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第6章 空回
2 泣き言を言うな!!
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「みんなぁ~。少しぐらい、手伝ってくれよぉ~」
ドロテアの婚約発表から1週間程経った、ガルドベンダの夕食の場で、アルフレッドが
見事な泣き言をほざいていた。
この夕食時には…家族が全員揃っていたのだ。
アルフレッドがこう言うのは、もちろん…ステファンやヴィネラェの予想通り、求婚状が
殺到して…元々の仕事を圧迫する勢いだったから。
もちろん…アンナマリーに会いに行く時間など、取れるわけがない。
「泣き言を言うな、アルフレッド」
最初に口を開いたのは、ツァリオ。
「わしの時にも、同じくらいの量の求婚状が常に舞い込んだわ。
今までが異常だったと思わなかったなら、お前の思慮不足だ。
諦めてしっかりと、対策を取れ」
そして…ツァリオらしく、とっても厳しい。
「私も…近々、サロンを再開する予定で、そっちの準備に余念がないから無理よ」
アイリンも…かなり冷たく言い放つ。
「オレはやる気ないですよ、お兄様。
アカデミーに戻って…やってみたいことも出来ましたからね。
その為に自分の時間を使います!!」
ステファンは…ここ最近のツァルガの様を見て、少しはしっかりしないと…と、思ったようだ。
温泉郷で様々な事を体験し…温泉の効能や成分それ自体が薬になる事などに興味を持ち、
研究してみる事にしたのだ。
「私もよ。ドロテアの結婚式の準備も、手伝うって約束したし。時間な~い」
メイリンのこれは本当。今まで…姉妹のように育ってきたからこそ、盛大に門出を祝いたいのだ。
「私はそもそも、協力しませんって言いましたよね?」
ヴィネラェの答えも冷徹…。
「わ、わしはその…最近持病の腰痛が酷くて…」
ツァルガは…パンツいっちょで踊ったり、張りつけになったりしたあおりで…本当に腰を痛めた。
只今療養中だ。
「アルフレッド様…」
そんな時バドセットが、台車を引いた使用人と共に現れ、
「こちら…午後便で届きました、求婚状と贈り物でございます。
仕分けが済みましたので、専用のお部屋にお持ちしておきます。
なお…これはどれも、早めのお返事が必要な家々ですので、お間違いなくお願いします」
静かに報告するのだった。
よく見れば…扉の外にも、台車と使用人が…。
「多すぎるだろ!!さすがに!!」
アルフレッドは目くじらを立てるが、バドセットに言った所で、しょうがない。
「ふむ…。確かに、わしの時より多いな…。まあ、タイミングもあるかもしれんが…」
くどいようだが、この世界の貴族女性の適齢期はめっちゃ短い。
「あら、ツァリオ…。それは仕方ないわよ。アンナマリー嬢の影響もあるから」
ヴィネラェが…やっぱり当然だろうと言いたげに、出てきた。
「アンナマリー嬢が恋人だってこと、アルフレッドは隠していたようですがね。
見る者が見れば、そんなのはすぐにわかりますよ。
恋人同士っていうのは、独特の空気が出ますからね。
だから…アンナマリー嬢を相手に選ぶなら、ウチだって可能性はある…って、下位貴族が
躍起になっているのよ。オルフィリア公爵夫人の影響も大きいわね。
だから…ツァリオの時より、求婚状が多くて当然でしょう?」
もっともすぎるくらい、もっともな話である。
「そう言えばそうか…。まあ、頑張れアルフレッド」
完全に他人事…な、ツァリオだった。
「お父様~。手伝ってくださいよぉ~。
やってもやっても、たまる一方で…ちっとも終わらないんですよぉ~」
「だったら人を雇え」
貴族の家では、こう言った事は珍しくないので、それ専門の生業職がある。
だがそう言われた時…ぎくりと後ろに下がり、
「いえ、その…。金のかからない方法で何とか…」
アルフレッドがこう言うのは、訳がある。
ノッツェリジィ宮殿は…いわゆる犯罪現場になってしまったため、王立騎士団の調べが
終わるまでは、何もできなくなった。
貸し借りに使われた金は、ひとまず返上しろとは言われなかったが…。
調査が終了した後、ノッツェリジィ宮殿は…まあ見事に、全体的な補修が必要な状態になった。
だが…賠償するべき人間は、お縄になっている者と煙のように消えた者のみ。
つまり…実質どこにも損害請求などできない。
そして…いわゆる事故物件となったノッツェリジィ宮殿は、価格が暴落。
殆どタダみたいな値段で、手放さねばならぬ状態になってしまったのだ。
だからギリアムに借金の減額要求をしたら…見事に突っぱねられた。
潔く手放しておけば、良かっただけじゃないか…という、言葉と共に…。
「だったら地道に、自分で書け!!少しぐらい遅れた所で…ガルドベンダは揺るぎはせん」
「そんなぁ~」
結局…アルフレッドは今後しばらく、求婚状攻撃の対策を余儀なくされるのだった…。
-----------------------------------------------------------------------------------------
「ギリアム公爵閣下に、何とかお目通り願えないでしょうか?」
王立騎士団貴族部門となっている第一師団に…エドガーとイボンヌ、アンナマリーが訪れていた。
最初は団員が話を聞いていたのだが、埒が明かない…と言う事で、デイビスが出てきた。
「団長は非常にお忙しいのです。
こちらで…その必要があると判断したモノは、話しを通しますが、こちらで対処できるものは
こちらですることに、していますのでね」
あしからず…と、顔に書きつつ、冷静な声を発する。
「し…しかし…。本当に困っているんですよ!!」
補足するが、デラズヴェル男爵家は5日ほど前、使用人も含めてファルメニウス公爵家を出た。
誘拐犯とモントリアが捕まった故、これ以上置いておく理由がなくなったから。
ただ…戻ってすぐに、デラズヴェル男爵家は…かなりの厄介ごとに巻き込まれる羽目になった。
何かというと…。
今まで全くと言っていいほど来なかった…。
共同事業を一緒に立ち上げようと言う誘いが、わんさか来たのだ。
で、話しを聞いてみたら…どこもガルドベンダに噛んでもらうよう、しっかりと要求しろと。
これを言ってくるのが、いずれもデラズヴェル男爵家よりも上の身分。
ガルドベンダと関係性などないと言えば、嘘をつくなとかなり強く出られて…。
殆ど…脅しに近かったらしい。
とはいえ…。
「まあ、アンナマリー嬢がアルフレッド卿とお付き合いしているのは、少し調べればわかり
ますからね。
でも…これは王立騎士団でもファルメニウス公爵家でもなく、ガルドベンダ公爵家に直接
持って行く案件ですよ」
デイビスの答えは、当然これだった。
「ま、待ってください!!
王立騎士団は…困っている方々のために、あるのではないのですか!!」
アンナマリーが脇から声を上げたのだが、
「そうですよ。ですが…こちらが介入できる条件というのは、存在するんです。
まず…脅してきている人間達は、暴力的な事をしているわけでは無く、あくまで口頭です…。
だから…証拠は残していないし、とりようによっては、ただの商談と言えなくもありません。
何かをだまし取ったわけでもないですしね。
その状態では…双方の家で話をしてください…と、なります。
もっと言えば…原因にガルドベンダ公爵家が関わっている以上、ガルドベンダ公爵家に間に
入ってもらう案件だと判断します。
ガルドベンダ公爵家が…デラズヴェル男爵家との関係を否定すれば、おとなしくなりますよ。
きっと…」
デイビスは理路整然と、順序だてて説明する。
民事不介入…現代日本でもそんなものがあるが…まさに、王立騎士団のやれる範囲と言うのも
決まっているのだ。
相手もそれがわかっていて、ギリギリの線でデラズヴェル男爵家に脅しをかけている。
その線を逸脱しない限り…介入すれば、こちらの不手際と責め立てられる。
ダイロの妻・マリーアを助けるために…ギリアムが無理やり貴族の家に押し入ったのが、まさにそれ。
確かに捕まっていたのだが…証拠を出せと言われて、ダイロやマリーアを出せない以上、ギリアムに非があるとして、処理されたのだ。
「ですが…こちらといたしましても、ガルドベンダ公爵家に話をしろと言うのは、敷居が高く…。
それゆえ、ギリアム公爵閣下とお目通りしたかったのですが…」
イボンヌの話も最もである。
建国以来の家とは言え、男爵家と公爵家は、天と地ほども身分が違う。
通常なら…一緒の空間にまずいないし、舞踏会やパーティーだって、上位と下位が顔を合わせない
ようにいているモノとて、沢山ある。
ファルメニウス公爵家だって、もちろん敷居は高かろうが…。
王立騎士団は平民でも出入りができる場所ゆえ、結局こっちに来たのだろう。
「それは大丈夫でしょう。
ツァリオ閣下はウチの団長と同じで、礼節さえ守れば、話しは聞くお方ですよ」
フィリーが色眼鏡を外してからは、特にその傾向は強い。
「あ、あの!!ガルドベンダ公爵家を関わらせずに、解決する方法はないのですか!!」
やっぱりアンナマリーが出た。
彼女にしてみれば…ファルメニウス公爵家での失態で、アルフレッドに負担をかけた以上、
これ以上…迷惑をかけるような事はしたくないのだろうが…。
「……難しいでしょうね。
やってきている連中は、恐らくこう言った事は、これが初めてじゃないような気がします。
すっぽんと寄生虫を足したような連中は…毅然と対応できない限り、どこからでも来ようと
しますから。
曖昧な返事で退散してもらおうと、期待するのは早々に辞める事です。
ついでに言うと、ハッキリと嫌だと言ったって、こういう連中はおいそれと諦めません。
戦いは長丁場になるとも、覚悟した方がいい」
デイビスは過去にも事例があるのか、かなりしっかりと言葉を紡ぐ。
エドガーは…リアルでめまいがしたらしく、上半身を斜めにしてしまった。
「まあ…それも踏まえて、家族で考えるべきですね」
デイビスの話はここで終わる…かと思いきや、
「待ってください!!そんな連中を野放しにするんですか!!!
何も悪い事をしていない、私達家族が苦しんでいるのに!!
そんなの間違っています!!今すぐに全員、捕まえてください!!」
やっぱり声高に、アンナマリーが出てきた。
「無理ですよ。犯罪と言うのは、かなりグレーゾーンがあるものです。
この世の中は…白黒はっきり分かれているモノの方が少ない。
もっと言えば…善悪はその人間の立場によっても、変わるものです。
だから…明確な基準と証拠に照らし合わせて、周りが判断できるように司法というものが
出来上がったのです」
警察機構にいる者は、恐らくこのことを身をもって一番思い知るんだろうが…。
「じゃあ!!王立騎士団は人に迷惑をかけた人間を、ほっとくって言うんですね!!
そうなんですね!!」
「アンナマリー!!よしなさい!!」
アンナマリーの剣幕にイボンヌが止めに入るが、
「私は間違った事は言ってません!!
お父様だってお母様だって…家に帰ってきてから、気が休まらないって言っているじゃ
ないですか!!私の誘拐の件で、ただでさえやつれてしまわれたのに!!酷すぎます!!
人に迷惑をかける人間なんて、全部捕まえるべきです!!」
正義は我にあり…と、無意識下でも思ってしまっているようだが、
「……そこまで言うなら、言わせていただきますが」
デイビスの目が鋭くなる。
「その理論で言うなら、アナタも牢屋行きですよ、アンナマリー嬢」
静かな言葉は…それが真理であると、強く訴えている。
「な、なんでそんな事になるんですか!!私は何も…」
「ファルメニウス公爵家での悶着…。団長から聞いているんですよ!!」
デイビスが知らないと思っていたのか、はたまた…単純に頭から抜けていただけなのか、
アンナマリーはぎょっとする。
ドロテアの婚約発表から1週間程経った、ガルドベンダの夕食の場で、アルフレッドが
見事な泣き言をほざいていた。
この夕食時には…家族が全員揃っていたのだ。
アルフレッドがこう言うのは、もちろん…ステファンやヴィネラェの予想通り、求婚状が
殺到して…元々の仕事を圧迫する勢いだったから。
もちろん…アンナマリーに会いに行く時間など、取れるわけがない。
「泣き言を言うな、アルフレッド」
最初に口を開いたのは、ツァリオ。
「わしの時にも、同じくらいの量の求婚状が常に舞い込んだわ。
今までが異常だったと思わなかったなら、お前の思慮不足だ。
諦めてしっかりと、対策を取れ」
そして…ツァリオらしく、とっても厳しい。
「私も…近々、サロンを再開する予定で、そっちの準備に余念がないから無理よ」
アイリンも…かなり冷たく言い放つ。
「オレはやる気ないですよ、お兄様。
アカデミーに戻って…やってみたいことも出来ましたからね。
その為に自分の時間を使います!!」
ステファンは…ここ最近のツァルガの様を見て、少しはしっかりしないと…と、思ったようだ。
温泉郷で様々な事を体験し…温泉の効能や成分それ自体が薬になる事などに興味を持ち、
研究してみる事にしたのだ。
「私もよ。ドロテアの結婚式の準備も、手伝うって約束したし。時間な~い」
メイリンのこれは本当。今まで…姉妹のように育ってきたからこそ、盛大に門出を祝いたいのだ。
「私はそもそも、協力しませんって言いましたよね?」
ヴィネラェの答えも冷徹…。
「わ、わしはその…最近持病の腰痛が酷くて…」
ツァルガは…パンツいっちょで踊ったり、張りつけになったりしたあおりで…本当に腰を痛めた。
只今療養中だ。
「アルフレッド様…」
そんな時バドセットが、台車を引いた使用人と共に現れ、
「こちら…午後便で届きました、求婚状と贈り物でございます。
仕分けが済みましたので、専用のお部屋にお持ちしておきます。
なお…これはどれも、早めのお返事が必要な家々ですので、お間違いなくお願いします」
静かに報告するのだった。
よく見れば…扉の外にも、台車と使用人が…。
「多すぎるだろ!!さすがに!!」
アルフレッドは目くじらを立てるが、バドセットに言った所で、しょうがない。
「ふむ…。確かに、わしの時より多いな…。まあ、タイミングもあるかもしれんが…」
くどいようだが、この世界の貴族女性の適齢期はめっちゃ短い。
「あら、ツァリオ…。それは仕方ないわよ。アンナマリー嬢の影響もあるから」
ヴィネラェが…やっぱり当然だろうと言いたげに、出てきた。
「アンナマリー嬢が恋人だってこと、アルフレッドは隠していたようですがね。
見る者が見れば、そんなのはすぐにわかりますよ。
恋人同士っていうのは、独特の空気が出ますからね。
だから…アンナマリー嬢を相手に選ぶなら、ウチだって可能性はある…って、下位貴族が
躍起になっているのよ。オルフィリア公爵夫人の影響も大きいわね。
だから…ツァリオの時より、求婚状が多くて当然でしょう?」
もっともすぎるくらい、もっともな話である。
「そう言えばそうか…。まあ、頑張れアルフレッド」
完全に他人事…な、ツァリオだった。
「お父様~。手伝ってくださいよぉ~。
やってもやっても、たまる一方で…ちっとも終わらないんですよぉ~」
「だったら人を雇え」
貴族の家では、こう言った事は珍しくないので、それ専門の生業職がある。
だがそう言われた時…ぎくりと後ろに下がり、
「いえ、その…。金のかからない方法で何とか…」
アルフレッドがこう言うのは、訳がある。
ノッツェリジィ宮殿は…いわゆる犯罪現場になってしまったため、王立騎士団の調べが
終わるまでは、何もできなくなった。
貸し借りに使われた金は、ひとまず返上しろとは言われなかったが…。
調査が終了した後、ノッツェリジィ宮殿は…まあ見事に、全体的な補修が必要な状態になった。
だが…賠償するべき人間は、お縄になっている者と煙のように消えた者のみ。
つまり…実質どこにも損害請求などできない。
そして…いわゆる事故物件となったノッツェリジィ宮殿は、価格が暴落。
殆どタダみたいな値段で、手放さねばならぬ状態になってしまったのだ。
だからギリアムに借金の減額要求をしたら…見事に突っぱねられた。
潔く手放しておけば、良かっただけじゃないか…という、言葉と共に…。
「だったら地道に、自分で書け!!少しぐらい遅れた所で…ガルドベンダは揺るぎはせん」
「そんなぁ~」
結局…アルフレッドは今後しばらく、求婚状攻撃の対策を余儀なくされるのだった…。
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「ギリアム公爵閣下に、何とかお目通り願えないでしょうか?」
王立騎士団貴族部門となっている第一師団に…エドガーとイボンヌ、アンナマリーが訪れていた。
最初は団員が話を聞いていたのだが、埒が明かない…と言う事で、デイビスが出てきた。
「団長は非常にお忙しいのです。
こちらで…その必要があると判断したモノは、話しを通しますが、こちらで対処できるものは
こちらですることに、していますのでね」
あしからず…と、顔に書きつつ、冷静な声を発する。
「し…しかし…。本当に困っているんですよ!!」
補足するが、デラズヴェル男爵家は5日ほど前、使用人も含めてファルメニウス公爵家を出た。
誘拐犯とモントリアが捕まった故、これ以上置いておく理由がなくなったから。
ただ…戻ってすぐに、デラズヴェル男爵家は…かなりの厄介ごとに巻き込まれる羽目になった。
何かというと…。
今まで全くと言っていいほど来なかった…。
共同事業を一緒に立ち上げようと言う誘いが、わんさか来たのだ。
で、話しを聞いてみたら…どこもガルドベンダに噛んでもらうよう、しっかりと要求しろと。
これを言ってくるのが、いずれもデラズヴェル男爵家よりも上の身分。
ガルドベンダと関係性などないと言えば、嘘をつくなとかなり強く出られて…。
殆ど…脅しに近かったらしい。
とはいえ…。
「まあ、アンナマリー嬢がアルフレッド卿とお付き合いしているのは、少し調べればわかり
ますからね。
でも…これは王立騎士団でもファルメニウス公爵家でもなく、ガルドベンダ公爵家に直接
持って行く案件ですよ」
デイビスの答えは、当然これだった。
「ま、待ってください!!
王立騎士団は…困っている方々のために、あるのではないのですか!!」
アンナマリーが脇から声を上げたのだが、
「そうですよ。ですが…こちらが介入できる条件というのは、存在するんです。
まず…脅してきている人間達は、暴力的な事をしているわけでは無く、あくまで口頭です…。
だから…証拠は残していないし、とりようによっては、ただの商談と言えなくもありません。
何かをだまし取ったわけでもないですしね。
その状態では…双方の家で話をしてください…と、なります。
もっと言えば…原因にガルドベンダ公爵家が関わっている以上、ガルドベンダ公爵家に間に
入ってもらう案件だと判断します。
ガルドベンダ公爵家が…デラズヴェル男爵家との関係を否定すれば、おとなしくなりますよ。
きっと…」
デイビスは理路整然と、順序だてて説明する。
民事不介入…現代日本でもそんなものがあるが…まさに、王立騎士団のやれる範囲と言うのも
決まっているのだ。
相手もそれがわかっていて、ギリギリの線でデラズヴェル男爵家に脅しをかけている。
その線を逸脱しない限り…介入すれば、こちらの不手際と責め立てられる。
ダイロの妻・マリーアを助けるために…ギリアムが無理やり貴族の家に押し入ったのが、まさにそれ。
確かに捕まっていたのだが…証拠を出せと言われて、ダイロやマリーアを出せない以上、ギリアムに非があるとして、処理されたのだ。
「ですが…こちらといたしましても、ガルドベンダ公爵家に話をしろと言うのは、敷居が高く…。
それゆえ、ギリアム公爵閣下とお目通りしたかったのですが…」
イボンヌの話も最もである。
建国以来の家とは言え、男爵家と公爵家は、天と地ほども身分が違う。
通常なら…一緒の空間にまずいないし、舞踏会やパーティーだって、上位と下位が顔を合わせない
ようにいているモノとて、沢山ある。
ファルメニウス公爵家だって、もちろん敷居は高かろうが…。
王立騎士団は平民でも出入りができる場所ゆえ、結局こっちに来たのだろう。
「それは大丈夫でしょう。
ツァリオ閣下はウチの団長と同じで、礼節さえ守れば、話しは聞くお方ですよ」
フィリーが色眼鏡を外してからは、特にその傾向は強い。
「あ、あの!!ガルドベンダ公爵家を関わらせずに、解決する方法はないのですか!!」
やっぱりアンナマリーが出た。
彼女にしてみれば…ファルメニウス公爵家での失態で、アルフレッドに負担をかけた以上、
これ以上…迷惑をかけるような事はしたくないのだろうが…。
「……難しいでしょうね。
やってきている連中は、恐らくこう言った事は、これが初めてじゃないような気がします。
すっぽんと寄生虫を足したような連中は…毅然と対応できない限り、どこからでも来ようと
しますから。
曖昧な返事で退散してもらおうと、期待するのは早々に辞める事です。
ついでに言うと、ハッキリと嫌だと言ったって、こういう連中はおいそれと諦めません。
戦いは長丁場になるとも、覚悟した方がいい」
デイビスは過去にも事例があるのか、かなりしっかりと言葉を紡ぐ。
エドガーは…リアルでめまいがしたらしく、上半身を斜めにしてしまった。
「まあ…それも踏まえて、家族で考えるべきですね」
デイビスの話はここで終わる…かと思いきや、
「待ってください!!そんな連中を野放しにするんですか!!!
何も悪い事をしていない、私達家族が苦しんでいるのに!!
そんなの間違っています!!今すぐに全員、捕まえてください!!」
やっぱり声高に、アンナマリーが出てきた。
「無理ですよ。犯罪と言うのは、かなりグレーゾーンがあるものです。
この世の中は…白黒はっきり分かれているモノの方が少ない。
もっと言えば…善悪はその人間の立場によっても、変わるものです。
だから…明確な基準と証拠に照らし合わせて、周りが判断できるように司法というものが
出来上がったのです」
警察機構にいる者は、恐らくこのことを身をもって一番思い知るんだろうが…。
「じゃあ!!王立騎士団は人に迷惑をかけた人間を、ほっとくって言うんですね!!
そうなんですね!!」
「アンナマリー!!よしなさい!!」
アンナマリーの剣幕にイボンヌが止めに入るが、
「私は間違った事は言ってません!!
お父様だってお母様だって…家に帰ってきてから、気が休まらないって言っているじゃ
ないですか!!私の誘拐の件で、ただでさえやつれてしまわれたのに!!酷すぎます!!
人に迷惑をかける人間なんて、全部捕まえるべきです!!」
正義は我にあり…と、無意識下でも思ってしまっているようだが、
「……そこまで言うなら、言わせていただきますが」
デイビスの目が鋭くなる。
「その理論で言うなら、アナタも牢屋行きですよ、アンナマリー嬢」
静かな言葉は…それが真理であると、強く訴えている。
「な、なんでそんな事になるんですか!!私は何も…」
「ファルメニウス公爵家での悶着…。団長から聞いているんですよ!!」
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アンナマリーはぎょっとする。
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