36 / 59
第四章 裁判
4 バカはどこまで行っても大馬鹿
しおりを挟む
4人目の証人であるジェルフが、証言台に立った。
ピシっとスーツを着込んで、いかにも…立派そうに立っているが、ギリアムのスーツ姿が
見慣れている私としては、スーツに着られているようにしか見えない…。
「ではジェルフ卿…。パーティーでの様子を、聞かせてください」
マガルタのピシッとした声が、余計に滑稽だ。
「私は…ファルメニウス公爵家の歓待パーティーで、どうしても訴えたいことがありました!!
騎士として…女性を裸で戦わせることに対する、正式な謝罪をして頂きたかったからです!!」
「ですが…2人ともいらっしゃらないと伺い、私は憤りを感じずにはいられませんでした!!
2人とも…女性に酷いことをした責任を取らずに、どこに行ったのかと!!」
おいおーい、それはアルフレッドが説明したぞぉ~。
「異議あり!!本件と関りがありません!!」
ハイネンス…これ言うの何回目だ?いい加減にしろ…と、顔に書いてある。
「いいえ!!関係があります!!」
マガルタの前に、ジェルフが答えおった。
「この件は…オルフィリア公爵夫人の人となりを示す、いい事例だからです!!
女性でありながら、女性を裸で戦わせることを、何も思わないからこそ…。
会場を裸で走り回るなどと、いう事が出来るのです!!
淑女の鏡であらねばならない、序列第一位の夫人が、そのうような事でいいのですか!!」
思いっきりハイネンスを睨み返してる…。
「この場でハッキリさせるべきです!!女性を裸にすること自体が、良くない事だと!!
オルフィリア公爵夫人は裸になるのが平気だから、他の女性の傷がわからないのです!!
私がこの場に立ったのは、それを明らかにして欲しいからです!!」
「でしたら、別途で訴えてください!!
この裁判は…あくまでラスタフォルスからの訴えで、行われています!!
案件はオルフィリア公爵夫人ではなく、ダイヤ卿のことです!!
それを間違わないでください!!」
ハイネンスも…思わず白熱している。
でも…訴えるなら、ドロテアであってジェルフじゃないんだけどね…。
「証人は、本件に関わりのある事を述べてください」
裁判長も…これはやっぱり擁護できない。
「ジェルフ卿…お気持ちはわかりますが、まずは歓待パーティーの様子を聞かせてください」
諭すように言っている。
「わかりました…」
かなり…不満そうだなぁ…。
そもそもなんて言って、証言台に立たせたんだぁ?
「2人がいない事を知った私は…ティタノ陛下に訴えました。
女性を裸で戦わせた罪で、ファルメニウス公爵家を罰するべきだと思ったからです!!
しかし…」
いかにも悔し気な顔をして、拳を握っている。
「取り合ってはもらえませんでした!!
王の中の王と言われるお方が…まさか公衆の面前で、女性を裸にすることを擁護するなどと…」
おいおーい、何言ってんだねキミは。
それ…立派な侮辱だけど、わかってるかぁ~。
………ぜってー、わかってねぇな、百パー。
あきれ果てる私の横からギリアムが、
「ああ、そう言えば…。言ってませんでしたか?
ティタノ陛下は…公式的には、お帰りになったことになっているのですよ」
……聞いてないよ。
まあ私も、それどころじゃなかったからなぁ…。
「じゃあ…いないから何言ってもいいと、思ってるんですか?
壁に耳あり障子に目あり…ですよ」
「そこまで慎重に考えられる頭があったら、そもそもあんな騒ぎは起こさんよ」
おっしゃる通りでござんす。
ああ…私達のスペースで、どんなオーラが出ているか…。見なくてもわかる。
フォローが大変そう…。
私の考えを察したのか、
「大丈夫ですよ。フィリー。ティタノ陛下の対応は私がします。
フィリーは体を治すことだけ、考えてください」
ギリアムが…私に微笑んでくれた…。
頼もしぃぞぉ~。我が旦那様ぁ~。
「裁判長!!本件とこれ以上関係のない事を言うようなら、証人の退廷を要求します!!」
ハイネンスも、腹に据えかねたようだ。
「これからオルフィリア公爵夫人が来てからの事を、話します!!」
誰よりも早く、ジェルフが反応…。
その反射神経、もっと別の事に使えばいーのに。
「オルフィリア公爵夫人がいらして暫くたってから…、挨拶を受けていたオルフィリア公爵夫人が、
いきなり自らのドレスを脱ぎ捨てました。
程なくして…会場中の蝋燭が落ち、当たりは騒然としました。
その中で…オルフィリア公爵夫人が下着さえ纏わず、裸で走り回ったのです。
その姿は…とても淑女とは言い難いモノだった!!」
……火事になったことや、マギーを助けたことは、丸っと無視かい…。
全く…すがすがしいな。
「あの時は落ちた蝋燭が、様々な場所に引火して、救助が第一優先だった!!
その事を話さずに、裸で走りまわったことを、強調するとは何事ですか!!」
別件だけど…やっぱり腹に据えかねたハイネンスが、反対意見を述べる。
「だったら、女性を裸にしたことを、謝るべきです!!」
ジェルフも負けじと声を張り上げる。
「女性が裸になったという一点だけ言えば、それは…恥になるし、馬鹿にもされるでしょう!!
それが嫌だと言うのなら、しっかりと公開演武最終試合の事を、公式に詫びて、被害者の名誉を
回復するよう、務めるべきだ!!」
ふうん…。そこまでバカでもないのかも。
それかは、台本があるか…の、どちらかだな。
「公開演武最終試合については、公式発表がしっかりとなされた!!
騎士の戦いとして、ルールにのっとったものだとね!!しっかり読んでください!!」
「ルールがどうであれ、守るべき社会的道義というものがあるでしょう!!あと道徳も!!
それが守られていない以上、何を言ったって、無効ですよ!!」
まあ、それも一つの意見だな。
戦争形式…と、言ったって、実際の戦争でない以上、一定数の反発は出ると覚悟してたさ。
でも…それでも私はやりたかったんだ。
娼婦をバカにした…それもデカいが、それだけじゃない。
ギリアムが…物凄く忙しい時に、心を砕いて…本気で考えて、問題提起した…。
その内容を、丸無視した挙句、取り合ってもらえなかった、ヒドイ…などと、揶揄していいと
思っているのか?
そんな奴らの方が…害悪だと言えないのか?
私は思わず、扇子で顔を覆った…。
何だかポーカーフェイスが剥げそうだったからさ。
でも…同時に何だか、違和感も感じた…。
ダリアの顔が…何だか緩んでいるような気がしたから。
ジェルフの事、気に入らないハズなのに、応援しているような…。
一応ジェルフの発言が、流星騎士団に味方しているから…か?
いや…。
私の勘じゃぁ、違う…。
ならなぜ…。
「オルフィリア公爵夫人に問いたいですね!!
女性を裸にして平気だと言うのなら、ご自身もこの場で裸になったらどうですか?」
私は…咄嗟に出ようとしたギリアムの腕を掴み、
「ギリアム…怒りはわかりますが、この場は私に任せてください!!」
小声であっても、しっかりした意志を乗せたから、ギリアムは…また椅子にドカリと座る。
かなり…ぶすくれているがね。
「ジェルフ卿…お言葉ですがね…」
私は扇子で顔を覆ったまま、ハッキリと物申す。
「裸になったのには、理由があります。
理由が無ければ、私は裸を晒すつもりはありません」
ホントにな。
私は…衆人環視の元でのスッパダカが全く気にはならんが、利益がないならやらんぞ。
磨きかけてんだから、もったいねーだろが。ただじゃ嫌だ。
「でしたらその裸になった理由とやらを、ご説明ください!!」
完全に喧嘩腰だな…。
まあ、こいつもドロテアのシンパっつーか、惚れてるみたいだから、当然か。
「それはいずれ、公式発表致します。
今は…調査段階の事が多いため、この場で申し上げるのは、差し控えさせていただきます」
これは本当さ。
自害した資格の事とか、蝋燭の仕掛け…。あの子供をどこから入れたのか…。
わからないことだらけで、調査中なんだ。
するとジェルフは…わかりやすいぐらい、鼻で笑う動作をし、
「つまり…説明できるような理由など、一切ないという事でしょう?」
あ~も~、わたしゃアンタみたいなしょーもない男には慣れてるから、忍耐力もあるが…。
私の後ろに座ってんのが、限界になってきたから、やめれ!!
後ろに神経集中しつつ、言い返すのも面倒くさくて黙っていたのを、何も弁解の余地がないと
見たのか、
「どうせティタノ陛下とて、卑しく裸を晒して、寵愛を得たのでしょう?
ファルメニウス公爵夫人ともあろうものが、情けない限りだ!!」
うっわ、コイツ、やりおった!!
私は…別の意味で冷や汗が出たよ。
後ろだけじゃなく、上のスペースにまで、気を使わにゃならんのか!!
「ジェルフ卿!!それはティタノ陛下に対し、失礼すぎます!!」
私はさすがに声を荒げた…。
上のスペースの怒りを…少しでも下げるために。
「あの方は…大変理知的で、分別のあるお方です!!
仮にも簡単に裸になるような人間を、好んだりは致しません!!」
あ~、ポーカーフェイスが剥げそうだ…。
私は顔を隠している扇子を、思わず強く握る。
「だったら、女性を裸にして戦わせたこと、平気なハズはないでしょう!!」
「あれは…戦争形式であると、最初に銘打っていたからです!!
ティタノ陛下は数多の戦争を、ご経験された方です!!
なればこそ、戦争と名がついたら、甘い考え方は一切しないだけです!!
そこをお間違えなく!!」
このまま言い合い合戦に突入するしかないか…と、腹を括ったら、
「裁判長!!ジェルフ卿は先ほどから、裁判と関係のない事ばかりです!!
退廷させてください!!」
ハイネンスが…殆ど叫ぶように訴えた。
「マガルタ弁護士!!証人を退廷させてください!!」
裁判長の言葉に、
「わかりました」
さすがに…これ以上はマズいと思ったんだろう。
「なぜですか!!まだまだ言いたいことは山ほど…」
「ジェルフ卿!!裁判に関係なさすぎる事を、言いすぎです!!」
「事実でしょう!!」
「とにかく退廷してください!!」
事実だってことは、否定しない…と。
こりゃぁ、台本がありつつ、ジェルフがそこから逸脱しちまった…って、とこか…。
ダリアが…非常に機嫌が良さそうなのが、私はだいぶ鼻についた。
考えている事が…だいたいわかってきたから…だな。
ピシっとスーツを着込んで、いかにも…立派そうに立っているが、ギリアムのスーツ姿が
見慣れている私としては、スーツに着られているようにしか見えない…。
「ではジェルフ卿…。パーティーでの様子を、聞かせてください」
マガルタのピシッとした声が、余計に滑稽だ。
「私は…ファルメニウス公爵家の歓待パーティーで、どうしても訴えたいことがありました!!
騎士として…女性を裸で戦わせることに対する、正式な謝罪をして頂きたかったからです!!」
「ですが…2人ともいらっしゃらないと伺い、私は憤りを感じずにはいられませんでした!!
2人とも…女性に酷いことをした責任を取らずに、どこに行ったのかと!!」
おいおーい、それはアルフレッドが説明したぞぉ~。
「異議あり!!本件と関りがありません!!」
ハイネンス…これ言うの何回目だ?いい加減にしろ…と、顔に書いてある。
「いいえ!!関係があります!!」
マガルタの前に、ジェルフが答えおった。
「この件は…オルフィリア公爵夫人の人となりを示す、いい事例だからです!!
女性でありながら、女性を裸で戦わせることを、何も思わないからこそ…。
会場を裸で走り回るなどと、いう事が出来るのです!!
淑女の鏡であらねばならない、序列第一位の夫人が、そのうような事でいいのですか!!」
思いっきりハイネンスを睨み返してる…。
「この場でハッキリさせるべきです!!女性を裸にすること自体が、良くない事だと!!
オルフィリア公爵夫人は裸になるのが平気だから、他の女性の傷がわからないのです!!
私がこの場に立ったのは、それを明らかにして欲しいからです!!」
「でしたら、別途で訴えてください!!
この裁判は…あくまでラスタフォルスからの訴えで、行われています!!
案件はオルフィリア公爵夫人ではなく、ダイヤ卿のことです!!
それを間違わないでください!!」
ハイネンスも…思わず白熱している。
でも…訴えるなら、ドロテアであってジェルフじゃないんだけどね…。
「証人は、本件に関わりのある事を述べてください」
裁判長も…これはやっぱり擁護できない。
「ジェルフ卿…お気持ちはわかりますが、まずは歓待パーティーの様子を聞かせてください」
諭すように言っている。
「わかりました…」
かなり…不満そうだなぁ…。
そもそもなんて言って、証言台に立たせたんだぁ?
「2人がいない事を知った私は…ティタノ陛下に訴えました。
女性を裸で戦わせた罪で、ファルメニウス公爵家を罰するべきだと思ったからです!!
しかし…」
いかにも悔し気な顔をして、拳を握っている。
「取り合ってはもらえませんでした!!
王の中の王と言われるお方が…まさか公衆の面前で、女性を裸にすることを擁護するなどと…」
おいおーい、何言ってんだねキミは。
それ…立派な侮辱だけど、わかってるかぁ~。
………ぜってー、わかってねぇな、百パー。
あきれ果てる私の横からギリアムが、
「ああ、そう言えば…。言ってませんでしたか?
ティタノ陛下は…公式的には、お帰りになったことになっているのですよ」
……聞いてないよ。
まあ私も、それどころじゃなかったからなぁ…。
「じゃあ…いないから何言ってもいいと、思ってるんですか?
壁に耳あり障子に目あり…ですよ」
「そこまで慎重に考えられる頭があったら、そもそもあんな騒ぎは起こさんよ」
おっしゃる通りでござんす。
ああ…私達のスペースで、どんなオーラが出ているか…。見なくてもわかる。
フォローが大変そう…。
私の考えを察したのか、
「大丈夫ですよ。フィリー。ティタノ陛下の対応は私がします。
フィリーは体を治すことだけ、考えてください」
ギリアムが…私に微笑んでくれた…。
頼もしぃぞぉ~。我が旦那様ぁ~。
「裁判長!!本件とこれ以上関係のない事を言うようなら、証人の退廷を要求します!!」
ハイネンスも、腹に据えかねたようだ。
「これからオルフィリア公爵夫人が来てからの事を、話します!!」
誰よりも早く、ジェルフが反応…。
その反射神経、もっと別の事に使えばいーのに。
「オルフィリア公爵夫人がいらして暫くたってから…、挨拶を受けていたオルフィリア公爵夫人が、
いきなり自らのドレスを脱ぎ捨てました。
程なくして…会場中の蝋燭が落ち、当たりは騒然としました。
その中で…オルフィリア公爵夫人が下着さえ纏わず、裸で走り回ったのです。
その姿は…とても淑女とは言い難いモノだった!!」
……火事になったことや、マギーを助けたことは、丸っと無視かい…。
全く…すがすがしいな。
「あの時は落ちた蝋燭が、様々な場所に引火して、救助が第一優先だった!!
その事を話さずに、裸で走りまわったことを、強調するとは何事ですか!!」
別件だけど…やっぱり腹に据えかねたハイネンスが、反対意見を述べる。
「だったら、女性を裸にしたことを、謝るべきです!!」
ジェルフも負けじと声を張り上げる。
「女性が裸になったという一点だけ言えば、それは…恥になるし、馬鹿にもされるでしょう!!
それが嫌だと言うのなら、しっかりと公開演武最終試合の事を、公式に詫びて、被害者の名誉を
回復するよう、務めるべきだ!!」
ふうん…。そこまでバカでもないのかも。
それかは、台本があるか…の、どちらかだな。
「公開演武最終試合については、公式発表がしっかりとなされた!!
騎士の戦いとして、ルールにのっとったものだとね!!しっかり読んでください!!」
「ルールがどうであれ、守るべき社会的道義というものがあるでしょう!!あと道徳も!!
それが守られていない以上、何を言ったって、無効ですよ!!」
まあ、それも一つの意見だな。
戦争形式…と、言ったって、実際の戦争でない以上、一定数の反発は出ると覚悟してたさ。
でも…それでも私はやりたかったんだ。
娼婦をバカにした…それもデカいが、それだけじゃない。
ギリアムが…物凄く忙しい時に、心を砕いて…本気で考えて、問題提起した…。
その内容を、丸無視した挙句、取り合ってもらえなかった、ヒドイ…などと、揶揄していいと
思っているのか?
そんな奴らの方が…害悪だと言えないのか?
私は思わず、扇子で顔を覆った…。
何だかポーカーフェイスが剥げそうだったからさ。
でも…同時に何だか、違和感も感じた…。
ダリアの顔が…何だか緩んでいるような気がしたから。
ジェルフの事、気に入らないハズなのに、応援しているような…。
一応ジェルフの発言が、流星騎士団に味方しているから…か?
いや…。
私の勘じゃぁ、違う…。
ならなぜ…。
「オルフィリア公爵夫人に問いたいですね!!
女性を裸にして平気だと言うのなら、ご自身もこの場で裸になったらどうですか?」
私は…咄嗟に出ようとしたギリアムの腕を掴み、
「ギリアム…怒りはわかりますが、この場は私に任せてください!!」
小声であっても、しっかりした意志を乗せたから、ギリアムは…また椅子にドカリと座る。
かなり…ぶすくれているがね。
「ジェルフ卿…お言葉ですがね…」
私は扇子で顔を覆ったまま、ハッキリと物申す。
「裸になったのには、理由があります。
理由が無ければ、私は裸を晒すつもりはありません」
ホントにな。
私は…衆人環視の元でのスッパダカが全く気にはならんが、利益がないならやらんぞ。
磨きかけてんだから、もったいねーだろが。ただじゃ嫌だ。
「でしたらその裸になった理由とやらを、ご説明ください!!」
完全に喧嘩腰だな…。
まあ、こいつもドロテアのシンパっつーか、惚れてるみたいだから、当然か。
「それはいずれ、公式発表致します。
今は…調査段階の事が多いため、この場で申し上げるのは、差し控えさせていただきます」
これは本当さ。
自害した資格の事とか、蝋燭の仕掛け…。あの子供をどこから入れたのか…。
わからないことだらけで、調査中なんだ。
するとジェルフは…わかりやすいぐらい、鼻で笑う動作をし、
「つまり…説明できるような理由など、一切ないという事でしょう?」
あ~も~、わたしゃアンタみたいなしょーもない男には慣れてるから、忍耐力もあるが…。
私の後ろに座ってんのが、限界になってきたから、やめれ!!
後ろに神経集中しつつ、言い返すのも面倒くさくて黙っていたのを、何も弁解の余地がないと
見たのか、
「どうせティタノ陛下とて、卑しく裸を晒して、寵愛を得たのでしょう?
ファルメニウス公爵夫人ともあろうものが、情けない限りだ!!」
うっわ、コイツ、やりおった!!
私は…別の意味で冷や汗が出たよ。
後ろだけじゃなく、上のスペースにまで、気を使わにゃならんのか!!
「ジェルフ卿!!それはティタノ陛下に対し、失礼すぎます!!」
私はさすがに声を荒げた…。
上のスペースの怒りを…少しでも下げるために。
「あの方は…大変理知的で、分別のあるお方です!!
仮にも簡単に裸になるような人間を、好んだりは致しません!!」
あ~、ポーカーフェイスが剥げそうだ…。
私は顔を隠している扇子を、思わず強く握る。
「だったら、女性を裸にして戦わせたこと、平気なハズはないでしょう!!」
「あれは…戦争形式であると、最初に銘打っていたからです!!
ティタノ陛下は数多の戦争を、ご経験された方です!!
なればこそ、戦争と名がついたら、甘い考え方は一切しないだけです!!
そこをお間違えなく!!」
このまま言い合い合戦に突入するしかないか…と、腹を括ったら、
「裁判長!!ジェルフ卿は先ほどから、裁判と関係のない事ばかりです!!
退廷させてください!!」
ハイネンスが…殆ど叫ぶように訴えた。
「マガルタ弁護士!!証人を退廷させてください!!」
裁判長の言葉に、
「わかりました」
さすがに…これ以上はマズいと思ったんだろう。
「なぜですか!!まだまだ言いたいことは山ほど…」
「ジェルフ卿!!裁判に関係なさすぎる事を、言いすぎです!!」
「事実でしょう!!」
「とにかく退廷してください!!」
事実だってことは、否定しない…と。
こりゃぁ、台本がありつつ、ジェルフがそこから逸脱しちまった…って、とこか…。
ダリアが…非常に機嫌が良さそうなのが、私はだいぶ鼻についた。
考えている事が…だいたいわかってきたから…だな。
51
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる