笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト

四天王ヴァルベルト(前編)

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 ヴァルベルトの城から姿を消したエジタスは、魔王城へと転移していた。



 「さてさて、サタニアさんは何処にいらっしゃいますかね~?」



 サタニアを捜すエジタスは、手当たり次第に捜し始める。



 「ここですかね~?」



 「あ、エジタス!今回は随分早いね!」



 「あらエジタスちゃん、まだ一週間も経っていないわよ」



 「お、エジタス帰ってきたのか?だったら久し振りに私と手合わせしてくれよ」



 「センセイ、オカエリナサイ」



 「早く帰り過ぎです。即刻勇者の監視に戻って下さい」



 エジタスが玉座の間に入ると、そこにはサタニア、アルシア、シーラ、ゴルガ、クロウトの五人全員が集まっていた。



 「おや~、皆さんお揃いで何をしていたのですか?」



 「ああ、お前が帰って来た時の料理を…………」



 「はいはい、シーラちゃん。ちょっとこっちに来ましょうねー」



 シーラが何かを言い掛けるが、アルシアが口を塞ぎ連れて行く。



 「もう、その話は本人には内緒にして欲しいって魔王ちゃんに言われているでしょ?」



 「…………ぷはぁ!悪い悪い、そうだったそうだった」



 アルシアに注意されたシーラは、うっかりとした様子で微笑した。



 「あの~、それで何の集まりなんですか?」



 「えっ、あっ、いやその……」



 「魔王軍の定例会議よ」



 「そ、そうそう!!こうやって集まって報告し合うんだ!」



 シーラは、アルシアの誤魔化しに乗っかり難を凌ごうとする。



 「…………そうですか、いつもご苦労様です」



 「「(ほっ…………)」」



 「それで……エジタスは何でこんなにも早く戻って来たの?」



 話題を逸らす意味でも、サタニアはエジタスが早く帰って来た理由を聞いて来た。



 「ええ、実は皆さんに聞きたい事がありましてね……」



 「聞きたい事?」



 「私が四天王に入る前にいたという、ヴァルベルトさんとはどんな人物なのですか?」



 「「「「…………」」」」



 その瞬間、場が凍り付いた。雪女の時の寒気とはまた違った背筋が凍る程の圧力……エジタスの体に緊張が走る。



 「…………どうして、そんな事を聞くの?」



 「(ここで本当の事を言うのは不味いですかね……)いや~、私もその人の代わりとして四天王に入ったのでどんな人なのかな~と、気になりまして~」



 万が一、言葉の選択を誤ればどんな悲劇が待っているのか想像がつかない。



 「…………」



 「(失敗でしょうか…………?)」



 サタニアの無言が場の空気を支配する。緊張のあまり吐き気すら覚えた。



 「…………そうだよね、エジタスが四天王に入れたのはヴァルベルトが抜けたのが原因なんだから、気になるのは当然だよね……」



 「(ふぅ~、どうやら峠は越したみたいですね……)」



 エジタスの心境を配慮したサタニアが勝手に納得してくれたお陰で、一安心である。



 「でも……あまりヴァルベルトの事は話したくないな……」



 「ええっ、どうしてですか!?」



 「彼は何というか……その不気味な存在だったから……」



 しかし、納得はしてくれた物のヴァルベルトの事について渋るサタニア。



 「えっ、因みに同じ四天王の三人と秘書のクロウトさんから見て、ヴァルベルトさんはどんな人でしたか?」



 「陰険」



 「陰湿」



 「メダチタガリヤ」



 「敬語が使えない不届き者…………あなたにそっくりです」



 「うわぁ~お、凄い低評価ですね~」



 これでもかと言う位に、悪口を言われるヴァルベルト。最後のクロウトの言葉はエジタスにも矛先を向けていた。



 「ま、まぁ、実力はあったから不満は無かったんだけどね」



 「へぇ~、やはり元四天王というだけあってお強い人だったんですね~?」



 「うん……アルシアの次に強かったよ」



 「何と!そんなにも強かったのですか!?」



 四天王の中にも強さは存在する。上からアルシア、ヴァルベルト、シーラ、ゴルガの順だ。その中でもアルシアは異質の強さを誇り、魔族の間では魔王の右腕とも噂されている。



 「ああ、気に入らない奴だったが実力はあったからな……」



 「でもそれも一年前までの話、彼はもう死んでしまったからね……」



 「死んだ!?それはどういう事ですか!?」



 聞き捨てならない言葉を聞いた。城で会ったヴァルベルトは、サタニア達の認識では死んでいる扱いとなっていたのだ。



 「…………」



 「サタニアさん、ここまで聞いてしまっては私も最後まで知る義務がある筈です」



 「…………」



 「さぁ、お聞かせ下さい。四天王だった頃のヴァルベルトさんのお話を!!」



 思い詰めた表情を浮かべるサタニアは、しばらくの間考え、そしてゆっくりとエジタスに目線を向けた



 「分かった、話すよ。ヴァルベルトと初めて会ったのは四天王の就任式のときだった…………」







***







 「君が……ヴァルベルトだね?」



 魔王城玉座の間。玉座に座るサタニアに片膝を付き頭を下げる一人の男がいた。



 「ああ、我がヴァルベルトだ……」



 「貴様!!魔王様の御前だぞ!!」



 「いいよクロウト……」



 「しかし……」



 「気にしていないから…………」



 「……分かりました。出過ぎた真似をして申し訳ありません……」



 魔王であるサタニアに敬語を使わないヴァルベルト、そんなヴァルベルトにクロウトは叱ろうとするがサタニアに止められてしまった。



 「四天王としての責務を果たしてくれれば、口の聞き方位目を瞑るよ」



 「感謝する……」



 「…………!!」



 だが、どうしてもクロウトの怒りは収まら無かった。唇を噛み締める様な思いをしながらグッと我慢する。



 「それじゃあ、四天王の主な仕事について説明するね」



 「分かった……」







***







 「…………大体はこんな感じだけど、何か聞きたい事とかある?」



 「では一つ聞かせて貰おう……“禁断の部屋”というのは何処にある?」



 「「!!!」」



 “禁断の部屋”という言葉をヴァルベルトが口にした途端、サタニアとクロウトの体に緊張が走った。



 「…………知らないな、そんな部屋は聞いた事が無いよ……クロウトは聞いた事がある?」



 「いえ、私は魔王城にある全て施設を記憶していますが、そんな部屋の名前は聞いた事もありません」



 「そっか……そう言う訳でそんな部屋は聞いた事が無いよ」



 「…………分かった、質問は以上だ。失礼する」



 そう言うとヴァルベルトは、サタニアにお辞儀をするとそのまま玉座の間から出て行ってしまった。



 「何なのですか!あの男は!!?サタニア様に敬語を使わないなんて、失礼にも程があります!!」



 「まあまあ落ち着いてクロウト、僕はそんなに気にしていないから…………それよりも、あのヴァルベルトには少し監視を付けた方が良いかもしれないね」



 「…………そうですね、私の方から指示を出しておきます」



 怒るクロウトを宥めると同時に、ヴァルベルトに監視を付ける事を指示するサタニア。



 「ありがとう…………ヴァルベルトか……」



 そう呟きながら、サタニアは事前に鑑定していたヴァルベルトのステータスを眺めるのであった。







ヴァルベルト Lv74

種族 吸血鬼

年齢 420

性別 男

職業 ブラッドヴァンパイア



HP 4500/4500

MP 2800/2800



STR 510

DEX 560

VIT 420

AGI 870

INT 630

MND 800

LUK 250



スキル

眷属化 霧化 肉体変化



魔法

土魔法 血魔法



称号

虐殺者
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