【魔法使いの世界を旅する一年 2010/12〜】

Zezilia Hastler

文字の大きさ
7 / 40
序章

セントラル・ニホニアへのスカイダイビング

しおりを挟む
 おねえさんは、グロリアに向けて、にっこりと微笑んだ。「お久しぶり」

「うん」グロリアは、この人にしては珍しいことにそっけない様子で返事をすると、スタンドテーブルに近づき、書類に記入をした。「変わらないなー」

 おねえさんは、ふふふっ、と笑った。

 ぼくは、おねえさんを見上げた。
 ぼくは156cm。
 グロリアは180cmと、背が高い方だが、おねえさんの方はさらに背が高い。多分、2m近くある。

 おねえさんはにっこりと微笑んだ。

 ぼくも笑顔を返した。

 グロリアはぼくを見た。

 ぼくは、魔法で自分の体を宙に浮かべて、スタンドテーブルの上の書類に記入をした。

【出入国記録 2010 #144】

 書類には、いくつもの名前が並んでいた。記入に使われている文字や、記入されている名前を見るに、グロリアと同じ国出身の人たちのようだ。

 記入を終えたぼくは、箒を手に生み出した。

「ニホニアね」と、グロリアは言った。
「はいはい」と、おねえさんは言って、ドアを開けた。

 先日見たような大空が、ドアの向こうに広がっていた。
 この場所はかなりの高度にあるが、部屋の中が気圧の変化による強風によって掻き乱される、などといったことはなかった。

 グロリアは、箒も持たずに大空に飛び出した。

 ぼくは、箒に乗って大空に出た。宙に滞空しながらおねえさんを振り返ると、彼女は優しく微笑んで、ぼくに向かって手を振った。ぼくも、彼女に手を振り返し、グロリアを追った。


ーーー


 箒がなくても空を飛ぶことは出来る。ただ、それにはある程度以上の慣れが必要だ。

 グロリアは、鳥のように両手を広げて、大空の中をものすごい速さで滑空していった。

 ぼくも負けじと、箒に乗って彼女を追う。

 追いかけっこをしているからか、いつもよりも速度が出ている気がする。

 グロリアの横に追いついたと思ったら、グロリアは楽しそうな様子でぼくを一瞥して、再び速度を上げていく。

 腕の差を見せつけられているようで、なんか悔しくて、ムカついた。

 そこからはレースだった。

 おかげで、先日よりも早く地表に降り立つことが出来た。


ーーー


 石畳に足を着けたグロリアは、ジャケットを脱ぐと、それを振って、パッ、と、手品のように消した。瞬きをした次の瞬間には、グロリアの服装が変わっていた。白のTシャツに、七部丈の黒のパンツに、歩き易そうな水色のスニーカー。

 魔法で生み出した物だ。

 彼女の服はいつもハンドメイドで、その時々でシルエットやデザインが違う。
 気に入った物が出来た時は、先程のジャケットのように消したりはせずに、小さく丸めてポケットにしまったりするようなので、先程のジャケットはそのラインには達していないようだった。

 グロリアはタバコを咥えて火をつけた。「変わんないねーっ」その楽しそうな声から察するに、なんだかんだで、グロリアもこの世界が好きな様だ。「カフェ行こ。ドーナツドーナツ」と、グロリアはぼくの左腕を抱き寄せた。

 グロリアの新しい服装も納得なほど、今日は暖かかった。
 暖かいを通り越して、暑いくらいだ。
 Tシャツの生地が分厚いから気が付かなかったけれど、グロリアはブラをしていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...