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第6章 暗雲
5 ルイザーク伯爵邸でのパーティーの後…2
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時間は戻って、ギリアムがルイザーク邸を出た直後。
「助かった…フォルト。
予定より早く来てくれて…」
「いえいえ。
ギリアム様の帰りたいタイミングまで、私は待てばよい身で
ございますので」
ギリアムは顔を伏せ、盛大にため息をつく。
「やはり両殿下は相変わらずですか?」
「…相変わらずどころか、酷くなっている気しかしない…」
「それはそれは…」
今度はフォルトがため息をつく。
「あと、フェイラ嬢なのだが…」
「はい」
「今後、私に好意を持っている令嬢用の対応をしてくれ」
「…わかりました」
ギリアムに好意を持っている令嬢用の対応
①個別の手紙のやり取りなし
②贈り物のやり取りなし
③個別の訪問は一切拒否
以上を踏まえ、どうしても必要なら家族を通すことを徹底する。
「恩師の家族であるだけなら、まだ優しくできたのだが…」
「致し方ありません。
ルイーズ嬢はどうなのです?」
「イマイチわからん…。
そもそも私にあまり触れてこないし、もともと口数が少ない
からな…、まあ、様子見だ」
ここまで言ったギリアムは、天を仰ぎ見る。
「私がいない時の…フィリーの様子はどうだ?」
するとフォルトの固まった表情が、ふっと柔らかくなり、
「一言で申し上げるなら…素晴らしいです」
「そうか…」
ギリアムの表情も柔らかくなる。
「フィリー様が当家に慣れたら、少しずつ促していこうと思っていた
ことを、ご自身で…しかも初日から習いたいと言い出されたのには
さすがに驚きましたが…」
一呼吸置く。
「非常にまじめに取り組んで、頑張ってらっしゃる。
そして人を見下すことを一切せず、使用人ともすぐ打ち解けて、
仲良くなられました。
これはご両親も同じでございます」
フィリーはエッチ至上主義ではあるが、自身で仕事!と位置付けた
ものには、真面目に取り組むし、勤勉なのだ。
まあ、日本人ならではの気質ともいえる。
「まあ…フィリーは優しいから…」
「ただその…喜ばしい事ではございますが、ギリアム様とその…大変
仲睦まじくしていらっしゃるので…勉強はあまり頑張りすぎては…と
言葉を濁して申し上げたのですが…」
「オフッ、ゴホッ」
ギリアムが思わずせき込む。
「フィリー様は本当に具合が悪くなれば、しっかり言うし休むので
心配ご無用…と。
縁あってギリアム様のもとに来て、自分でここにいると決めたの
だから、できるだけ迷惑をかけないようにしたいのです…と
おっしゃいました」
「迷惑だなんて…私はフィリーが傍にいてくれるだけで、幸せ
なのに…」
「あとはまあ…これはまだギリアム様には内緒にしてくれと言われて
いるのですが…」
「何か問題でも?」
不安そうなギリアム。
「まず、フィリー様もご両親もお金をほぼ使いません」
「…な、なに…?」
かなり予想外の答えだったらしく、声が素っ頓狂になる。
「欲しいものは好きに買ってよいとギリアム様から言付かっていると
伝えたのですが、いらないとハッキリ言われて…」
「な、なぜ?」
「まず、必要なものはギリアム様がすでに用意してくださったもので
十分だと…」
「そ、そうか…」
「ただ…それでもどうしてもお金を使わなければならないなら…。
困っている人を助けるために使いたいと」
「!!」
「ご両親も一緒になって、三度のドン底経験を活かしたいと、色々な
計画を練っておられます。
公爵家でもともとやっている慈善事業とは被らない形で、本格的に
企画書ができたら、ギリアム様に言いたいと」
「そうか…」
何とも温かい気持ちになる。
「ギリアム様を助けてくださったのが、フィリー様で本当に良かった
…いや、フィリー様だからこそ、あんな状態のギリアム様を助けて
くださったのですね…」
「…フォルト…私は…フィリーが許してくれるなら、すぐにでも
結婚したい…」
「わかっております。
使用人たちも、フィリー様が奥様になられるのを心待ちにしており
ます。
しかしそれは、現実的ではありますまい」
「…せめて来月の建国記念パーティーで、婚約者として発表できれ
ば…」
「それとなくお話してみますが…」
「頼む!!くれぐれも無理せずにな…」
そんなことを話しているうちに、馬車は公爵家についた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま、フィリー」
フィリーを胸に抱き、心から安堵するギリアム。
「その…フィリー…」
「はい?」
「夫婦の寝室にすぐ行きたいのだが…いいか?」
「もちろん!」
屈託ないフィリーの笑顔にギリアムの胸は一層熱くなる。
夫婦の寝室に移り、ベッドに腰かけ口づけを交わしながら
しばしイチャイチャしていたのだが、
「ギリアム?」
ギリアムの様子がおかしいことに、フィリーが気付く。
「ん…すまない…ちょっと疲れが…」
その言葉とともに、ベッドに崩れ落ちるギリアム。
だがフィリーはそれほどあわてなかった。
前世からの経験と勘で、ギリアムに何が起こったのか、
見当がついたからだ。
フィリーはフォルトを呼んだ。
「どうされました?」
「主治医を呼んでください」
「!!?ギリアム様に何か?」
「命に別状はないと思うのですが、念のため確認したいことが
あります。
あと…急いで調べていただきたいことが…」
話を聞いた後、去っていくフォルトを見送り、フィリーは
ギリアムの元に戻る。
静かな寝息を立てるギリアムの頭をなでつつ、
「ホンット…人の悪事ってな、どこ行っても変わんないねぇ…」
フィリーはポツリと、つぶやいた。
「助かった…フォルト。
予定より早く来てくれて…」
「いえいえ。
ギリアム様の帰りたいタイミングまで、私は待てばよい身で
ございますので」
ギリアムは顔を伏せ、盛大にため息をつく。
「やはり両殿下は相変わらずですか?」
「…相変わらずどころか、酷くなっている気しかしない…」
「それはそれは…」
今度はフォルトがため息をつく。
「あと、フェイラ嬢なのだが…」
「はい」
「今後、私に好意を持っている令嬢用の対応をしてくれ」
「…わかりました」
ギリアムに好意を持っている令嬢用の対応
①個別の手紙のやり取りなし
②贈り物のやり取りなし
③個別の訪問は一切拒否
以上を踏まえ、どうしても必要なら家族を通すことを徹底する。
「恩師の家族であるだけなら、まだ優しくできたのだが…」
「致し方ありません。
ルイーズ嬢はどうなのです?」
「イマイチわからん…。
そもそも私にあまり触れてこないし、もともと口数が少ない
からな…、まあ、様子見だ」
ここまで言ったギリアムは、天を仰ぎ見る。
「私がいない時の…フィリーの様子はどうだ?」
するとフォルトの固まった表情が、ふっと柔らかくなり、
「一言で申し上げるなら…素晴らしいです」
「そうか…」
ギリアムの表情も柔らかくなる。
「フィリー様が当家に慣れたら、少しずつ促していこうと思っていた
ことを、ご自身で…しかも初日から習いたいと言い出されたのには
さすがに驚きましたが…」
一呼吸置く。
「非常にまじめに取り組んで、頑張ってらっしゃる。
そして人を見下すことを一切せず、使用人ともすぐ打ち解けて、
仲良くなられました。
これはご両親も同じでございます」
フィリーはエッチ至上主義ではあるが、自身で仕事!と位置付けた
ものには、真面目に取り組むし、勤勉なのだ。
まあ、日本人ならではの気質ともいえる。
「まあ…フィリーは優しいから…」
「ただその…喜ばしい事ではございますが、ギリアム様とその…大変
仲睦まじくしていらっしゃるので…勉強はあまり頑張りすぎては…と
言葉を濁して申し上げたのですが…」
「オフッ、ゴホッ」
ギリアムが思わずせき込む。
「フィリー様は本当に具合が悪くなれば、しっかり言うし休むので
心配ご無用…と。
縁あってギリアム様のもとに来て、自分でここにいると決めたの
だから、できるだけ迷惑をかけないようにしたいのです…と
おっしゃいました」
「迷惑だなんて…私はフィリーが傍にいてくれるだけで、幸せ
なのに…」
「あとはまあ…これはまだギリアム様には内緒にしてくれと言われて
いるのですが…」
「何か問題でも?」
不安そうなギリアム。
「まず、フィリー様もご両親もお金をほぼ使いません」
「…な、なに…?」
かなり予想外の答えだったらしく、声が素っ頓狂になる。
「欲しいものは好きに買ってよいとギリアム様から言付かっていると
伝えたのですが、いらないとハッキリ言われて…」
「な、なぜ?」
「まず、必要なものはギリアム様がすでに用意してくださったもので
十分だと…」
「そ、そうか…」
「ただ…それでもどうしてもお金を使わなければならないなら…。
困っている人を助けるために使いたいと」
「!!」
「ご両親も一緒になって、三度のドン底経験を活かしたいと、色々な
計画を練っておられます。
公爵家でもともとやっている慈善事業とは被らない形で、本格的に
企画書ができたら、ギリアム様に言いたいと」
「そうか…」
何とも温かい気持ちになる。
「ギリアム様を助けてくださったのが、フィリー様で本当に良かった
…いや、フィリー様だからこそ、あんな状態のギリアム様を助けて
くださったのですね…」
「…フォルト…私は…フィリーが許してくれるなら、すぐにでも
結婚したい…」
「わかっております。
使用人たちも、フィリー様が奥様になられるのを心待ちにしており
ます。
しかしそれは、現実的ではありますまい」
「…せめて来月の建国記念パーティーで、婚約者として発表できれ
ば…」
「それとなくお話してみますが…」
「頼む!!くれぐれも無理せずにな…」
そんなことを話しているうちに、馬車は公爵家についた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま、フィリー」
フィリーを胸に抱き、心から安堵するギリアム。
「その…フィリー…」
「はい?」
「夫婦の寝室にすぐ行きたいのだが…いいか?」
「もちろん!」
屈託ないフィリーの笑顔にギリアムの胸は一層熱くなる。
夫婦の寝室に移り、ベッドに腰かけ口づけを交わしながら
しばしイチャイチャしていたのだが、
「ギリアム?」
ギリアムの様子がおかしいことに、フィリーが気付く。
「ん…すまない…ちょっと疲れが…」
その言葉とともに、ベッドに崩れ落ちるギリアム。
だがフィリーはそれほどあわてなかった。
前世からの経験と勘で、ギリアムに何が起こったのか、
見当がついたからだ。
フィリーはフォルトを呼んだ。
「どうされました?」
「主治医を呼んでください」
「!!?ギリアム様に何か?」
「命に別状はないと思うのですが、念のため確認したいことが
あります。
あと…急いで調べていただきたいことが…」
話を聞いた後、去っていくフォルトを見送り、フィリーは
ギリアムの元に戻る。
静かな寝息を立てるギリアムの頭をなでつつ、
「ホンット…人の悪事ってな、どこ行っても変わんないねぇ…」
フィリーはポツリと、つぶやいた。
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