笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
120 / 300
第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト

明かされる真実

しおりを挟む
 「ハナちゃーん!!師匠!!何処ー!!?」



 現在、ヴァルベルトの城において真緒は行方不明となったハナコとエジタスを捜し回っていた。



 「マオさん!!」



 「あっ、リーマ。二人は見つかった?」



 二人を捜す中で、真緒はリーマと合流を果たした。



 「いえ、何処にもいませんでした…………」



 「いったい何処に行っちゃったんだろう……?」



 何処を捜しても手掛かりさえ見つけられておらず、不安は募るばかりだった。



 「……マオ…………」



 「ん?」



 「マオさん、どうしましたか?」



 「誰かに呼ばれた様な……?」



 真緒が声のした方向に顔を向けると、遠くの方から駆け寄って来る者がいた。



 「マオ、リーマ、無事かー!?」



 「フォルスさん、ハナちゃんと師匠は見つかりましたか?」



 それは鏡の一件を終えて、真緒達を捜していたフォルスであった。



 「その事何だが、ちょっといいか?」



 「「……?」」



 フォルスは、これまであった出来事を話した。鏡の中の自分が話し掛けて来た事、ハナコは真緒達を置いてパーティーを抜けたと嘘をついた事、きな臭く感じていたのが確信に変わり、真緒達の安否を確かめに来た事。



 「そんな…………」



 「この城は何処かおかしい……。城が大きいわりに使用人が何処にもいない」



 「「!!!」」



 もっと早くに気が付くべきだった。この城に来てから、出会った人物と言えばヴァルベルトとエルの二人だけ、あまりに不自然である。しかし真緒達はそれを良しとしてしまった。強くなったという慢心が招いた致命的な落とし穴。



 「それじゃあ……ハナちゃんや師匠はもう……」



 「「…………」」



 沈黙が漂う。最悪の事態が真緒達の頭に思い浮かぶ…………その時だった。



 「おや、皆さんこんな所で何をしているのですか~?」



 「「「!!?」」」



 そこには、魔王城から転移して来たエジタスが立っていた。



 「「エジタスさん!!」」



 「し、師匠…………もう、心配したんですよ!!」



 涙を流し、鼻声になりながらエジタスに抱き付く真緒。



 「いや~すみません。実は少し気になった事があったので調べに行っていました」



 「気になる事?」



 「はい、ヴァルベルトさんの事を調べて来ました」



 「「「!!!」」」



 突然戻って来たエジタスは、ヴァルベルトについて調べて来たと述べる。



 「今回のハナコさん失踪は、彼が関わっていると見て間違いないでしょう~」



 「えっ、ハナちゃんと一緒では無かったんですか!?」



 てっきり、ハナコと一緒にいると思っていた真緒。



 「残念ですが、ハナコさんは捕らえられていると思いますよ~」



 「そ、そんな……でも、どうしてヴァルベルトさんの仕業だと分かるんですか?」



 「それは彼が四天王だった頃の話に遡ります…………」



 エジタスはフォルスと同じ様に、魔王城で聞いて来た内容を真緒達に伝えた。



 「ここからは私の憶測になりますが、おそらくヴァルベルトさんは、過去にあのエルさんを亡くされて、甦らせようと禁断のアイテムである肉人形と、永遠の若さを保たせる為に巻き戻し時計を盗んだのだと思います」



 「じゃあ、ハナちゃんは……」



 「エルさんの生命維持の生け贄として捕まっているのでしょうね~」



 「ハナちゃん…………」



 ハナコの安否を心配する真緒達。行方不明となっていたハナコがまさか生け贄として捕まったとは、夢にも思わなかった。



 「それにしてもエジタスさん、よくそんな情報を集められたな?」



 「えっ……あ~それは……あれですよ。私はマオさん達と会う以前から、旅をしていました。そう言う訳で、よく色んな情報を耳にしていたんですよ~」



 「成る程…………さすがは元旅人だけはある」



 「(ふぅ~、危なかったですね~)」



 危うく四天王である事、良くても魔王軍に入隊している事がバレる所であった。



 「それで……どうしますか?」



 「勿論、ハナちゃんを助けに行きますよ!!」



 「ほぉ~、ヴァルベルトさんの事情を知ってもですか?」



 「!!そ、それは…………」



 ヴァルベルトにも同情する余地はある。愛する人を失った気持ちは、計り知れない。しかし、だからと言って仲間を犠牲には出来ない。だがそれでは、婚約者のエルは動かなくなってしまう。お人好しの真緒は悩みに悩んでいた。



 「師匠……酷いですよ。私にはそんな非情な決断は下せないのを、知っているのに……」



 「マオさん…………私は前にも言いましたよね。そのお人好しがいつか大事な決断の時に、大切な物を失ってしまうと…………それが今なのです。さぁ、まだ間に合います、決断して下さいマオさん」



 「私は、私は…………」



 「マオ……」



 「マオさん……」



 エジタスの言葉に、心を揺さぶられながらも真緒は決断出来ず、頭を抱える。



 「……助けて…………」



 「ん、誰か何か言いましたか?」



 「いえ、私は何も言ってませんよ?」



 「俺もだ」



 「私もです」



 「それじゃあ、この声はいったい…………?」



 真緒が声のした方向に顔を向けると、青く光輝き揺らめく物が近づいて来ていた。



 「あ、あれは何だ!?」



 「ひ、人魂!?」



 「あっ、昨日の人魂!!」



 それは真緒が昨夜見かけた、人魂であった。人魂は真緒達の目の前で動きを止める。



 「マオさん、知っているんですか?」



 「うん、昨日の夜に見た人魂何だけど……てっきり夢だと思っていたよ」



 「……助けて…………」



 「助けて……って事はもしかして、この人魂はこの城で生け贄として死んでしまった魂か!?」



 恐ろしい答えを導き出したフォルスは、その人魂に対して身構えてしまう。



 「……彼を……助けて……」



 「彼?誰かを助けて欲しいみたいです!」



 「助けて……彼を……ヴァルベルトを助けて……」



 「「「「!!?」」」」



 まさかの人魂は、首謀者であるヴァルベルトを助けて欲しいと懇願して来た。



 「ど、どういう事だ!?この魂は、ヴァルベルトに生け贄された魂じゃないのか!?」



 「助けて……私の婚約者のヴァルベルトを…………助けて……」



 「婚約者って…………まさか!?」



 「「「「エルさん!!?」」」」



 衝撃の事実。人魂の正体は、肉人形として生き返った筈のエルであった。



 「これは、いったい何がどうなっているのでしょうか!?」



 「う~ん、もしかすると……肉人形というのは、本当の意味での“人形”……魂自体は入っていないのかもしれませんね~」



 「という事はつまり、あのエルさんは見せかけだけの只の人形で、こっちの人魂こそが本物のエルさんという事ですか?」



 「そう言う事ですね」



 「「「…………」」」



 明らかになった真実。この瞬間、真緒達のこれからの行動は一つになっていた。



 「皆さん、今からハナちゃんを取り戻します!!そして取り戻した後、ヴァルベルトさんをこの呪縛から解放しましょう!!」



 「了解した!」



 「任せて下さい!」



 「それでしたら、巻き戻し時計を壊すと良いでしょう。壊してしまえば、肉人形は腐っていく肉を維持出来ず、崩れ落ちる筈です」



 肉人形と巻き戻し時計は、二つで一つの代物。どちらか一方が欠けてしまっては、意味が無い。



 「では、師匠は巻き戻し時計である大きな古時計を見つけ出して下さい。その間に私達は、ハナちゃんを取り戻します!!」



 「分かりました~」



 そう言うとエジタスは、大きな古時計を探す為に歩き始めた。



 「さぁ、行きましょう。フォルスさん、リーマ!!ハナちゃんを……私達の掛け替えの無い仲間を!!」



 「「おおーーー!!!」」



 遂に決断した真緒達はハナコを……ヴァルベルトを救うべく、走り出した。



 「……お願いします…………どうか、どうかヴァルベルトを救ってあげて……勇者様……」



 青い人魂は、いつの間にか姿を消していた。





























































 「ヴァルベルト様……どうやら奴ら、あの熊人を我々が捕まえたと感づいた模様です……」



 「そうか……だが安心するがいい。既に準備は整っている……」



 ヴァルベルトの目線の先には、無数に広がる赤い光がうごめいていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...