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第1章 萌芽
1 ヘンテココンビ誕生秘話
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「ここどこだ!!そんでなんで、お前しかいないんだ!!
それでお前は誰だ―――――――――――――――――――――――――っ!!」
いくつもの質問をまくし立て、怒鳴っているのは…お久しぶりのケイルクスである。
「えっと…ボクは、リッケルト・ステンロイド…です。はい」
そしてケイルクスと相対しているのは…リッケルト・ステンロイド男爵…。
こちらもかなりお久しぶり…の、皆さまご存じ、フィリーの父親だ。
「……」
ケイルクスは…暫く頭がストップしたようだが、やがて動き出すと…。
「オルフィリア公爵夫人の父親ぁ――――――――――――――っ!!」
指をさしつつ、のけぞる…。
ビックリしたのだろうが、普通は失礼だ!!と、怒鳴りそうなものだ。
もちろん王族ゆえ、それは出来ない…というより、リッケルトがあまり気にしないのだろう。
のほほんとして、頭をポリポリかいている。
「…って言うか、本当にここどこだよ!!」
「いや…ボクもわかりません…」
「はあぁ?」
ここ…街中などでは、当然ない。
見渡す限りの、豊かな大自然…。
そう言えば、大層聞こえはいいが、要するに人っ子一人いない、山だか森だかのまん真ん中に、
ケイルクスとリッケルトの2人だけ…。
辺り一面、木々が生い茂り、ちょっと中を見渡そうとすると、昼なのに夜のように暗い…。
2人がいる場所は…一応窪地になっていて、草がちょぼちょぼ生えているだけだが、右に行っても
左に行っても…どこに行っても、同じ…。
下手に動き回れば…迷う事は定石と言える大自然の中である…。
そんな中に、何とも異物感たっぷりのコンビが混ざり込む…。
これ正に、世の不思議と言わずして、何と言おう。
「ボク…家で寝てたはずなんですけど…気が付いたら、ここにいたんですよ」
「え…。オレと同じかよ…」
何かしらの陰謀をヒシヒシと感じずにはいられなかったが…さりとて。
今…。
この現状を何とか出来ねば、野垂れ死には確実だ。
ケイルクスは…ため息をつきつつ、空を仰ぎ見る。
(オレは…とうとう父上に、見放されたのかな…)
王太子である自分が…攫われるような状況なら、護衛も何もなかったという事だろう。
そもそも…友人と呼べた人間だって、色々やらかしてからは、殆ど疎遠になってしまった。
助けは来るのか…助けて…くれる人がいるのか…。
「あ…ここに何かありますよ~。何でしょうねぇ~」
そんなケイルクスのくっら~い心の内に、無遠慮な石を投げ入れるかの如く、リッケルトがゆるゆるの声を上げる。
「お前なぁ!!空気っつうもんを、少しは…って、わ―――――――――――――――っ!!」
なぜケイルクスが叫んだか…。
それはリッケルトが持ち上げた鞄に…骸骨がついていたから…。
「お、お前っ!!そ、それ、し、死体、死体ぃぃぃ―――――――――っ!!」
腰を抜かす勢いで、後ずさるケイルクス…。
「あ…本当だ…。遭難したのかな…。それとも…戦争とかで…」
リッケルトは…以外と落ち着いている。
気弱でビビりな人間が…何故落ち着いているのか…。
そもそも…なぜこんなミスマッチ&アンバランスなコンビが、誕生した上、人1人いない大自然の中にいるのか…。
事の発端は…このミスマッチ&アンバランスコンビが、大自然の中で目を覚ます…3日ほど前に遡る…。
---------------------------------------------------------------------------------------------
この日…ファルメニウス公爵家では、ちょっと緊張が走っていた。
なぜかって?
ケルカロス国王陛下がさ…内密に、私とギリアムに会いたいって、言ってきたんだよね。
それで…王族の馬車じゃなくて、カモフラージュした馬車で…今日、ご登場ってわけ。
応接室に通したケルカロス国王陛下は…1人だった。
もちろん道々の護衛はいたが、屋敷の中に入ることは許さなかった。
「単刀直入に言う。
お前が裏で支援している、心理療法プログラム講座に…ウチのケイルクスを参加させてくれ」
一息に言うと、深呼吸だかため息だか…わからない長~い呼気を吐き出した。
ギリアムは…ちょっとあっけにとられたのか、一瞬だけ止まったが、
「あれは…私というより、大部分がフィリーの案なんですがねぇ…」
……よけーなことは、言わんでよい!!
「そうなのか!!では、頼む!!オルフィリア公爵夫人!!」
いや…ちょっと待とうよ…。
「あの…失礼ながら、国王陛下…。
あのプログラムは…自ら進んでこないと、意味があまりないのですが…」
現代日本の精神科だってそう。
本人が病気だって認めなければ、どんなに治療しても、意味が無いんだよ…。
ああ…私の言葉に…消沈してしまった…。
でも…こればっかりはどうしようもないよ…。
私は魔法使いじゃない。単なる元娼婦じゃ。
「……ケイルクス王太子殿下は、そんなによろしくないのですか?」
ギリアムも…流石にほっとけないみたいで、ざっくばらんに聞いている。
「実はな…」
ケイルクスは…キンラク商会を巻き返そうと、頑張っていたらしい。
しかし…最近暖かくなったため、サバクアシで作った衣類を外に出したら…。
それが見事に、カビだらけ。
これ…実は随分と前に、私が予想していたことが…的中したんだ。
サバクアシってのは、乾燥地帯で育つ。ゆえに…保水能力が非常に高い。
水をやると成長速度が上がるのは、この性質ゆえだ。
しかも…悪い事にサバクアシを乾燥させると、この保水力が上がっちまうらしい。
そして…現代日本のような、エアコンはこの世界にない。
大抵薪ストーブか暖炉。
火を燃やすと…水蒸気が発生するんだよ。
おまけに、熱源を利用するために、ストーブの上で煮炊きするのも、当たり前の世界。
結果出た水蒸気は…サバクアシに吸収され、重ねてしまってあったものだから、見事なカビの温床となった…。
そして御多分に漏れず、服だけでなく、寝具や小物類も…こぞってカビた。
これで…サバクアシで作ったものは、全て不良品扱いを受け、メインの取引が全てなくなったキンラク商会は…事実上、解体を余儀なくされたらしい。
……というか、ジョノァドの事があって、一度解体したがっていた国王陛下が、半ば強引に押し通したらしいのよ…うん。
それ自体は英断だったと、私は思うんだけどね。
ジョノァドは…協力していた名目で、色々言ってきたわけだから、サバクアシが使い物にならなくなったことで、逆にサバクアシを薦めたジョノァドを締め出せたらしいから。
でも…かなり強引にやっちまったから、ケイルクスは完全に心を閉ざして、部屋から出てこなくなったらしい…。
そもそもケイルクスが変になり出したのは、評議会のあたりだからだ。
もちろん王宮には王宮医が常駐しているし、他の選りすぐりの医師やカウンセラーだって呼んだ。
そして半年以上治療したが…結果は、良くなるどころか酷くなったそうな…。
困り果てたケルカロス国王陛下は…巷で非常に人気かつ効果がある…という、エリザ伯爵夫人の講座の存在を知り、打診したらしい。
そしたら、裏にファルメニウス公爵家がついていて、プログラムの主な内容は、かなり参考にさせて貰ったから、そちらに聞いた方が…だってさ。
……エリザ伯爵夫人…押し付けたね?
まあ、気持ちはわかるし、色々忙しく動いてくれているから、許すけどさ…。
「今年の建国記念パーティーまで…2ヵ月ほどになっているだろう?
サバクアシとキンラク商会の事が無ければ…横に並ぶ程度は出来たのだろうが、今はそれも無理そうなのだ…」
本当に、頭が痛そうだ…。
頬がこけちゃってるし、顔色も悪い。
まあ…建国記念パーティーは、いわば王家が健在であると示すものだ。
病欠で致し方ない事も、過去あるっちゃあるが…。
サバクアシとキンラク商会の事は、もう貴族にはほぼ知れ渡っちまったから、欠席すれば…何が理由かなんて、火を見るより明らか。
王家の威信が急下降するのは、致し方なしになってしまう。
「それに…今年の建国記念パーティーは…」
さらに声を細めつつ、
「お忍びで…来たいと言う、他国の王侯貴族が多くてな…」
はいぃ~?
「それはまた、なんで…」
「例の…ティタノ陛下の歓待パーティーの件だ。
温泉…と言ったか?お前たちが開発した施設は…。
そこでの花火…というヤツを、ティタノ陛下が早速使って…。随分と話題になったのだ。
うちの建国記念パーティーでも、専用のを上げてくれるのだろう?
それを見たいと…」
あれままま…。人気が出すぎるのも…考えモノだ。
「建国記念パーティーに他の王侯貴族が参加したいと言うのは、いい事だが…」
そう、建国記念パーティーは、王家の力を示す場だ。
他の国の王族が参加したい…と言うのは、それだけその国と懇意にしたいと思っているから。
「それだけに王太子が不在ではな…」
そうだよね…。
噂が外国まで飛び火しちまう。
だからって…断ったりしたら、それこそ失礼だし…。
経済効果だって、だだ下がりになるし…。
私は…少し考えた…。
ケイルクスは…バカ王女よりは、もともとまともな人間だ。
復活してくれさえすれば…けっこうこちらの味方に…なってくれるかもしれない。
ジョノァドを…何とかするための、強力な武器になるかも…。
折角…前回でっかい枝葉をぶっ潰して、今…落ち目なんだから、一気に攻めないと!!
私は…前世の娼婦時代の記憶を…脳みそフル回転で、たどっていた。
あああああ!!こういう時は、ギリアムの脳みそが羨ましい!!
私が探りあてたかったのは…ズバリ精神病を患っていたお客様だ。
かなりの数…いたんだよ。
現代日本じゃ…けっこうな人数が、精神病を患っていた。
生活習慣病レベルでだったと思う。
もちろん…こっちから聞いたりなんかしない。
でも…喋ってくる人はいたし、確実にそうだと…なんとなく勘でわかる人もいた。
その中で…確か…笑い話として…話してくれた人がいた…。
自分が…長い年月引きこもりをやっていて…でも…復活できたんだよ…って、言っていた…。
復活できたきっかけ…確か…。
私は…脳内で何かが弾け飛ぶのを感じた。
その瞬間…脳裏にありありと浮かんできたのは…そのお客様の笑顔と…話…。
ああ、そうだ。
あの人は…。
「ケルカロス国王陛下…」
私は…静かに言葉を紡ぐ。
「現状として…自らの足で、来ていただかねば、効果のない講座ばかり…。
ですが…国王陛下の御心労を察し、特別に…専用プログラムを作ろうかと思います」
「フィリー!!?」
ギリアムが…流石にびっくりして、私を見る。
まあ…いい大人が引きこもりやってるなら、ほっとけって言うような人だからなぁ。
衣食住の心配はないんだし…。
んで、国王陛下は…かなり目が輝いてらっしゃる。
「ただ…国王陛下と…周りの皆様の協力が不可欠であること…。
そして、効果が出るかどうかは、未知数である事…ご了承願いたいです」
「それは…わかっている。
心理療法士にも聞いたが、とかく精神の病というのは、長期戦になることもあるし、正解はないと言われた。
ただ…有名な力のある人間を雇っても、ケイルクスが部屋から出てこんのだ。
藁にも縋りたい…」
ああ。本当にお困りだね。
唯一の…跡取りだしなぁ…。娘がもう少しマトモなら、この心労も軽くて済むだろうに…。
「ただでウチの妻を、こき使いませんよね?」
ちょっと――――――――――――っ!!
有難いけど、今は止めて!!
今回の事は、成功するかどうか、本当にわからない!!
勝率が…読めないんだからさぁ!!
「もちろんだ。望みを言え」
私は…少しフリーズしたが、そうしてても意味がない。
んで、考えすぎてスパーク気味の私の頭は、割とすぐに動いた。
「まず…私への報酬は、事が無事に済みましたら…の、成果報酬にしてください。
ですが先ほど申しました通り、国王陛下にご協力していただきたいことがございます」
「なんだ?」
「実は…王太子殿下に今回、表立って護衛を付けるのは、よろしくないと思われます。
ですので…あくまで偶然を装った参加者…と、言う事にして近衛騎士団の手練れを一人、王太子殿下のそばにつけていただきたい…。私の指定する人間を」
「それならたやすい事だ。して、だれだ?」
「それは…」
それでお前は誰だ―――――――――――――――――――――――――っ!!」
いくつもの質問をまくし立て、怒鳴っているのは…お久しぶりのケイルクスである。
「えっと…ボクは、リッケルト・ステンロイド…です。はい」
そしてケイルクスと相対しているのは…リッケルト・ステンロイド男爵…。
こちらもかなりお久しぶり…の、皆さまご存じ、フィリーの父親だ。
「……」
ケイルクスは…暫く頭がストップしたようだが、やがて動き出すと…。
「オルフィリア公爵夫人の父親ぁ――――――――――――――っ!!」
指をさしつつ、のけぞる…。
ビックリしたのだろうが、普通は失礼だ!!と、怒鳴りそうなものだ。
もちろん王族ゆえ、それは出来ない…というより、リッケルトがあまり気にしないのだろう。
のほほんとして、頭をポリポリかいている。
「…って言うか、本当にここどこだよ!!」
「いや…ボクもわかりません…」
「はあぁ?」
ここ…街中などでは、当然ない。
見渡す限りの、豊かな大自然…。
そう言えば、大層聞こえはいいが、要するに人っ子一人いない、山だか森だかのまん真ん中に、
ケイルクスとリッケルトの2人だけ…。
辺り一面、木々が生い茂り、ちょっと中を見渡そうとすると、昼なのに夜のように暗い…。
2人がいる場所は…一応窪地になっていて、草がちょぼちょぼ生えているだけだが、右に行っても
左に行っても…どこに行っても、同じ…。
下手に動き回れば…迷う事は定石と言える大自然の中である…。
そんな中に、何とも異物感たっぷりのコンビが混ざり込む…。
これ正に、世の不思議と言わずして、何と言おう。
「ボク…家で寝てたはずなんですけど…気が付いたら、ここにいたんですよ」
「え…。オレと同じかよ…」
何かしらの陰謀をヒシヒシと感じずにはいられなかったが…さりとて。
今…。
この現状を何とか出来ねば、野垂れ死には確実だ。
ケイルクスは…ため息をつきつつ、空を仰ぎ見る。
(オレは…とうとう父上に、見放されたのかな…)
王太子である自分が…攫われるような状況なら、護衛も何もなかったという事だろう。
そもそも…友人と呼べた人間だって、色々やらかしてからは、殆ど疎遠になってしまった。
助けは来るのか…助けて…くれる人がいるのか…。
「あ…ここに何かありますよ~。何でしょうねぇ~」
そんなケイルクスのくっら~い心の内に、無遠慮な石を投げ入れるかの如く、リッケルトがゆるゆるの声を上げる。
「お前なぁ!!空気っつうもんを、少しは…って、わ―――――――――――――――っ!!」
なぜケイルクスが叫んだか…。
それはリッケルトが持ち上げた鞄に…骸骨がついていたから…。
「お、お前っ!!そ、それ、し、死体、死体ぃぃぃ―――――――――っ!!」
腰を抜かす勢いで、後ずさるケイルクス…。
「あ…本当だ…。遭難したのかな…。それとも…戦争とかで…」
リッケルトは…以外と落ち着いている。
気弱でビビりな人間が…何故落ち着いているのか…。
そもそも…なぜこんなミスマッチ&アンバランスなコンビが、誕生した上、人1人いない大自然の中にいるのか…。
事の発端は…このミスマッチ&アンバランスコンビが、大自然の中で目を覚ます…3日ほど前に遡る…。
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この日…ファルメニウス公爵家では、ちょっと緊張が走っていた。
なぜかって?
ケルカロス国王陛下がさ…内密に、私とギリアムに会いたいって、言ってきたんだよね。
それで…王族の馬車じゃなくて、カモフラージュした馬車で…今日、ご登場ってわけ。
応接室に通したケルカロス国王陛下は…1人だった。
もちろん道々の護衛はいたが、屋敷の中に入ることは許さなかった。
「単刀直入に言う。
お前が裏で支援している、心理療法プログラム講座に…ウチのケイルクスを参加させてくれ」
一息に言うと、深呼吸だかため息だか…わからない長~い呼気を吐き出した。
ギリアムは…ちょっとあっけにとられたのか、一瞬だけ止まったが、
「あれは…私というより、大部分がフィリーの案なんですがねぇ…」
……よけーなことは、言わんでよい!!
「そうなのか!!では、頼む!!オルフィリア公爵夫人!!」
いや…ちょっと待とうよ…。
「あの…失礼ながら、国王陛下…。
あのプログラムは…自ら進んでこないと、意味があまりないのですが…」
現代日本の精神科だってそう。
本人が病気だって認めなければ、どんなに治療しても、意味が無いんだよ…。
ああ…私の言葉に…消沈してしまった…。
でも…こればっかりはどうしようもないよ…。
私は魔法使いじゃない。単なる元娼婦じゃ。
「……ケイルクス王太子殿下は、そんなによろしくないのですか?」
ギリアムも…流石にほっとけないみたいで、ざっくばらんに聞いている。
「実はな…」
ケイルクスは…キンラク商会を巻き返そうと、頑張っていたらしい。
しかし…最近暖かくなったため、サバクアシで作った衣類を外に出したら…。
それが見事に、カビだらけ。
これ…実は随分と前に、私が予想していたことが…的中したんだ。
サバクアシってのは、乾燥地帯で育つ。ゆえに…保水能力が非常に高い。
水をやると成長速度が上がるのは、この性質ゆえだ。
しかも…悪い事にサバクアシを乾燥させると、この保水力が上がっちまうらしい。
そして…現代日本のような、エアコンはこの世界にない。
大抵薪ストーブか暖炉。
火を燃やすと…水蒸気が発生するんだよ。
おまけに、熱源を利用するために、ストーブの上で煮炊きするのも、当たり前の世界。
結果出た水蒸気は…サバクアシに吸収され、重ねてしまってあったものだから、見事なカビの温床となった…。
そして御多分に漏れず、服だけでなく、寝具や小物類も…こぞってカビた。
これで…サバクアシで作ったものは、全て不良品扱いを受け、メインの取引が全てなくなったキンラク商会は…事実上、解体を余儀なくされたらしい。
……というか、ジョノァドの事があって、一度解体したがっていた国王陛下が、半ば強引に押し通したらしいのよ…うん。
それ自体は英断だったと、私は思うんだけどね。
ジョノァドは…協力していた名目で、色々言ってきたわけだから、サバクアシが使い物にならなくなったことで、逆にサバクアシを薦めたジョノァドを締め出せたらしいから。
でも…かなり強引にやっちまったから、ケイルクスは完全に心を閉ざして、部屋から出てこなくなったらしい…。
そもそもケイルクスが変になり出したのは、評議会のあたりだからだ。
もちろん王宮には王宮医が常駐しているし、他の選りすぐりの医師やカウンセラーだって呼んだ。
そして半年以上治療したが…結果は、良くなるどころか酷くなったそうな…。
困り果てたケルカロス国王陛下は…巷で非常に人気かつ効果がある…という、エリザ伯爵夫人の講座の存在を知り、打診したらしい。
そしたら、裏にファルメニウス公爵家がついていて、プログラムの主な内容は、かなり参考にさせて貰ったから、そちらに聞いた方が…だってさ。
……エリザ伯爵夫人…押し付けたね?
まあ、気持ちはわかるし、色々忙しく動いてくれているから、許すけどさ…。
「今年の建国記念パーティーまで…2ヵ月ほどになっているだろう?
サバクアシとキンラク商会の事が無ければ…横に並ぶ程度は出来たのだろうが、今はそれも無理そうなのだ…」
本当に、頭が痛そうだ…。
頬がこけちゃってるし、顔色も悪い。
まあ…建国記念パーティーは、いわば王家が健在であると示すものだ。
病欠で致し方ない事も、過去あるっちゃあるが…。
サバクアシとキンラク商会の事は、もう貴族にはほぼ知れ渡っちまったから、欠席すれば…何が理由かなんて、火を見るより明らか。
王家の威信が急下降するのは、致し方なしになってしまう。
「それに…今年の建国記念パーティーは…」
さらに声を細めつつ、
「お忍びで…来たいと言う、他国の王侯貴族が多くてな…」
はいぃ~?
「それはまた、なんで…」
「例の…ティタノ陛下の歓待パーティーの件だ。
温泉…と言ったか?お前たちが開発した施設は…。
そこでの花火…というヤツを、ティタノ陛下が早速使って…。随分と話題になったのだ。
うちの建国記念パーティーでも、専用のを上げてくれるのだろう?
それを見たいと…」
あれままま…。人気が出すぎるのも…考えモノだ。
「建国記念パーティーに他の王侯貴族が参加したいと言うのは、いい事だが…」
そう、建国記念パーティーは、王家の力を示す場だ。
他の国の王族が参加したい…と言うのは、それだけその国と懇意にしたいと思っているから。
「それだけに王太子が不在ではな…」
そうだよね…。
噂が外国まで飛び火しちまう。
だからって…断ったりしたら、それこそ失礼だし…。
経済効果だって、だだ下がりになるし…。
私は…少し考えた…。
ケイルクスは…バカ王女よりは、もともとまともな人間だ。
復活してくれさえすれば…けっこうこちらの味方に…なってくれるかもしれない。
ジョノァドを…何とかするための、強力な武器になるかも…。
折角…前回でっかい枝葉をぶっ潰して、今…落ち目なんだから、一気に攻めないと!!
私は…前世の娼婦時代の記憶を…脳みそフル回転で、たどっていた。
あああああ!!こういう時は、ギリアムの脳みそが羨ましい!!
私が探りあてたかったのは…ズバリ精神病を患っていたお客様だ。
かなりの数…いたんだよ。
現代日本じゃ…けっこうな人数が、精神病を患っていた。
生活習慣病レベルでだったと思う。
もちろん…こっちから聞いたりなんかしない。
でも…喋ってくる人はいたし、確実にそうだと…なんとなく勘でわかる人もいた。
その中で…確か…笑い話として…話してくれた人がいた…。
自分が…長い年月引きこもりをやっていて…でも…復活できたんだよ…って、言っていた…。
復活できたきっかけ…確か…。
私は…脳内で何かが弾け飛ぶのを感じた。
その瞬間…脳裏にありありと浮かんできたのは…そのお客様の笑顔と…話…。
ああ、そうだ。
あの人は…。
「ケルカロス国王陛下…」
私は…静かに言葉を紡ぐ。
「現状として…自らの足で、来ていただかねば、効果のない講座ばかり…。
ですが…国王陛下の御心労を察し、特別に…専用プログラムを作ろうかと思います」
「フィリー!!?」
ギリアムが…流石にびっくりして、私を見る。
まあ…いい大人が引きこもりやってるなら、ほっとけって言うような人だからなぁ。
衣食住の心配はないんだし…。
んで、国王陛下は…かなり目が輝いてらっしゃる。
「ただ…国王陛下と…周りの皆様の協力が不可欠であること…。
そして、効果が出るかどうかは、未知数である事…ご了承願いたいです」
「それは…わかっている。
心理療法士にも聞いたが、とかく精神の病というのは、長期戦になることもあるし、正解はないと言われた。
ただ…有名な力のある人間を雇っても、ケイルクスが部屋から出てこんのだ。
藁にも縋りたい…」
ああ。本当にお困りだね。
唯一の…跡取りだしなぁ…。娘がもう少しマトモなら、この心労も軽くて済むだろうに…。
「ただでウチの妻を、こき使いませんよね?」
ちょっと――――――――――――っ!!
有難いけど、今は止めて!!
今回の事は、成功するかどうか、本当にわからない!!
勝率が…読めないんだからさぁ!!
「もちろんだ。望みを言え」
私は…少しフリーズしたが、そうしてても意味がない。
んで、考えすぎてスパーク気味の私の頭は、割とすぐに動いた。
「まず…私への報酬は、事が無事に済みましたら…の、成果報酬にしてください。
ですが先ほど申しました通り、国王陛下にご協力していただきたいことがございます」
「なんだ?」
「実は…王太子殿下に今回、表立って護衛を付けるのは、よろしくないと思われます。
ですので…あくまで偶然を装った参加者…と、言う事にして近衛騎士団の手練れを一人、王太子殿下のそばにつけていただきたい…。私の指定する人間を」
「それならたやすい事だ。して、だれだ?」
「それは…」
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