ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

木野 キノ子

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第9章 決戦

3 テラスでの攻防

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フィリーの身長は155㎝と高いわけではない。
対して二人の令嬢は160越え+ヒールのためかなり身長差が
出来ていた。

そのうちの一人に腕を思い切り引っ張られれば、当然…。

「あ、あの…バランスが…」

そう言い、フィリーがよろける。

ただ、そこはフィリー。
この辺の動きは、彼女らの行動を見据え、計算済みだ。
その証拠に…。

「いっっ!!痛ああああああ!!」

フィリーの腕を掴んだ令嬢が、その場にうずくまり叫ぶ。

「どっ、どうしたの!!」

最初の一人と同じく、フィリーの腕を掴もうとした令嬢が駆け
寄る。

「あ、足が…足があぁ!!」

令嬢は足をおさえてうずくまったままだ。

「ちょっ!!足がどうしたの!!」

程よい具合に夜の帳がおり始めている時刻。
そしてドレスの裾は、足をすべて隠せるぐらい長いため、
駆け寄った令嬢には、何が起こっているかわからない。

そしてフィリーは、オロオロ表情のポーカーフェイスを崩さず、
心の中で、

(ったく、相手からの反撃も考えられねぇ小娘共が…、
誰に喧嘩売ってんだっての、ばーか)

「ちょっと、あなたたち!!
さっさとそのチビをおさえなさい!!
何をやっているの!!」

一人おかんむりなレティア王女殿下。

「で、でも、王女殿下!!
こ、この子明らかに様子が…」

うずくまった令嬢はかなり青ざめて脂汗をかいている。

「うるさいわね!!
あなた一人だけで何とかしなさい!!」

(…話に聞いちゃーいたが、ホントしょーもねーな、この王女)

するともう一人がひきつった顔をフィリーに向け、

「あなたはとにかくじっとしてなさい!!」

と、タックルまがいに腰にしがみつこうとしたものだから、

「え、え、え?」

などとうろたえたふりをするフィリーに、ひらりときれいに
かわされた挙句、

「ふぎゃっ!!」

地面に顔から突っ込んだ。

(お~お、綺麗に入ったもんだ)

実はフィリーがかわしたついでに、突っ込んできた令嬢の背中を
押し、勢いをつけておいたのだ。

(こーいう時は、監視カメラ無いのはありがてぇな)

「あなたたち!!
何を遊んでいるの!!」

レティア王女殿下は一人発狂まがいの声を出す。

(いや…二人とももう、行動できる状態じゃないの、見てわかん
ないかな~)

一人は足を抑えてうずくまる。
もう一人は顔を抑えたまま、立ち上がれずうめいている。

「あ、あなた一体何をしたのよ?」

「へ?私は何も…」

レティア王女殿下に詰め寄られたフィリーは、涙目ぶりっ子のフリ。

(わりいな、小娘ども。
あたしゃこんな修羅場、経験しつくしてるからさ~)

そんな時だ。
テラスの扉が再度空いたのは…。

ギリアムだ。

(ありゃ…)

フィリーには分かった。
一見すると普通に見えるギリアムの表情の裏が…明らかに怒っていると。

(どこから聞いてたんやろ?
まあ、最初から話すけどね)

レティア王女殿下はギリアムの姿を見ると少々驚いたようだが、すぐに
顔を笑顔で整えた。
おそらくギリアムを引き留めるよう、配下に命じていたのだろうが、
難しいであろうことは、わかっていたようだ。

「まあ、ギリアム!会いたかったわ」

と、抱き着くような勢いで寄って行ったが、ギリアムにさりげなく…
華麗にかわされた。
ヒールの高い靴を履いていたようで、勢い止まらずよろめきなが
あわや転びそうになるのを、何とか耐えたようだった。

(ヒールの高い靴って、カッコよく見せるには最適なんだけど、急な動きに
対応しずらいんだよね~)

ギリアムはフィリーのもとに行き、手を取る。

「お待たせしました。
しかし…レティア王女殿下といらっしゃるとは、驚きましたね」

ここからはフィリーのターンだ。

「それが…気が付いたら中に入っていらしていて…」

「なんですって?」

ギリアムはレティア王女の方を見るが、レティア王女はまだ余裕で、

「あら…何をおっしゃるのです?オルフィリア嬢…。
私はしっかりとお断りして入りましたよ。
ねえ…」

二人の令嬢の方を向くと、令嬢たちは静かにうなずいた。
もっとも二人はようやっと痛みが引いてきたようだが、依然苦し
そうだ。
しかしそんなことにはお構いなしのレティア王女は勝ち誇った
ように、ギリアムに

「そんなことより…先ほどのダンスは見事でしたわ、ギリアム…。
今日は当然私と踊ってくださるのよね?」

しかしそんなレティア王女に目もくれず、

「他には何がありましたか?」

と、フィリーに聞く。
フィリーは王女及び令嬢たちとの一連のやり取りを事細かに報告
した。

「なるほど…よくわかりました。
これでここ5年程のレティア王女殿下の行動に納得がいきました」

「え…?」

余裕がわずかに消える。

「私…このギリアム・アウススト・ファルメニウスを下賤と思って
らっしゃったのですね。
それならば、レティア王女殿下の行動もなるほどと思います」

「な…何を言っているの?ギリアム。
私があなたを、下賤などと思っているわけがないでしょう!」

「いいえ。
私の婚約者を下賤と言うからには、それを選んだ私のことも下賤と
言っているのと同じです」

レティア王女の余裕がどんどん消えていく。

「わ、私はそんなことは言っておりません!!
すべてオルフィリア嬢の妄想です!!
私を陥れようとしているのです!!
私とその女とどちらを信じるのですか!!」

(……………なんだ、真正のばかか。
だったら相手するのかったるいな、ホント)

勿論フィリーはそんな内心など微塵も見せず、ギリアムの影に
隠れているのだが。

するとギリアムは、さも不思議そうな顔をして、

「婚約者である、フィリーに決まってるじゃないですか」

当然と言わんばかりに、キッパリ答える。

レティア王女の顔に、もはや余裕はない。

「こ、こちらには証人がいます!!
この令嬢二人は私が入ってきてからずっとおりました。
すべてを見聞きしています!!」

すると令嬢二人は

「すべてレティア王女殿下の言う通りでございます、公爵閣下…」

レティア王女は再び勝ち誇ったような笑みになり、

「お聞きになりました?ギリアム。
随分と性悪な女に捕まってしまったようですが…。
もう大丈夫ですよ。
私は少々の失敗など気にしませんし…」

(うん。
だいぶ頭いかれてるわ。
取り巻きなんてアンタに逆らえるわけねーんだから、証拠になんね
っての!!
真正のばかの上に、頭にウジ湧いてるってことで、決定な)

フィリーが能面の笑顔を崩さずに、そんなことを思っていると、

「失礼します。
入ってよろしいですか?」

レティア王女が何か言う前に、

「どうぞ!」

ギリアムが答える。
入ってきたのはローカス卿、その後ろにケイルクス王太子殿下、
ベンズ卿がいる。

するとレティア王女は一気に顔がほぐれて、

「まあ、お兄様!
ちょうど良い所に来て下さいましたわー。
今この性悪女の罪について」

などと嬉しそうに語りだすが、

「黙れ!!」

非常に怒った顔をした兄に一蹴される。

「お…お兄様…」

困惑するレティア王女を捨て置き、ギリアムとフィリーの前に
ケイルクス王太子が歩み寄る。
すかさずフィリーは

「お初にお目にかかります、ケイルクス王太子殿下。
オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢がご挨拶申し上げます」

「オルフィリア嬢…妹が大変な迷惑をかけたようだね…」

「な!!私は迷惑など…」

「お前さー」

ケイルクス王太子はレティア王女に向き直る。

「あれだけ問題を起こしてるお前に、父上が監視をつけていない
と思ったのか?」

「……え?」

一瞬の間を置き、一気に青くなるレティア王女。

「お前の行動は、ローカス卿とベンズ卿が最初から最後まで
逐一見張るように、父上から直々に命じられてるんだ」

もう真っ青という表現が正しいレティア王女に見向きもせず

「ローカス卿…最初から話してくれ」

ケイルクス王太子殿下に言われ、ローカス卿は静かに前に出た。
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