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17 王族とは。
しおりを挟む連れて来られた部屋は朝訪れた広間だった。
先に王と王妃がソファーに腰掛け待っていた。アレン、レオ、百合香はそれぞれのソファーへと腰をおろした。
王「聖女さま、見苦しいところをみせてしまってすまなかった。みな、いままで苦しんできた。やっと見えた光にすがり付かずにはいられないんだ。理解してやっておくれ。」
『はい………。』
百合香は昼間訪れたトーニャ村を思い出していた。早く救われたい。そう思うのは当然のことだ。わたしもきっとそうするだろう。だからこそ、彼らを責めるなんてできない。
国王「しかし……誰もが気にしていることだろう。どうやって癒しを施して回るか。南部地方ほど穢れが酷い。今日集めた主要貴族家はみな北部や王都近隣の領地だ。まずは穢れのすくない王都周辺の領地を癒してほしい。その順番も公爵、侯爵、男爵、子爵と爵位順に回ってほしいのだ。時間はよりかかってしまうが、そうしなければ反発がおきる。
そして少しずつ南下し、全てのヴィアン国を癒してほしい。
その後は友好国であるマレーシーナ国と、インダスリル国をお願いしたい。」
百合香は話を聞きながら、自分の眉が潜めていくのがわかった。国王はそれに気づかず話し続けている。
王都や王都周辺の様子と、訪れたトーニャ村の差は凄いものだった。南に行くほど穢れが強いならば、助けを待っているのは南部のものたちのはずだ。
国王「レオ、おまえも聖女さまと一緒に回るのだ。何者からも聖女さまを守るのだ。王族としての勤めを果たしてくるのだぞ。」
レオ「はい、父上。必ずや聖女さまをお守りし、全ての地を癒して参ります」
レオはいつものように微笑みを浮かべながら、王へと返事を返していた。
そのレオの様子を眺め、急激に心が冷えていくのがわかった。勝手に勘違いしていた。レオも私と同じように感じてくれているのではないかと。一番助けを必要とする人々へ手を差しのべた方がいいと王へ進言してくれるのではないかと。
けれどやはり彼は王族なのだ。少数よりも確実な大数をとる。それが王族としてのあり方なのだろう。
間違っている訳ではない。それも正しく確実な方法なのだから。けれど、どうしても百合香は納得できなかった。権力のあるものから助け民を見捨てるのかと。
ただただ冷めていく心を感じながら呆然とレオを眺めていると、レオの斜め横に腰掛けたアレンがこちらを見極めるようにじっとみつめていた。
一通り国王とレオが話終わると各自部屋へと戻ることになった。レオは百合香を部屋まで送ってくれた。
レオ「それでは、明日は北のウィザード公爵家に赴くことになります。また朝食の際にお迎えにあがりますね。ゆっくりと休まれてくださいね。」ニコッ
そう言い残し去っていった。声をかけるべきか悩んでいるとレオの姿はあっという間にみえなくなった。
『はぁ…………。』
百合香は溜め息をつくと、部屋へ入ろうと体の向きをかえた。
「どうされました?」
ビクッ
振り替えると、広間の方から歩いてくるアレンがいた。
『いいぇ……なにも……。』
探るような強い視線に、おもわず視線を下げ、そう返答すると……
アレン「癒しに回る順番のことですか。」
ハッとしてアレンへと視線を向けると、ただまっすぐで真剣な瞳が百合香をみつめていた。
アレン「少し……散歩でもしませんか?夜の庭園も見事なものですよ」
『いぇ……でも……。』
アレン「レオは父上と同じ考えです。あれは誰よりも王族であることに誇りをもっていますから。……あなたの考えは違うのでしょう?聖女さま。」
『アレン様……。』
戸惑ったようにアレンへと視線をむけると、微笑みひとつみせないものの、その瞳は真摯で優しさにあふれていた。
『…………庭園を案内していただけますか。』
アレン「もちろんです。参りましょう。」
そう言って腕を差し出すアレンにエスコートされながら二人は夜の庭園へと足を運んだ。
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