ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

木野 キノ子

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第10章 信念

6 3年前に起きた、クレアとの確執

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団長室に呼ばれた6人が入って来たので、私はギリアムと共に
出迎えた。

「おや、オルフィリア嬢もいらっしゃいましたか」

「はい…実は皆さんにぜひ、試供品の感想をお聞きしたくて」

すると6人は口々に、私の商品を褒めちぎってくれた。
大満足である。

「よかった…これからどんどん試していくつもりだったので、
皆さんに好意的に受け止めて貰えたなら、とても嬉しいです」

「え?
まだ何かあるんすか?(レオニール)」

「はい…ケガや病気になってしまった人用の、携帯用病人食を
考案中なのです。
試作品が出来上がったら、試してくださいますか?」

「それも美味しいです?(ヴァッヘン)」

「もちろん!
元気がないときほど、美味しいものを食べてほしいですし、
その方が早く回復しますからね」

「やっりー」

みんな口々に喜んでくれた。
って…どんだけメシマズやねん!!
王立騎士団ってこれでも待遇いいって評判なのに…じゃあ、
民間の傭兵とか自警団とか…考えるのも恐ろしい…。

「でもそれだけ喜んでもらえるなら、大々的に売り出しても
大丈夫そうですね」

「え?オルフィリア嬢が売るんですか?」

おや、ちょっと意外そうな顔された。

「はい…私はただ今、ファルメニウス公爵家の商会の幹部として
腕を振るっておりますので…」

「ええええ~~~~」

ハイ、余談入りま~す。
お貴族様の収入の得方には、大きく3通りの方法がある。
①領地経営をして収入を上げる(早い話が税金の取り立て)
②騎士団などに所属し、報酬をもらう(リーマンです)
③商会を運営する(会社経営ですな)

んで、昔のお貴族様は圧倒的に①か②だった。
しかし、名ばかり貴族が増えた今となっては、③によって収入を
得る貴族が続出。
①と②はもはや過去のことだ。

んで、ファルメニウス公爵家も商会を持っている。
断っておくが、ファルメニウス公爵家は昔ながらの①で、十分
すぎるくらいの収入を得られる。
事実、ギリアムの父より上の代は、一切商会なんぞ持たなかった。
だって領地の中に、様々な鉱山があるから、その分はまるもーけ
なのよ。
しかし戦争において、ギリアムが色々物資を施すにあたり、問題が
生じたのだ。
あまりにも多量の物資がタダでパカパカ入ってくれば、当然元から
いた商売人たちを圧迫してしまう。
戦争中はそれでいいかもしれないが、戦争が終わったらしっかりと
物流や売買を通常の状態に回復する必要がある。
タダで何でも、くばりゃあいいってもんじゃない。
そうフォルトに説得されたギリアムは、商会を作ったのだ。

といってもギリアムは商売人気質ではないから、フォルトと
面接・試験によって選抜した人間たちに、ほぼ丸投げ。

私は慈善事業をやるにあたり、そのギリアムのほったらかし商会に
眼をつけた。
どうせ同じようなことをやるなら、一緒にやった方が色々得みたい
だし!!
というわけで、ギリアムに許可求めたら…かなり渋られた。

理由は…ギリアムの運営する組織は基本、完全実力本位主義。
私に対し、ともすれば厳しく接する人間たちがいる場所なのだ。

それを聞いた私は…。
むしろ望むところだった。
ギリアムの人選だったら、口も堅いだろーし。
事実、私が婚約者であることは箝口令が敷かれ、上層部はしっかりと
それを守ってくれた。

渋るギリアムを説得し、私は商会幹部部署に食い込むことに
成功した。
まあ、この話は長くなるのでおいおい…。

ちなみにギリアム…商会自体に興味ないくせして、名前だけは
こだわった。

その名も…フィリアム商会!!

私と自分の名前を重ねたんだってサ~。
私と再会できるかさえ、わからんかったのに…。
うん…好かれてるのは嬉しいんだけどさ…重いよ?
ハッキリ言って!
まあ私はいろんな顧客相手にしてきたから、耐性あるんで流せる
けど~、普通のお嬢さんだったら…どうなってたんだろ…。

「だ、大丈夫なんですか?
フィリアム商会って、この国で1,2を争うくらい、大きいのに」

「私も驚きましたが…、サポートしてくださる方はたくさん
いらっしゃいますので…」

「そ…それにしたって…」

みんな心配そうに見つめてきてくれて、なんだかこしょったい。
大丈夫だよ。
外身は16歳の何も知らない令嬢に見えるかもだけど、中身は
ちゃっきちゃきの図太い還暦越えおばはんだから。
ちゃんと計算もしてるから。

「それより今日、試供品の感想を聞く以外に、皆さんに
お聞きしたいことがあり、参りました」

「なんでしょうか?」

「えっと…お仕事中かと思いますので、お仕事終わった後に
お時間作って頂けないかな…と」

「フィリー…それはそうかもしれないが、用件は言うだけ言った
方がいい。
その方がみんなも判断がつきやすい」

う~ん。
やっぱりそう来たか。
ギリアムにはこのこと、何にも言ってないからね。
隠してるけど、気になってしょうがないのわかるよ。

「えっと…私、今度クレア嬢のお茶会に参加するのですが…」

「聞いております」

「3年前の件とは何ですか?」

「…はい?」

全員がきょとんとする。
まあ、そうだろうな。

「実はしきりに3年前の件というのが出てくるのですが、
ギリアム様はもう終わったことだから…と、話してくださら
ないのです」

「は…はぁあ?」

なんかすげー間抜けな声が出たぞ。
そうだよね。
話してないワケないって思ってたよね。

実は私、フォルトとエマから3年前の件についてはすでに
話を聞いているんだ。
けど、ギリアムには私が知ってることは黙っていてくれと
口止めした。
なぜなら、私が聞いた限りで…こりゃほかの人間の意見も
聞きたいなぁ、と素直に思ったから。
でも、ギリアムの性格上、ほかの女性との醜聞(濡れ衣で
あったとしても)など私に聞かせたがるわけない。
だから騎士団の面々から、話をきくまででいいから、二人が
話したことは黙っていてほしいとお願いした。
二人ともことがことだと思っているようで、了承してくれた。
本当に優秀かつ、律義な人たちばかりで助かる。

「は…話して…らっしゃらない?」

リグルド卿、呆けちゃったよ。

「ちょっ…団長!!まず一番最初に話さなきゃいけない事
です、それ!!」

レオニール卿は遊んでると聞いているが、本当だねぇ。
ガイツ卿とヴァッヘン卿は、すっごい汗かきながら、ギリアムを
見つめている。

そんな中、デイビス卿が

「団長…この際ですから、お話ししてください。
とても重要な案件ですよ」

「終わったことだ」

ギリアムよ…本当に曲がらない男だねぇ…。
そういう男、好きだよ私は…けどね。

「終わったことであるかどうかは、私自身が判断したいのです。
お茶会に参加するのは、そもそもわたくしですので!!」

強い視線をギリアムに、真っすぐ…送る。

そんな中、

「話を聞いてらっしゃらないとは驚きましたが…ではなぜクレアの
お茶会に参加しようと思ったのですか?」

テオルド卿が割って入る。

「ん~、条件が一番良かったからですね」

「条件とは?」

ん?
絶対私を貶めようとしてくるだろー連中に、カウンターくらわす
のに一番いい条件がそろうお茶会だから!
とは口が裂けても言えないから、

「私、商会の仕事をもしているので、多忙なのです。
だから一日開けられる日付が、限られてしまって…。
それを基準に選びました」

私の答えを聞いたリグルド卿は、

「団長!!話しましょう!!話すべきです!!
団長が話さないなら、私が話します!!」

「そうですよ!!大事なことですから!!」

レオニール卿も援護射撃だ。
そうだよね。
クレア嬢のお茶会に出るっての、やっぱり心配してくれてたん
やね。
私が3年前の件を聞けば、お茶会参加をやめると思ってるのかな。
良き人たちだなぁ…。
よっしゃ、これからもいい関係を築いていこうじゃないか。

だが師団長5人とテオルド卿の圧力をもってしても、ギリアムは
屈する気配を見せない。
さすがっちゃさすがだがね…。

やっぱ私が仕切るしかないのか~。

よっしゃ、やるか!

「はあ…もういいです。
すみませんが、やはりお時間を取って頂いて、仕事の後に
お話聞かせてくださいますか?
皆さん…」

「もちろん」

「いくらでも」

皆口々に、言ってくれた。

「勝手に決めるな!!お前たち!!」

ギリアムは苛ついて怒鳴るが、

「こればかりは、団長といえど、譲れません!!」

うん…。
なんつーか…。
いいねぇ…。
自分の意見をしっかり持った人たちが、ギリアムの周りには
たくさんいる…。
慕われてるんだなぁ…本当に…。
だって、側近の人たちが私のために動いてくれてるのって…
結局はギリアムの幸せを、考えてくれてるからだからさ…。

ギリアムはしばらく団員たちを睨んでいたが、やがて大きな
ため息一つ出し、

「わかった!!今話せ!!
6人分の間違っている個所の訂正など、あとからするのは面倒だ」

諦めたように、吐き捨てた。
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