【魔法使いの世界を旅する一年 2010/12〜】

Zezilia Hastler

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序章

セントラル・ニホニアへのスカイダイビング

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 おねえさんは、グロリアに向けて、にっこりと微笑んだ。「お久しぶり」

「うん」グロリアは、この人にしては珍しいことにそっけない様子で返事をすると、スタンドテーブルに近づき、書類に記入をした。「変わらないなー」

 おねえさんは、ふふふっ、と笑った。

 ぼくは、おねえさんを見上げた。
 ぼくは156cm。
 グロリアは180cmと、背が高い方だが、おねえさんの方はさらに背が高い。多分、2m近くある。

 おねえさんはにっこりと微笑んだ。

 ぼくも笑顔を返した。

 グロリアはぼくを見た。

 ぼくは、魔法で自分の体を宙に浮かべて、スタンドテーブルの上の書類に記入をした。

【出入国記録 2010 #144】

 書類には、いくつもの名前が並んでいた。記入に使われている文字や、記入されている名前を見るに、グロリアと同じ国出身の人たちのようだ。

 記入を終えたぼくは、箒を手に生み出した。

「ニホニアね」と、グロリアは言った。
「はいはい」と、おねえさんは言って、ドアを開けた。

 先日見たような大空が、ドアの向こうに広がっていた。
 この場所はかなりの高度にあるが、部屋の中が気圧の変化による強風によって掻き乱される、などといったことはなかった。

 グロリアは、箒も持たずに大空に飛び出した。

 ぼくは、箒に乗って大空に出た。宙に滞空しながらおねえさんを振り返ると、彼女は優しく微笑んで、ぼくに向かって手を振った。ぼくも、彼女に手を振り返し、グロリアを追った。


ーーー


 箒がなくても空を飛ぶことは出来る。ただ、それにはある程度以上の慣れが必要だ。

 グロリアは、鳥のように両手を広げて、大空の中をものすごい速さで滑空していった。

 ぼくも負けじと、箒に乗って彼女を追う。

 追いかけっこをしているからか、いつもよりも速度が出ている気がする。

 グロリアの横に追いついたと思ったら、グロリアは楽しそうな様子でぼくを一瞥して、再び速度を上げていく。

 腕の差を見せつけられているようで、なんか悔しくて、ムカついた。

 そこからはレースだった。

 おかげで、先日よりも早く地表に降り立つことが出来た。


ーーー


 石畳に足を着けたグロリアは、ジャケットを脱ぐと、それを振って、パッ、と、手品のように消した。瞬きをした次の瞬間には、グロリアの服装が変わっていた。白のTシャツに、七部丈の黒のパンツに、歩き易そうな水色のスニーカー。

 魔法で生み出した物だ。

 彼女の服はいつもハンドメイドで、その時々でシルエットやデザインが違う。
 気に入った物が出来た時は、先程のジャケットのように消したりはせずに、小さく丸めてポケットにしまったりするようなので、先程のジャケットはそのラインには達していないようだった。

 グロリアはタバコを咥えて火をつけた。「変わんないねーっ」その楽しそうな声から察するに、なんだかんだで、グロリアもこの世界が好きな様だ。「カフェ行こ。ドーナツドーナツ」と、グロリアはぼくの左腕を抱き寄せた。

 グロリアの新しい服装も納得なほど、今日は暖かかった。
 暖かいを通り越して、暑いくらいだ。
 Tシャツの生地が分厚いから気が付かなかったけれど、グロリアはブラをしていなかった。
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