ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第4章 旅行

12 た~まや~

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さて…旅行も残すところ…今日の〆のパーティーで終りとなる。
催しの関係もあって、〆のパーティーは、暗くなってから開催した。

最初のパーティーの料理が…目新しいだけでなく、味もかなり気に入ってもらえたようだったので、
統計を取る意味も兼ねて、立食バイキングの形式にした。

美味しいものでも、好みが分かれるから…誰がどれを気に入ったか、調査もあるのさ~。

皆…特に気に入ったものを、思い思いに取り…談笑に花を咲かせている。

私が…不届きものがいないかどうか、見張っていると、

「ガハハハッ、名残惜しいのぉ!!
今度はわしの国に来い!!あらん限りのもてなしをしてやるわ!!」

ティタノ陛下、ご機嫌だよね。良かった。

「まあ…そんなに時を置かずして、また会えると思うがな!!」

ん?どちて?
私の疑問の声を消す様に、隣から…。

「わしも楽しかったわ…。色々知れたしな…」

ドライゴ陛下も…ご満足いただけたみたい。

「ティタノ国王の国ではなく、わしの国に来い。
ティタノ国王の国は、砂漠ばかりで、見どころなどないぞ」

「何を言うか!!貴様の国こそ、凍った大地ばかりで、殺伐としとるだろうが!!」

「灼熱地獄よりマシじゃろが…」

「それを言うなら、お前の所は極寒地獄じゃろが!!」

だから…東西冷戦勃発しないでってばぁ~。
最後の締めくらい仲良く…無理だわ。うん。

犬猿のいがみ合いを見つつ、私は…ちょっと遠い目をした。
ケルカロス陛下も…ちょっと我関せずを貫いてるからな…。
まあ…この2人の間に入り込んで、へーぜんとしてられるのは…ギリアムくらいだろう。

私がそんなことを思っていると、ギリアムの姿が無い。
そうか…もう、そんな時間か…。
このパーティー最大の目玉。
本当は…ファルメニウス公爵家の歓待パーティーでやるはずだったもの…。
準備に行ったんだな…。

程なくして…。

「ご来場の皆様―――――――――――っ!!
これより…夜にのみ咲く、盛大な大輪の華をお見せしたく存じます!!
ご足労ですが、庭までお越しくださるよう、お願い申し上げます!!」

皆一様に…何が始まるのかワクワクしつつ、桃源郷の庭へと移動を始める。

私はギリアムの口上を聞き、

「ティタノ陛下…。ドライゴ陛下、そしてケルカロス陛下。
大輪の華が…一番美しく見える場所にお連れ致します。
どうかごゆるりと、ご堪能していただけましたら、幸いに存じます」

ティタノ陛下とドライゴ陛下、ケルカロス陛下を特等席にお連れすることにした。

「ほお…どこじゃ」

私は…お三方をを桃源郷の一番大きい真中心にある、テラスに案内する。
このテラスからは、庭と…どこまでも広がる新月の暗闇が見渡せた…。

お三方…暫くキョロキョロして、

「ここからでは、庭が良く見えないではないか」

テラスから、下の庭を眺め、ちょっと不満そう。まあ、無理もない。

―はな―と聞けば、大抵地面に植わっているものだから。

でも…それじゃ興ざめだろうが。

「ティタノ陛下…ドライゴ陛下、ケルカロス陛下。
下ではございません。上を…ご覧くださいませ」

「うえ?」

何もない真っ暗闇しかない…。
街灯でひしめく現代と違って…この世界の夜は、本当に伸ばした手の先が見えない、
真っ暗闇だから。

そして…上を見ているうちに、室内の…煌々と照らされていた明かりが、最低限度の
物を残し、消される。

同時に…かねてよりの合図で、街にともされた灯も、最低限を残して…全て消える。
これは…皆に前もって頼んであったので、すんなりいった。
今回のメーンイベントだからね。
絶対に失敗したくないし…何より、この…温泉郷の皆に見て欲しかったから。

真の暗闇とは、こういう事を言うのだな…。
そんな言葉が誰ともなく漏れて来るような、真っ暗闇となった。

「皆さま!!これよりしばし…上をご覧くださいませ!!」

ギリアムのよく通る声だけが…暗闇にこだまする。
…訳の分からない状態でも、ひとまず上を向いてくれているよう。

「一体何が始まるんじゃ?」

ティタノ陛下は…不思議そうに上を見ているんだろうな…。

…………………………。

やがて…空気中をひょろ長い何かが…移動するような…何とも奇妙な音が響いた。
それは…この世界に生きる人々には、馴染みが無いものだったろう。

でも、私は違う。

その音を聞いただけでも…、いよっしゃ、成功した~~~~~って、思ったもんさ。

やがて大砲のような大音量が響いた瞬間…空がぱぁーっと明るくなった。

最初は驚いていた人々も…直ぐにその美しさに魅了されることとなった。

夜に咲く花…そう、日本じゃ定番の花火だ!!

この世界…火薬があるのに、花火が無い!!
もともと火薬自体が貴重品ゆえ、仕方ないのかもしれない。

きっかけは…フィリアム商会で関わった街で、出会った一人の子供…。
火薬職人の子供だと言っていた。
私が見つけた時…、路地裏で泣いていたんだ。
人殺しの道具を作っている奴の、子供だと言われて。

もちろん戦争だけじゃなく、工事現場でだって使われているけれど…。
それでも一度持たれた偏見は、消すのがとても大変なんだ。

だから…お客さんの花火師から聞いた…花火の仕組みを柱に頭ぶつけながら思い出した!!

火薬を…平和に利用できること…知ってもらいたかった。
美しいものを…作り出せるんだってこと、知ってもらいたかった。

そして…フィリアム商会の総力を結集して…作り出したんだ。

花火を!!

戦争になれば、火薬の需要はまた変わる…。
でも、そんな事言っていたら、何も変わらないし、私はちっとも幸せじゃない。
何を選ぶかは…人それぞれだけど。

せめて火薬職人の人たちが…こういう道もあるんだよ…って、知ってくれればいいと思う。
選ぶ範囲が広がれば…嫌な事を無理やりやる人が…減るだろうから!!

日本の花火大会…それを模すように、様々な形の華が…暗い夜空を明るく照らす。

大輪の華を咲きほこらせ、人々に無限の可能性を示唆する。

何色もの美しい彩が…一つとして同じ形を取らず…それでも有終の美を飾り、一瞬の命を
暗い夜空に瞬かせ…散る。

その全てが終わった時…盛大な拍手と、歓声が…私の耳に届き、思わず目が潤んだ。

ああ、いかんいかん。まだ仕事中ぜよ。

拍手と歓声が一通り鳴りやむと、

「皆さま!!この花の原料は…火薬でございます!!」

再び始まったギリアムの口上に…皆がざわつく。
火薬をこんな使い方した人…今までいなかったからね。

「皆さま周知のとおり…ファルメニウス公爵家は武の総本山たる家柄です!!」

ギリアムは…ここで少し切る。

「ですが!!」

「だからこそ!!兵器として使うものを…平和のために利用できないか…考えた結果、
このような夜空に咲く、美しい華を生み出しました」

「元来の兵器が…このように、人々を楽しませるものであって欲しい…。
その心こそが、今の…そして今後のファルメニウス公爵家の本心であると…。
ここに誓いを立て、このパーティーの締めくくりとさせていただきます!!」

「まだもう少々のお時間がございます!!
どうぞ皆さま、ごゆるりと残りのお時間を、お楽しみください!!」

ギリアムの口上終了と共に…より一層の盛大な拍手と、歓声が上がった。
そして…テラスでその様を見ていたティタノ陛下が、

「オルフィリア公爵夫人!!!!!あの夜空の華は何と言うのだ!!」

えらい興奮して聞いてきた。

「花火…と、名付けました」

「花火か!!で?いつ輸出するのだ!!」

……大変にお気に召してしまったよう。やっぱド派手演出、好きなのだろう。
良かったのだけどね。

「まだ出来上がったばかりですので、輸出は考えておりません。
ですが…今後色々な所で、使っていただけるよう、営業する気でおります」

戻ってきたギリアムが、にっこやかーに、語ってら。

「何を言うか!!わしの国の祭典で使わせろ!!もちろん金は払う!!営業もしてやるわ!!」

「そう言っていただけるなら、融通いたしましょう」

……うまいね、ギリアム…商人むいてるんじゃない?本当に…。

「じゃったらわしの国にも輸出せい!!言い値で買ってやるわ!!
もちろん、ティタノ国王より口は上手いから、宣伝は上手いぞ!!」

わああ、ドライゴ陛下…嬉しいけど、何気にティタノ陛下をディスるのやめてぇ~。

「何を言うか!!わしのほうが、領地が大きいから、使う所も多いわ!!」

「砂漠の真っただ中で、打ち上げてどうする!!誰も見んわ!!」

「お前こそ、凍った山の合間で打ち上げても、誰にも見えんわ!!」

だから、東西冷戦やめてぇ~。

そんな時…ケルカロス陛下が何か言いたそ~な顔して立ってらっしゃるから、

「王家の建国記念パーティーには…特別製の花火を献上する予定に御座います」

先手を打った。

「そ、そうか。期待しているぞ」

何だかホッとしてたから…ひとまず良かった。
キンラク商会のいざこざで…ホントに金…無くなっちゃったんだね…。

この時の花火は…温泉郷のみんなに、偉い好評で…。
後日やって来た、他国のお客さん含め…かなり上手に宣伝して下さった。
有難いね…。

こうして次の日…帰っていくティタノ陛下とドライゴ陛下をお見送りして…私の仕事は
ひと段落を迎えたのだった…。

ああ…。
もう二度と…東西冷戦の板挟みなんて…御免だよ…とほほ…。
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