ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

木野 キノ子

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第7章 決意

4 フォルトさんの優秀さったら…

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次の日…。
閉まる直前の、王宮総合受付に、フォルトさんの姿があった。

「ああよかった…間に合いましたか」

と言いつつ、あまり焦っている風ではないと言いたげに、にこやかに
書類を係りの者に渡す。

「おやこれは、フォルト卿。
何の書類ですか?」

「建国記念パーティーについて、少々変更がありまして…。
受領印お願いします」

「ハイハイ…と」

受領印が押される。
フォルトはすぐさま控えを懐に収めた。

「え~っと、内容は…」

オイオイ…、内容確認してから受領印押せよと思うが、これはフォルト
さんが書類不備をほぼ作らない人間であるという実績を、今まで作って
きた賜物である。

「え?ええ!!ちょっ…フォルト卿!!
こ…これ!!これはっ!!」

と、受付の人間が顔を上げた時にはすでに遅い。
フォルトは全速力で立ち去り、はるか彼方にいた。

実はフォルトさん、元王立騎士団員で、今も欠かさず鍛えている。
つまり、下手な若者よりよっぽど体力も運動神経もあるということ。

フォルトさんは一切振り返ることをせず、すぐさま馬車に飛び乗り、
公爵邸へと帰ってしまいましたとさ。

そして公爵邸。

「無事、変更の書類は提出してまいりました」

「よくやった、フォルト…。捕まって問い詰められるかと内心思って
いたのだが…」

「ははは…。
それは私を見くびりすぎです、ギリアム様。
私は今まで書類不備を一切出していない実績がございますし、
何より終了間際は、皆さん帰りたくてソワソワしておりますから」

う~む。
お役所仕事ってな、どこの時代も世界も変わらんようじゃのお…。

私はエマさんが入れてくれたお茶を飲みつつ、二人の会話を聞いて
いた。

「これから本当に、騒がしくなりますねぇ」

エマさん…本当に楽しそうだ…。
むう…、ん、そういえば…。

「ギリアム様に婚約者ができたという事実は、どのぐらいで皆さんに
知れ渡りますかねぇ?」

なんせ変更の書類を提出した時点ですでに夕刻。
いくら騒ぎになるとはいえ…。

「おそらく名だたる家門には、今夜中には…」

「え…そんなに早いの?」

びっくーりー。
この時代…つーか世界、スマホはもちろん電話などの通信設備は
一切ない。

「そもそも建国記念パーティーは、この国一の規模を誇ります。
ですので、普段王都に出てこない、地方の貴族もこのパーティー
だけは参加するのが通例。
実際、このパーティーでデビュタントするご令嬢は多いですし」

ああつまり…嫁とりっつーか、合コンやお見合いパーティー的な
コンセプトも含まれているわけだ。

「だから地方の名門ほど、力を入れている節があり、一週間前
ともなれば、すでに王都のタウンハウスに入っているでしょう
から…」

マジか…。
予想以上にスゴイことになるな…こりゃ…。

そして翌朝。

「じゃあフィリー、パーティーまでの間、お迎えもいいからね」

夫婦の寝室で、キスをされながら言われる。
私は普段門の所まで、朝夕ギリアムのお見送りとお迎えをして
いる。

しかし今日、門の前にはすでに野次馬が出来上がっているため、
私の安全を配慮してだ。
スマホもねぇのに、皆さんどうやって昨日の今日の事実を知ったの
だろう…こわ!!

そんなことを考えていると、ギリアムが私を心配そうに見つめている
のが目に入る。
私は慌てて、

「はい!!習ったことを復習しつつ、おとなしくしています!!」

そんな私の答えと笑顔に安堵したのか、ギリアムは再度私にキスを
して、部屋を出て行った。

ギリアムが出て行ってしばらくのち、私がエマさんのスパルタ教育に
必死について行っていると、いよいよ門の前が騒がしくなっていた。
門の外で騒ぐ使者を、フォルトさんが相手している。

「予想はしていましたけど、すごいですね…。
大丈夫なんでしょうか…。
門前払いしていいような家門の馬車に見えませんが…」

馬車はどれも豪奢に飾り立てており、大きく家門の紋章を掲げて
いる。
一目で上位貴族の馬車だとわかる作りだ。

「平時ならば、相手を立てることもいたします。
しかし今はフィリー様の安全が最優先。
ギリアム様からも予約のない相手は、どこであっても門前払いせよ
とのご命令が正式に下っておりますので。
問題など何もございません」

エマさんはものすごく屹然と言い切った。

すげぇ!!!

「さあさ、フィリー様。
建国記念パーティーまであとわずか!!
ダンスのステップを練習いたしましょう!!」

ふへぇ~。

しかし致し方なし。

ヤるって決めたの、自分だし…。

「あ…そう言えば、注文していた靴って届いたの?」

はたと思い出す。
今回ドレスだけでなく、靴も特注させてもらった。

「はい、本日届きました。
しかしフィリー様…随分と変わった靴を注文なさいましたね。
どう言った用途か、今一つわかりかねるのですが…」

「あ~、それについては、舞踏会が終わったら話します。
まあ…色んな意味で秘密兵器だと思ってください」

多分敵の方が多い今回の舞踏会…あの靴はかなり役に立ってくれる
ハズ。

「承知いたしました」

う~ん。
私の言うことだと、本当に素直に聞いてくれるんだよね…。
ありがたいなぁ…。

「じゃあ、せっかく届いたんだから、さっそく履きたいです」

「わかりました。
では本日のステップは、その靴を履いて行いましょう」

そして届いた靴を確認する私。
ニヤリと笑う。

スゴイねぇ。
公爵家御用達の職人だから、腕は確かだと思っていたけど、
まさしく私の思い描いた通りのものを、見事に再現してくれた。

舞踏会…楽しみだな~。


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ある意味どうでもいいかもだが、この世界の重要書類の一例

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