29 / 48
第5章 因縁
1 旅行の後…
しおりを挟む
さて…色んな苦労はあったものの、全体的には楽しい旅行を終えた私とギリアムは…とっても
明るい気分で帰ってきた。
ツェッキーママの事だって、たいしたお咎めはなしになったし…。
そして…フォルトから報告を受けてみたら、やっぱり…ラスタフォルス侯爵家はあまり
芳しくないよう。まあ…当たり前か…。
「今の所…動きはないようですが…」
「どうしたの?」
フォルトの表情が…ちょっと曇っているので、聞いてみる。
「グレンフォ卿が…奥様やギリアム様ではなく、ヒルダ夫人に度々面会に来ております…。
ヒルダ夫人がいいと言えば、通すとの事でしたので、一応了承いたしました。
明日も来るらしいのですが、ヒルダ夫人から無理でなければ、お2人にも同席をお願いしたいと、
要請が…」
「オッケー。私はいいって言っといて!!とってもいい休暇だったから、エネルギーチャージ
完了したし~」
つやつやのお肌で言ってのける。
「私も構わん。体力などほぼ削がれていない」
そして次の日…。
私、ギリアム、ヒルダ夫人、グレンフォ卿の4人は、庭で会談と相成った。
私が…グレンフォ卿を一目見て、ぎょっとしたことは言うまでもない。
かなり…やつれていたからだ。クレアのお茶会後の、テオルド卿みたいな心境なんだろう。
でも…なんか…私の勘がちょっと違うと言っている。
「フォルト…」
私がフォルトに耳打ちすると、フォルトがお辞儀をして去っていった。
「ギリアム公爵閣下、オルフィリア公爵夫人…最後まで便宜を図っていただき、ありがとう
ございます」
私達が揃うと…ヒルダ夫人が真っ先にお礼してくれた。
グレンフォ卿は…母親と一緒に頭を下げたが、その後は一言も話さず、目の前に注がれた
お茶を、ただ見ていた…。
「申し訳ありませんね。グレッドの日記と遺書が発表されてから、ずっとこんな感じなんです。
近衛騎士団はローエン閣下が、暫く休めと言ってくださって…。
そのせいか、ほとんど毎日来ている始末です。
何か話をするかと思えば、ただじっとお茶も飲まずに佇んでいるだけで…」
母親にそう言われても、グレンフォ卿はじっとしている…。
眼もあわさず、下を向いてじっと…。
私は…その様を見て、何だか複雑な気持ちになった。
死んだ子供の…本当の声…。生きて聞いた私の前世の親は…こんな感じになったんだろうか…。
それとも…相変わらず認めず…。
決して答えの出ない問題だから、考えるだけ無駄なんだけどね…。
「よろしいのではないですか?ヒルダ夫人…」
私は…ちょっと口を出したくなったんだよな。
「グレンフォ卿は…先代ファルメニウス公爵と戦ってくださった1人です。
別に暴れるでもなく、無体な要求をするでもないなら、黙っている事くらい、ファルメニウス公爵家
としては、迷惑とは思いません。
ねえ、ギリアム…」
私がギリわんこに笑顔を向ければ、
「ええ。その通りですね。フィリー」
お茶をすすりながら、答えるギリアム…。
ヒルダ夫人は…ちょっと安堵したようなため息をつくと、
「そう言っていただけると…。私も心が軽くなります」
ただそう言って、グレンフォ卿のことを…許容しているようだ。
親は…いくつになっても、親って言うけど…まさにその通りなんだろう。
無下に…追い返したくはないのだろうな。
ああ、言い忘れたけどね。
私のそばには…フィリー軍団ちゃんといるよ。
ダイヤは…置いて行こうかと思ったんだけど、1人だけ蚊帳の外はヤダって。
まあ…当事者だからなぁ…。
「わしは…どこでどう、間違ってしまったのでしょう…」
体の大きさに反比例して…とてもとても、小さな声。
何だか…私に聞いているような気がしたから、
「それは…私にもわかりません。
もっと言えば、他の誰にも…グレッド卿にもわからなかったと、思います。
どこかで何かが違えば…別の未来もあったかもしれません。
ですが…それを今言った所で、どうにもならない」
私は…また私の前世の親の事を…知り合いの話として出した。
「着飾ることは、大抵の女性が好みます。ですが…その女性は好きじゃなかったし、
興味もなかった。
それを…親が素直に認めてくれば、もっといい関係が築けたかもしれない…と、言っていました。
でも…築けなかったかもしれない。
そして…最終的に女性が幸せになれたかは、誰にもわかりません」
私の実親が生きていたら…私は娼婦になれたかどうか…。
絶対反対したと思うからさ。
着飾ることが嫌いな事…許容してくれたとしても…。
娼婦=私の幸せ…と、思って生きてきたからさ…。
そんな私が娼婦になることを禁止されたら?本当に幸せだったか?
他の何かを…見つけられたのだろうか?
本当に謎なんだよ。
「この世はわからない事だらけなんです。
悪手だと思った事が、意外にも後で役に立ったり…。
最良の事をしたと思っても、あとで…取り返しのつかない間違いだったとわかったり…です」
私は…一息入れるために、お茶をすする。
すると、私の横にいたギリアムが、
「残された者に出来る事は…死者となってしまった者が、望んだことを、できるだけ叶えて
あげる事じゃないでしょうか…。やはりそれしか、ないですよ…」
ギリアム…若いながらに、戦場経験者ゆえ、言う事に…重みがあるな。
これだけは、還暦越えばばぁとて、真似できん。
するとグレンフォ卿は…初めて顔を上げ、青空を仰ぎ見る。
「グレッドの望んだこと…か…」
そのまま少し…雲の流れを見ていたようだったが、
「ダイヤと…イザベラが、幸せになる事…だろうな…」
ポツリと呟くと、ダイヤを真っすぐに見て、
「キミは…今幸せか?」
短い言葉だが、本心を聞きたがっている…それが、ありありとわかった。
「ええ、もちろん。家族同然の仲間と、信頼のおけるご当主様、奥様に仕えることが出来て、
とても幸せです」
だからダイヤも…本心で答えた。
その声に…今までの喧々諤々とした、暗い感情は含まれていない。
ひとまず…良かった…。
「母上…。わしはダリアが、ダリナとグレリオを引き取りたいと言った時、グレッドの子供なら
わしらが育てるのが正当と思いました…。
ですが…イザベラが元気になって、しっかりとした話し合いができるまで…待つべきだったようです。
ダリアはグレッドをたぶらかしたのは、イザベラだと信じて疑わなかった。
わしも…恥ずかしながら、そう思っていました。
イザベラに詫びを言いたいと、伝えていただけませんか?」
「伝えましょう」
ヒルダ夫人の言葉は短いが…ようやっとわかったか…と、言いたげな色を私は感じた。
こういう事って、自分で悟らないと…意味が無いんだよな…。
それを何十年も待っていたとしたら、ヒルダ夫人は…本当に力があるんだな…。
私が…微笑ましく見つめていたら、
「おーい、嬢ちゃん!!お呼びだってっから、参上したぜぇ~」
とっても威勢のいい声で現れた、ガフェルおっちゃんと、ダイロおっちゃん。
「なんだよ。オレは貴族が嫌いだって…」
ダイロおっちゃんがいつもの悪態をつこうとしたが…ぴたりと止まった。
それは…ガフェルおっちゃんも同じ。
「なんだよ、患者かよ。ガフェル…何だと思う?」
ダイロおっちゃんがはき捨てるように、言った。
「レグラーダ草と…ボテクスの実…だな。多分…。配合比率までは、分からんがな…」
「オレもそう思う…。しかし…かなりの量、盛りやがったな…」
2人は…グレンフォの顔をまじまじと見て、答えた。
「あ~、やっぱりか…」
私は…当たって欲しくない予想が、的中しちまって、ちょっと嫌な気分だ。
「さすがだな、嬢ちゃん。これ…見分けるの結構難しいんだぜ」
「そりゃあね…。時間のある時は、おっちゃんたちに、色々習っているから」
私達の会話をちょっとあっけに取られて、聞いていたが、
「あの…一体何が…」
グレンフォ卿が尋ねてきたから、
「あ~、アンタさぁ…。このまま何もしなかったら、1ヶ月以内に死ぬぜ」
ガフェルおっちゃんの言葉に…グレンフォ卿だけでなく、ヒルダ夫人も顔色を一気に変えた。
「どう言う事でしょうか?」
ヒルダ夫人の方が…先に聞いてきた。
やっぱり…おっかさんなんだな。
「薬草の中にはよ…。混ぜることによって、毒性を発揮するものがある。
レグラーダ草と、ボテクスの実も…その1つ。
毎日摂取することによって、徐々に徐々に…死に至らしめるんだ。
最近…疲れやすくなってねぇか?」
「いや…それは…」
グレンフォ卿が答えずらいようなので、私は、
「あのね…おっちゃんたち。この人…実はここ最近、精神的にかなりつらい事があって…。
自分の体調を、細かく見るのなんて、不可能だったと思う」
「なるほどな…。そうなると…暗殺するにゃぁ、持ってこいってわけだ」
ちょっとため息交じりに、言ってのける。
「一体誰が…」
さすがのヒルダ夫人も…動揺を隠せないようだが、
「わしは…近衛騎士団に長くいました。こういった事があっても…おかしくはありません」
グレンフォ卿…妙に落ち着いている。
息子の事があってから…、あまりこの世に未練がなくなっちゃってるのかな…。
そんな中…さすがはガフェルおっちゃんというべきか、
「オイ…あんた、ちょっと手袋取って見せてくれねぇか?」
私が…気づかなかったことに、気づいた。
グレンフォ卿が…黙っておっちゃんの言う通りにすると、
「こりゃ…経口摂取じゃねぇな…」
とだけ。
私もグレンフォ卿の手を見て…ああ、見覚えがあると思った。
テオルド卿の手に…ついていた痕と同じだったから…。
「となると…一番可能性があるのは、ランプか蝋燭だな」
ダイロおっちゃんもわかったようで、とっとと頭を切り替えている。
「でもよ…それだと、不特定多数をやっちまう恐れがあるぜ?」
「仕込んだ奴がわかっていないか…確信犯か…どっちだろうな?」
2人のおっちゃんズの話に、ついていけなかったようで、
「わかるように、説明してくれ!!」
当の本人である、グレンフォ卿が声を上げる。
「あ?わかってんだろう?あんた。
アンタ、食った飯、殆ど吐き出しているだろうが!!
それじゃ、経口摂取してても、大して効果ねぇよ。
でも…アンタには、ハッキリと中毒症状が出ている。
明らかに…毎日摂取してるってことだ」
食事を吐き出している…こう、指摘された時のグレンフォ卿の顔が…真実であると告げている。
ヒルダ夫人もそれがわかったようで、焦りと悔恨の色が…顔に出てきている。
明るい気分で帰ってきた。
ツェッキーママの事だって、たいしたお咎めはなしになったし…。
そして…フォルトから報告を受けてみたら、やっぱり…ラスタフォルス侯爵家はあまり
芳しくないよう。まあ…当たり前か…。
「今の所…動きはないようですが…」
「どうしたの?」
フォルトの表情が…ちょっと曇っているので、聞いてみる。
「グレンフォ卿が…奥様やギリアム様ではなく、ヒルダ夫人に度々面会に来ております…。
ヒルダ夫人がいいと言えば、通すとの事でしたので、一応了承いたしました。
明日も来るらしいのですが、ヒルダ夫人から無理でなければ、お2人にも同席をお願いしたいと、
要請が…」
「オッケー。私はいいって言っといて!!とってもいい休暇だったから、エネルギーチャージ
完了したし~」
つやつやのお肌で言ってのける。
「私も構わん。体力などほぼ削がれていない」
そして次の日…。
私、ギリアム、ヒルダ夫人、グレンフォ卿の4人は、庭で会談と相成った。
私が…グレンフォ卿を一目見て、ぎょっとしたことは言うまでもない。
かなり…やつれていたからだ。クレアのお茶会後の、テオルド卿みたいな心境なんだろう。
でも…なんか…私の勘がちょっと違うと言っている。
「フォルト…」
私がフォルトに耳打ちすると、フォルトがお辞儀をして去っていった。
「ギリアム公爵閣下、オルフィリア公爵夫人…最後まで便宜を図っていただき、ありがとう
ございます」
私達が揃うと…ヒルダ夫人が真っ先にお礼してくれた。
グレンフォ卿は…母親と一緒に頭を下げたが、その後は一言も話さず、目の前に注がれた
お茶を、ただ見ていた…。
「申し訳ありませんね。グレッドの日記と遺書が発表されてから、ずっとこんな感じなんです。
近衛騎士団はローエン閣下が、暫く休めと言ってくださって…。
そのせいか、ほとんど毎日来ている始末です。
何か話をするかと思えば、ただじっとお茶も飲まずに佇んでいるだけで…」
母親にそう言われても、グレンフォ卿はじっとしている…。
眼もあわさず、下を向いてじっと…。
私は…その様を見て、何だか複雑な気持ちになった。
死んだ子供の…本当の声…。生きて聞いた私の前世の親は…こんな感じになったんだろうか…。
それとも…相変わらず認めず…。
決して答えの出ない問題だから、考えるだけ無駄なんだけどね…。
「よろしいのではないですか?ヒルダ夫人…」
私は…ちょっと口を出したくなったんだよな。
「グレンフォ卿は…先代ファルメニウス公爵と戦ってくださった1人です。
別に暴れるでもなく、無体な要求をするでもないなら、黙っている事くらい、ファルメニウス公爵家
としては、迷惑とは思いません。
ねえ、ギリアム…」
私がギリわんこに笑顔を向ければ、
「ええ。その通りですね。フィリー」
お茶をすすりながら、答えるギリアム…。
ヒルダ夫人は…ちょっと安堵したようなため息をつくと、
「そう言っていただけると…。私も心が軽くなります」
ただそう言って、グレンフォ卿のことを…許容しているようだ。
親は…いくつになっても、親って言うけど…まさにその通りなんだろう。
無下に…追い返したくはないのだろうな。
ああ、言い忘れたけどね。
私のそばには…フィリー軍団ちゃんといるよ。
ダイヤは…置いて行こうかと思ったんだけど、1人だけ蚊帳の外はヤダって。
まあ…当事者だからなぁ…。
「わしは…どこでどう、間違ってしまったのでしょう…」
体の大きさに反比例して…とてもとても、小さな声。
何だか…私に聞いているような気がしたから、
「それは…私にもわかりません。
もっと言えば、他の誰にも…グレッド卿にもわからなかったと、思います。
どこかで何かが違えば…別の未来もあったかもしれません。
ですが…それを今言った所で、どうにもならない」
私は…また私の前世の親の事を…知り合いの話として出した。
「着飾ることは、大抵の女性が好みます。ですが…その女性は好きじゃなかったし、
興味もなかった。
それを…親が素直に認めてくれば、もっといい関係が築けたかもしれない…と、言っていました。
でも…築けなかったかもしれない。
そして…最終的に女性が幸せになれたかは、誰にもわかりません」
私の実親が生きていたら…私は娼婦になれたかどうか…。
絶対反対したと思うからさ。
着飾ることが嫌いな事…許容してくれたとしても…。
娼婦=私の幸せ…と、思って生きてきたからさ…。
そんな私が娼婦になることを禁止されたら?本当に幸せだったか?
他の何かを…見つけられたのだろうか?
本当に謎なんだよ。
「この世はわからない事だらけなんです。
悪手だと思った事が、意外にも後で役に立ったり…。
最良の事をしたと思っても、あとで…取り返しのつかない間違いだったとわかったり…です」
私は…一息入れるために、お茶をすする。
すると、私の横にいたギリアムが、
「残された者に出来る事は…死者となってしまった者が、望んだことを、できるだけ叶えて
あげる事じゃないでしょうか…。やはりそれしか、ないですよ…」
ギリアム…若いながらに、戦場経験者ゆえ、言う事に…重みがあるな。
これだけは、還暦越えばばぁとて、真似できん。
するとグレンフォ卿は…初めて顔を上げ、青空を仰ぎ見る。
「グレッドの望んだこと…か…」
そのまま少し…雲の流れを見ていたようだったが、
「ダイヤと…イザベラが、幸せになる事…だろうな…」
ポツリと呟くと、ダイヤを真っすぐに見て、
「キミは…今幸せか?」
短い言葉だが、本心を聞きたがっている…それが、ありありとわかった。
「ええ、もちろん。家族同然の仲間と、信頼のおけるご当主様、奥様に仕えることが出来て、
とても幸せです」
だからダイヤも…本心で答えた。
その声に…今までの喧々諤々とした、暗い感情は含まれていない。
ひとまず…良かった…。
「母上…。わしはダリアが、ダリナとグレリオを引き取りたいと言った時、グレッドの子供なら
わしらが育てるのが正当と思いました…。
ですが…イザベラが元気になって、しっかりとした話し合いができるまで…待つべきだったようです。
ダリアはグレッドをたぶらかしたのは、イザベラだと信じて疑わなかった。
わしも…恥ずかしながら、そう思っていました。
イザベラに詫びを言いたいと、伝えていただけませんか?」
「伝えましょう」
ヒルダ夫人の言葉は短いが…ようやっとわかったか…と、言いたげな色を私は感じた。
こういう事って、自分で悟らないと…意味が無いんだよな…。
それを何十年も待っていたとしたら、ヒルダ夫人は…本当に力があるんだな…。
私が…微笑ましく見つめていたら、
「おーい、嬢ちゃん!!お呼びだってっから、参上したぜぇ~」
とっても威勢のいい声で現れた、ガフェルおっちゃんと、ダイロおっちゃん。
「なんだよ。オレは貴族が嫌いだって…」
ダイロおっちゃんがいつもの悪態をつこうとしたが…ぴたりと止まった。
それは…ガフェルおっちゃんも同じ。
「なんだよ、患者かよ。ガフェル…何だと思う?」
ダイロおっちゃんがはき捨てるように、言った。
「レグラーダ草と…ボテクスの実…だな。多分…。配合比率までは、分からんがな…」
「オレもそう思う…。しかし…かなりの量、盛りやがったな…」
2人は…グレンフォの顔をまじまじと見て、答えた。
「あ~、やっぱりか…」
私は…当たって欲しくない予想が、的中しちまって、ちょっと嫌な気分だ。
「さすがだな、嬢ちゃん。これ…見分けるの結構難しいんだぜ」
「そりゃあね…。時間のある時は、おっちゃんたちに、色々習っているから」
私達の会話をちょっとあっけに取られて、聞いていたが、
「あの…一体何が…」
グレンフォ卿が尋ねてきたから、
「あ~、アンタさぁ…。このまま何もしなかったら、1ヶ月以内に死ぬぜ」
ガフェルおっちゃんの言葉に…グレンフォ卿だけでなく、ヒルダ夫人も顔色を一気に変えた。
「どう言う事でしょうか?」
ヒルダ夫人の方が…先に聞いてきた。
やっぱり…おっかさんなんだな。
「薬草の中にはよ…。混ぜることによって、毒性を発揮するものがある。
レグラーダ草と、ボテクスの実も…その1つ。
毎日摂取することによって、徐々に徐々に…死に至らしめるんだ。
最近…疲れやすくなってねぇか?」
「いや…それは…」
グレンフォ卿が答えずらいようなので、私は、
「あのね…おっちゃんたち。この人…実はここ最近、精神的にかなりつらい事があって…。
自分の体調を、細かく見るのなんて、不可能だったと思う」
「なるほどな…。そうなると…暗殺するにゃぁ、持ってこいってわけだ」
ちょっとため息交じりに、言ってのける。
「一体誰が…」
さすがのヒルダ夫人も…動揺を隠せないようだが、
「わしは…近衛騎士団に長くいました。こういった事があっても…おかしくはありません」
グレンフォ卿…妙に落ち着いている。
息子の事があってから…、あまりこの世に未練がなくなっちゃってるのかな…。
そんな中…さすがはガフェルおっちゃんというべきか、
「オイ…あんた、ちょっと手袋取って見せてくれねぇか?」
私が…気づかなかったことに、気づいた。
グレンフォ卿が…黙っておっちゃんの言う通りにすると、
「こりゃ…経口摂取じゃねぇな…」
とだけ。
私もグレンフォ卿の手を見て…ああ、見覚えがあると思った。
テオルド卿の手に…ついていた痕と同じだったから…。
「となると…一番可能性があるのは、ランプか蝋燭だな」
ダイロおっちゃんもわかったようで、とっとと頭を切り替えている。
「でもよ…それだと、不特定多数をやっちまう恐れがあるぜ?」
「仕込んだ奴がわかっていないか…確信犯か…どっちだろうな?」
2人のおっちゃんズの話に、ついていけなかったようで、
「わかるように、説明してくれ!!」
当の本人である、グレンフォ卿が声を上げる。
「あ?わかってんだろう?あんた。
アンタ、食った飯、殆ど吐き出しているだろうが!!
それじゃ、経口摂取してても、大して効果ねぇよ。
でも…アンタには、ハッキリと中毒症状が出ている。
明らかに…毎日摂取してるってことだ」
食事を吐き出している…こう、指摘された時のグレンフォ卿の顔が…真実であると告げている。
ヒルダ夫人もそれがわかったようで、焦りと悔恨の色が…顔に出てきている。
57
あなたにおすすめの小説
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!
藤野ひま
ファンタジー
わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。
初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!
夫や、かの女性は王城でお元気かしら?
わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!
〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる