58 / 71
第10章 信念
3 フィリー、王立騎士団へゆく
しおりを挟む
それから一週間は目まぐるしかった。
お茶会にまつわる、様々な準備に追われたし、別件ですでに
引き受けてしまったことも、手を抜くわけにはいかなかった。
そして建国記念パーティーより2週間後、私は5月の半ばに似合う
新緑をイメージした、緑と白ベースのドレスに身を包み、
ギリアムと一緒に馬車に乗った。
本日は、王立騎士団の本部に向かう。
ついた瞬間…かなりの歓迎ムードだった。
団長のニョーボになる予定だから、少しわかるが、それにしても
…と思いギリアムに聞けば、どうもテオルド卿が建国記念パーティー
での例のテラスの一件を持ち出し、私を褒めちぎっていたのが
原因では、とのこと。
なるほど!!
やっぱ、勝負に出て良かったわ~。
んで、通された大広間。
中にはテオルド卿と師団長5人、そして騎士団の面々が。
一般的な挨拶をし、歓談タイムスタート。
最初はやっぱりギリアムと私の出会いを聞かれた。
私とギリアムは10年以上前に知り合い、10日間ほど遊んだ。
ギリアムはその時、私に一目惚れしたそう。
だが私は親の都合で、急遽その場を離れなければならなくなり、
いなくなった。
ギリアムは私を探したが、本名を知らなかったので、探せなかった。
そして最近再会して、意気投合した…という感じで話した。
ギリアムの病気や、当時の使用人の怠慢などについては、軽々しく
話さない方がよいと、私が止めた。
公爵家の醜聞であることは、紛れもない事実だし、フォルトや
エマが何か言われるのは、とても嫌だと思ったから。
ちなみにフォルトやエマ以外の使用人は、当時とはすべて挿げ
替わっている。
ギリアムもフォルトもエマも気にしないと言ったが、何より相手が
ギリアムでなくても同じことをした私としては、ギリアムだから
やったなどと言われたくないといい、3人を説得した。
もちろん、その時の状況に応じて、必要と判断したら言うのは
構わないと言ってある。
「それじゃ団長は…そんな昔からオルフィリア嬢のことを…」
リグルド卿は複雑そうな表情を浮かべている。
「ああ、私の両親の人柄は君らも知っていると思うが…。
当時私はそのことでだいぶ苦しんでいてね…。
フィリーはそんな私を、いつも癒してくれた」
なるほど~、という顔になる皆さま。
「あ、オルフィリア嬢!!
うちの母が、またお母様と一緒にお茶会に参加してくださいって
言っていました。
招待状届いてませんか?」
ヴァッヘン卿は母から必ず聞いて来いと言われたのだろう。
「申し訳ありません…。
ただ今私には似たようなお申し込みが殺到しておりまして…。
全てに眼を通すことが、できずにいます。
母をご存じなら、母にあてていただいた方が確実かと…」
「わかりましたー。
母に言っときます」
のほほんとした人って聞いてたけど、その通りやな。
まあ、やり手である上でってことだろうけど。
ここで、
「はーい、皆さん。
少々お静かに~~~~!!」
と言ってきたのはレオニール卿だ。
お調子者なところがあるよって聞いてる。
「今から団長に、婚約者殿へのあふれんばかりの愛を語って
いただきま~す」
おりょ、そんなカリキュラムあったの?…と思ったが、
レオニール卿のにたつきぶりから見て、どうやら即興だ。
ギリアムには隠していたものと思われる。
「おや、いいのかい?
そんなことを言われては、いくらでも語ってしまうよ、私は」
ギリアムはとってもニコニコしている。
「もっちろん!!
いくらでも語ってくださいよ~」
レオニール卿が焚きつける。
「では失礼して…」
ギリアムは私の前に跪き、私の手を取る。
そして言葉を紡ぎ始めた。
――――――2時間後…。
実はですね、私…。
今日のお披露目に対し、ギリアムに一つお願いしていたことが
あったのですよ。
何かというとですね、もっっのすごく仲睦まじい姿を見せてほしい
と…皆さまから苦笑いが出るくらいに…と。
ギリアムめっちゃ嬉しそうに、わかったって言ってくれたんですよ。
…で、現在の皆様方の状態はですねぇ…
メダマドコー!!!
です、はい。
え?なんでかって?
ギリアムが語りだした私への愛の言葉がですねぇ…2時間以上
たった今も終わる気配がないからですよ。
しかもですよ。
古今東西の愛を歌った詩を自分の中で消化し、余すことなく自分流
にアレンジした、吟遊詩人顔負けのくっさいセリフがこれでも
かってぐらいポンポン飛び出す飛び出す…。
ギリアムの普段のキャラからは、到底そーぞーもできないでしょう
ねー、うん。
そりゃ、メダマドコーになるわぁ…。
しかしそろそろ昼。
騎士団の業務だってあるだろーし、私もお腹がすいてきた。
さりとて、流れるように出て来るギリアムの言葉を遮るのは
ムズイ!!
よし!!
あの手で行こう!!
私はギリアムの頬にそっと手を添え、思いっきり勢いをつけて、
唇を重ねる。
「……」
よっしゃ!!
言葉が止まった~。
「ギリアム様」
唇を離すと同時に、言葉を紡ぐ。
「もうお昼ですよ。
中庭の花を見ながら、お食事ご一緒するお約束でしたよね」
にこやかに言えば、
「おや、もうそんな時間ですか。
まだまだ語りたいところですが、この辺にしておきましょう」
などと言い、私を連れてさっそうと皆のもとを後にするのだった。
んで、ちょっとたったころの大広間は…。
「た…助かった~~~」
ほぼ全員が、魂が抜けたような顔で力なくうずくまっていた。
「オレは夜中まで、あれを聞かされる覚悟をした(ガイツ)」
「冗談じゃなく、そんなカンジだったよね…(ヴァッヘン)」
「レオニール卿!!もう少し考えてくれよ!!(リグルド)」
「うるせーな!!じゃオメー想像できたか!!
団長の口から長々と!あんなセリフが出るってよ――――!!」
「怒鳴るな!!
ただでさえ痛い頭に響く…(デイビス)」
そしてまた全員がその場に突っ伏し、しばらく死体のように
動かなくなるのだった…。
お茶会にまつわる、様々な準備に追われたし、別件ですでに
引き受けてしまったことも、手を抜くわけにはいかなかった。
そして建国記念パーティーより2週間後、私は5月の半ばに似合う
新緑をイメージした、緑と白ベースのドレスに身を包み、
ギリアムと一緒に馬車に乗った。
本日は、王立騎士団の本部に向かう。
ついた瞬間…かなりの歓迎ムードだった。
団長のニョーボになる予定だから、少しわかるが、それにしても
…と思いギリアムに聞けば、どうもテオルド卿が建国記念パーティー
での例のテラスの一件を持ち出し、私を褒めちぎっていたのが
原因では、とのこと。
なるほど!!
やっぱ、勝負に出て良かったわ~。
んで、通された大広間。
中にはテオルド卿と師団長5人、そして騎士団の面々が。
一般的な挨拶をし、歓談タイムスタート。
最初はやっぱりギリアムと私の出会いを聞かれた。
私とギリアムは10年以上前に知り合い、10日間ほど遊んだ。
ギリアムはその時、私に一目惚れしたそう。
だが私は親の都合で、急遽その場を離れなければならなくなり、
いなくなった。
ギリアムは私を探したが、本名を知らなかったので、探せなかった。
そして最近再会して、意気投合した…という感じで話した。
ギリアムの病気や、当時の使用人の怠慢などについては、軽々しく
話さない方がよいと、私が止めた。
公爵家の醜聞であることは、紛れもない事実だし、フォルトや
エマが何か言われるのは、とても嫌だと思ったから。
ちなみにフォルトやエマ以外の使用人は、当時とはすべて挿げ
替わっている。
ギリアムもフォルトもエマも気にしないと言ったが、何より相手が
ギリアムでなくても同じことをした私としては、ギリアムだから
やったなどと言われたくないといい、3人を説得した。
もちろん、その時の状況に応じて、必要と判断したら言うのは
構わないと言ってある。
「それじゃ団長は…そんな昔からオルフィリア嬢のことを…」
リグルド卿は複雑そうな表情を浮かべている。
「ああ、私の両親の人柄は君らも知っていると思うが…。
当時私はそのことでだいぶ苦しんでいてね…。
フィリーはそんな私を、いつも癒してくれた」
なるほど~、という顔になる皆さま。
「あ、オルフィリア嬢!!
うちの母が、またお母様と一緒にお茶会に参加してくださいって
言っていました。
招待状届いてませんか?」
ヴァッヘン卿は母から必ず聞いて来いと言われたのだろう。
「申し訳ありません…。
ただ今私には似たようなお申し込みが殺到しておりまして…。
全てに眼を通すことが、できずにいます。
母をご存じなら、母にあてていただいた方が確実かと…」
「わかりましたー。
母に言っときます」
のほほんとした人って聞いてたけど、その通りやな。
まあ、やり手である上でってことだろうけど。
ここで、
「はーい、皆さん。
少々お静かに~~~~!!」
と言ってきたのはレオニール卿だ。
お調子者なところがあるよって聞いてる。
「今から団長に、婚約者殿へのあふれんばかりの愛を語って
いただきま~す」
おりょ、そんなカリキュラムあったの?…と思ったが、
レオニール卿のにたつきぶりから見て、どうやら即興だ。
ギリアムには隠していたものと思われる。
「おや、いいのかい?
そんなことを言われては、いくらでも語ってしまうよ、私は」
ギリアムはとってもニコニコしている。
「もっちろん!!
いくらでも語ってくださいよ~」
レオニール卿が焚きつける。
「では失礼して…」
ギリアムは私の前に跪き、私の手を取る。
そして言葉を紡ぎ始めた。
――――――2時間後…。
実はですね、私…。
今日のお披露目に対し、ギリアムに一つお願いしていたことが
あったのですよ。
何かというとですね、もっっのすごく仲睦まじい姿を見せてほしい
と…皆さまから苦笑いが出るくらいに…と。
ギリアムめっちゃ嬉しそうに、わかったって言ってくれたんですよ。
…で、現在の皆様方の状態はですねぇ…
メダマドコー!!!
です、はい。
え?なんでかって?
ギリアムが語りだした私への愛の言葉がですねぇ…2時間以上
たった今も終わる気配がないからですよ。
しかもですよ。
古今東西の愛を歌った詩を自分の中で消化し、余すことなく自分流
にアレンジした、吟遊詩人顔負けのくっさいセリフがこれでも
かってぐらいポンポン飛び出す飛び出す…。
ギリアムの普段のキャラからは、到底そーぞーもできないでしょう
ねー、うん。
そりゃ、メダマドコーになるわぁ…。
しかしそろそろ昼。
騎士団の業務だってあるだろーし、私もお腹がすいてきた。
さりとて、流れるように出て来るギリアムの言葉を遮るのは
ムズイ!!
よし!!
あの手で行こう!!
私はギリアムの頬にそっと手を添え、思いっきり勢いをつけて、
唇を重ねる。
「……」
よっしゃ!!
言葉が止まった~。
「ギリアム様」
唇を離すと同時に、言葉を紡ぐ。
「もうお昼ですよ。
中庭の花を見ながら、お食事ご一緒するお約束でしたよね」
にこやかに言えば、
「おや、もうそんな時間ですか。
まだまだ語りたいところですが、この辺にしておきましょう」
などと言い、私を連れてさっそうと皆のもとを後にするのだった。
んで、ちょっとたったころの大広間は…。
「た…助かった~~~」
ほぼ全員が、魂が抜けたような顔で力なくうずくまっていた。
「オレは夜中まで、あれを聞かされる覚悟をした(ガイツ)」
「冗談じゃなく、そんなカンジだったよね…(ヴァッヘン)」
「レオニール卿!!もう少し考えてくれよ!!(リグルド)」
「うるせーな!!じゃオメー想像できたか!!
団長の口から長々と!あんなセリフが出るってよ――――!!」
「怒鳴るな!!
ただでさえ痛い頭に響く…(デイビス)」
そしてまた全員がその場に突っ伏し、しばらく死体のように
動かなくなるのだった…。
166
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる