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1日目 午前 空ちゃんとアパートへ
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4:00
目を覚ますと、そこは空港の中だった。
クッション性のあるソファの上。
構内を見渡せば、俺のように空港内で一眠りをした人々があちらこちらにいる。
早朝便を逃さないために空港泊をするというのはよくある話だった。
俺は、身を起こして空港の外に向かった。
二重の自動ドアを潜り抜ければ、早朝の香りがする。
澄んだ空気を、肺一杯に吸い込むと、意識が冴えた。
澄み切った空は、星々が煌めいている。
腕時計を見れば、まだ4時だった。
俺は、日本から持ってきたタバコを、フェルトコートの内ポケットから取り出した。
軽い箱に眉をひそめて中を見てみれば、最後の一本だった。
俺は、タバコを咥え、魔法で火をつけて、煙を吐いた。
空になったタバコの箱を、意味もなくスマホで撮る。
思い出みたいな物だろう。
自分がその時何を思ってそのような行動をしたかなんて、俺にはわからないことだった。
俺は、空港内に戻り、昨夜のカフェ&バーに向かったが、閉まっていた。
スーパーマーケットが開いていたので、そちらで空腹を満たすことにした。
サンドウィッチ、ハンバーガー、サラダ、スシっぽいもの、おにぎりっぽいもの、フリーズドライのイタリアン、日本製のカップ麺のそばには、何処製かもわからないカップ麺が並んでいた。
レンジで温めれば調理出来るフリーズドライはわかるが、フライ系はどうやって食べれば良いのだろう。
ここは空港だし、キッチンは客に見えるところにはない。
スタッフたちが従業員専用エリアのキッチンで料理するのかもしれないし、誰かが空港土産にしたりするのかもしれない。
俺は、寿司っぽいものとおにぎりっぽいもの、そして、緑茶を買うことにした。
こんな早朝だというのに、レジには数人が並んでいた。
スーツを着たり、赤い紐に繋がったカードを首からぶら下げたりシャツの胸ポケットに入れたりしているから、多分空港スタッフだ。
レジスタッフは座りながら、ベルトコンベアの上を流れてくる商品をさばいていた。
俺もその光景を見て、ベルトコンベアの上に寿司っぽいものとおにぎりっぽいものを乗せ、三角の棒で後ろの客の商品と区切る。
レジで緑茶を注文し、支払いを終えれば、店員から紙コップとティーバッグを手渡される。
ティーバッグを紙コップに入れ、紙コップをドリンクメーカーに置いて、お湯のボタンを押す。
30秒ほどで緑茶が出来上がった。
すぐ近くのベンチに腰掛け、早速寿司っぽいものを食べてみれば、それは見た目だけでなく味まで寿司っぽかった。
おにぎりっぽいものの方は、具材がシャケ。
寿司っぽいものもおにぎりっぽいものも味は良いのだけれど、どちらも米がパサパサボロボロしていた。
俺は日本人だから寿司やおにぎりに関してこういったことを思うのだけれど、イタリア人やフランス人も北欧や日本のスーパーマーケットで売られているスパゲッティやバゲットサンドウィッチについて思うところがあるのかもしれない。
そもそも、日本だろうと北欧だろうとレストラン以外での食事に及第点以上のクオリティを求めること自体がおかしいのかもしれない。
食事を終えて、寿司っぽいものの容器とおにぎりっぽいものの包装をゴミ箱に捨てる。
紙コップに入っている緑茶を啜りながらスマホを開けば、メッセージが来ていた。
幼馴染からだった。
にやにやの顔文字。
受信したのは数分前。
俺は、『なんだよ』と、打った。
数秒して、返信が来た。
『後ろ』
俺は、後ろを振り返った。
何もない。
視線を正面に戻せば、そこには先ほどまでいなかった人がいた。
小さな顔には弾けるような笑顔が浮かんでいた。
大きなゴールデンハニーブラウンの瞳はキラキラしている。
潤いに輝く唇、きめ細やかな肌、血色の良い頬。
さらさらつやつやの黒髪は、ショートボブに整えられ、七三分けになっていた。
素朴ながらも、彫りが深く、整った顔立ちは、綺麗というよりは可愛い感じだ。
150cmと少ししかない、小柄でほっそりとしたシルエットも相まって、大人っぽさよりもあどけなさを感じさせる。
彼女は、体にフィットしたパンツスーツを着ていた。
見た目は魅力たっぷりの、ボーイッシュで可愛い女の子だけれど、彼女は俺よりも三歳年上だし、その心は男らしいので、彼と呼ぶ方が、この人は喜ぶ。
スタイルが出る、フィットした服を着ているのは、胸もお尻も小さくて、男どもの欲望を煽ることがないからだった。
俺よりも3歳年上の幼馴染、空ちゃんは、ニヤっと笑った。
「寝顔だけは可愛いね」
俺は笑った。「うるせぇ。見てたのかよ」
「うん」
「何してんの?」
「初日にひとりは寂しいと思って来てやった」空ちゃんは俺の頭をポンポンした。
「寂しくねーよ。初日だから、一人で浸りたかった」
「昨晩だけで十分でしょ。荷物持った?」
俺は頷いた。
空ちゃんは、ちょうどそばを通り過ぎた空港警備員に向けてスーツをめくり、ベルトで光るバッジを見せた。
バッジを一瞥した空港警備員は、硬い顔で頷き、どこかへ歩いて行った。
空ちゃんは俺の肩を叩いて、標識を指さした。標識には電車のイラストが描かれていた。「空港で寝泊まりするのってあんまり良くないからさ、アパート行こ」
俺は頷き、立ち上がった。「荷物は?」
「ないよ」と、空ちゃん。「旅先で買った方が身軽だからね」
空ちゃんは、15歳の時に魔法使いの世界を旅して以来、暇さえあればあちこちを旅行している。いわば、旅のプロフェッショナルだった。
俺たちは、電車に乗って、市内へ移動した。
そこからメトロに乗れば、俺のアパートまではあっという間だった。
目を覚ますと、そこは空港の中だった。
クッション性のあるソファの上。
構内を見渡せば、俺のように空港内で一眠りをした人々があちらこちらにいる。
早朝便を逃さないために空港泊をするというのはよくある話だった。
俺は、身を起こして空港の外に向かった。
二重の自動ドアを潜り抜ければ、早朝の香りがする。
澄んだ空気を、肺一杯に吸い込むと、意識が冴えた。
澄み切った空は、星々が煌めいている。
腕時計を見れば、まだ4時だった。
俺は、日本から持ってきたタバコを、フェルトコートの内ポケットから取り出した。
軽い箱に眉をひそめて中を見てみれば、最後の一本だった。
俺は、タバコを咥え、魔法で火をつけて、煙を吐いた。
空になったタバコの箱を、意味もなくスマホで撮る。
思い出みたいな物だろう。
自分がその時何を思ってそのような行動をしたかなんて、俺にはわからないことだった。
俺は、空港内に戻り、昨夜のカフェ&バーに向かったが、閉まっていた。
スーパーマーケットが開いていたので、そちらで空腹を満たすことにした。
サンドウィッチ、ハンバーガー、サラダ、スシっぽいもの、おにぎりっぽいもの、フリーズドライのイタリアン、日本製のカップ麺のそばには、何処製かもわからないカップ麺が並んでいた。
レンジで温めれば調理出来るフリーズドライはわかるが、フライ系はどうやって食べれば良いのだろう。
ここは空港だし、キッチンは客に見えるところにはない。
スタッフたちが従業員専用エリアのキッチンで料理するのかもしれないし、誰かが空港土産にしたりするのかもしれない。
俺は、寿司っぽいものとおにぎりっぽいもの、そして、緑茶を買うことにした。
こんな早朝だというのに、レジには数人が並んでいた。
スーツを着たり、赤い紐に繋がったカードを首からぶら下げたりシャツの胸ポケットに入れたりしているから、多分空港スタッフだ。
レジスタッフは座りながら、ベルトコンベアの上を流れてくる商品をさばいていた。
俺もその光景を見て、ベルトコンベアの上に寿司っぽいものとおにぎりっぽいものを乗せ、三角の棒で後ろの客の商品と区切る。
レジで緑茶を注文し、支払いを終えれば、店員から紙コップとティーバッグを手渡される。
ティーバッグを紙コップに入れ、紙コップをドリンクメーカーに置いて、お湯のボタンを押す。
30秒ほどで緑茶が出来上がった。
すぐ近くのベンチに腰掛け、早速寿司っぽいものを食べてみれば、それは見た目だけでなく味まで寿司っぽかった。
おにぎりっぽいものの方は、具材がシャケ。
寿司っぽいものもおにぎりっぽいものも味は良いのだけれど、どちらも米がパサパサボロボロしていた。
俺は日本人だから寿司やおにぎりに関してこういったことを思うのだけれど、イタリア人やフランス人も北欧や日本のスーパーマーケットで売られているスパゲッティやバゲットサンドウィッチについて思うところがあるのかもしれない。
そもそも、日本だろうと北欧だろうとレストラン以外での食事に及第点以上のクオリティを求めること自体がおかしいのかもしれない。
食事を終えて、寿司っぽいものの容器とおにぎりっぽいものの包装をゴミ箱に捨てる。
紙コップに入っている緑茶を啜りながらスマホを開けば、メッセージが来ていた。
幼馴染からだった。
にやにやの顔文字。
受信したのは数分前。
俺は、『なんだよ』と、打った。
数秒して、返信が来た。
『後ろ』
俺は、後ろを振り返った。
何もない。
視線を正面に戻せば、そこには先ほどまでいなかった人がいた。
小さな顔には弾けるような笑顔が浮かんでいた。
大きなゴールデンハニーブラウンの瞳はキラキラしている。
潤いに輝く唇、きめ細やかな肌、血色の良い頬。
さらさらつやつやの黒髪は、ショートボブに整えられ、七三分けになっていた。
素朴ながらも、彫りが深く、整った顔立ちは、綺麗というよりは可愛い感じだ。
150cmと少ししかない、小柄でほっそりとしたシルエットも相まって、大人っぽさよりもあどけなさを感じさせる。
彼女は、体にフィットしたパンツスーツを着ていた。
見た目は魅力たっぷりの、ボーイッシュで可愛い女の子だけれど、彼女は俺よりも三歳年上だし、その心は男らしいので、彼と呼ぶ方が、この人は喜ぶ。
スタイルが出る、フィットした服を着ているのは、胸もお尻も小さくて、男どもの欲望を煽ることがないからだった。
俺よりも3歳年上の幼馴染、空ちゃんは、ニヤっと笑った。
「寝顔だけは可愛いね」
俺は笑った。「うるせぇ。見てたのかよ」
「うん」
「何してんの?」
「初日にひとりは寂しいと思って来てやった」空ちゃんは俺の頭をポンポンした。
「寂しくねーよ。初日だから、一人で浸りたかった」
「昨晩だけで十分でしょ。荷物持った?」
俺は頷いた。
空ちゃんは、ちょうどそばを通り過ぎた空港警備員に向けてスーツをめくり、ベルトで光るバッジを見せた。
バッジを一瞥した空港警備員は、硬い顔で頷き、どこかへ歩いて行った。
空ちゃんは俺の肩を叩いて、標識を指さした。標識には電車のイラストが描かれていた。「空港で寝泊まりするのってあんまり良くないからさ、アパート行こ」
俺は頷き、立ち上がった。「荷物は?」
「ないよ」と、空ちゃん。「旅先で買った方が身軽だからね」
空ちゃんは、15歳の時に魔法使いの世界を旅して以来、暇さえあればあちこちを旅行している。いわば、旅のプロフェッショナルだった。
俺たちは、電車に乗って、市内へ移動した。
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