ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第6章 空回

1 おめでと~う

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さて…うららかな春の日…。

私とギリアムは庭のテラスで、お客様をお迎えしていた。

メンツは…ヴィネラェ、メイリン、ステファン、ドロテア、ドロシー、ドルグスト卿。
そして…ウチの護衛騎士のビロッディ。何故いるかと言うと…。

「この度は…お招きありがとうございます。
ギリアム公爵閣下、オルフィリア公爵夫人…」

皆さまが綺麗な挨拶をしてくれた。

「いいえ。この度は…めでたい事になりましたからね。
そのお祝いもかねて、少しお話する機会を設けましたからね」

ダイヤの件が…ようやっと片付いたからね。

「あ、あの…」

まず真っ先に、ドロシーが歩み出て、

「私の不始末で…ご迷惑をおかけいたしまして、本当に申し訳ございません。
今後は…このような事が無いように、努めます!!」

本当に…平身低頭に詫びてくれた。

「……もういいですよ。あの記事は…私を貶めたい連中が出したもので、アナタは無関係だと
わかっています。
それに…あの小説だって、そもそも私が主役ではなかったのでしょう?
アルフレッド卿とドロテア嬢…そしてアンナマリー嬢がモデルだったのでしょう?」

「は…はい…」

ドロシーは素直にうなずいた。

「アナタとしては…姉の頑張りを、メイリン嬢と同じように近くで見ていたからこそ、我慢
ならなかったのだと思いますがね。
でも…安易な事をすると、酷い傷を負う場合が往々にしてあります。
その事がわかったなら…もう少し慎重になることを、お勧めしますよ」

「もちろんです!!今後は…父母にも姉にも…しっかりと相談します!!
それにもう…あの小説のようなものを、書く必要もなくなりましたし…」

まあね…。
ん?何でかって?

それはね…。

「では…改めて…」

ギリアムが代表のように立ち上がり、

「ビロッディ!!おめでとう!!ウチを出ても、元気でな!!」

肩を叩き、笑顔を向ける。

「ありがとうございます。ご当主様…」

実はね!!この度!!

ビロッディとドロテアが、正式に婚約いたしましたぁ~。

……驚いたよね、うん。
私も驚いた。

ドロテアはウチに来てから…ビロッディにイロイロ説明して貰ったりして…。
ウチでしっかりやれるだけあって、さりげない気遣い、得意なんだよビロッディ君。
アルフレッド卿の事…完全に忘れた訳じゃないけど、アルフレッド卿の心はアンナマリー嬢から
動かいみたいだし…。
それに今回のモントリアの件も含め、悩んでいる時、ビロッディが剣の稽古に誘い出して…。
汗を流すと…自ずと覚悟も色々決まったみたい。
だから…感謝するうちに、次第に…昔もそんな感じだったって、思い出して…。

ビロッディは子爵家の五男坊で…その家も、決して裕福ではなかったから…。
自分に回ってくる財産はないだろうと、騎士の道に入ったそうな。
自分一人でしっかりと…生計を立てる道を、幼いころから模索した結果だ。
だから、かなり考え方がしっかりしてた。

ドルグスト卿も認めて…婿養子として、入ることに決まったのさ。

そしてガルドベンダの家臣であるゼフィガルダ侯爵家の婿養子になる以上…ファルメニウス公爵家に
置くのは…と言う事で、ウチをやめてドルグスト卿の下で働くことになった。

「いやはや…。私は娘たちが望むなら、2人とも嫁に出してもいいかと思っていたのですがね。
この度…いい形でまとまって、良かったですよ」

ご機嫌なドルグスト卿。

「ドロテア…。おめでとう…。
ドロテアと姉妹になれないのは、残念だけど…。
気持ちが向かない人を無理やり添わせると、酷いことになるって…モントリアの件でわかったから。
ドロテアが幸せになれるなら、応援するね!!」

笑いながら…ドロテアの手を掴んでいた。
……少しは成長したね。
頑張って助けに行った甲斐があったよ。

「ひとまず…いい形になったなら、良かったですよ。
ドロテアの事、よろしくお願いしますね」

ヴィネラェも…メイリンと同じように、思ったらしい。
ツェキオ殿に会って…何だか穏やかになったような感じだし。
いい影響が出たならば、良かった。

「まあでも…良かったよ。
オレは…ドロテアがお兄様を振り向かせることは、できないだろうって思ってたしなぁ…」

ステファンがぽつっと言った。

「ええっ!!どうしてよ!!」

納得できない…とばかりに、メイリンが出る。

「ん?だってさ…。そもそもドロテアの外見が、お兄様の好みじゃないのさ」

「えええ~」

初耳なんだけどぉ~、と顔に書いている。

「アナタそんな事知っていたなら、言ってくれれば…」

ヴィネラェもちょっと納得いかないよう。

「オルフィリア公爵夫人の肖像画が、初めて新聞に載った時…」

なぬ?私?

「お兄様、ぽつっと言ってたんだよ。
ギリアム公爵閣下って、オレと女の好みが一緒なんだ…って」

「え?そんな事言ってたの?」

メイリンが本当に驚いている。

「それで思ったんだよ。お兄様ってさ…ドロテアみたいな、いかにもな細身美人がタイプじゃ
ないんじゃないか…って。
オルフィリア公爵夫人とアンナマリー嬢って…オレに言わせれば、外見のタイプが一緒だ。
美人って言うより、可愛い系。そんで…細さより、健康さを重視した体型…」

……私の身分が高いから、丸太とは言えないようだ。
いや!!
私…くびれあるよ!!あるけどさ…。
スタイル良い、モデル美人のドロテアと比べたら…丸太もいい所。

「あと…アンナマリー嬢みたいな、表情豊かなタイプが好きみたいだ。
ころころ変わる表情が、一緒にいて楽しいって言ってたし…」

「アンナマリー嬢って、よく転んだり、奇想天外な動きをするらしくて…。
予測がつかなくて、面白いとも…言ってたな、うん」

……だいたい、わかった。
完璧美人より、ちょっとおドジな可愛い系が好きなんだ。

「そう…だったのですね…」

ドロテアはやっぱり複雑そうな表情をするが、

「教えて下さり、ありがとうございます、ステファン様」

お辞儀をするその態度に…もうあまり、迷いはないようだ。

これは私の持論だが…。
女って、一度恋に区切りを付けちまうと、本当に今までの執着が、嘘みたいになくなるんだよね。
どっちかってーと…。男の方が引きずる…うん。

「でも、ここにステファンお兄様が来るなんて、意外ぃ~。
今まで本当に、どっちつかずだったのに…」

メイリンは…留学先で散々ステファンに、味方しろと言ったが、ステファンは受け流していた。

「そりゃそうだろ。お前の味方しても、お兄様の味方しても、結局気まずくなるだけじゃん。
でも、今回はいい感じでまとまったし、ツェキオ大伯父様の時の件もあって、オルフィリア公爵夫人
とは話してみたいと思ったしな。
それに何より、お兄様に雑用を押し付けられるのは、御免だよ」

「へ?どういうこと?」

頭に?が浮いているメイリンに対し、

「……お前、本当にわからないのか?」

ちょっと呆れているステファン。

「今まで…お兄様よりむしろ、オレに対しての求婚の方が多い事…不思議に思わなかったのかよ?
お兄様は能力がないわけでも、性格が悪いわけでもないのにさ」

ああ、そう言えば…と、思い出しているようだ。

「それって、ドロテアがいたからだぜ」

「え?でも…ドロテアは婚約者だったわけじゃ…」

「……ドロテアの師が、私だったことも、大きいのですよ、メイリン」

ヴィネラェが割って入る。

これは…貴族の家では一般的にある事なのだが…。
幼いころから己の家で、将来の伴侶となる者を、教育することはよくある事だ。
その場合…モノになるまで、正式なお披露目は差し控えられる。

「だからよ。社交界じゃ…正式発表があるまで、表立っては言われないけどよ。
みんな…将来、お兄様にはドロテアが添う事が、暗黙の了解みたいに見られていたのさ。
ドルグストんちは5代前からウチに仕えているし、身分も侯爵だからまさにピッタリってな」

「なるほどね…。
じゃあそれがなくなったから、お兄様の元に求婚者が殺到するわけか…。
でも求婚状なんて、その気はない…の一言でいいんじゃない?
もしくは無視する…とか」

「それはお勧めできんな」

ギリアムがやっぱりいきなり参戦。

「私は…実際大幅に求婚状を無視したし、返事が必要なら使用人に任せた。
だがそれをするとな…。向こうは雑に扱われていると認識する。
選んだ相手が自分より身分が高ければ、まだ…気を使いもするがな。
私が選んだフィリーは…身分が最下層だったから、全てのやっかみが、私ではなくフィリーに
行ってしまった。これは、私の反省点だ」

ま~ね。社交界での失礼伝説しかり…ね。

「まあ、だからさ。
一定レベル以上の家には、それなりの文面を考えて、直筆で断り書きを送る方が無難なのさ。
それでも…相手がアンナマリー嬢じゃ、やっかみは出るだろうがな…。
お兄様は文章考えるのが苦手な訳じゃないけど…数が多すぎるとさすがにな。
判を押したみたいに、同じ文章だと、貴族はどこかで繋がってるから…結局雑に扱われたって
言われるだけだろうし…。
だからオレは、ここに避難してきた面もあるのさ。
ドロテアが婚約して、婿と一緒にドルグストの家を継ぐと発表されたのは、昨日だろう?
早い奴はその時点で動いたろうから…今日は凄い量の求婚状が来ていておかしくないぜ」

ステファンは非常に理にかなった説明をした。

「じゃあ、私にも声がかかるかしら?」

「可能性はあるだろうな」

「無視していいわよ、2人とも」

ヴィネラェがそっこーで答える。

「いじめもしないけれど、協力もしない…前にそう言ったのですからね。
アナタ達は…アナタ達のやりたいことに、時間を使う権利があります。
この問題は…アルフレッドが自分で考える事よ」

厳しいね…。まあ、他家の事ゆえ、何も言わんけんどね。

「それはそうと、ギリアム公爵閣下」

おや、ギリアムに行ったよ。

「デラズヴェル男爵家は…いつ頃まで匿うおつもりですか?」

「ん?もう誘拐事件もモントリアの件も…解決したから、近々出ていってもらう予定だ。
理由がない状態で、この家に置くつもりはない」

あっさりギリアム。

「そうですか…。なら、結構です…」

ヴィネラェのこの言葉の意味は…後々わかるんだけどね…。
この後は…みんなでお祝いの言葉や、贈り物などをして…かなり楽しく過ごしましたとさ。
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