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SSS
邪魔者【容姿端麗人気者受け】
恋に落ちるのは事故のようなものだと、どこかの誰かが上手いことを言っていたが今ならその言葉があながち間違っていないと分かった。
それでも、まさか自分が。しかも同性相手にそうなるのだとは梅雨ほども思わなかったが。
夜路はいつも色んな人に囲まれていた。俺はその光景を教室の隅から眺めては、明るい灯台に集まる羽虫のことを思い出していた。
夜路は人気者だ。容姿端麗でいかにも女子ウケしそうな顔、そのくせそれを嫌味に受け取らせないような立ち振る舞い、それらは漏れなく俺のコンプレックスを刺激してきた。
本当は影で虐めとかやってんじゃねーのかとかと何度も思った。けれど、実際は逆だ。あいつは寧ろ虐められてるやつを庇っていた。その代わりに絡まれてる夜路を見て、俺は夜路を実は腹黒いやつなのではないかと色眼鏡かけては思い込んでいた自分を恥じたのだ。
毎回夜路に挨拶される度にムカついて聞こえないフリをしていたが、その光景を見てからはそんな今までのちっさな自分の行動を恥じた。
だから、今度はこちらから挨拶してみるか。なんてそんな一人考えていたのが梅雨のことだ。
その翌日、夜路は教室には来なかった。
健康だけが取り柄な男だと思っていただけに驚いたが、それよりもなんと無断欠席だというのだからよりド肝を抜かされる。
あんなお人好しのような男でも無断欠勤することなんてあったのだな、なんて勝手に親近感すら覚えるほどだった。
夜路が不在のままHRは進んでいく。
教壇の上で教師がどうでもない連絡事項を口にしている間、俺はなんとなく昨日見かけた夜路のことを思い出していた。
不良たちからいじめられっ子を庇っていた夜路。
……もしかして、なにかあったのではないだろうか。
そんな思考が過ぎったが、すぐに振り払った。
夜路はあの不良たちとも知り合いのようだったし、なによりも夜路のことだ。うまくやってるだろう。
そう半ば自分に言い聞かせるように口の中で繰り返す。
なにより、もしなにかがあって今日の無断欠席に繋がっているのだとすれば、それはあのとき助けようともせずに逃げ出した俺にも要因があるのではないかと思ったら怖かったからだ。
結局、我が身を振り返ったところでなにも変わりやしないのだと。そう言われているようで嫌だった。
その翌日も夜路は教室には顔を出さなかった。
二日連続となると皆少し驚いていたが、夜路と交流が深いクラスメイトが言うにはメッセージは返ってくるらしいので『体調不良により数日欠席』ということでこの件はあまり触れられなくなった。
そして三日目、四日目となるに連れ、クラスメイトたちも空いている夜路の席になんの疑問も抱かなくなるのだ。教室で話題が出るとしても「夜路、早く元気になればいいのにな」なんて軽いもので、すぐに次の授業はなんなのかというどうでもいい話題で流されていく。
俺はその空気が嫌で堪らなかった。あの場面を見てしまったということもあってか、自分だけが異空間にいるようなそんな感覚が気持ち悪くて、結局俺は一足早く教室を出て下校する。
部活もなにもやっていない。
いつもならばただ真っ直ぐに帰宅するだけの帰路の中、俺は夜路の家へと足を向けていた。
夜路の家は俺の家とはそれほど遠くはない。
夕方、下校時間ということもあっては近所の住宅街にはちらほらと人影もあった。俺は人とすれ違う瞬間、自分が見られているような感覚が嫌いだ。だから、人目につかないように電柱の影から夜路の家を見上げる。
ごく一般的な二階建ての一軒家、その二階にある窓が夜路の部屋の窓だろう。カーテンが閉め切られているが、部屋の明かりは見えない。
寝ていて明かりを付けていないのか、それとも体調不良というのはただの建前で本当はどこかに遊びにでも行っているのか。
寧ろ未だ、後者の方がいいとすら思えた。
暫く夜路の部屋の窓に変化がないのを確認し、そのまま今日は帰るかと踵を返そうとしたときだった。もう一度見納めようかと振り返った瞬間、ほんの僅かにカーテンが動いたような気がしたのだ。
やはり、部屋にいるのか。
暫く再びその場に留まり、剰え夜路が元気な顔を見せないかと粘ったが、その日はそれ以上の収穫はなかった。
気が付けば夕暮れに染まっていた辺りは真っ暗になっており、俺は家で待っている母親が「どこでほっつき歩いていたのだ」と口煩く責めてくるのを想像してはうんざりとした気分になっていた。
夜路、早くその顔を見せて俺を安心させてくれ。でなければ、今夜も眠れないだろう。
明日は休みだ。一日張ってれば夜路も顔くらいは出してくれるだろう。
そんなことを考えながら、俺は早めに眠りにつくことにした。
「……ああ、行ったか?」
「ん、やっとどっか行ったみたいだ……ぁ、ちょっと……」
「また明日来たら俺が追い払ってやるよ。……ったく、この前のやつといい変なもんに好かれやがって」
「君が嫉妬深すぎるからだろ、こっちの身にもなってくれないか……っ、ぁあ、もう……本当に、君は……」
それでも、まさか自分が。しかも同性相手にそうなるのだとは梅雨ほども思わなかったが。
夜路はいつも色んな人に囲まれていた。俺はその光景を教室の隅から眺めては、明るい灯台に集まる羽虫のことを思い出していた。
夜路は人気者だ。容姿端麗でいかにも女子ウケしそうな顔、そのくせそれを嫌味に受け取らせないような立ち振る舞い、それらは漏れなく俺のコンプレックスを刺激してきた。
本当は影で虐めとかやってんじゃねーのかとかと何度も思った。けれど、実際は逆だ。あいつは寧ろ虐められてるやつを庇っていた。その代わりに絡まれてる夜路を見て、俺は夜路を実は腹黒いやつなのではないかと色眼鏡かけては思い込んでいた自分を恥じたのだ。
毎回夜路に挨拶される度にムカついて聞こえないフリをしていたが、その光景を見てからはそんな今までのちっさな自分の行動を恥じた。
だから、今度はこちらから挨拶してみるか。なんてそんな一人考えていたのが梅雨のことだ。
その翌日、夜路は教室には来なかった。
健康だけが取り柄な男だと思っていただけに驚いたが、それよりもなんと無断欠席だというのだからよりド肝を抜かされる。
あんなお人好しのような男でも無断欠勤することなんてあったのだな、なんて勝手に親近感すら覚えるほどだった。
夜路が不在のままHRは進んでいく。
教壇の上で教師がどうでもない連絡事項を口にしている間、俺はなんとなく昨日見かけた夜路のことを思い出していた。
不良たちからいじめられっ子を庇っていた夜路。
……もしかして、なにかあったのではないだろうか。
そんな思考が過ぎったが、すぐに振り払った。
夜路はあの不良たちとも知り合いのようだったし、なによりも夜路のことだ。うまくやってるだろう。
そう半ば自分に言い聞かせるように口の中で繰り返す。
なにより、もしなにかがあって今日の無断欠席に繋がっているのだとすれば、それはあのとき助けようともせずに逃げ出した俺にも要因があるのではないかと思ったら怖かったからだ。
結局、我が身を振り返ったところでなにも変わりやしないのだと。そう言われているようで嫌だった。
その翌日も夜路は教室には顔を出さなかった。
二日連続となると皆少し驚いていたが、夜路と交流が深いクラスメイトが言うにはメッセージは返ってくるらしいので『体調不良により数日欠席』ということでこの件はあまり触れられなくなった。
そして三日目、四日目となるに連れ、クラスメイトたちも空いている夜路の席になんの疑問も抱かなくなるのだ。教室で話題が出るとしても「夜路、早く元気になればいいのにな」なんて軽いもので、すぐに次の授業はなんなのかというどうでもいい話題で流されていく。
俺はその空気が嫌で堪らなかった。あの場面を見てしまったということもあってか、自分だけが異空間にいるようなそんな感覚が気持ち悪くて、結局俺は一足早く教室を出て下校する。
部活もなにもやっていない。
いつもならばただ真っ直ぐに帰宅するだけの帰路の中、俺は夜路の家へと足を向けていた。
夜路の家は俺の家とはそれほど遠くはない。
夕方、下校時間ということもあっては近所の住宅街にはちらほらと人影もあった。俺は人とすれ違う瞬間、自分が見られているような感覚が嫌いだ。だから、人目につかないように電柱の影から夜路の家を見上げる。
ごく一般的な二階建ての一軒家、その二階にある窓が夜路の部屋の窓だろう。カーテンが閉め切られているが、部屋の明かりは見えない。
寝ていて明かりを付けていないのか、それとも体調不良というのはただの建前で本当はどこかに遊びにでも行っているのか。
寧ろ未だ、後者の方がいいとすら思えた。
暫く夜路の部屋の窓に変化がないのを確認し、そのまま今日は帰るかと踵を返そうとしたときだった。もう一度見納めようかと振り返った瞬間、ほんの僅かにカーテンが動いたような気がしたのだ。
やはり、部屋にいるのか。
暫く再びその場に留まり、剰え夜路が元気な顔を見せないかと粘ったが、その日はそれ以上の収穫はなかった。
気が付けば夕暮れに染まっていた辺りは真っ暗になっており、俺は家で待っている母親が「どこでほっつき歩いていたのだ」と口煩く責めてくるのを想像してはうんざりとした気分になっていた。
夜路、早くその顔を見せて俺を安心させてくれ。でなければ、今夜も眠れないだろう。
明日は休みだ。一日張ってれば夜路も顔くらいは出してくれるだろう。
そんなことを考えながら、俺は早めに眠りにつくことにした。
「……ああ、行ったか?」
「ん、やっとどっか行ったみたいだ……ぁ、ちょっと……」
「また明日来たら俺が追い払ってやるよ。……ったく、この前のやつといい変なもんに好かれやがって」
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