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しおりを挟む「これで三人目――最後か」
発行された新聞を片手に、俺は新聞部の奥で魘されている部長の頭に新聞を乗せた。
「おい、部長。できたぞ。これであの生徒会長様も暫くは機嫌がよくなるはずだ」
「……う、うう……痛いよ、伊鶴……」
「アンタにはもっと痛がってもらいたいくらいだけどな。……天方が居なくなって、部長が怪我で動けない間の負担がこっちにきたんだから」
「……伊鶴」
ごめん、とまた早速しゅんとしている部長の肩を叩く。
「慰め役まで俺にさせないでくれ。……アンタは部長らしくしゃんとしろ」
「でも、……本当によかったのか?」
生徒会にとうとう目をつけられたということで、少数精鋭でやってきた新聞部もほとんど抜けてしまった。
こうして毎日部室に足を運ぶのは俺とこの人くらいだ。
ようやく生徒会長からのおつかいも済み、ケツの穴の裂傷も治りかけてきた頃だった。
「なにがだ?」
「分かってるだろ。もう君もここに縛られる必要は――」
「金」
「……え?」
「ライバルもいなくなって、こんなネタ入れ食い状態で止めるやつ居ると思います? 部長」
そのためになんだってやってきたのは俺も貴方も一緒でしょ。なんて、部長の隣に腰をかける。
「資金稼ぎは任せて、アンタはここで謝罪土下座の練習しててくれ。……俺の尻拭いも全部、アンタがやってきただろ?」
今回ばかりはしくじったが、あのティア表を書いたのは俺だと知られればもっと酷い目に遭っていただろう。
そうなると、今回濡れ衣を被ってくれた部長には感謝している。
「……君、また懲りてないな?」
「なんのことだ。それより、最低最悪な初体験を迎えたお陰でソッチの耐性もついたし利点だろう?」
「勘弁してくれ……」
頭を抱える部長の膝に移動すれば、「伊鶴」と部長の体が緊張する。それを背中と尻で感じつつ、胸元に頭をもたれ掛けさせた。
「俺にはアンタが必要なんだ、部長。……これからも仲良くやっていこうじゃないか」
「伊鶴……」
「ところで部長、あの男が言ってた部長の宝物が俺だって言う件について詳しくお聞かせ願いたいんだが?」
「うわ、もういいから忘れてくれ! あれはあいつのじょ、冗談で……」
顔を真っ赤にして飛び起きる部長。
まあそんなことだろうとは思っていたが、なんだか落胆のような気持ちもあった。
「だろうな」と見上げれば、部長は「からかったな?」と眉を顰める。
「……まったく君はそういうことばかり覚えて……っ、わかった、分かったから顎の下をくすぐるのをやめないか……!」
「なんだ。そんな怒らなくてもいいじゃないか」
天方風の色仕掛けに部長は弱いようだ。脳内にメモしておこう。
「さてそろそろ時間が来たようだ。……次の記事も楽しみにしててくれ、部長」
「……本当、君といると心臓がキリキリするよ」
「次は大丈夫だ。生徒会の連中の機嫌取りも抜かりない」
「……おい、君。ソッチの耐性ってまさか……」
「それじゃ、片付けはよろしく頼む。部長」
そう何か言いたげな部長を残し、俺は新聞部を後にした。
このあと、生徒会室に顔を出した後は一年の教室へと向かう。
梁井はイチャイチャ甘々恋人プレイを好み、光永は人気のない屋外で人から隠れるようにやるのを好んだ。それぞれ予め会いたい旨のメッセージを送った後、天方に連絡をした。
「天方。そっちの首尾はどうだ? なに、まだダメ? ……お前、脅迫が得意なんだからもっと強みを活かせ。モチベとか甘えたことを抜かすなよ。……仕方ないな。この後十分ほどなら時間がある。――いつもの倉庫で待ってろ」
うず、と重たくなっていく下半身に気付かないふりをしながら俺はエレベーターに乗り込む。乗り合わせた生徒会の連中に腰を抱き寄せられ、またかと思いつつも好きに触らせておくことにした。
誰の犬にもなるつもりはない。
いつでも連中を脅せるように少しでも多くの弱味を引き出すため、生徒会長様直々に叩き込まれた処世術を駆使して俺は今日もネタを探しにいく。
それもこれも、新聞部の平和のためだ。
そう頭の中で繰り返し、乾いた唇を舐めた。
おしまい
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