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第5章 因縁
15 ダリアの考え2
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「イザベラさえいなければ、全てが上手く行ったんです!!
イライザの父母が悪い道に進んだのも、絶対にイザベラの影響です!!
だから…イザベラさえいなければ…」
眼を見開いたダリアが…唾とばしながら言ったのがそれ…。
……イザベラ関係ないっしょ、絶対に。
「イザベラが現れてから…グレッドは日に日にイライザに冷たい態度を…。
全部イザベラが裏で操っていて…。イライザはあんなにいい子なのに、冷たくして…」
いや…。アンタがイザベラ実家のしてたこと見抜けたら、もう少し違ったと思うが?
そもそも、ヒルダ夫人に対抗して、社交界の為のドレスなんぞ、自分で見繕うから
失敗するんだっての。
「どんなに強く言っても…聞き入れなくて…そもそも私と話をしようともしない。
イライザとも…。イライザはグレッドの事だけを考えて、あんなに勤勉にラスタフォルス侯爵家の
事を勉強して…。騎士の訓練も一日も休まなかった。社交界だって、足繁く出て…地位を築くために
頑張っていた…。それなのに…。
グレッドの為に、何が必要か…真剣に考えて、行動して…。グレッドの為に…。
それなのに、話もしない。話をしようと何度も言ったのに…」
「それはしょうがあるまい?
そもそもどんなに話をしようとしても、最初に話を聞かなかったのは、アナタなのだから。
人は…話しても無駄だと思えば、話などせんさ。
私は…すでに物心ついたころには、私の父母にマトモな話など、通用しないと諦めたぞ」
ホントにヒデー親だったんだな…。
「それから…イライザ卿のグレッド卿への思いが、嘘とは言わんがね。
意中の人を虐めるような人間と、それに…無意識とはいえ加担した人間なんぞ、当人からすれば
ゴミくず以下だ。優しくする理由も話をする意味もない」
……ギリアム。未だに声かけて来るヤツ、いるみたいだからな…。
「うるさい!!
結局グレッドは騙されたまま…結婚式をすっぽかしてイザベラと逃げた!!
私もイライザも…一気に地獄に叩き落とされた!!
全部全部全部…あの女のせいで…あの女のせいで…。
イライザは頑張って…社交界で交流を作っていたのに…全部…フイになった…。
私だって…駆け落ち息子の母親なんて…そんな事を…。
イザベラが悪いと言ったら、そいつにしてやられて、たった一人の跡継ぎを失ったバカ嫁って…」
いや…泣くなよ。
全部自分の自業自得だろう…。
自分の見たいものしか見ず、信じたいものしか信じなかった結果だろ?
ちらりとギリアムを見れば…ギリアムも冷め~た目をしてたから、私と同じ考えだろう。
「夫は…社交界に出なくていいと言ってくれて…この時ばかりは従って…騎士の仕事に
精を出した…。その傍ら、2人の行方を探したけれど…何もつかめなかった…。
社交界に出なくなっても、貴族のつながり上の付き合いに出れば…必ず…影で笑う声が
聞こえる…。私を…嘲笑う声が…」
また…死んだ魚の目になったな。…ってか、それも被害妄想かもよ?
「でも…でも、数年後に!!イライザの父母が連絡してきた!!
イザベラが…グレッドの子供を連れて帰って来たと!!
グレッドは残念な事になったけれど、子供2人が残ったと!!
神に感謝した瞬間だった」
……神という名の悪魔に、魅入られた瞬間だったか…。
「すぐに…書類を作って2人を引き取った!!でも…」
ここでダリアの顔が、一気に曇り、
「どう見ても…グレッドの子じゃなかった…。
でもだからこそ、希望が湧いた!!
やっぱり…イザベラなんて悪女と、グレッドは上手くいかなかった。
すぐに別れて…どこかできっと生きている!!!
養子に出したと言った子は、グレッドが引き取って育てているんだと!!
だから…見つけ出して、2人とも我が家に迎えれば…全てが元通り!!」
……出たよ。中二病独特ったら失礼かもだけど、すげぇ自分勝手な脳内変換…。
「引き取った子は…思えば哀れだから、しっかりと育てた…」
そこだけは褒めてやる。
「どうせお義母様は、もう長くない…。
お義母様が死んだら…イザベラを捕えて、ゆっくりと真実を吐かせればいい。
そう思った…」
やっぱりか~。
ここで…曇った顔がさらにどんよりする。
「でも…お義母様は…ちっとも…。
ダリナとグレリオがどんどん大きくなって…グレリオが成人を迎えても、まだ…。
夫に言って、グレリオの後継者発表は待ってもらった…。
ラスタフォルス侯爵家の血を…夫の血を引かない者を、跡取りには出来ないから」
「頑張って探して探して…でも…、一向にグレッドの足取りは掴めない。
私は…神に祈った。今まで正しく生きてきたのだから、温情を下さいと…」
……正しく生きてきたとは、思えないと何度言えばわかるん?
わかんないから、ここにいる羽目になってんだろーけど。
「その願いはかなった!!」
……叶った事が、良かったかどうか、わからんよ、本当に…。
ダイヤが出てきたことで…今までずっと隠されて来た真実が、全部明るみになった。
そのせいで…だいぶ、ひっちゃかめっちゃかになっただろうが。
「グレッドが…グレッドが私の前に、現れてくれた!!!」
いや、グレッド死んでる。それダイヤ。
もう…あの時点で、精神に異常をきたしてたんだな…まあ、わかってたけどさ。
「これで全てが元通りになる!!ラスタフォルス侯爵家に…夫の血が戻る!!
グレッドの時と違って、護衛騎士として活躍している!!
だったら騎士が嫌いなんて、言わない!!流星騎士団ともうまくやれる!!
貴族の勉強なんて、今からやればいい!!
私の役目は…それを全力でサポートすることだと…」
なんかもう、言葉発するの嫌になって来た。
貴族の勉強って、上位になればなるほど、多岐にわたる。
アンタがやれと言われて投げ出したもんを、やりたがってもいない人間に押し付けんな!!
この、ジコチューが!!
「だから…少ないけれど、確かな伝手を頼ったのに…」
また顔が曇った…。ころころ忙しいな。
躁うつ病にもかかってんのか?この人…。
「みんな…断られた…。
ファルメニウス公爵家だから…。オルフィリア公爵夫人に失礼を働いたから…。
私の気持ちも悲願も知っているのに!!誰も…。何で…?
私はただ…ラスタフォルス侯爵家を正しい形に戻そうとしただけ…。
夫の血を…戻そうとしただけなのに…。
間違った事なんて、1つもしてないのに…」
私とギリアムを見据え、大粒の涙を流す。
「何で…なんで、協力してくれないのぉ…。
ラスタフォルス侯爵家がどうなったって、アンタたちはいいってことよね…。
聖人君子だ、聖女だって言われていたって、化けの皮を剥げば冷徹な人間よ…。
滅びようが何しようがお構いなし…。正当じゃない脇道に逸れた血に継がせればいいと…。
正当な血じゃない…。脇の血に…」
なんかもう…壊れたレコーダーみたいに、繰り返してる。
「そうじゃないなら、返してよぉ…。
夫の血を…。グレッドの血を…。ラスタフォルス侯爵家の正当な血を返してぇ…」
眼が血走って、あきらかに常軌を逸している…。
本当に、今すぐ病院に行けって言いたい。
「もう面倒くさいから言うがな…」
ギリアムが…私の脇から出てきた。
「さっきから、正当な血、正当な血というがな。
本当に正当な血というなら、グレダル卿とエニシル夫人の血こそ、盟約に従った正当な
血筋と言えるぞ。
ヒルダ夫人の時代に盟約が強くなったが、元々、何百年もの付き合いがある。
その中で、エニシル夫人の家が、ラスタフォルス侯爵家にどれだけ貢献してきたと思ってるんだ?
それを…あまつさえキミは、奴隷扱いしたんだぞ?」
ギリアムは…ここでダイヤの方を向き、
「すまない、ダイヤ…。この言い方はできればしたくないんだが…これ以上ダリア夫人の
自分勝手な意見には、うんざりなんでな。
現実を突きつけてやった方がいいと判断した。
しかし…今から私が言う言い方は、キミにとって大変不快だと思う…。
だから、先に詫びておきたい…。本当に申し訳ない…」
するとダイヤは、にっこりと笑い、
「構いませんよ、ご当主様…。
オレはご当主様が、オレや仲間をどれだけ大切にしてくださっているか、よくわかっています。
オレもこのクソばばぁには、本気でうんざりしてます。
コイツを叩きのめす為なら、多少の傷くらい喜んで受けますよ」
ダイヤの言葉をもって…ギリアムは再び、ダリアに向き直り、
「そもそも!!!盟約を破った時点で、グレンフォ卿の血の方が、正当から外れたんだ!!
貴族家の盟約とは…それだけ強い力を持っているものなんだ!!
簡単に破れない…。だからこそ、簡単にも結ばない…。
ヒルダ夫人がキミと結婚したら、グレンフォ卿にラスタフォルス侯爵家を出て行くように言ったのは
それこそ真っ当で正しい事なんだ!!」
「つまり!!グレンフォ卿の血は!!キミと結婚した時点で、正当から雑種になったんだ。
それが貴族社会の…社交界の一般的な考え方となっているんだ!!
だから…酷い揶揄が出るのなんて、当たり前だろう!!出ない方が異常だ!!
その血を受けたグレッド卿も!!ここにいるダイヤも!!紛れもない正当な血じゃない!!
盟約破りの雑種の血なんだ!!」
「なんてことを!!訂正しなさい!!主人は…紛れもないラスタフォルス侯爵家の嫡長子!!
それを事もあろうに雑種などと!!」
やっぱり…。旦那をけなされると、凄い鬼気迫って睨むな…。
旦那を愛しているんだろうが…ここまでくると、執着の方が強そう…。
「雑種を雑種と言って、何が悪い!!
盟約破りとはそういう事だ!!自ら…正当な血を捨てたんだ!!
それをまず認めて、対処に当たるべきだったのに、貴様が全部壊したんだろうが!!
気骨のある忠義者をみんな辞めさせて、佞臣・奸臣だけで周りを固めた!!
耳障りのいい言葉しか吐かない者ばかりにした結果が、今の貴様の姿だ!!
鏡でよく見たらどうだ!!完全な犯罪者だろう!!」
ギリアムは…大抵の人間が、ちょっと引きそうなダリアの形相を物ともしない。
「そういうアンタは、奴隷の血じゃないか!!」
うっわ。首飛んでもおかしくない事、言いおった。
「そうだが、それがどうした?」
ギリアム…涼しい顔で答えた…。
ダリアの勢い…止まっちまった。
「その通り。私は元をたどれば、紛れもない奴隷の血さ。
ファルメニウス公爵家の初代は…親の顔も知らない、名前もない…常に裸で放り出されていたと
記録にある…紛れもない最下層の奴隷だったのさ」
「ああそうそう。奴隷番号39番…そう呼ばれていたらしい。
最初に買われた時…初代の値段は5ブロンズ(500円)ほどだったらしいぞ」
マジ…?
「用途は猛獣の餌だ」
まじか~!!人権どこ行った!!
「だが初代はな…両手足を縛られた状態で、自分の体の2倍以上ある猛獣の檻に入れられた時…。
一瞬でその猛獣を食い殺し…肉を貪り食ったそうだ」
……本当に人間なの?
「それを見たオーナーが、剣闘士にしろと言ったそうでな。
そこから…常勝無敗を繰り返し、一代でこの国の…爵位第一位の公爵にまで上り詰めたのさ」
ギリアムの顔が…冷ややかな笑いに包まれる。
「私は先ほど…正当だ雑種だと言ったがね…。そんなことは、些細な事だと思っているよ。
ここにいるダイヤは…紛れもなく雑種の血の上、元犯罪者だ…。だがそれが、なんだと言うんだ?」
「彼は…彼と仲間たちは、紛れもなくフィリーに忠誠を誓い、フィリーの身を自分の身より大切に
している。私が何より重要視したのは、そこだ。
フィリーに忠誠を誓い、どんなことをしてもフィリーの敵を殲滅する力がある。
それがあれば、私は雑種だろうが、正当だろうが、奴隷だろうが、犯罪者だろうが、起用するよ。
そんっなくだらない事を気にして、大事なフィリーに少しでも不具合が出ては、たまったもんじゃ
無いからね…」
「彼は…彼らは今、誰もがうらやむ、ファルメニウス公爵夫人の護衛騎士だ。
この国で1,2を争う、名誉ある地位だ。
その地位は、正当な血だから手に入れられた?馬鹿も休み休み言え。
彼らが…自分の価値を私に示したに過ぎない。血など関係ないね。ついでに身分もだ」
ギリアムが…ちょっとわざとらしく手を振りつつ、
「私は先ほど、グレンフォ卿を雑種と言ったがね。
グレンフォ卿は確かな力を、近衛騎士団で示して、しっかりと地位を確立させただろう?
正当な血に同じことができるか?できないさ。
血というのは、1つの目安として言われるだけで、実際の技能はまた別さ。
ただ…そう言った事に揶揄する人間が多い事は、しっかりと把握すべきだった…と言う事さ」
「もっと言えば、そんな揶揄を貴様はなぜそんなに気にするのだ?
私を奴隷と罵りたければ、罵ればいいさ。
どうせ…私と同じことができる奴なんて、罵るやつにはいないんだから。
初代だってそうさ。元奴隷と一生言われ続けたが、言った奴を鼻で笑うだけで済ませたそうだ。
鼻で笑われた奴は、初代が正面に立っただけで、コソコソと逃げ出したそうだよ。
そんな奴に認められたい精神が、まず理解できんね」
ギリアムが…口上を一回止め、呼吸と表情を整えた。
私は…その動向を、黙って見守ることにした。
……精神病患者、これ以上相手にすんの、ホントにめんどいし。
イライザの父母が悪い道に進んだのも、絶対にイザベラの影響です!!
だから…イザベラさえいなければ…」
眼を見開いたダリアが…唾とばしながら言ったのがそれ…。
……イザベラ関係ないっしょ、絶対に。
「イザベラが現れてから…グレッドは日に日にイライザに冷たい態度を…。
全部イザベラが裏で操っていて…。イライザはあんなにいい子なのに、冷たくして…」
いや…。アンタがイザベラ実家のしてたこと見抜けたら、もう少し違ったと思うが?
そもそも、ヒルダ夫人に対抗して、社交界の為のドレスなんぞ、自分で見繕うから
失敗するんだっての。
「どんなに強く言っても…聞き入れなくて…そもそも私と話をしようともしない。
イライザとも…。イライザはグレッドの事だけを考えて、あんなに勤勉にラスタフォルス侯爵家の
事を勉強して…。騎士の訓練も一日も休まなかった。社交界だって、足繁く出て…地位を築くために
頑張っていた…。それなのに…。
グレッドの為に、何が必要か…真剣に考えて、行動して…。グレッドの為に…。
それなのに、話もしない。話をしようと何度も言ったのに…」
「それはしょうがあるまい?
そもそもどんなに話をしようとしても、最初に話を聞かなかったのは、アナタなのだから。
人は…話しても無駄だと思えば、話などせんさ。
私は…すでに物心ついたころには、私の父母にマトモな話など、通用しないと諦めたぞ」
ホントにヒデー親だったんだな…。
「それから…イライザ卿のグレッド卿への思いが、嘘とは言わんがね。
意中の人を虐めるような人間と、それに…無意識とはいえ加担した人間なんぞ、当人からすれば
ゴミくず以下だ。優しくする理由も話をする意味もない」
……ギリアム。未だに声かけて来るヤツ、いるみたいだからな…。
「うるさい!!
結局グレッドは騙されたまま…結婚式をすっぽかしてイザベラと逃げた!!
私もイライザも…一気に地獄に叩き落とされた!!
全部全部全部…あの女のせいで…あの女のせいで…。
イライザは頑張って…社交界で交流を作っていたのに…全部…フイになった…。
私だって…駆け落ち息子の母親なんて…そんな事を…。
イザベラが悪いと言ったら、そいつにしてやられて、たった一人の跡継ぎを失ったバカ嫁って…」
いや…泣くなよ。
全部自分の自業自得だろう…。
自分の見たいものしか見ず、信じたいものしか信じなかった結果だろ?
ちらりとギリアムを見れば…ギリアムも冷め~た目をしてたから、私と同じ考えだろう。
「夫は…社交界に出なくていいと言ってくれて…この時ばかりは従って…騎士の仕事に
精を出した…。その傍ら、2人の行方を探したけれど…何もつかめなかった…。
社交界に出なくなっても、貴族のつながり上の付き合いに出れば…必ず…影で笑う声が
聞こえる…。私を…嘲笑う声が…」
また…死んだ魚の目になったな。…ってか、それも被害妄想かもよ?
「でも…でも、数年後に!!イライザの父母が連絡してきた!!
イザベラが…グレッドの子供を連れて帰って来たと!!
グレッドは残念な事になったけれど、子供2人が残ったと!!
神に感謝した瞬間だった」
……神という名の悪魔に、魅入られた瞬間だったか…。
「すぐに…書類を作って2人を引き取った!!でも…」
ここでダリアの顔が、一気に曇り、
「どう見ても…グレッドの子じゃなかった…。
でもだからこそ、希望が湧いた!!
やっぱり…イザベラなんて悪女と、グレッドは上手くいかなかった。
すぐに別れて…どこかできっと生きている!!!
養子に出したと言った子は、グレッドが引き取って育てているんだと!!
だから…見つけ出して、2人とも我が家に迎えれば…全てが元通り!!」
……出たよ。中二病独特ったら失礼かもだけど、すげぇ自分勝手な脳内変換…。
「引き取った子は…思えば哀れだから、しっかりと育てた…」
そこだけは褒めてやる。
「どうせお義母様は、もう長くない…。
お義母様が死んだら…イザベラを捕えて、ゆっくりと真実を吐かせればいい。
そう思った…」
やっぱりか~。
ここで…曇った顔がさらにどんよりする。
「でも…お義母様は…ちっとも…。
ダリナとグレリオがどんどん大きくなって…グレリオが成人を迎えても、まだ…。
夫に言って、グレリオの後継者発表は待ってもらった…。
ラスタフォルス侯爵家の血を…夫の血を引かない者を、跡取りには出来ないから」
「頑張って探して探して…でも…、一向にグレッドの足取りは掴めない。
私は…神に祈った。今まで正しく生きてきたのだから、温情を下さいと…」
……正しく生きてきたとは、思えないと何度言えばわかるん?
わかんないから、ここにいる羽目になってんだろーけど。
「その願いはかなった!!」
……叶った事が、良かったかどうか、わからんよ、本当に…。
ダイヤが出てきたことで…今までずっと隠されて来た真実が、全部明るみになった。
そのせいで…だいぶ、ひっちゃかめっちゃかになっただろうが。
「グレッドが…グレッドが私の前に、現れてくれた!!!」
いや、グレッド死んでる。それダイヤ。
もう…あの時点で、精神に異常をきたしてたんだな…まあ、わかってたけどさ。
「これで全てが元通りになる!!ラスタフォルス侯爵家に…夫の血が戻る!!
グレッドの時と違って、護衛騎士として活躍している!!
だったら騎士が嫌いなんて、言わない!!流星騎士団ともうまくやれる!!
貴族の勉強なんて、今からやればいい!!
私の役目は…それを全力でサポートすることだと…」
なんかもう、言葉発するの嫌になって来た。
貴族の勉強って、上位になればなるほど、多岐にわたる。
アンタがやれと言われて投げ出したもんを、やりたがってもいない人間に押し付けんな!!
この、ジコチューが!!
「だから…少ないけれど、確かな伝手を頼ったのに…」
また顔が曇った…。ころころ忙しいな。
躁うつ病にもかかってんのか?この人…。
「みんな…断られた…。
ファルメニウス公爵家だから…。オルフィリア公爵夫人に失礼を働いたから…。
私の気持ちも悲願も知っているのに!!誰も…。何で…?
私はただ…ラスタフォルス侯爵家を正しい形に戻そうとしただけ…。
夫の血を…戻そうとしただけなのに…。
間違った事なんて、1つもしてないのに…」
私とギリアムを見据え、大粒の涙を流す。
「何で…なんで、協力してくれないのぉ…。
ラスタフォルス侯爵家がどうなったって、アンタたちはいいってことよね…。
聖人君子だ、聖女だって言われていたって、化けの皮を剥げば冷徹な人間よ…。
滅びようが何しようがお構いなし…。正当じゃない脇道に逸れた血に継がせればいいと…。
正当な血じゃない…。脇の血に…」
なんかもう…壊れたレコーダーみたいに、繰り返してる。
「そうじゃないなら、返してよぉ…。
夫の血を…。グレッドの血を…。ラスタフォルス侯爵家の正当な血を返してぇ…」
眼が血走って、あきらかに常軌を逸している…。
本当に、今すぐ病院に行けって言いたい。
「もう面倒くさいから言うがな…」
ギリアムが…私の脇から出てきた。
「さっきから、正当な血、正当な血というがな。
本当に正当な血というなら、グレダル卿とエニシル夫人の血こそ、盟約に従った正当な
血筋と言えるぞ。
ヒルダ夫人の時代に盟約が強くなったが、元々、何百年もの付き合いがある。
その中で、エニシル夫人の家が、ラスタフォルス侯爵家にどれだけ貢献してきたと思ってるんだ?
それを…あまつさえキミは、奴隷扱いしたんだぞ?」
ギリアムは…ここでダイヤの方を向き、
「すまない、ダイヤ…。この言い方はできればしたくないんだが…これ以上ダリア夫人の
自分勝手な意見には、うんざりなんでな。
現実を突きつけてやった方がいいと判断した。
しかし…今から私が言う言い方は、キミにとって大変不快だと思う…。
だから、先に詫びておきたい…。本当に申し訳ない…」
するとダイヤは、にっこりと笑い、
「構いませんよ、ご当主様…。
オレはご当主様が、オレや仲間をどれだけ大切にしてくださっているか、よくわかっています。
オレもこのクソばばぁには、本気でうんざりしてます。
コイツを叩きのめす為なら、多少の傷くらい喜んで受けますよ」
ダイヤの言葉をもって…ギリアムは再び、ダリアに向き直り、
「そもそも!!!盟約を破った時点で、グレンフォ卿の血の方が、正当から外れたんだ!!
貴族家の盟約とは…それだけ強い力を持っているものなんだ!!
簡単に破れない…。だからこそ、簡単にも結ばない…。
ヒルダ夫人がキミと結婚したら、グレンフォ卿にラスタフォルス侯爵家を出て行くように言ったのは
それこそ真っ当で正しい事なんだ!!」
「つまり!!グレンフォ卿の血は!!キミと結婚した時点で、正当から雑種になったんだ。
それが貴族社会の…社交界の一般的な考え方となっているんだ!!
だから…酷い揶揄が出るのなんて、当たり前だろう!!出ない方が異常だ!!
その血を受けたグレッド卿も!!ここにいるダイヤも!!紛れもない正当な血じゃない!!
盟約破りの雑種の血なんだ!!」
「なんてことを!!訂正しなさい!!主人は…紛れもないラスタフォルス侯爵家の嫡長子!!
それを事もあろうに雑種などと!!」
やっぱり…。旦那をけなされると、凄い鬼気迫って睨むな…。
旦那を愛しているんだろうが…ここまでくると、執着の方が強そう…。
「雑種を雑種と言って、何が悪い!!
盟約破りとはそういう事だ!!自ら…正当な血を捨てたんだ!!
それをまず認めて、対処に当たるべきだったのに、貴様が全部壊したんだろうが!!
気骨のある忠義者をみんな辞めさせて、佞臣・奸臣だけで周りを固めた!!
耳障りのいい言葉しか吐かない者ばかりにした結果が、今の貴様の姿だ!!
鏡でよく見たらどうだ!!完全な犯罪者だろう!!」
ギリアムは…大抵の人間が、ちょっと引きそうなダリアの形相を物ともしない。
「そういうアンタは、奴隷の血じゃないか!!」
うっわ。首飛んでもおかしくない事、言いおった。
「そうだが、それがどうした?」
ギリアム…涼しい顔で答えた…。
ダリアの勢い…止まっちまった。
「その通り。私は元をたどれば、紛れもない奴隷の血さ。
ファルメニウス公爵家の初代は…親の顔も知らない、名前もない…常に裸で放り出されていたと
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最初に買われた時…初代の値段は5ブロンズ(500円)ほどだったらしいぞ」
マジ…?
「用途は猛獣の餌だ」
まじか~!!人権どこ行った!!
「だが初代はな…両手足を縛られた状態で、自分の体の2倍以上ある猛獣の檻に入れられた時…。
一瞬でその猛獣を食い殺し…肉を貪り食ったそうだ」
……本当に人間なの?
「それを見たオーナーが、剣闘士にしろと言ったそうでな。
そこから…常勝無敗を繰り返し、一代でこの国の…爵位第一位の公爵にまで上り詰めたのさ」
ギリアムの顔が…冷ややかな笑いに包まれる。
「私は先ほど…正当だ雑種だと言ったがね…。そんなことは、些細な事だと思っているよ。
ここにいるダイヤは…紛れもなく雑種の血の上、元犯罪者だ…。だがそれが、なんだと言うんだ?」
「彼は…彼と仲間たちは、紛れもなくフィリーに忠誠を誓い、フィリーの身を自分の身より大切に
している。私が何より重要視したのは、そこだ。
フィリーに忠誠を誓い、どんなことをしてもフィリーの敵を殲滅する力がある。
それがあれば、私は雑種だろうが、正当だろうが、奴隷だろうが、犯罪者だろうが、起用するよ。
そんっなくだらない事を気にして、大事なフィリーに少しでも不具合が出ては、たまったもんじゃ
無いからね…」
「彼は…彼らは今、誰もがうらやむ、ファルメニウス公爵夫人の護衛騎士だ。
この国で1,2を争う、名誉ある地位だ。
その地位は、正当な血だから手に入れられた?馬鹿も休み休み言え。
彼らが…自分の価値を私に示したに過ぎない。血など関係ないね。ついでに身分もだ」
ギリアムが…ちょっとわざとらしく手を振りつつ、
「私は先ほど、グレンフォ卿を雑種と言ったがね。
グレンフォ卿は確かな力を、近衛騎士団で示して、しっかりと地位を確立させただろう?
正当な血に同じことができるか?できないさ。
血というのは、1つの目安として言われるだけで、実際の技能はまた別さ。
ただ…そう言った事に揶揄する人間が多い事は、しっかりと把握すべきだった…と言う事さ」
「もっと言えば、そんな揶揄を貴様はなぜそんなに気にするのだ?
私を奴隷と罵りたければ、罵ればいいさ。
どうせ…私と同じことができる奴なんて、罵るやつにはいないんだから。
初代だってそうさ。元奴隷と一生言われ続けたが、言った奴を鼻で笑うだけで済ませたそうだ。
鼻で笑われた奴は、初代が正面に立っただけで、コソコソと逃げ出したそうだよ。
そんな奴に認められたい精神が、まず理解できんね」
ギリアムが…口上を一回止め、呼吸と表情を整えた。
私は…その動向を、黙って見守ることにした。
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そして迎えた学園卒業パーティー。
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