「ほら、見つけた」
俺の姿を見るなり、そいつ――メイジは薄く笑うのだ。楽しげに、どこか憐れむような色も滲ませ。
「お前は本当に隠れんぼが下手だな。その辺のガキのがまだ上手くやれるぞ」
「っ、メイジ、なんで……」
「ネズミ探しを頼まれたんでな」
誰に、なんて言葉は飲み込んだ。
メイジの背後でもう一つ影を見つけたからだ。
そしてメイジは背後の男に笑いかけるのだ。
「言っただろ勇者サマ、そんなに慌てなくてもすぐに見つかるって」
――そこには、あいつがいた。
「…………スレイヴ」
背筋が凍った。
見付かった。何故、どうして。ナイトが行き先までバラしたとは思えない。ならば。
咄嗟に荷台から逃げ出そうとしたが、立ち上がろうとした瞬間全身が石のように硬くなり動けなくなる。メイジの仕業だとすぐにわかった。
「……馬鹿だな、俺から逃げられると思ったのか?」
クスクスと笑いながらメイジは俺を拾い上げ、そのまま荷台から引きずり降ろそうとする。
ここがどこかなのかもわからない。辺りは暗く、酷く静かだった。
「わざわざ悪いね、これ今回の御礼な」
そして、メイジは馬の御者に金を渡していた。それを受け取りぺこりと頭を下げて馬に乗る御者の男に全てを察した。
最初からメイジは張っていたのだ、俺が逃げそうな場所を予め。だから全部俺たちの行動は筒抜けだった。そう考えるとナイトのことが心配だった。けれどそれよりも今は我が身だ。
逃げることも動くことすらできない。勇者とメイジに連れられてきた場所がどこなのかもわからない。メイジは馬車を見送るなり俺を近くの道へと放り投げるのだ。
「っ、つぅ……ッ!」
「んで、どうすんの勇者サマ。こいつ」
さっきからろくに喋らない、顔もよく見えないだけに勇者の考えてることが分からなくてただ恐ろしく思えた。あれほど手に取るようにわかっていたあいつが今は得体の知れない化物のように見えてしまうのだ。
それでも、それだけは気取られたくなかった。
「……本気だったのか?」
勇者の発した言葉は酷く焦燥して聞こえた。
「本気で、出ていくつもりだったのか。……俺に黙って、俺を、置いて」
「…………っ」
「答えろよ、スレイヴ」
動けない体の前、俺の前までやってきた勇者に肩を掴まれる。その手を振り払うことも出来なかった。
「っ、俺の……俺の気持ちはとっくに伝えてたはずだ、お前が聞かなかっただけだろ……っ!」
夜の林に自分の声が大きく響いた。何故勇者がショックを受けたような顔をするのかわからなかった。
「な、言っただろ? 勇者サマ。口で言っても無理だ諦めろって。こいつは驚くくらい意固地だからな」
「……っ、メイジ……」
「こんなところでうだうだやっても埒は明かない、それならもっと効果的な方法があるんじゃないか?」
なにをするつもりだ、とメイジを睨もうとしたときだ。伸びてきた手のひらに目元を覆い隠される。視界が遮られぎょっとした瞬間だった。
メイジが何かを囁いた。それを認識するよりも先に心臓が大きく跳ね上がり、全身を巡る血液が一気に沸くのだ。
「っ、な、にを……ッ!」
「物分りの悪いクソガキには頭と体で教え込むのが一番手っ取り早いんだよ」
「……ッ!」
言われてハッとする。そうだ、あの訳のわからないスライムに襲われたときと同じ血の湧き方だ。じんじんと熱が滲むように熱くなる全身。それらの熱が下腹部に集中するのを感じ、息が詰まる。
「……っ、め、いじ……」
「おい、お前……っ」
「まさか勇者サマ今更可哀想だとか言わないよな。俺を散々タダ働きさせたんだ、少しくらい楽しませてもらってもいいだろ」
背後から抱き締めるように回された手に息を飲む。嫌なのに、逃げたいのに、熱く火照った体は思うように動かない。その代わりに脇腹から平らな胸までをねっとりと撫であげられれば、それだけでぞくりと全身が泡立つ。
「っ、や、め……ッ」
「もう甘勃ちしてんのな。本当想像力だけは豊かで羨ましい限りだ」
「て、めぇ……ッ」
こいつの前でやるつもりなのか。あまりにも当たり前のように触れてくるメイジに俺は青褪める。胸筋を揉まれ、その掌が突起を掠めるだけで恐ろしいほど頭の中が真っ白になり、より乳首の先端部に神経が集中するのを感じた。
助けてくれ、なんて、言えなかった。
「なあ勇者。これは罰だろ? ……なら、もう二度とこんな真似しないように教え込まなきゃならないだろ」
「っ、メイジ……」
「それともなんだ、お前はナイトが俺たち騙してこいつが乳繰り合ってたのも全部許せんのか?」
「俺なら無理だな」と、笑うメイジはそう言って徒に乳首を揉むように潰すのだ。仰け反り、俯きそうになる俺の顎を掴んだメイジはそのまま無理矢理勇者の方を向かせてきやがった。
「っ、ぁ……あいつは、違う、そんなやつじゃ……ッ」
「庇ってんのか、涙ぐましいなぁ? けど、お前やっぱ頼るやつ間違えたよな」
「っ、ゆ、うしゃ……」
「勇者、お前は許すのか? 自分に隠れて他の男と逃げ出そうとしたこいつを」
するりと顎の下、そして唇を撫であげられる。冷たい汗が額から流れ落ちた。
「………………許せない」
その言葉に、メイジは耳元で笑った。
最後、辛うじて保っていた一本の糸が切れた瞬間だった。
許せない。
あいつの口から出た言葉に汗が流れ落ちる。
「……ッ」
直感だった。逃げなければ、そう危機を感じたときには遅い。服の下に隠し持っていた短剣を奪われる。返せ、と声を上げるよりも先にメイジは躊躇なく俺の服を切り裂いたのだ。
「や、めろ……ッ!」
「暴れんなよ、お前の短刀毒塗ってあるんだろ?うっかり自滅でもされたら困る、流石の俺も一度死なれたらもう専門外だ」
息を飲む。大きく裂けた服の下に滑り込んできたメイジの手の感触に胸が、肺が、大きく上下する胸。短剣を手にしたままメイジは笑うのだ。
「舌を出せよ」
「……ッ死ね、この……ッ」
誰が言うこと聞くか、と睨んだ瞬間、メイジの目が僅かに開いた。そして、すぐに胡乱な笑みを浮かべるのだ。
「いいのか? そんな口聞いて」
「な、にが……」
「なあ勇者、こいつを誑かしたナイトどうするよ。お前の宝物を勝手に逃がそうとしたんだぞ、許せないよな」
仰々しい動作、愉しげに笑うメイジの言葉に背筋が冷たくなる。ほんの一瞬、勇者の顔が引き攣ったのを俺は見てしまった。
脳裏にナイトの顔が浮かび、心臓を鷲掴みされたように体が震えた。
「っ、ナイトは関係ないだろ!」
「いいや、あるだろ。共犯者なんだから」
「お前……ッ」
忘れていた、こいつはこういうやつなのだ。
自分と、自分の快楽のことしか考えていない。そのためにならば平気で他人を踏み躙る。
「関係ないっていうなら示して見ろよ、行動でな」
「……な……」
「脱げよ、服」
「下着も全部な」背後に立つメイジはそう、人の首に短剣を押し付けたままなんでもないように命じる。耳を疑った。けど、あの男は笑ったまま何も言わない。
勇者はただ俺を見ていた。なんで止めないんだ。なんで、そんなこと理由はわかっていた。それでも突き刺さる視線。噴き出す汗を止めることもできなかった。
「……っ」
指が動くようになっている、腕も。これで自分で脱げということだろう。俺が逃げると思わなかったのか、けれど首に押し当てられたそれはただの飾りではないと俺も知ってる。本当に腹立たしい。背後のメイジを肘で殴りたかった。けれどもしナイトにまで危害が及んだら、そう思うとただ怖かった。
ご丁寧に破られたシャツを脱ぎ捨てる。最早服としての役割すら果たせていない。下着に手を掛け、半ばやけくそに脱ぎ捨てたのだ。
「っ、……ほら、これでいいのかよ」
「恥じらいってもんがないのか?お前」
「……っ黙れよ、いい加減に……」
しろ、と言いかけたときメイジの手が顎の下に伸びる。首の付け根の境目をするりと細い指先でなで上げられただけで体がぞくりと震えるのだ。
「っ、……ん、ぅ……ッ」
言葉ごと呑まれる。勇者の目の前で当たり前のように唇を重ねてくるメイジに背筋が震えた。正気とは思えない。それともそこまでして俺のことを貶めたいのか。
「っぅ……ん……ッ!」
逃げようとメイジから離れようとするが、顎を掴まれ上を向かされれば長い舌が咥内に侵入してくるのだ。引き気味になる腰を抱き寄せられ、隠すことも許されないそこを撫でられればそれだけで体が恐ろしく熱くなる。たった数分の出来事だった、それでも俺にとっては長い時間だったのだ。
「っ、ん、ぅ……っ……!」
舌ごと食われそうなほど舌を絡められ、口の中から引き摺り出される。力が抜け、その場に座り込もうとすることすら拒まれた。濡れた音が響く。獣染みた荒い息が自分のものだと気付いた瞬間ただ目の前が赤くなった。
妙な術のせいだ、触れられただけで恐ろしく反応してしまう己の体に絶望するのも束の間。ようやくメイジは俺から唇を離したのだ。
「なに自分だけ気持ちよくなってんだよ。……ちゃんと、勇者サマにごめんなさいってしろよ」
「っ、な……に……」
何を、と言い終わるよりも先に、伸びてきた手に頬を掴まれる。目の前にはあいつがいて、こんな顔、姿見られたくなかった俺はそれを押し退けようとするがろくに力が入らなかった。
「っ、ゆ、……ぅ……ん……ッ」
絡め取られた舌が痺れるように疼く。ただ一人だけ服を剥かれ、これでは本当に奴隷かなにかだ。思いながらも舌を拒むことすらできなかった。覆い被さってくる勇者の体重を受け止めきれず、ずるずると落ちそうになる体を背後からメイジに支えられるのだ。
「っ、スレイヴ……、っ、スレイヴ……」
「っ、ん、ぁ……ッ待っ、ん゛、ぅ……ッ!」
唾液をたっぷりと含んだ粘膜同士が触れ合うたびに耳障りな粘着質な音が混ざり合う。「勇者サマ激しいねえ」と笑うメイジの声が耳障りだった。犬のように舐められ、噛み付くように貪られ、垂れる唾液すら啜られる。こんなことしてる場合ではない、そう頭で理解してるのに勇者の熱に触れられただけで体が反応するのだ。
一糸纏うことすら許されない中、剥き出しになった胸を撫でられ背筋が凍り付く。メイジだ。二人との口付けでより鋭利になった神経は俺にとっては毒に等しい。
「っふ、ぅ、……ッ」
手袋越し、ドサクサに紛れて転がされる両胸の突起に堪らず身を攀じるがこいつら二人に捕まって逃れられるわけがない。それを分かっててメイジは俺の胸を更に遠慮なく揉みしだくのだ。
カリカリと引っ掻かれ、時には優しく撫でるように潰され、緩急付けるメイジの触れ方が不快で仕方なかった。
「っ、や、……ッ、ん、む……ッ!」
ぢゅるる!と舌ごと吸い上げられ、一時足りとも離れるのを許さないとでも言うかのように後頭部に回された勇者の手はがっちりと俺の頭を固定し、喉奥まで舌を捩じ込むのだ。
「ん゛、ぅ、……ッ、ぅ……ッ」
密着する体、下腹部に感じる勇者の熱に血の気が引いた。これも全部メイジの作り上げた幻覚で、俺はただ悪い夢を見ている。そう思いたいのに、股間に押し付けられる膨らみも、熱も全部本物なのだ。まだ勇者がメイジに操られている、そう思った方がましだと思えるほどだった。
ぢゅぽん、と生々しい音を立て引き抜かれた舌先に、長時間絡められ濡れそぼった舌を暫く動かすことはできなかった。
「っ、スレイヴ……っ、口を開け」
朦朧とする頭の中、勇者の声が響く。強請るように後ろ髪を撫で付けられ、耳を撫でられればそれだけで腰がぞくりと震えるのだ。
こんなこと、聞きたくもない。けどどうしてもナイトの顔が過ると、逆らう気が失せてしまうのだ。あいつを巻き込むくらいなら、と口を開く。
瞬間。
「ん゛ッ、ぅ……ッ!」
舌伝いに流し込まれる唾液に全身が震えた。口を閉じようとして、寸でのところで堪える。唾液を飲まされ、口を閉じるなと言われ、それを拒むことすらもできない。喉奥へとぬるい唾液が伝っていく、腹の奥底に勇者の体液が流れていくのを感じ、益々全身が熱くなるのだ。
「っ、うわ、勇者サマ……」
「……吐き出すなよ。全部飲み込め」
「っ、ふ……ッぅ……」
こんなこと、なんの意味も成さない。わかっていたが、これはあいつなりの俺への罰なのだ。そう思うことでしか耐えられない。吐き出しそうになるのを堪え、鼻呼吸を止めて口の中のそれらを喉奥へと流し込む。今度こそ勇者の一部が俺の中へと溜まり落ちていったのだと思うと目の前が眩むのだ。
「……口開けて見せるんだ」
「っ、ん、……ぅあ……」
空になった口の中を見て勇者は嬉しそうにするわけでもなく、失望したような顔をするのだ。自分からやらせたくせに、お前は本当に何でもするんだなとでも言うかのように。
「……っ、もういい……」
「勇者サマ?」
「……俺の知ってるあいつは、もうここにはいない。メイジ、お前の言ったとおりだな」
「……っ、な、に、……ッ言って……」
意味がわからなかった。それはこちらのセリフだ、と返す暇もなかった。背後、メイジの指は腿、膝上から足の付け根までを撫であげ、そしてそのまま俺の足を開かさせるのだ。
「っ、ゃ、めろ……ッ! メイジ……ッ!」
「なあ、勇者サマそんなに落ち込むなって、よく考えてみろよ」
「っ、なぁ……ッ!」
浅ましく勃起したそこを指で弾くように持ち上げ、そのままその奥、ようやく閉じていたそこを指先でぐるりと撫でられた瞬間恐ろしいほど体が熱くなる。脈は加速し、呼吸が浅くなっていくのだ。「メイジ」と背後のやつを睨んだとき、メイジは薄く微笑む。
「勇者、お前の大切なスレイヴちゃんは死んだ。ここにいるのはお前を捨てた裏切り者だ。なら、どうする?」
「っ、ぉ、まえ、この……ッ、ん、ぅ……ッ!」
「新人教育はリーダーの務めだぞ、勇者サマ」
足を持ち上げられそのまま大きく左右に拡げられる肛門。顔面に血が昇った。暴れようとするが力が入らない。剥き出しになったそこを隠そうとする腕すらも伸びてきた触手に拘束される。
「っ、や、めろ……ッ」
頼むから、なんて言葉は声にならなかった。次の瞬間に俺は勇者に犯されていた。
「――ッふ、ぅ゛……ッ!」
どろりと煮え滾るマグマが溢れ出すようだった。逃げようとしても四方から拘束された体はまるでびくりともしない。逃げようとする下腹部を掴まれたまま、大きく割り拡げられた排泄器官にねじ込まれる亀頭に声を上げることもできなかった。
快感中枢を弄られたお陰で痛みは緩和されているがそれが余計俺にとっては耐え難いものだった。
やめろ、抜け、ふざけるな。なんて声を上げることも出来ない。少しでも腰を動かされただけで結合部から伝わるその振動に恐ろしいほど熱は増し、全身が跳ねる。奥歯を噛み締め声を抑えることが精一杯な俺を見下ろしたまま勇者は更に腰をゆるゆると動かすのだ。
「っぅ、くぅ……ッ!」
性急な行為に思考する暇すら与えられなかった。
奥深くまで挿入された瞬間頭の中は真っ白になり文字通り思考停止する。仰け反る体を抱き締めるように捕まえられ、突き上げるように更に奥、突き当りである直腸を亀頭でぐりぐりと執拗に押し上げられれば自分のものとは思えないような声が開いた喉から溢れるのだ。
「ひ、ぃ゛ッ」
「やべ、デバフかけ過ぎたか? ……まあいいか、大好きな勇者サマとの大好きなセックスはそんなに気持ちいいか? スレイヴちゃん」
「抜、ぅ゛、ッ、あぁッ! や、ひ……ッ!」
負荷に耐えきれずにガクガクと痙攣する下腹部だが、勇者は逃げようとするのを一切許さずガッチリと固定したまま更に何度もピストンを繰り返すのだ。その都度自分の体内からは生々しい音が響き、じんじんと痺れるように疼く最奥を亀頭で突き上げられた瞬間「あぁっ」と自分のものとは思えないような気色の悪い声が出てしまう。
「っは、すげえ声が出たな。……これじゃますます女の子だ」
「……っ、ぁ、やめろッ、ちが、こんな……ッ! ぉ、れ……ッ違う、ちが……ぁっ、あ、や……抜け……ッ! 抜ッ、ぎィ……ッ! っぅ、んむ……ッ」
まるでメイジと会話することも許さないとでも言うかのように邪魔するように唇を重ねてくる勇者にぎょっとする。肉厚な舌は閉じることすらできなくなった唇を舐めまわし、そのまま咥内をしゃぶり尽くされる。
「っ、スレイヴ……ッ」
「ふ、ぅ゛……ッ?! ん、ふ……ッぅ゛う……ッ!」
「……ッ、どうして、お前は……」
絞り出すような勇者の声が体の中に響く。それもすぐに掻き消される。腕を動かすことも出来ない、引き離すことも、ただ受け入れることしかできないこの状況で俺に出来ることを探すこともできなかった。
スレイヴ、お前はなんで。恨み辛み呪詛のように口にしながらも、勇者は俺を離そうとしなかった。なけなしの力で顔を動かそうとしても頭を掴まれ深く口づけされるのだ。
「っ、ん、ぅ……ッ! ふ、ぅ……ッ」
「スレイヴ……ッ、スレイヴ……」
「ん、ぅ……ッ! ッぐ、んんぅ……ッ!」
隙間なくみっちりと埋まった性器は少し動かすだけでも内部の粘膜を擦り上げる。昨夜の行為の傷も癒えてないそこにとってはそれだけの刺激も恐ろしいほど強烈だった。
俺の名前を何度も繰り返し、ただ犯される。メイジはそんな俺たちを――俺を見ていた。
『あのとき俺と出ていればこうはならなかっただろうにな、可哀想に』そんなことを言いたげに見ては笑うのだ。今更見られることに恥ずかしい、なんて生温い感情を抱くわけではない。寧ろ、それは殺意に等しい。
「は、ぁ……ッ、く、ぅ……ッ!」
気持ちよくない気持ちよくない吐き気がする虫唾が走る。こんな、見世物みたいな真似。
そう頭の中で繰り返す。そうでもしなければそれこそどうにかなりそうだった。気持ちいいなんて思いたくない。感じたくない。それなのにメイジのせいだ、あのクソ野郎の妙な魔法のせいで何もかもがめちゃくちゃだった。
奥を抉じ開けるように突かれる度に頭の奥でどろどろとしたものが溢れ出すのだ。塗り潰される、呑まれそうになる。それでも自分の手のひらに爪を食い込ませ、握り拳を固めて堪えた。まだ大丈夫だ、そう言い聞かせるように。
「は……本当、強情なやつだな」
メイジが笑う。するりと背後から伸びてきた手に髪を撫でるように掻き上げられ、そして当たり前のように唇を重ねられるのだ。ほんの一瞬、体の中で勇者のものが反応する。
腿を掴んでいた勇者の指先にぐ、と更に力が加わるのだ。
「っ、ん、ぅ……ッ! ふ……ッ!」
「……ッ、ん……」
全身が強張る。体を避けることも逃げることもできず、両頬を掴むように固定され唇を重ねられる。ドクドクと脈打つ鼓動が自分のものか勇者のものなのか最早わからなかった。
真正面、覗き込むようにじっとこちらを見据えるメイジ。ちゅ、と甘く唇を吸われただけで全身の血液が更に熱を増す。
また妙な術を掛けられたのだと理解したときには遅い。汗ばむ全身は外気に晒されただけでびりびりと痺れるようだった。そんな中、やつは俺の首筋に指を這わせるのだ。
「なあ……スレイヴ、いい加減勇者サマに謝ったらどうだ?ごめんなさいって、許してくださいってな。そうしたら許してくれるかもな」
「っ、……だ、れが……ぁ……ひッ!」
するものか、そう言いかけたときだった。
全身の毛穴という毛穴が開き、ぶわりと玉のような汗が滲み出す。焼けるように熱くなる全身、そして、結合部、勇者のものの感覚が更に鋭利に突き刺さるように伝わってくるのだ。
「ふ……ッ、ぁ゛、っ、ぉ、ぐ、ッ!やめ……ッ!ろっ、やめろぉ……ッ!!抜けッ!ぬ、ぅ、ぐ、ッぅ、うぅ~~……ッ!!」
「ハハッ! すげえ声! 犬みたいだな」
「っ、メイジ……ッ」
「おっと勇者サマ、んなに物騒な顔すんなよ。……全部アンタのためにやってやってんだぜ、こっちは。ほら、もっと良くしてやれよ」
「ここ、モノ寂しくて仕方ねえってよ」そう、背後から伸びてきたメイジの手に腹部を撫でられ、その革越しの指の感触すら今の俺には耐え難いものとして伝わる。円を描くように臍の周り、うっすらと滲む筋を撫でられただけで全身がびくびくと震え、恐ろしいほどの熱が下腹部に集まるのだ。
「嫌だっ、や゛めろッ、や……ッ! ぁ゛ッ、やめろ、ぉ……ッ!やめ……ッ!」
「……ッ」
「ッ、ぎ……ッ!!」
膝裏まで掴まれ、上半身にくっつくほど腰を持ち上げられそのまま奥まで一気に貫かれた。腹に触れるほど反り返った己の性器が揺れる、その先端が自分の意思とは対照的に先走りで濡れているのを見て余計血の気が引いた。逃げようとすれば背後のメイジに体を捕まえられ、身動きすらろくに取ることができなかった。
「抜ッ、ぅ、ッあ、抜けッ! ぬ、ぃ……ッ、ひ、ッ! ……っ、ぁ、やぁ、ッ、め、……ろ゛ぉおお……~~ッ!」
おかしい、こんなの。
脳天まで貫かれたみたいに頭が真っ白になり、開いた口からは唾液が溢れそれを止めることすらもできない。勇者は舌打ちをし、それでも腰の動きを止めることなく俺を犯し続けるのだ。
「っ、奥ッ! だ、め゛だぁっ、も、やめ……ッ! やめろ、っ、ぉ゛おおッ!」
「お前のせいだ……ッ! お前が悪いんだろ、なんで、なんで俺に言わないで……ッ、俺は、そんなに俺が信用ならなかったのか……ッ!」
「ぃ゛ッ、や、ッぁ、も……ッ! ゆ゛ッ、く……ッ! ぅ、あ゛あぁ……ッ!」
自分の体が自分のものではないようだった。感度を高められた全身は己の血液すらも溶岩のように熱く、体の奥深く閉じたその口を押し広げるようにぐりぐりと亀頭で抉じ開けられるその感触に全身中の体液が溢れ出すような錯覚に囚われる。
どこまでが夢でどこまでが現実すらもわからない。ぐぢゅ、と肉の潰れるような音が腹の奥で響く。勇者のものの形に合わせてこじ開けられたそこは限界まで張り詰めたその雁首で粘膜を擦り上げられるだけでそれを待ち望んでいたかのように俺の意志を無視して吸い付いていくのだ。
「っスレイヴ……ッ、スレイヴ……ッ!」
「ぅ、あッ! や、め、ッ、んんぅっ! ぁ、待っ、だ、めッ、やめ……ッ! っ、ひう!!」
「ッ、く、ぅ……ッ!」
痙攣する腰を掴まれ、根本奥深く口付けたそこにどぷ、と音を立て注ぎ込まれる精液の熱に腰が痙攣する。脳汁が、熱が、溢れ出してとまらない。丸まった爪先、快感を必死に逃そうとするが逃がすどころか体内の熱は吸収するように更に増すのだ。
「ぅ……あ……あぁ……ッ」
みっちりと埋め込まれた性器は一滴も残さず俺の中へと精液を注ぐのだ。長い射精を終え、勇者は深く息を吐く。指先一本すら動かせずに放心する俺の体を抱き起こし、唇を舐める。
そのまま深く舌を絡めてくる勇者に抵抗するほどの力は今の俺になかった。
「っは、ひ、う゛……ッ!」
休む暇など無かった。
ようやく達したと思えば再び動き始める勇者から逃げることが出来ない。体内に溜まった精液を塗り込むように更に中を摩擦され、体中に響く粘着質なその音に頭がどうにかなりそうになる。
もうやめろ、抜け。そう声をあげようとしても奥を抉られると途切れてしまい、何も考えられなくなるのだ。
「勇者サマ離す気ねえのかよ、本当独占欲強いよなぁ。なあ? スレイヴちゃん」
「っ、……ふ……ッ」
「ん、ぅ……はは、焦点全然合ってねえわ。おーい、生きてっか?」
「……ッ、う……ッ」
下腹部は勇者に犯されたまま背後のメイジに唇を甘く噛まれ、舌で舐められる。強く噛みすぎたせいで血の味が広がる咥内、ぬるりとした舌が入ってくる。勇者がこちらを睨んだ気がしたが、メイジはお構いなしに俺の舌を絡め取るのだ。
熱に浮かされた思考の中、最早どこまでが現実なのかすら俺には判別つかなかった。
胸元、上半身に這わされる手。技巧も関係なく性急に腰を打ち付けられる下腹部は最早快感以外の感覚もない。重ねられた手のひらが、絡め取られる指先が誰の手すらもわからなかった。
ちゅ、と軽く舌を吸われた後、すんなりと唇を離したメイジはそのまま「ああ、そうだ」と俺から手を離す。それもほんの一瞬。次の瞬間、いきなり頭を掴まれ首を動かされたと思えば開いたままの唇に何かが押し付けられた。
薄暗い中、月明かりに照らされ濡れたそれがなんなのかすぐに分かった。噎せ返りそうなほどの雄の匂い、そして硬く勃起したそれは間違いない。
「その口空いてんじゃん」
「勇者サマが満足するまでお前はこっちで奉仕しろよ」雑用らしくな、と笑うメイジに頭に血が昇りそうになる。腕が使えたら殴りかかっていた。はずなのに。
「ほら、さっさとしろ」
「っ、だ、れが……ん゛ぅ……ッ!」
「ほら、無理矢理突っ込まれたくないだろ? 俺だってしたくない」
いけしゃあしゃあと言ってのけるメイジはそう言いながら俺の鼻を摘むのだ。必死に閉じていた唇にまるで口紅でも塗りたくるように性器、その先端を押し付けてくるのだ。匂いすらも感じたくない、鼻呼吸も我慢していただけに息苦しくなる。「ほら、舐めろよ」と甘く囁きながら前髪を梳かしてくるメイジに血の気が引いた。
勇者は、あいつは何も言わない。けれど、結合部越しに、繋がった場所からあいつの感情が手に取るように伝わってくるのだ。苛ついている。けれど、メイジに強く出れないのだ。元はといえばこの状況を作ったのはあいつだ、助ける気どころか逃がす気すら毛頭もないのだとわかっていたはずなのにまだ傷ついている自分に吐き気がした。
絶対、絶対こいつの言いなりにはならない。それならばこのまま窒息死をした方がましだ。そう、血が滲むほど唇を噛んだときだった。
下腹部を突き上げられた瞬間、堪らず声が漏れてしまう。しまった、と思った瞬間捩じ込まれる性器に咽る暇もなかった。
「ん゛ぉ……ッ、ご、……ッ、ぉ……ッ!!」
「はぁ~~……っ、流石子供体温。吸い付く吸い付く……すげえな」
「……っあまり、虐めるなよメイジ」
「分かってるって、勇者サマ。……大事な大事なパーティーだからな」
「ぉぶ、ッ、ぅ゛……ッふ……ッ」
せめて噛み千切ってやろうと思うのに顎が外れそうなほどまで開いたそこは閉じることすらできない。
閉じ、拒絶しようとする喉まで抉じ開けるように侵入してくる性器に生理的な涙と嗚咽が溢れる。開いた唇の端から溢れる唾液を止めることすらもできなかった。息苦しい、痛い、そう俺が嗚咽する都度メイジの性器を締め上げるようだ、息を吐いたあいつはうっとりしたように「最高」と笑うのだ。そしてそのまま俺の首を固定し、更に喉の奥、口蓋垂ごと粘膜を塗りたくるように擦り上げてくる。
どくどくと上と下、別の鼓動、熱に支配され四散する意識の中、抵抗することもできず、ろくに声もあげられない。本当に自分がただの肉塊になったのだと錯覚せざる得なかった。
「っ、ん゛ぅ……ッ、うぅ……ッ!」
「はぁ……っ、いいねえ、そのまま喉で締め付けろよ、そうそう。ちっせえ舌、ちゃんと舐めろよ?勇者サマにしてるみたいにな」
「っ、ぅ、……ッ!!」
舌の上で這いずる熱い肉棒にただ吐き気がした。拒むこともできず、まるで口を性器のように使われる。
自分の置かれた状況を考えるのを脳が拒否している。いっその事記憶を消された方がましだと思えるほどだった。
少し眠るか。とっぷりと日も暮れた外を確認して、そう目を瞑ろうとしたときだった。走っていた馬車が止まるのだ。
関所に着いたのだろうか、そんなことをぼんやりと考えていたときだ。いきなり荷台の扉が開いた。
「な……――ッ」
なんで、と反応するよりも先に現れた人物に血の気が引いた。
「ほら、見つけた」
俺の姿を見るなり、そいつ――メイジは薄く笑うのだ。楽しげに、どこか憐れむような色も滲ませ。
「お前は本当に隠れんぼが下手だな。その辺のガキのがまだ上手くやれるぞ」
「っ、メイジ、なんで……」
「ネズミ探しを頼まれたんでな」
誰に、なんて言葉は飲み込んだ。
メイジの背後でもう一つ影を見つけたからだ。
そしてメイジは背後の男に笑いかけるのだ。
「言っただろ勇者サマ、そんなに慌てなくてもすぐに見つかるって」
――そこには、あいつがいた。
「…………スレイヴ」
背筋が凍った。
見付かった。何故、どうして。ナイトが行き先までバラしたとは思えない。ならば。
咄嗟に荷台から逃げ出そうとしたが、立ち上がろうとした瞬間全身が石のように硬くなり動けなくなる。メイジの仕業だとすぐにわかった。
「……馬鹿だな、俺から逃げられると思ったのか?」
クスクスと笑いながらメイジは俺を拾い上げ、そのまま荷台から引きずり降ろそうとする。
ここがどこかなのかもわからない。辺りは暗く、酷く静かだった。
「わざわざ悪いね、これ今回の御礼な」
そして、メイジは馬の御者に金を渡していた。それを受け取りぺこりと頭を下げて馬に乗る御者の男に全てを察した。
最初からメイジは張っていたのだ、俺が逃げそうな場所を予め。だから全部俺たちの行動は筒抜けだった。そう考えるとナイトのことが心配だった。けれどそれよりも今は我が身だ。
逃げることも動くことすらできない。勇者とメイジに連れられてきた場所がどこなのかもわからない。メイジは馬車を見送るなり俺を近くの道へと放り投げるのだ。
「っ、つぅ……ッ!」
「んで、どうすんの勇者サマ。こいつ」
さっきからろくに喋らない、顔もよく見えないだけに勇者の考えてることが分からなくてただ恐ろしく思えた。あれほど手に取るようにわかっていたあいつが今は得体の知れない化物のように見えてしまうのだ。
それでも、それだけは気取られたくなかった。
「……本気だったのか?」
勇者の発した言葉は酷く焦燥して聞こえた。
「本気で、出ていくつもりだったのか。……俺に黙って、俺を、置いて」
「…………っ」
「答えろよ、スレイヴ」
動けない体の前、俺の前までやってきた勇者に肩を掴まれる。その手を振り払うことも出来なかった。
「っ、俺の……俺の気持ちはとっくに伝えてたはずだ、お前が聞かなかっただけだろ……っ!」
夜の林に自分の声が大きく響いた。何故勇者がショックを受けたような顔をするのかわからなかった。
「な、言っただろ? 勇者サマ。口で言っても無理だ諦めろって。こいつは驚くくらい意固地だからな」
「……っ、メイジ……」
「こんなところでうだうだやっても埒は明かない、それならもっと効果的な方法があるんじゃないか?」
なにをするつもりだ、とメイジを睨もうとしたときだ。伸びてきた手のひらに目元を覆い隠される。視界が遮られぎょっとした瞬間だった。
メイジが何かを囁いた。それを認識するよりも先に心臓が大きく跳ね上がり、全身を巡る血液が一気に沸くのだ。
「っ、な、にを……ッ!」
「物分りの悪いクソガキには頭と体で教え込むのが一番手っ取り早いんだよ」
「……ッ!」
言われてハッとする。そうだ、あの訳のわからないスライムに襲われたときと同じ血の湧き方だ。じんじんと熱が滲むように熱くなる全身。それらの熱が下腹部に集中するのを感じ、息が詰まる。
「……っ、め、いじ……」
「おい、お前……っ」
「まさか勇者サマ今更可哀想だとか言わないよな。俺を散々タダ働きさせたんだ、少しくらい楽しませてもらってもいいだろ」
背後から抱き締めるように回された手に息を飲む。嫌なのに、逃げたいのに、熱く火照った体は思うように動かない。その代わりに脇腹から平らな胸までをねっとりと撫であげられれば、それだけでぞくりと全身が泡立つ。
「っ、や、め……ッ」
「もう甘勃ちしてんのな。本当想像力だけは豊かで羨ましい限りだ」
「て、めぇ……ッ」
こいつの前でやるつもりなのか。あまりにも当たり前のように触れてくるメイジに俺は青褪める。胸筋を揉まれ、その掌が突起を掠めるだけで恐ろしいほど頭の中が真っ白になり、より乳首の先端部に神経が集中するのを感じた。
助けてくれ、なんて、言えなかった。
「なあ勇者。これは罰だろ? ……なら、もう二度とこんな真似しないように教え込まなきゃならないだろ」
「っ、メイジ……」
「それともなんだ、お前はナイトが俺たち騙してこいつが乳繰り合ってたのも全部許せんのか?」
「俺なら無理だな」と、笑うメイジはそう言って徒に乳首を揉むように潰すのだ。仰け反り、俯きそうになる俺の顎を掴んだメイジはそのまま無理矢理勇者の方を向かせてきやがった。
「っ、ぁ……あいつは、違う、そんなやつじゃ……ッ」
「庇ってんのか、涙ぐましいなぁ? けど、お前やっぱ頼るやつ間違えたよな」
「っ、ゆ、うしゃ……」
「勇者、お前は許すのか? 自分に隠れて他の男と逃げ出そうとしたこいつを」
するりと顎の下、そして唇を撫であげられる。冷たい汗が額から流れ落ちた。
「………………許せない」
その言葉に、メイジは耳元で笑った。
最後、辛うじて保っていた一本の糸が切れた瞬間だった。
許せない。
あいつの口から出た言葉に汗が流れ落ちる。
「……ッ」
直感だった。逃げなければ、そう危機を感じたときには遅い。服の下に隠し持っていた短剣を奪われる。返せ、と声を上げるよりも先にメイジは躊躇なく俺の服を切り裂いたのだ。
「や、めろ……ッ!」
「暴れんなよ、お前の短刀毒塗ってあるんだろ?うっかり自滅でもされたら困る、流石の俺も一度死なれたらもう専門外だ」
息を飲む。大きく裂けた服の下に滑り込んできたメイジの手の感触に胸が、肺が、大きく上下する胸。短剣を手にしたままメイジは笑うのだ。
「舌を出せよ」
「……ッ死ね、この……ッ」
誰が言うこと聞くか、と睨んだ瞬間、メイジの目が僅かに開いた。そして、すぐに胡乱な笑みを浮かべるのだ。
「いいのか? そんな口聞いて」
「な、にが……」
「なあ勇者、こいつを誑かしたナイトどうするよ。お前の宝物を勝手に逃がそうとしたんだぞ、許せないよな」
仰々しい動作、愉しげに笑うメイジの言葉に背筋が冷たくなる。ほんの一瞬、勇者の顔が引き攣ったのを俺は見てしまった。
脳裏にナイトの顔が浮かび、心臓を鷲掴みされたように体が震えた。
「っ、ナイトは関係ないだろ!」
「いいや、あるだろ。共犯者なんだから」
「お前……ッ」
忘れていた、こいつはこういうやつなのだ。
自分と、自分の快楽のことしか考えていない。そのためにならば平気で他人を踏み躙る。
「関係ないっていうなら示して見ろよ、行動でな」
「……な……」
「脱げよ、服」
「下着も全部な」背後に立つメイジはそう、人の首に短剣を押し付けたままなんでもないように命じる。耳を疑った。けど、あの男は笑ったまま何も言わない。
勇者はただ俺を見ていた。なんで止めないんだ。なんで、そんなこと理由はわかっていた。それでも突き刺さる視線。噴き出す汗を止めることもできなかった。
「……っ」
指が動くようになっている、腕も。これで自分で脱げということだろう。俺が逃げると思わなかったのか、けれど首に押し当てられたそれはただの飾りではないと俺も知ってる。本当に腹立たしい。背後のメイジを肘で殴りたかった。けれどもしナイトにまで危害が及んだら、そう思うとただ怖かった。
ご丁寧に破られたシャツを脱ぎ捨てる。最早服としての役割すら果たせていない。下着に手を掛け、半ばやけくそに脱ぎ捨てたのだ。
「っ、……ほら、これでいいのかよ」
「恥じらいってもんがないのか?お前」
「……っ黙れよ、いい加減に……」
しろ、と言いかけたときメイジの手が顎の下に伸びる。首の付け根の境目をするりと細い指先でなで上げられただけで体がぞくりと震えるのだ。
「っ、……ん、ぅ……ッ」
言葉ごと呑まれる。勇者の目の前で当たり前のように唇を重ねてくるメイジに背筋が震えた。正気とは思えない。それともそこまでして俺のことを貶めたいのか。
「っぅ……ん……ッ!」
逃げようとメイジから離れようとするが、顎を掴まれ上を向かされれば長い舌が咥内に侵入してくるのだ。引き気味になる腰を抱き寄せられ、隠すことも許されないそこを撫でられればそれだけで体が恐ろしく熱くなる。たった数分の出来事だった、それでも俺にとっては長い時間だったのだ。
「っ、ん、ぅ……っ……!」
舌ごと食われそうなほど舌を絡められ、口の中から引き摺り出される。力が抜け、その場に座り込もうとすることすら拒まれた。濡れた音が響く。獣染みた荒い息が自分のものだと気付いた瞬間ただ目の前が赤くなった。
妙な術のせいだ、触れられただけで恐ろしく反応してしまう己の体に絶望するのも束の間。ようやくメイジは俺から唇を離したのだ。
「なに自分だけ気持ちよくなってんだよ。……ちゃんと、勇者サマにごめんなさいってしろよ」
「っ、な……に……」
何を、と言い終わるよりも先に、伸びてきた手に頬を掴まれる。目の前にはあいつがいて、こんな顔、姿見られたくなかった俺はそれを押し退けようとするがろくに力が入らなかった。
「っ、ゆ、……ぅ……ん……ッ」
絡め取られた舌が痺れるように疼く。ただ一人だけ服を剥かれ、これでは本当に奴隷かなにかだ。思いながらも舌を拒むことすらできなかった。覆い被さってくる勇者の体重を受け止めきれず、ずるずると落ちそうになる体を背後からメイジに支えられるのだ。
「っ、スレイヴ……、っ、スレイヴ……」
「っ、ん、ぁ……ッ待っ、ん゛、ぅ……ッ!」
唾液をたっぷりと含んだ粘膜同士が触れ合うたびに耳障りな粘着質な音が混ざり合う。「勇者サマ激しいねえ」と笑うメイジの声が耳障りだった。犬のように舐められ、噛み付くように貪られ、垂れる唾液すら啜られる。こんなことしてる場合ではない、そう頭で理解してるのに勇者の熱に触れられただけで体が反応するのだ。
一糸纏うことすら許されない中、剥き出しになった胸を撫でられ背筋が凍り付く。メイジだ。二人との口付けでより鋭利になった神経は俺にとっては毒に等しい。
「っふ、ぅ、……ッ」
手袋越し、ドサクサに紛れて転がされる両胸の突起に堪らず身を攀じるがこいつら二人に捕まって逃れられるわけがない。それを分かっててメイジは俺の胸を更に遠慮なく揉みしだくのだ。
カリカリと引っ掻かれ、時には優しく撫でるように潰され、緩急付けるメイジの触れ方が不快で仕方なかった。
「っ、や、……ッ、ん、む……ッ!」
ぢゅるる!と舌ごと吸い上げられ、一時足りとも離れるのを許さないとでも言うかのように後頭部に回された勇者の手はがっちりと俺の頭を固定し、喉奥まで舌を捩じ込むのだ。
「ん゛、ぅ、……ッ、ぅ……ッ」
密着する体、下腹部に感じる勇者の熱に血の気が引いた。これも全部メイジの作り上げた幻覚で、俺はただ悪い夢を見ている。そう思いたいのに、股間に押し付けられる膨らみも、熱も全部本物なのだ。まだ勇者がメイジに操られている、そう思った方がましだと思えるほどだった。
ぢゅぽん、と生々しい音を立て引き抜かれた舌先に、長時間絡められ濡れそぼった舌を暫く動かすことはできなかった。
「っ、スレイヴ……っ、口を開け」
朦朧とする頭の中、勇者の声が響く。強請るように後ろ髪を撫で付けられ、耳を撫でられればそれだけで腰がぞくりと震えるのだ。
こんなこと、聞きたくもない。けどどうしてもナイトの顔が過ると、逆らう気が失せてしまうのだ。あいつを巻き込むくらいなら、と口を開く。
瞬間。
「ん゛ッ、ぅ……ッ!」
舌伝いに流し込まれる唾液に全身が震えた。口を閉じようとして、寸でのところで堪える。唾液を飲まされ、口を閉じるなと言われ、それを拒むことすらもできない。喉奥へとぬるい唾液が伝っていく、腹の奥底に勇者の体液が流れていくのを感じ、益々全身が熱くなるのだ。
「っ、うわ、勇者サマ……」
「……吐き出すなよ。全部飲み込め」
「っ、ふ……ッぅ……」
こんなこと、なんの意味も成さない。わかっていたが、これはあいつなりの俺への罰なのだ。そう思うことでしか耐えられない。吐き出しそうになるのを堪え、鼻呼吸を止めて口の中のそれらを喉奥へと流し込む。今度こそ勇者の一部が俺の中へと溜まり落ちていったのだと思うと目の前が眩むのだ。
「……口開けて見せるんだ」
「っ、ん、……ぅあ……」
空になった口の中を見て勇者は嬉しそうにするわけでもなく、失望したような顔をするのだ。自分からやらせたくせに、お前は本当に何でもするんだなとでも言うかのように。
「……っ、もういい……」
「勇者サマ?」
「……俺の知ってるあいつは、もうここにはいない。メイジ、お前の言ったとおりだな」
「……っ、な、に、……ッ言って……」
意味がわからなかった。それはこちらのセリフだ、と返す暇もなかった。背後、メイジの指は腿、膝上から足の付け根までを撫であげ、そしてそのまま俺の足を開かさせるのだ。
「っ、ゃ、めろ……ッ! メイジ……ッ!」
「なあ、勇者サマそんなに落ち込むなって、よく考えてみろよ」
「っ、なぁ……ッ!」
浅ましく勃起したそこを指で弾くように持ち上げ、そのままその奥、ようやく閉じていたそこを指先でぐるりと撫でられた瞬間恐ろしいほど体が熱くなる。脈は加速し、呼吸が浅くなっていくのだ。「メイジ」と背後のやつを睨んだとき、メイジは薄く微笑む。
「勇者、お前の大切なスレイヴちゃんは死んだ。ここにいるのはお前を捨てた裏切り者だ。なら、どうする?」
「っ、ぉ、まえ、この……ッ、ん、ぅ……ッ!」
「新人教育はリーダーの務めだぞ、勇者サマ」
足を持ち上げられそのまま大きく左右に拡げられる肛門。顔面に血が昇った。暴れようとするが力が入らない。剥き出しになったそこを隠そうとする腕すらも伸びてきた触手に拘束される。
「っ、や、めろ……ッ」
頼むから、なんて言葉は声にならなかった。次の瞬間に俺は勇者に犯されていた。
「――ッふ、ぅ゛……ッ!」
どろりと煮え滾るマグマが溢れ出すようだった。逃げようとしても四方から拘束された体はまるでびくりともしない。逃げようとする下腹部を掴まれたまま、大きく割り拡げられた排泄器官にねじ込まれる亀頭に声を上げることもできなかった。
快感中枢を弄られたお陰で痛みは緩和されているがそれが余計俺にとっては耐え難いものだった。
やめろ、抜け、ふざけるな。なんて声を上げることも出来ない。少しでも腰を動かされただけで結合部から伝わるその振動に恐ろしいほど熱は増し、全身が跳ねる。奥歯を噛み締め声を抑えることが精一杯な俺を見下ろしたまま勇者は更に腰をゆるゆると動かすのだ。
「っぅ、くぅ……ッ!」
性急な行為に思考する暇すら与えられなかった。
奥深くまで挿入された瞬間頭の中は真っ白になり文字通り思考停止する。仰け反る体を抱き締めるように捕まえられ、突き上げるように更に奥、突き当りである直腸を亀頭でぐりぐりと執拗に押し上げられれば自分のものとは思えないような声が開いた喉から溢れるのだ。
「ひ、ぃ゛ッ」
「やべ、デバフかけ過ぎたか? ……まあいいか、大好きな勇者サマとの大好きなセックスはそんなに気持ちいいか? スレイヴちゃん」
「抜、ぅ゛、ッ、あぁッ! や、ひ……ッ!」
負荷に耐えきれずにガクガクと痙攣する下腹部だが、勇者は逃げようとするのを一切許さずガッチリと固定したまま更に何度もピストンを繰り返すのだ。その都度自分の体内からは生々しい音が響き、じんじんと痺れるように疼く最奥を亀頭で突き上げられた瞬間「あぁっ」と自分のものとは思えないような気色の悪い声が出てしまう。
「っは、すげえ声が出たな。……これじゃますます女の子だ」
「……っ、ぁ、やめろッ、ちが、こんな……ッ! ぉ、れ……ッ違う、ちが……ぁっ、あ、や……抜け……ッ! 抜ッ、ぎィ……ッ! っぅ、んむ……ッ」
まるでメイジと会話することも許さないとでも言うかのように邪魔するように唇を重ねてくる勇者にぎょっとする。肉厚な舌は閉じることすらできなくなった唇を舐めまわし、そのまま咥内をしゃぶり尽くされる。
「っ、スレイヴ……ッ」
「ふ、ぅ゛……ッ?! ん、ふ……ッぅ゛う……ッ!」
「……ッ、どうして、お前は……」
絞り出すような勇者の声が体の中に響く。それもすぐに掻き消される。腕を動かすことも出来ない、引き離すことも、ただ受け入れることしかできないこの状況で俺に出来ることを探すこともできなかった。
スレイヴ、お前はなんで。恨み辛み呪詛のように口にしながらも、勇者は俺を離そうとしなかった。なけなしの力で顔を動かそうとしても頭を掴まれ深く口づけされるのだ。
「っ、ん、ぅ……ッ! ふ、ぅ……ッ」
「スレイヴ……ッ、スレイヴ……」
「ん、ぅ……ッ! ッぐ、んんぅ……ッ!」
隙間なくみっちりと埋まった性器は少し動かすだけでも内部の粘膜を擦り上げる。昨夜の行為の傷も癒えてないそこにとってはそれだけの刺激も恐ろしいほど強烈だった。
俺の名前を何度も繰り返し、ただ犯される。メイジはそんな俺たちを――俺を見ていた。
『あのとき俺と出ていればこうはならなかっただろうにな、可哀想に』そんなことを言いたげに見ては笑うのだ。今更見られることに恥ずかしい、なんて生温い感情を抱くわけではない。寧ろ、それは殺意に等しい。
「は、ぁ……ッ、く、ぅ……ッ!」
気持ちよくない気持ちよくない吐き気がする虫唾が走る。こんな、見世物みたいな真似。
そう頭の中で繰り返す。そうでもしなければそれこそどうにかなりそうだった。気持ちいいなんて思いたくない。感じたくない。それなのにメイジのせいだ、あのクソ野郎の妙な魔法のせいで何もかもがめちゃくちゃだった。
奥を抉じ開けるように突かれる度に頭の奥でどろどろとしたものが溢れ出すのだ。塗り潰される、呑まれそうになる。それでも自分の手のひらに爪を食い込ませ、握り拳を固めて堪えた。まだ大丈夫だ、そう言い聞かせるように。
「は……本当、強情なやつだな」
メイジが笑う。するりと背後から伸びてきた手に髪を撫でるように掻き上げられ、そして当たり前のように唇を重ねられるのだ。ほんの一瞬、体の中で勇者のものが反応する。
腿を掴んでいた勇者の指先にぐ、と更に力が加わるのだ。
「っ、ん、ぅ……ッ! ふ……ッ!」
「……ッ、ん……」
全身が強張る。体を避けることも逃げることもできず、両頬を掴むように固定され唇を重ねられる。ドクドクと脈打つ鼓動が自分のものか勇者のものなのか最早わからなかった。
真正面、覗き込むようにじっとこちらを見据えるメイジ。ちゅ、と甘く唇を吸われただけで全身の血液が更に熱を増す。
また妙な術を掛けられたのだと理解したときには遅い。汗ばむ全身は外気に晒されただけでびりびりと痺れるようだった。そんな中、やつは俺の首筋に指を這わせるのだ。
「なあ……スレイヴ、いい加減勇者サマに謝ったらどうだ?ごめんなさいって、許してくださいってな。そうしたら許してくれるかもな」
「っ、……だ、れが……ぁ……ひッ!」
するものか、そう言いかけたときだった。
全身の毛穴という毛穴が開き、ぶわりと玉のような汗が滲み出す。焼けるように熱くなる全身、そして、結合部、勇者のものの感覚が更に鋭利に突き刺さるように伝わってくるのだ。
「ふ……ッ、ぁ゛、っ、ぉ、ぐ、ッ!やめ……ッ!ろっ、やめろぉ……ッ!!抜けッ!ぬ、ぅ、ぐ、ッぅ、うぅ~~……ッ!!」
「ハハッ! すげえ声! 犬みたいだな」
「っ、メイジ……ッ」
「おっと勇者サマ、んなに物騒な顔すんなよ。……全部アンタのためにやってやってんだぜ、こっちは。ほら、もっと良くしてやれよ」
「ここ、モノ寂しくて仕方ねえってよ」そう、背後から伸びてきたメイジの手に腹部を撫でられ、その革越しの指の感触すら今の俺には耐え難いものとして伝わる。円を描くように臍の周り、うっすらと滲む筋を撫でられただけで全身がびくびくと震え、恐ろしいほどの熱が下腹部に集まるのだ。
「嫌だっ、や゛めろッ、や……ッ! ぁ゛ッ、やめろ、ぉ……ッ!やめ……ッ!」
「……ッ」
「ッ、ぎ……ッ!!」
膝裏まで掴まれ、上半身にくっつくほど腰を持ち上げられそのまま奥まで一気に貫かれた。腹に触れるほど反り返った己の性器が揺れる、その先端が自分の意思とは対照的に先走りで濡れているのを見て余計血の気が引いた。逃げようとすれば背後のメイジに体を捕まえられ、身動きすらろくに取ることができなかった。
「抜ッ、ぅ、ッあ、抜けッ! ぬ、ぃ……ッ、ひ、ッ! ……っ、ぁ、やぁ、ッ、め、……ろ゛ぉおお……~~ッ!」
おかしい、こんなの。
脳天まで貫かれたみたいに頭が真っ白になり、開いた口からは唾液が溢れそれを止めることすらもできない。勇者は舌打ちをし、それでも腰の動きを止めることなく俺を犯し続けるのだ。
「っ、奥ッ! だ、め゛だぁっ、も、やめ……ッ! やめろ、っ、ぉ゛おおッ!」
「お前のせいだ……ッ! お前が悪いんだろ、なんで、なんで俺に言わないで……ッ、俺は、そんなに俺が信用ならなかったのか……ッ!」
「ぃ゛ッ、や、ッぁ、も……ッ! ゆ゛ッ、く……ッ! ぅ、あ゛あぁ……ッ!」
自分の体が自分のものではないようだった。感度を高められた全身は己の血液すらも溶岩のように熱く、体の奥深く閉じたその口を押し広げるようにぐりぐりと亀頭で抉じ開けられるその感触に全身中の体液が溢れ出すような錯覚に囚われる。
どこまでが夢でどこまでが現実すらもわからない。ぐぢゅ、と肉の潰れるような音が腹の奥で響く。勇者のものの形に合わせてこじ開けられたそこは限界まで張り詰めたその雁首で粘膜を擦り上げられるだけでそれを待ち望んでいたかのように俺の意志を無視して吸い付いていくのだ。
「っスレイヴ……ッ、スレイヴ……ッ!」
「ぅ、あッ! や、め、ッ、んんぅっ! ぁ、待っ、だ、めッ、やめ……ッ! っ、ひう!!」
「ッ、く、ぅ……ッ!」
痙攣する腰を掴まれ、根本奥深く口付けたそこにどぷ、と音を立て注ぎ込まれる精液の熱に腰が痙攣する。脳汁が、熱が、溢れ出してとまらない。丸まった爪先、快感を必死に逃そうとするが逃がすどころか体内の熱は吸収するように更に増すのだ。
「ぅ……あ……あぁ……ッ」
みっちりと埋め込まれた性器は一滴も残さず俺の中へと精液を注ぐのだ。長い射精を終え、勇者は深く息を吐く。指先一本すら動かせずに放心する俺の体を抱き起こし、唇を舐める。
そのまま深く舌を絡めてくる勇者に抵抗するほどの力は今の俺になかった。
「っは、ひ、う゛……ッ!」
休む暇など無かった。
ようやく達したと思えば再び動き始める勇者から逃げることが出来ない。体内に溜まった精液を塗り込むように更に中を摩擦され、体中に響く粘着質なその音に頭がどうにかなりそうになる。
もうやめろ、抜け。そう声をあげようとしても奥を抉られると途切れてしまい、何も考えられなくなるのだ。
「勇者サマ離す気ねえのかよ、本当独占欲強いよなぁ。なあ? スレイヴちゃん」
「っ、……ふ……ッ」
「ん、ぅ……はは、焦点全然合ってねえわ。おーい、生きてっか?」
「……ッ、う……ッ」
下腹部は勇者に犯されたまま背後のメイジに唇を甘く噛まれ、舌で舐められる。強く噛みすぎたせいで血の味が広がる咥内、ぬるりとした舌が入ってくる。勇者がこちらを睨んだ気がしたが、メイジはお構いなしに俺の舌を絡め取るのだ。
熱に浮かされた思考の中、最早どこまでが現実なのかすら俺には判別つかなかった。
胸元、上半身に這わされる手。技巧も関係なく性急に腰を打ち付けられる下腹部は最早快感以外の感覚もない。重ねられた手のひらが、絡め取られる指先が誰の手すらもわからなかった。
ちゅ、と軽く舌を吸われた後、すんなりと唇を離したメイジはそのまま「ああ、そうだ」と俺から手を離す。それもほんの一瞬。次の瞬間、いきなり頭を掴まれ首を動かされたと思えば開いたままの唇に何かが押し付けられた。
薄暗い中、月明かりに照らされ濡れたそれがなんなのかすぐに分かった。噎せ返りそうなほどの雄の匂い、そして硬く勃起したそれは間違いない。
「その口空いてんじゃん」
「勇者サマが満足するまでお前はこっちで奉仕しろよ」雑用らしくな、と笑うメイジに頭に血が昇りそうになる。腕が使えたら殴りかかっていた。はずなのに。
「ほら、さっさとしろ」
「っ、だ、れが……ん゛ぅ……ッ!」
「ほら、無理矢理突っ込まれたくないだろ? 俺だってしたくない」
いけしゃあしゃあと言ってのけるメイジはそう言いながら俺の鼻を摘むのだ。必死に閉じていた唇にまるで口紅でも塗りたくるように性器、その先端を押し付けてくるのだ。匂いすらも感じたくない、鼻呼吸も我慢していただけに息苦しくなる。「ほら、舐めろよ」と甘く囁きながら前髪を梳かしてくるメイジに血の気が引いた。
勇者は、あいつは何も言わない。けれど、結合部越しに、繋がった場所からあいつの感情が手に取るように伝わってくるのだ。苛ついている。けれど、メイジに強く出れないのだ。元はといえばこの状況を作ったのはあいつだ、助ける気どころか逃がす気すら毛頭もないのだとわかっていたはずなのにまだ傷ついている自分に吐き気がした。
絶対、絶対こいつの言いなりにはならない。それならばこのまま窒息死をした方がましだ。そう、血が滲むほど唇を噛んだときだった。
下腹部を突き上げられた瞬間、堪らず声が漏れてしまう。しまった、と思った瞬間捩じ込まれる性器に咽る暇もなかった。
「ん゛ぉ……ッ、ご、……ッ、ぉ……ッ!!」
「はぁ~~……っ、流石子供体温。吸い付く吸い付く……すげえな」
「……っあまり、虐めるなよメイジ」
「分かってるって、勇者サマ。……大事な大事なパーティーだからな」
「ぉぶ、ッ、ぅ゛……ッふ……ッ」
せめて噛み千切ってやろうと思うのに顎が外れそうなほどまで開いたそこは閉じることすらできない。
閉じ、拒絶しようとする喉まで抉じ開けるように侵入してくる性器に生理的な涙と嗚咽が溢れる。開いた唇の端から溢れる唾液を止めることすらもできなかった。息苦しい、痛い、そう俺が嗚咽する都度メイジの性器を締め上げるようだ、息を吐いたあいつはうっとりしたように「最高」と笑うのだ。そしてそのまま俺の首を固定し、更に喉の奥、口蓋垂ごと粘膜を塗りたくるように擦り上げてくる。
どくどくと上と下、別の鼓動、熱に支配され四散する意識の中、抵抗することもできず、ろくに声もあげられない。本当に自分がただの肉塊になったのだと錯覚せざる得なかった。
「っ、ん゛ぅ……ッ、うぅ……ッ!」
「はぁ……っ、いいねえ、そのまま喉で締め付けろよ、そうそう。ちっせえ舌、ちゃんと舐めろよ?勇者サマにしてるみたいにな」
「っ、ぅ、……ッ!!」
舌の上で這いずる熱い肉棒にただ吐き気がした。拒むこともできず、まるで口を性器のように使われる。
自分の置かれた状況を考えるのを脳が拒否している。いっその事記憶を消された方がましだと思えるほどだった。
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偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
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