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16 晩餐会

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聖女さま…!本当に聖女さまが…!!!

レオにエスコートされながら百合香が大広間へと辿り着くと、貴族たちが立ち上がり歓喜の声をあげた。

百合香はその熱気に戸惑いながらもなんとか笑顔を保ち続けた。国王が手で制するとようやく貴族たちは声を抑えたものの、目に焼き付けようと百合香を凝視し続けていた。

レオに促され百合香が席に着くとレオも隣の席へと着いた。全員が揃ったのを確認して国王が話し始めた。

国王「今宵も集まってくれて礼をいう。みなももう知っているだろうが…お告げの通り、この度聖女さまが降りてきてくださった。きっとこの先の未来は明るいものとなるだろう。
そして、わたしたちの義務を果たすときだ。みな苦しいだろうがこれからも支え合い、この国を支えてほしい。さらなる国の発展とこれからの明るい未来を祝して……女神さまのご加護を!」

貴族たち「「「女神さまのご加護を!」」」

みな一様にグラスを掲げ、少しだけ入った食前酒を飲み干した。

隣をみるとレオも同じように飲み干している。
視線に気づいたレオは百合香に上体を寄せると小声で説明をしてくれた。

レオ「女神さまのご加護をというのは、祝いの席などで必ず皆で口にするお決まりの言葉のようなものです。この国が女神さまによって創られたこと、そしてご加護を頂いていることへの感謝を込めて、その言葉と食前酒を飲み干すことが行われています。貴族たちは男性はお酒を飲み、女性は祈りを捧げるのです。今後の祝いの席でも、ただ心で祈りながら見守るだけで大丈夫ですよ。説明していなくて、申し訳ありません。」


日本で言う、乾杯や頂きますと同じことなのだろう……。女性は何もしないとのことでマナー違反ではないことに安堵し、申し訳なさそうに謝るレオに大丈夫ですよと微笑み返した。

前もって注意されていたのだろう。貴族たちは百合香に話したそうに視線を向けながらも声をかけるものはいなかった。そのまま和やかに食事会は進んだ。

公爵A「国王。それで女神さまはどのような順番で癒して回られるのですかな?三大公爵家である我が領地にぜひはやくおいで頂きたい。」

巨体を揺らしながら公爵Aが立ち上がり、声をあげた。
それを皮切りに、同じ公爵であろうもう一人の男も立ち上がり、声をあげた。
「いいえ!わたしの領地に!」
「ぜひ我が領地に!」
何人もの貴族たちが立ち上がり、声をあげる。
和やかな晩餐は言い争う声へと変わった。

国王「いい加減にしないか!!!
順番はもう決まっている。追ってその文を届ける。それまで待っておれ。
今宵はもう終いにしよう。みな頭を冷やすのだ。」

国王はそういうと王妃を伴い大広間をあとにした。第一皇子のアレンもそれに続き席を立つとレオへと視線を向けた。レオは頷き、百合香を優しくたたせると扉へとエスコートしてくれた。貴族たちがまだ話し合っているが、レオは振り向かずそのまま百合香を連れ大広間をあとにした。



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