ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

木野 キノ子

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第10章 信念

3 フィリー、王立騎士団へゆく

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それから一週間は目まぐるしかった。

お茶会にまつわる、様々な準備に追われたし、別件ですでに
引き受けてしまったことも、手を抜くわけにはいかなかった。

そして建国記念パーティーより2週間後、私は5月の半ばに似合う
新緑をイメージした、緑と白ベースのドレスに身を包み、
ギリアムと一緒に馬車に乗った。

本日は、王立騎士団の本部に向かう。

ついた瞬間…かなりの歓迎ムードだった。

団長のニョーボになる予定だから、少しわかるが、それにしても
…と思いギリアムに聞けば、どうもテオルド卿が建国記念パーティー
での例のテラスの一件を持ち出し、私を褒めちぎっていたのが
原因では、とのこと。

なるほど!!

やっぱ、勝負に出て良かったわ~。

んで、通された大広間。

中にはテオルド卿と師団長5人、そして騎士団の面々が。
一般的な挨拶をし、歓談タイムスタート。

最初はやっぱりギリアムと私の出会いを聞かれた。

私とギリアムは10年以上前に知り合い、10日間ほど遊んだ。

ギリアムはその時、私に一目惚れしたそう。

だが私は親の都合で、急遽その場を離れなければならなくなり、
いなくなった。

ギリアムは私を探したが、本名を知らなかったので、探せなかった。

そして最近再会して、意気投合した…という感じで話した。

ギリアムの病気や、当時の使用人の怠慢などについては、軽々しく
話さない方がよいと、私が止めた。

公爵家の醜聞であることは、紛れもない事実だし、フォルトや
エマが何か言われるのは、とても嫌だと思ったから。

ちなみにフォルトやエマ以外の使用人は、当時とはすべて挿げ
替わっている。

ギリアムもフォルトもエマも気にしないと言ったが、何より相手が
ギリアムでなくても同じことをした私としては、ギリアムだから
やったなどと言われたくないといい、3人を説得した。

もちろん、その時の状況に応じて、必要と判断したら言うのは
構わないと言ってある。

「それじゃ団長は…そんな昔からオルフィリア嬢のことを…」

リグルド卿は複雑そうな表情を浮かべている。

「ああ、私の両親の人柄は君らも知っていると思うが…。
当時私はそのことでだいぶ苦しんでいてね…。
フィリーはそんな私を、いつも癒してくれた」

なるほど~、という顔になる皆さま。

「あ、オルフィリア嬢!!
うちの母が、またお母様と一緒にお茶会に参加してくださいって
言っていました。
招待状届いてませんか?」

ヴァッヘン卿は母から必ず聞いて来いと言われたのだろう。

「申し訳ありません…。
ただ今私には似たようなお申し込みが殺到しておりまして…。
全てに眼を通すことが、できずにいます。
母をご存じなら、母にあてていただいた方が確実かと…」

「わかりましたー。
母に言っときます」

のほほんとした人って聞いてたけど、その通りやな。
まあ、やり手である上でってことだろうけど。

ここで、

「はーい、皆さん。
少々お静かに~~~~!!」

と言ってきたのはレオニール卿だ。
お調子者なところがあるよって聞いてる。

「今から団長に、婚約者殿へのあふれんばかりの愛を語って
いただきま~す」

おりょ、そんなカリキュラムあったの?…と思ったが、
レオニール卿のにたつきぶりから見て、どうやら即興だ。
ギリアムには隠していたものと思われる。

「おや、いいのかい?
そんなことを言われては、いくらでも語ってしまうよ、私は」

ギリアムはとってもニコニコしている。

「もっちろん!!
いくらでも語ってくださいよ~」

レオニール卿が焚きつける。

「では失礼して…」

ギリアムは私の前に跪き、私の手を取る。
そして言葉を紡ぎ始めた。

――――――2時間後…。

実はですね、私…。

今日のお披露目に対し、ギリアムに一つお願いしていたことが
あったのですよ。

何かというとですね、もっっのすごく仲睦まじい姿を見せてほしい
と…皆さまから苦笑いが出るくらいに…と。

ギリアムめっちゃ嬉しそうに、わかったって言ってくれたんですよ。

…で、現在の皆様方の状態はですねぇ…

メダマドコー!!!

です、はい。

え?なんでかって?

ギリアムが語りだした私への愛の言葉がですねぇ…2時間以上
たった今も終わる気配がないからですよ。

しかもですよ。

古今東西の愛を歌った詩を自分の中で消化し、余すことなく自分流
にアレンジした、吟遊詩人顔負けのくっさいセリフがこれでも
かってぐらいポンポン飛び出す飛び出す…。

ギリアムの普段のキャラからは、到底そーぞーもできないでしょう
ねー、うん。

そりゃ、メダマドコーになるわぁ…。

しかしそろそろ昼。

騎士団の業務だってあるだろーし、私もお腹がすいてきた。

さりとて、流れるように出て来るギリアムの言葉を遮るのは
ムズイ!!

よし!!

あの手で行こう!!

私はギリアムの頬にそっと手を添え、思いっきり勢いをつけて、
唇を重ねる。

「……」

よっしゃ!!
言葉が止まった~。

「ギリアム様」

唇を離すと同時に、言葉を紡ぐ。

「もうお昼ですよ。
中庭の花を見ながら、お食事ご一緒するお約束でしたよね」

にこやかに言えば、

「おや、もうそんな時間ですか。
まだまだ語りたいところですが、この辺にしておきましょう」

などと言い、私を連れてさっそうと皆のもとを後にするのだった。

んで、ちょっとたったころの大広間は…。

「た…助かった~~~」

ほぼ全員が、魂が抜けたような顔で力なくうずくまっていた。

「オレは夜中まで、あれを聞かされる覚悟をした(ガイツ)」

「冗談じゃなく、そんなカンジだったよね…(ヴァッヘン)」

「レオニール卿!!もう少し考えてくれよ!!(リグルド)」

「うるせーな!!じゃオメー想像できたか!!
団長の口から長々と!あんなセリフが出るってよ――――!!」

「怒鳴るな!!
ただでさえ痛い頭に響く…(デイビス)」

そしてまた全員がその場に突っ伏し、しばらく死体のように
動かなくなるのだった…。
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