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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト
四天王ヴァルベルト(後編)
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「ヴァルベルト様、お、お止め下さい!!四天王であるあなたが何故こんな…………!?」
「すまない。もう我は四天王では無いのだよ」
ヴァルベルトは、持っていた剣を地面で這いつくばっている魔王軍兵士に突き刺した。
「ぎゃああああ!!」
兵士は悲鳴を上げ、苦しみ悶えながら絶命した。
「さて、次は…………ん?」
ヴァルベルトが次の行動に移そうとしたその時、一人の魔王軍兵士がこちらに襲い掛かって来た。
「この裏切り者!!死ねーー!!!」
「はぁ……任せたぞ」
「はいはーい、お任せあれ!」
ヴァルベルトと襲い掛かって来る兵士の間に割り込んで来た一人の男は、悪魔だった。
「あ、あなたは偵察部隊の“トサリ”さん!?何故あなたが…………」
「悪いねー、俺も裏切り者なんだよー」
「…………ならば、あなたも倒すまでだ!!うおぉーー!!」
「右スラッシュ」
兵士はトサリに右からの切り込みを掛けるが、それを予期していたかの様にひらりと回避した。
「な、何!?」
「はい、おしまいー」
「がぁああ……!!」
その隙を突いて、トサリは持っていた剣を兵士の首に突き刺した。呼吸が出来ず、兵士はそのまま絶命した。
「く、くそっ、仲間が殺られた……こうなったら俺も……」
「やめとけやめとけ」
「だ、誰だ!?」
一部始終の光景を目撃していた一人の魔王軍兵士が、覚悟を決めて裏切り者の二人に立ち向かおうとすると、何処からか声が聞こえて来た。
「こっちだよ、こっち……」
「か、鏡?」
声のする方向に顔を向けると、そこには大きな姿見が置かれていた。勿論、鏡には兵士の姿が写っていた。
「行くだけ無駄だぜ……だって……」
「がぁあああ…………!!」
突如、鏡の中の兵士の持っていた剣が飛び出し、兵士を突き刺した。
「お前はここで死ぬからだ……」
「な、何がどうなっているんだ…………」
訳も分からず、兵士はそのまま絶命した。
「相変わらず鮮やかな殺し方で……」
「この位普通だ」
トサリの言葉に反応し、鏡の中から一人の男が出て来た。
「両者、ご苦労であった」
ヴァルベルトが、二人に感謝の意を唱える。
「有り難き御言葉……」
「まぁ、眷属として当然の事でしょ?」
そう、二人は眷属となりヴァルベルトの命令に絶対服従となったのだ。
「それで、例の物は手に入れたのか?」
「バッチリっしょ!」
「しっかりと鏡の中に入れております」
「そうか……であるなら、後は脱出するだけだお前達は先に行くのだ」
目的の物を手に入れたヴァルベルトは、脱出の準備に入る。その際トサリ、ラミーの二人に先に行く様に命じる。
「そんな、ヴァルベルト様を置いては行けません!!」
「我は職業上、鏡には写らない。その為、お前の得意とする鏡移動は使えないのだ……だから先に行け、これは命令だ」
「…………かしこまりました。ご命令通り、先に脱出させて頂きます。行くぞトサリ……」
「了解、それじゃあヴァルベルト様、頑張って下さいねー」
そう言うと、ラミーとトサリの二人は鏡の中へと入り消えてしまった。
「さて……我も急がねばな」
***
「それで、被害の状況は?」
魔王城玉座の間。ヴァルベルトの起こした謀反により、魔王城は混乱の渦に巻き込まれ魔王サタニア、ヴァルベルトを除いた四天王、そしてクロウトは対処に追わされていた。
「約数百の兵士が死亡、壁や床の損壊も相当な物です…………偵察部隊のラミーとトサリが眷属となって寝返りました」
「そんな!?」
「どうやら、ヴァルベルトを監視させていたのが裏目に出た様です……」
想像以上の被害に頭を抱えるサタニア。
「そして……」
「まだあるの!?」
「はい…………“禁断の部屋”からいくつかアイテムが盗まれていました」
「!!……これは思った以上に不味い事態だね…………」
自軍の兵士が死ぬ事よりも、自身の城が破壊される事よりも、深刻な被害が出てしまった事に絶望するサタニア。
「急いで捜し出すわよ!!あたしはヴァルベルトの後を追い掛けるわ。ゴルガちゃんは用心の為、ここで魔王ちゃんを守ってあげて」
「マカサレタ」
事態の深刻さにアルシアが、素早く指示を出して行く。
「そんでもってシーラちゃんは…………あら、シーラちゃん?」
シーラにも指示を出そうとするが、いつの間にかいなくなっていた。
「ふふふ、あの子俊敏に行動してくれるから好きなのよね。それじゃあ、あたしも行ってくるわ!クロウトちゃん、ゴルガちゃん、魔王ちゃんを頼んだわよ!!」
「当然です」
「アンシンシテ、イッテクレ」
「アルシア!気を付けてね……」
アルシアは、サタニアの言葉に走りながら親指を立てて、返事をした。
***
魔王城の長い廊下、ヴァルベルトは脱出の為に入口へと向かっていた。
「あらあら、こんな夜更けに何処に行くのかしらー?」
するとその先には、見た事のある骸骨顔の四天王アルシアが立っていた。
「……そこを退け、我は行かねばならない場所がある」
「そうしたいのは山々だけど……あなたは、決して汚してはいけない御方の顔に泥を塗ったのよ。許されると思っているの?」
「…………」
アルシアは、腰に差してある刀二本を鞘から抜いた。
「あなたにどんな事情があるのかは知らない。でもね、越えてはならない線を越えてしまったからには…………死ぬ覚悟は出来てんだろうな!!!」
ドスの利いた低い声を発しながら、ヴァルベルトに向かって斬り掛かる。
「くっ……!!手加減出来ないからな!」
ヴァルベルトはアルシアの攻撃を持っていた剣で受け流した。
「あははは、先に言われてしまったわね…………スキル“大炎熱地獄”」
二本の刀から真っ赤な炎が生み出され、ヴァルベルトに向かって襲い掛かる。
「ぐ、ぐああ!!」
剣で手首を切り裂き、吹き出した血液で取り付いた炎を消そうと試みるが、消える様子は毛ほども感じられなかった。
「悪いわね。その炎はMPを媒介として燃えるのよ。つまりMPがあるかぎり、その炎はあなたを燃やし続ける!!」
「こ、こんな所で……死んでたまるか!!」
このまま燃え尽きてしまうかと思われた矢先、ヴァルベルトは霧となってその場から姿を消した。
「あら、逃げられちゃったわ……でもまぁ入口には“あの子”がいるから大丈夫でしょう……」
これから起こるであろうヴァルベルトの運命に同情しながら、二本の刀をそれぞれの鞘に収めるのであった。
***
「はぁ……はぁ……はぁ……」
霧化が解けたヴァルベルトは、満身創痍になりながらも入口へと歩いていた。
「もう少し……もう少しなんだ……」
目線の先に現れた入口。ヴァルベルトはふらふらになりながら、入口を抜け外へと脱出した。
「やったぞ……我は生き残った……生き残ったんだ!………ん、あれは……?」
しかし、その先には一人の人影があった。
「よう、来ると思っていたぜ……」
片手に槍を持ち、仁王立ちをして待ち伏せをしていたシーラ。
「……シーラか…………そこを退け」
「けっ、アルシアさんにズタボロにされたってのに、よくそんな強気に出られるな……」
取り付いた炎を消す事は出来たが、立っているのがやっとな程、ぼろぼろであった。
「それに、もうMPも残っていないだろ?」
「!!…………何故分かった?」
「アルシアさんの“大炎熱地獄”は霧になったからと言って、そう簡単に消える程やわじゃない……でも、実際に炎は消えている。となると答えは一つ、お前の霧化は一見無敵のスキルだと思わせてその実、持っているMPを全て使ってしまう逃走専門のスキルって訳だ!!」
「…………見事だな。只の脳筋娘だったかと思っていたが……戦闘の天才だったか……」
看破された。霧化の唯一の弱点を見抜かれ、認めざるしか無かった。
「へっ、それじゃあMPが回復する前に決着をつけてやるよ!」
「あまり嘗めるなよ小娘が……魔法が使えないとしても、我にはブラッドヴァンパイアの超越した肉体能力がある。決着をつけるのはこちらも同じ事だ!!」
ヴァルベルトは自身の爪を尖らせ、凄まじい跳躍でシーラに襲い掛かる。
「言っただろう……決着をつけるって……」
しかし、攻撃した先にシーラはいなかった。
「ど、何処だ!?」
慌てて捜し出すヴァルベルトが空を見上げると、翼を広げて上空を浮遊するシーラがいた。
「満身創痍のお前じゃ無かったら、私は勝てなかった……でも今のお前なら容易く殺れる。同じ四天王だったよしみだ……せめてもの情けに楽に殺してやるよ…………スキル“バハムート”」
天高く掲げた槍の先に、巨大な炎の球体が生み出された。魔王城を包み込んでしまうかもしれない程、巨大であった。
「こ、これは…………」
「じゃあな……ヴァルベルト……」
巨大な火球がヴァルベルトに向かって放たれる。
「…………!!」
回避する?無理だ……こんなぼろぼろの体で素早く動ける訳が無い。霧化しようにも、シーラの言う通りMPが底をついている。もはや逃げ場など存在していなかった。
「こんな……こんな所でーーー!!!」
放たれた巨大な火球は、ヴァルベルトを包み込みその周辺を焼け野原に変えた。死体は残らず、残ったのはヴァルベルトの焼け焦げたマントに、焦げた匂いだけだった。
「あっ、“禁断の部屋”から持ち出したアイテムの場所を聞くのを忘れてた!!」
ヴァルベルトを対処したシーラは、空中で一人どうサタニア達に言い訳しようか悩むのであった。
魔王城から少し離れた場所。肉眼では確認出来ない程の細かな粒子が集まり、そしてその場にヴァルベルトが現れた。
「がぁあああ!!!」
しかし、全身に大きな火傷を負い今にも死にそうだった。
「(あ、危なかった……あの時、もしもMPが1回復していなかったら完全に焼け焦げてしまう所だった……)」
シーラの“バハムート”をまともに食らったヴァルベルトだったが、体が焼けて行く中で僅かながらMPが回復した。その瞬間、ヴァルベルトは霧化を発動しその場から霧となって逃げ出した。霧化はMPを全て消費してしまうが逆に言い換えれば、ほんの少しでもMPが残っていれば霧化を発動出来るのだ。
「(魔王達は、俺が完全に死んでいるものだと思っている筈……何処かに身を潜めなければ…………確か、少し歩いた先に“ピースマーシュ”があった……そこに我の城を建てるとしよう……)」
そんな事を考えながら、ヴァルベルトは足を引きずりながらも、歩いて行くのであった。
「すまない。もう我は四天王では無いのだよ」
ヴァルベルトは、持っていた剣を地面で這いつくばっている魔王軍兵士に突き刺した。
「ぎゃああああ!!」
兵士は悲鳴を上げ、苦しみ悶えながら絶命した。
「さて、次は…………ん?」
ヴァルベルトが次の行動に移そうとしたその時、一人の魔王軍兵士がこちらに襲い掛かって来た。
「この裏切り者!!死ねーー!!!」
「はぁ……任せたぞ」
「はいはーい、お任せあれ!」
ヴァルベルトと襲い掛かって来る兵士の間に割り込んで来た一人の男は、悪魔だった。
「あ、あなたは偵察部隊の“トサリ”さん!?何故あなたが…………」
「悪いねー、俺も裏切り者なんだよー」
「…………ならば、あなたも倒すまでだ!!うおぉーー!!」
「右スラッシュ」
兵士はトサリに右からの切り込みを掛けるが、それを予期していたかの様にひらりと回避した。
「な、何!?」
「はい、おしまいー」
「がぁああ……!!」
その隙を突いて、トサリは持っていた剣を兵士の首に突き刺した。呼吸が出来ず、兵士はそのまま絶命した。
「く、くそっ、仲間が殺られた……こうなったら俺も……」
「やめとけやめとけ」
「だ、誰だ!?」
一部始終の光景を目撃していた一人の魔王軍兵士が、覚悟を決めて裏切り者の二人に立ち向かおうとすると、何処からか声が聞こえて来た。
「こっちだよ、こっち……」
「か、鏡?」
声のする方向に顔を向けると、そこには大きな姿見が置かれていた。勿論、鏡には兵士の姿が写っていた。
「行くだけ無駄だぜ……だって……」
「がぁあああ…………!!」
突如、鏡の中の兵士の持っていた剣が飛び出し、兵士を突き刺した。
「お前はここで死ぬからだ……」
「な、何がどうなっているんだ…………」
訳も分からず、兵士はそのまま絶命した。
「相変わらず鮮やかな殺し方で……」
「この位普通だ」
トサリの言葉に反応し、鏡の中から一人の男が出て来た。
「両者、ご苦労であった」
ヴァルベルトが、二人に感謝の意を唱える。
「有り難き御言葉……」
「まぁ、眷属として当然の事でしょ?」
そう、二人は眷属となりヴァルベルトの命令に絶対服従となったのだ。
「それで、例の物は手に入れたのか?」
「バッチリっしょ!」
「しっかりと鏡の中に入れております」
「そうか……であるなら、後は脱出するだけだお前達は先に行くのだ」
目的の物を手に入れたヴァルベルトは、脱出の準備に入る。その際トサリ、ラミーの二人に先に行く様に命じる。
「そんな、ヴァルベルト様を置いては行けません!!」
「我は職業上、鏡には写らない。その為、お前の得意とする鏡移動は使えないのだ……だから先に行け、これは命令だ」
「…………かしこまりました。ご命令通り、先に脱出させて頂きます。行くぞトサリ……」
「了解、それじゃあヴァルベルト様、頑張って下さいねー」
そう言うと、ラミーとトサリの二人は鏡の中へと入り消えてしまった。
「さて……我も急がねばな」
***
「それで、被害の状況は?」
魔王城玉座の間。ヴァルベルトの起こした謀反により、魔王城は混乱の渦に巻き込まれ魔王サタニア、ヴァルベルトを除いた四天王、そしてクロウトは対処に追わされていた。
「約数百の兵士が死亡、壁や床の損壊も相当な物です…………偵察部隊のラミーとトサリが眷属となって寝返りました」
「そんな!?」
「どうやら、ヴァルベルトを監視させていたのが裏目に出た様です……」
想像以上の被害に頭を抱えるサタニア。
「そして……」
「まだあるの!?」
「はい…………“禁断の部屋”からいくつかアイテムが盗まれていました」
「!!……これは思った以上に不味い事態だね…………」
自軍の兵士が死ぬ事よりも、自身の城が破壊される事よりも、深刻な被害が出てしまった事に絶望するサタニア。
「急いで捜し出すわよ!!あたしはヴァルベルトの後を追い掛けるわ。ゴルガちゃんは用心の為、ここで魔王ちゃんを守ってあげて」
「マカサレタ」
事態の深刻さにアルシアが、素早く指示を出して行く。
「そんでもってシーラちゃんは…………あら、シーラちゃん?」
シーラにも指示を出そうとするが、いつの間にかいなくなっていた。
「ふふふ、あの子俊敏に行動してくれるから好きなのよね。それじゃあ、あたしも行ってくるわ!クロウトちゃん、ゴルガちゃん、魔王ちゃんを頼んだわよ!!」
「当然です」
「アンシンシテ、イッテクレ」
「アルシア!気を付けてね……」
アルシアは、サタニアの言葉に走りながら親指を立てて、返事をした。
***
魔王城の長い廊下、ヴァルベルトは脱出の為に入口へと向かっていた。
「あらあら、こんな夜更けに何処に行くのかしらー?」
するとその先には、見た事のある骸骨顔の四天王アルシアが立っていた。
「……そこを退け、我は行かねばならない場所がある」
「そうしたいのは山々だけど……あなたは、決して汚してはいけない御方の顔に泥を塗ったのよ。許されると思っているの?」
「…………」
アルシアは、腰に差してある刀二本を鞘から抜いた。
「あなたにどんな事情があるのかは知らない。でもね、越えてはならない線を越えてしまったからには…………死ぬ覚悟は出来てんだろうな!!!」
ドスの利いた低い声を発しながら、ヴァルベルトに向かって斬り掛かる。
「くっ……!!手加減出来ないからな!」
ヴァルベルトはアルシアの攻撃を持っていた剣で受け流した。
「あははは、先に言われてしまったわね…………スキル“大炎熱地獄”」
二本の刀から真っ赤な炎が生み出され、ヴァルベルトに向かって襲い掛かる。
「ぐ、ぐああ!!」
剣で手首を切り裂き、吹き出した血液で取り付いた炎を消そうと試みるが、消える様子は毛ほども感じられなかった。
「悪いわね。その炎はMPを媒介として燃えるのよ。つまりMPがあるかぎり、その炎はあなたを燃やし続ける!!」
「こ、こんな所で……死んでたまるか!!」
このまま燃え尽きてしまうかと思われた矢先、ヴァルベルトは霧となってその場から姿を消した。
「あら、逃げられちゃったわ……でもまぁ入口には“あの子”がいるから大丈夫でしょう……」
これから起こるであろうヴァルベルトの運命に同情しながら、二本の刀をそれぞれの鞘に収めるのであった。
***
「はぁ……はぁ……はぁ……」
霧化が解けたヴァルベルトは、満身創痍になりながらも入口へと歩いていた。
「もう少し……もう少しなんだ……」
目線の先に現れた入口。ヴァルベルトはふらふらになりながら、入口を抜け外へと脱出した。
「やったぞ……我は生き残った……生き残ったんだ!………ん、あれは……?」
しかし、その先には一人の人影があった。
「よう、来ると思っていたぜ……」
片手に槍を持ち、仁王立ちをして待ち伏せをしていたシーラ。
「……シーラか…………そこを退け」
「けっ、アルシアさんにズタボロにされたってのに、よくそんな強気に出られるな……」
取り付いた炎を消す事は出来たが、立っているのがやっとな程、ぼろぼろであった。
「それに、もうMPも残っていないだろ?」
「!!…………何故分かった?」
「アルシアさんの“大炎熱地獄”は霧になったからと言って、そう簡単に消える程やわじゃない……でも、実際に炎は消えている。となると答えは一つ、お前の霧化は一見無敵のスキルだと思わせてその実、持っているMPを全て使ってしまう逃走専門のスキルって訳だ!!」
「…………見事だな。只の脳筋娘だったかと思っていたが……戦闘の天才だったか……」
看破された。霧化の唯一の弱点を見抜かれ、認めざるしか無かった。
「へっ、それじゃあMPが回復する前に決着をつけてやるよ!」
「あまり嘗めるなよ小娘が……魔法が使えないとしても、我にはブラッドヴァンパイアの超越した肉体能力がある。決着をつけるのはこちらも同じ事だ!!」
ヴァルベルトは自身の爪を尖らせ、凄まじい跳躍でシーラに襲い掛かる。
「言っただろう……決着をつけるって……」
しかし、攻撃した先にシーラはいなかった。
「ど、何処だ!?」
慌てて捜し出すヴァルベルトが空を見上げると、翼を広げて上空を浮遊するシーラがいた。
「満身創痍のお前じゃ無かったら、私は勝てなかった……でも今のお前なら容易く殺れる。同じ四天王だったよしみだ……せめてもの情けに楽に殺してやるよ…………スキル“バハムート”」
天高く掲げた槍の先に、巨大な炎の球体が生み出された。魔王城を包み込んでしまうかもしれない程、巨大であった。
「こ、これは…………」
「じゃあな……ヴァルベルト……」
巨大な火球がヴァルベルトに向かって放たれる。
「…………!!」
回避する?無理だ……こんなぼろぼろの体で素早く動ける訳が無い。霧化しようにも、シーラの言う通りMPが底をついている。もはや逃げ場など存在していなかった。
「こんな……こんな所でーーー!!!」
放たれた巨大な火球は、ヴァルベルトを包み込みその周辺を焼け野原に変えた。死体は残らず、残ったのはヴァルベルトの焼け焦げたマントに、焦げた匂いだけだった。
「あっ、“禁断の部屋”から持ち出したアイテムの場所を聞くのを忘れてた!!」
ヴァルベルトを対処したシーラは、空中で一人どうサタニア達に言い訳しようか悩むのであった。
魔王城から少し離れた場所。肉眼では確認出来ない程の細かな粒子が集まり、そしてその場にヴァルベルトが現れた。
「がぁあああ!!!」
しかし、全身に大きな火傷を負い今にも死にそうだった。
「(あ、危なかった……あの時、もしもMPが1回復していなかったら完全に焼け焦げてしまう所だった……)」
シーラの“バハムート”をまともに食らったヴァルベルトだったが、体が焼けて行く中で僅かながらMPが回復した。その瞬間、ヴァルベルトは霧化を発動しその場から霧となって逃げ出した。霧化はMPを全て消費してしまうが逆に言い換えれば、ほんの少しでもMPが残っていれば霧化を発動出来るのだ。
「(魔王達は、俺が完全に死んでいるものだと思っている筈……何処かに身を潜めなければ…………確か、少し歩いた先に“ピースマーシュ”があった……そこに我の城を建てるとしよう……)」
そんな事を考えながら、ヴァルベルトは足を引きずりながらも、歩いて行くのであった。
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