笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト

禁断の部屋

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 「……以上がヴァルベルトが四天王だった頃の話だよ」



 「シーラ様の対処のお陰で、何とか被害を最小限に抑える事が出来ました」



 ヴァルベルトの事について色々と知れたが、エジタスはある点に引っ掛かっていた。



 「(確かに……今の話からすると、ヴァルベルトは死んだ様にも捉えられる……だが実際ヴァルベルトは生き残り、あの“ピースマーシュ”で城を構えて身を潜めていた。“霧化”……おそらくこのスキルの性能が生死を分けたのでしょう……ここでヴァルベルトが実は生きている事を話しても良いですが、そうなると私の“計画”が……)」



 この短時間でエジタスは、頭をフル回転させてヴァルベルトが生き残った方法と、それをサタニア達に伝えるべきかどうか考えていた。



 「でも……一つ気掛かりな事があるんだ……」



 「ん、それは何ですか?」



 「ヴァルベルトは倒した筈なのに、偵察部隊だった、ラミーとトサリは戻って来ていないんだ」



 主であるヴァルベルトを倒せば、眷属にされていた二人は元に戻るのでは無いかと考えていた。しかし、二人は未だに戻って来てはいない。



 「ですから、私がヴァルベルトを殺した事で眷属にされていた二人は、一緒に消滅してしまったんですよ!」



 「んー、やっぱりそう考えるのが妥当なのかな……」



 「ヴァルベルトが生き残っているって可能性は、あるんじゃない?」



 「いえ、それは低いかと思われます」



 答えに辿り着いたアルシアだったが、クロウトによって否定される。



 「もし、ヴァルベルトが生きているのであれば、この一年間何も行動を起こさないのは不自然です」



 「そうよねー、目立ちたがりやのヴァルベルトなら、じっとはしていられないものねー」



 「はぁー、一年前も結局その答えに至ったんだよね…………」



 答えを導き出そうと様々な予想を立てるが、それを論破する意見が必ず出て来てしまう。結果、ヴァルベルトはシーラとの戦闘で死亡し、眷属になっていた二人も一緒に消滅という形になった。



 「……“禁断の部屋”から持ち出されたアイテムも回収出来ていないし……」



 「そう言えば、先程から気になっていたのですが、その“禁断の部屋”というのは何なのでしょうか?」



 「…………」



 ヴァルベルトの話に度々登場していた“禁断の部屋”、エジタスは今までそんな部屋がある事は知らされていなかった。



 「……ヴァルベルトは怪しかったから、“禁断の部屋”について教えなかったけど…………本来は四天王全員が知るべき内容だから、エジタスにも教えるね」



 “禁断の部屋”は、通常城主であるサタニア、側近であるクロウト、そして四天王それぞれに伝えられる事だった。しかし、ヴァルベルトは早まってまだ教えていない筈の“禁断の部屋”について知っていた。そのせいでサタニア達は、ヴァルベルトだけには伝えない事としたのだ。



 「“禁断の部屋”はね……僕のお父さん……つまり二代目魔王が考案して建設した部屋なんだ。長い歴史の中、そのあまりの残酷さ、狂気染みた能力を持った魔法やアイテムが数多く作られた……お父さんはそんなアイテムを収集し、一ヶ所に集めて二度と使われない様に封印する作業を密かに行っていたんだ」



 「しかし、そんな先代も亡くなられアイテム収集は途絶えてしまった」



 「そんなある日の事、あたしと魔王ちゃんが廊下を歩いている時、魔王ちゃんが転びそうになって咄嗟に壁を背にして受け止めたら、壁の一部が沈んで隠し扉が現れたのよ」



 禁じられた魔法、禁じられたアイテム、そのあまりに超越した能力に人々は魅了され使い始めた。しかし代償は大きく、ある者は両手両足を失い、またある者は全ての感覚神経が死んでしまった。その危険性ゆえに、多くの物が処分されたが未だに世界の何処かで眠っているという…………。



 「私も最初見た時は正直腰を抜かしたぜ……何たって“時を止める魔導書”なんて物まであるんだからさ」



 「そんな物まであるんですか!?」



 予想以上のチート染みた能力に驚きを隠せないエジタス。



 「うん……だけど、使った対象者の脳細胞まで止めてしまうから、使った瞬間死んでしまうけどね……」



 「…………」



 甘い話には裏がある。とても魅力的な能力だが、使用者が死んでしまうのでは意味が無い。



 「あと、巨大になれるポーションなんて物もあったわね」



 「はい、しかし体は大きくなっても内臓までは大きくならない為、気圧に耐えられなくなり、内臓が全て破裂してしまいます」



 「…………何だか、使えない物ばかりですね~」



 最初は興味を引かれていたエジタスも、段々と興味が薄れて行った。



 「で、でも、本当に凄い能力の物もあるんだよ!例えば、僕の剣を見て!!」



 そう言うとサタニアは、床に魔方陣を張り、禍々しい剣を召喚した。柄や装身具は黄金で、刀身は真っ赤な色をしていた。



 「これは……?」



 「僕の武器、“ティルスレイブ”だよ!!」







ティルスレイブ



かつて、ある大規模な戦争で多くの死者が出た。その死体を一ヶ所に集め処理しようとした時、死体の山は消え去りあったのは一本の剣であった。多くの屍から生まれたその剣は、数多くの使用者の命を奪い、魔剣と呼ばれる様になった。



能力



三回だけ、相手を一撃で葬り去る事が出来る。しかし、三回使い終われば使用者は必ず死ぬ。また、一度手にしたら他の者に譲渡するのは不可能。







 「リスクは高いけど、能力を使わなくてもかなりの攻撃力があるから、とても使いやすいよ」



 「この剣は元々、サタニア様がご自身の手で見つけ出した物で、“禁断の部屋”が見つかるまで禁じられたアイテムだと知らずにいました」



 「成る程~、しかし一撃とは恐ろしい能力ですね~」



 興味を失い欠けていたエジタスだったが、サタニアの剣のお陰で取り戻した。



 「それなら、ヴァルベルトが持ち出したアイテムとは何なのですか?」



 「えっと確か…………“肉人形”と“巻き戻し時計”だよ」



 「“肉人形”“巻き戻し時計”?」



 名前だけ聞いても、ピンと来ないエジタス。



 「簡単にご説明いたしますと、肉人形は生物の肉や魂を生け贄にし、使用者が最も望む姿になります。そして巻き戻し時計は、肉人形の肉がすぐに腐らない様に時を巻き戻し維持してくれる代物です。限界はございますが…………」



 「そのあまりの完成度から、その肉人形に本気で恋しちゃって、肉人形の為に大量の生け贄を用意していたって伝説が残されているわ」



 「(完成度の高い人形…………?)」



 エジタスが思い浮かべるのは、ヴァルベルトの婚約者としていた“エル”の姿であった。



 「(成る程……何となく全貌が明らかになって来ましたよ……しかし、何ともくだらない理由ですね~)」



 大体の事が分かったエジタスは、ヴァルベルトの哀れさに鼻で笑う。



 「因みに、その巻き戻し時計というのはどんな形をしていたのですか?」



 「大きな古時計だけど?」



 「そうですか。いや~、貴重なお話を聞かせて頂きありがとうごさいます。それでは、そろそろ私は戻りますね~」



 「えっ、もう行っちゃうの!?」



 唐突に行こうとするエジタスに、戸惑いを見せるサタニア。



 「心配しなくとも、また一週間後に戻って来ますよ」



 「…………分かった。エジタスもあっちで頑張ってね!」



 「はい、マオさん達の監視を続けさせて貰います。では皆さん、また一週間後にお会いしましょう」



 サタニアが納得するのを見たエジタスは、指をパチンと鳴らしてその場から姿を消した。



 「……嵐みたいに去って行ったな…………」



 「まぁ、エジタスちゃんらしいと言えばらしいけど……」



 「センセイハ、コウドウガハヤイ」



 「全く、こちらの都合も考えて欲しいものです」



 「でもやっぱり僕は、そんなエジタスが好きなんだ…………それじゃあ皆、さっきの続きと行くよ!エジタスが帰って来る前に急いで考えないと!僕的にはやっぱりもう少し味噌汁を…………」



 そうしてサタニア達は、次にエジタスが帰って来る前に料理のレパートリーを増やす為の会議を再開するのであった。



 「さて、この情報をマオさん達に伝えたら、どんな行動を示してくれるのでしょうか…………今からワクワクが止まりませんね~」



 再びヴァルベルトの城に転移したエジタスは、マオ達に今までの情報を伝える為に捜し始めるのであった。
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