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第九章 冒険編 雲の木の待ち人
魔食
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「アーメイデさん!!いったいあの巨大な生き物は、何なんですか!?」
真緒達は、突然の爆音と地響きに襲われた事で、慌てて外へと飛び出したアーメイデを追い掛けると、その目線の先には巨大な生き物がクラウドツリーに向かってゆっくりと歩いていた。真緒はアーメイデに問い掛けるが、反応が無かった。
「…………」
「アーメイデさん!!」
「えっ!?あっ、ご、ごめんなさい!!」
聞こえていなかったのか、真緒は再び声を掛ける。すると、我に帰ったアーメイデが真緒達に謝りながら、重々しく話始めた。
「あれは通称“魔食”…………二千年前、初代勇者が唯一倒す事が出来ず、封印せざるを得なかった存在よ」
「「「「!!!」」」」
「初代勇者が、唯一倒せなかった存在…………」
アーメイデの言葉に、真緒達は驚きの表情を隠せなかった。
「あんな生き物は見た事がありません!あれはいったい、何て言う魔物なんですか!?」
「いえ……あれは魔物では無いわ……」
「それじゃあまさか……魔族だと言うんですか?」
真緒達は、あんなに巨大な生き物に知性まで付いているのかと、信じられない様子だった。
「いえ……魔族でも無いわ……」
「えっ…………?それって、どう言う意味ですか?」
まさかのどちらでも無い事に、混乱する真緒達。
「魔食はね……“現象”なの……」
「“現象”……ですか……?」
いまいちピンと来ていない真緒達に、アーメイデが説明をし始めた。
「…………二千年前、何の前触れも無く“それ”は現れた……自我は持ち合わせておらず、只ひたすらにある一つの行動を取り始めた」
「それって…………?」
「魔力を吸収する事よ」
「「「「!!!」」」」
アーメイデの口から語られた衝撃の事実に、真緒達は絶句していた。
「“それ”は人間、亜人、魔族問わず、世界中にある魔力を手当たり次第、吸収し始めた。“魔力を食す”という事で“魔食”と名付けられ、このままでは世界から魔力が全て吸い付くされてしまうと危機を感じた人間、亜人、魔族の三種族がそれぞれ討伐隊を組織して、魔食を退治しようとしたけれど歯が立たなかった…………」
「そんなに強かったんですか……?」
「いえ、全然強く無いわよ。正直にいうと、そこら辺の戦士でも戦える筈よ」
「「「「…………」」」」
次々と語られる予想外の話に、真緒達は理解を追い付かせ様とするので精一杯だった。
「問題だったのは、脅威的な“生命力”と“再生力”よ。魔食の源は魔力……つまり、この世界に魔力が存在している限り、魔食が死ぬ事は無いのよ…………思い返せばあの時の情景が鮮明に浮かび上がる……腕を切り落としても、体に風穴を空けようとも、すぐに再生してしまう……あの地獄の光景を…………」
「そんな魔食を、どうやって初代勇者は封印したんですか?」
「…………あの時は、魔王を封印する為に国から預かっていた“封印の剣”を魔食に突き刺して、何とか地面の奥深く封じ込める事に成功したの…………そして二度と復活しない様に、封印の剣の周りに結界を張った筈なんだけど…………」
アーメイデが語る目線の先には、封印した筈の魔食がゆっくりと近づいて来ていた。
「も、もう一度封印の剣を使ったらどうでしょうか!?」
「残念だけど、封印の剣は強力が故に一度しか使えない代物なんだ……」
当たり前だ。そんなに強い剣を何回でも使えてしまえば、魔王など存在していない。
「えっ、えっとそれなら説得して見るのはどうでしょうか!?どんな生き物も腹を割って話せば、分かり合えるものです!!」
「それはもっと無理な話だね。言っただろ、魔食は現象…………簡単に言えば自然災害そのものだ……災害に言葉が通じると思うかい?」
「…………」
ぐうの音も出なかった。倒す事も不可、封印する事も不可、和解するのも不可、もはや真緒達には打つ手が残されてはいなかった。
「で、でもどうして魔食はこちらに向かっているのでしょうか?」
「それはきっと私達のせいさ……」
「「「「えっ!!?」」」」
「魔食は二千年振りに目覚めて、魔力に飢えている。そんな中でこのクラウドツリーの頂上に、豊富な魔力を持っている者達がいれば後先考えずに近づいて来るだろうさ…………」
特に魔法を研究しているアーメイデは、底知れない程の魔力を持っていた。
「このままだと、根元にいる村人が危険だ!!急いで避難させる!悪いけど手伝っておくれ!!」
「それは勿論そうするつもりですけど…………あの魔食はどうするんですか?」
「…………」
しかしアーメイデは、真緒の言葉を無視して避難の準備を整える為に、小屋へと戻ろうとする。
「アーメイデさん!!」
戻ろうとするアーメイデに、真緒は強く声を掛けて肩を掴み引き止めた。
「もう……どうしようも無いんだよ…………」
「「「「!!?」」」」
アーメイデは、俯きながら重々しく口を開いた。
「初代勇者もいない…………封印の剣も無い……もう私達には逃げるしか手が残されていないんだよ…………」
「………………何ですかそれ……」
真緒はアーメイデの肩から手を離して俯いた。そして内から溢れる怒りが、両手それぞれの握り拳から感じ取れた。
「マオぢゃん……」
「マオさん……」
「マオ……」
「どうして立ち向かおうとしないんですか……どうして諦めてしまうんですか…………アーメイデさんの気持ちも分かります……圧倒的な存在の前から逃げたいと思うのは普通の事です。何も恥ずかしい事ではありません……寧ろ、村人を助けようとする意思、素晴らしいとすら感じます……けど!!」
握る拳が強くなり、真緒の言葉にも圧が加わっていく。
「今のアーメイデさんは、村人を助けたいというよりこの場から直ぐ様、逃げ出したい様に感じられます……」
「そんなつもりは……!!」
「分かっています!!アーメイデさんが、そんな事を思っていないって……でも……何か納得出来ないんです……」
自分でも何を言っているのか、訳が分からなくなっていた真緒。
「アーメイデさんは、無意識に楽な道へと向かっている様な……そんな感じがするんです…………」
「!!!」
真緒の言葉にアーメイデは、雷に打たれたかの様な衝撃を受けた。確かに、二千年前の当時より戦闘する数は減ってしまったかもしれない。そのせいか、戦うという行為に面倒臭さを感じていた。そしてそれがいつの間にか、アーメイデの強敵に立ち向かうという意思を鈍らせ、比較的楽な道へと歩む様になってしまっていた。年を取っていない若々しいアーメイデだったが、気付かない内に心は年を取っていた。
「すみません、私はやっぱり諦めたくありません。例え死ぬのが確実な戦いだと分かっていても、何もせず死ぬより……何かをしながら死にたいんです!!」
そう言いながら真緒は走り出した。
「ま、待ちなさい!!」
アーメイデの呼び止めを無視して、真緒はクラウドツリーを飛び降りてしまった。
「!!!」
アーメイデが、真緒が飛び降りた事に驚いていると、それに続くかの様にフォルス、ハナコ、リーマが一斉に走り出していた。
「あ、あんた達!!?」
「悪いが俺も、何もせずに諦めるってのは性に合わなくてな」
「オラは、マオぢゃんの行ぐ所にづいで行ぐだげだぁ」
「アーメイデさん……私はあなたの事を尊敬していますが、“今”のあなたには軽蔑すら感じています」
そう言いながら、三人は真緒を追い掛ける為にクラウドツリーから飛び降りた。
「…………分からない……どうして……勝てない相手に立ち向かう事が出来るの…………?」
アーメイデは、真緒達の行動を理解出来ずに混乱していた。
「“世代”というやつですよ……」
戸惑いを見せているアーメイデに、エジタスが声を掛ける。
「あなたはずっと、過去の栄光に囚われている。初代勇者の亡霊を求めて、今の現実を受け止めようとしない時代遅れのおばさんに、今の若き者達の考えを理解出来る訳が無いでしょう~?」
「…………」
「理解したいのなら、今すぐマオさん達の後を追い掛けて一緒に戦うのです!そうすれば、昔のあなたを取り戻す事が出来ますよ!」
「昔の私…………っ!!」
エジタスの言葉に、真緒達の後を追い掛け様とするアーメイデだったが、どうしても一歩踏み出す事が出来ずに、結局小屋の方へと戻ってしまった。
「…………がっかりですね……」
そんなエジタスの一言が、アーメイデの心に深く突き刺さった。
真緒達は、突然の爆音と地響きに襲われた事で、慌てて外へと飛び出したアーメイデを追い掛けると、その目線の先には巨大な生き物がクラウドツリーに向かってゆっくりと歩いていた。真緒はアーメイデに問い掛けるが、反応が無かった。
「…………」
「アーメイデさん!!」
「えっ!?あっ、ご、ごめんなさい!!」
聞こえていなかったのか、真緒は再び声を掛ける。すると、我に帰ったアーメイデが真緒達に謝りながら、重々しく話始めた。
「あれは通称“魔食”…………二千年前、初代勇者が唯一倒す事が出来ず、封印せざるを得なかった存在よ」
「「「「!!!」」」」
「初代勇者が、唯一倒せなかった存在…………」
アーメイデの言葉に、真緒達は驚きの表情を隠せなかった。
「あんな生き物は見た事がありません!あれはいったい、何て言う魔物なんですか!?」
「いえ……あれは魔物では無いわ……」
「それじゃあまさか……魔族だと言うんですか?」
真緒達は、あんなに巨大な生き物に知性まで付いているのかと、信じられない様子だった。
「いえ……魔族でも無いわ……」
「えっ…………?それって、どう言う意味ですか?」
まさかのどちらでも無い事に、混乱する真緒達。
「魔食はね……“現象”なの……」
「“現象”……ですか……?」
いまいちピンと来ていない真緒達に、アーメイデが説明をし始めた。
「…………二千年前、何の前触れも無く“それ”は現れた……自我は持ち合わせておらず、只ひたすらにある一つの行動を取り始めた」
「それって…………?」
「魔力を吸収する事よ」
「「「「!!!」」」」
アーメイデの口から語られた衝撃の事実に、真緒達は絶句していた。
「“それ”は人間、亜人、魔族問わず、世界中にある魔力を手当たり次第、吸収し始めた。“魔力を食す”という事で“魔食”と名付けられ、このままでは世界から魔力が全て吸い付くされてしまうと危機を感じた人間、亜人、魔族の三種族がそれぞれ討伐隊を組織して、魔食を退治しようとしたけれど歯が立たなかった…………」
「そんなに強かったんですか……?」
「いえ、全然強く無いわよ。正直にいうと、そこら辺の戦士でも戦える筈よ」
「「「「…………」」」」
次々と語られる予想外の話に、真緒達は理解を追い付かせ様とするので精一杯だった。
「問題だったのは、脅威的な“生命力”と“再生力”よ。魔食の源は魔力……つまり、この世界に魔力が存在している限り、魔食が死ぬ事は無いのよ…………思い返せばあの時の情景が鮮明に浮かび上がる……腕を切り落としても、体に風穴を空けようとも、すぐに再生してしまう……あの地獄の光景を…………」
「そんな魔食を、どうやって初代勇者は封印したんですか?」
「…………あの時は、魔王を封印する為に国から預かっていた“封印の剣”を魔食に突き刺して、何とか地面の奥深く封じ込める事に成功したの…………そして二度と復活しない様に、封印の剣の周りに結界を張った筈なんだけど…………」
アーメイデが語る目線の先には、封印した筈の魔食がゆっくりと近づいて来ていた。
「も、もう一度封印の剣を使ったらどうでしょうか!?」
「残念だけど、封印の剣は強力が故に一度しか使えない代物なんだ……」
当たり前だ。そんなに強い剣を何回でも使えてしまえば、魔王など存在していない。
「えっ、えっとそれなら説得して見るのはどうでしょうか!?どんな生き物も腹を割って話せば、分かり合えるものです!!」
「それはもっと無理な話だね。言っただろ、魔食は現象…………簡単に言えば自然災害そのものだ……災害に言葉が通じると思うかい?」
「…………」
ぐうの音も出なかった。倒す事も不可、封印する事も不可、和解するのも不可、もはや真緒達には打つ手が残されてはいなかった。
「で、でもどうして魔食はこちらに向かっているのでしょうか?」
「それはきっと私達のせいさ……」
「「「「えっ!!?」」」」
「魔食は二千年振りに目覚めて、魔力に飢えている。そんな中でこのクラウドツリーの頂上に、豊富な魔力を持っている者達がいれば後先考えずに近づいて来るだろうさ…………」
特に魔法を研究しているアーメイデは、底知れない程の魔力を持っていた。
「このままだと、根元にいる村人が危険だ!!急いで避難させる!悪いけど手伝っておくれ!!」
「それは勿論そうするつもりですけど…………あの魔食はどうするんですか?」
「…………」
しかしアーメイデは、真緒の言葉を無視して避難の準備を整える為に、小屋へと戻ろうとする。
「アーメイデさん!!」
戻ろうとするアーメイデに、真緒は強く声を掛けて肩を掴み引き止めた。
「もう……どうしようも無いんだよ…………」
「「「「!!?」」」」
アーメイデは、俯きながら重々しく口を開いた。
「初代勇者もいない…………封印の剣も無い……もう私達には逃げるしか手が残されていないんだよ…………」
「………………何ですかそれ……」
真緒はアーメイデの肩から手を離して俯いた。そして内から溢れる怒りが、両手それぞれの握り拳から感じ取れた。
「マオぢゃん……」
「マオさん……」
「マオ……」
「どうして立ち向かおうとしないんですか……どうして諦めてしまうんですか…………アーメイデさんの気持ちも分かります……圧倒的な存在の前から逃げたいと思うのは普通の事です。何も恥ずかしい事ではありません……寧ろ、村人を助けようとする意思、素晴らしいとすら感じます……けど!!」
握る拳が強くなり、真緒の言葉にも圧が加わっていく。
「今のアーメイデさんは、村人を助けたいというよりこの場から直ぐ様、逃げ出したい様に感じられます……」
「そんなつもりは……!!」
「分かっています!!アーメイデさんが、そんな事を思っていないって……でも……何か納得出来ないんです……」
自分でも何を言っているのか、訳が分からなくなっていた真緒。
「アーメイデさんは、無意識に楽な道へと向かっている様な……そんな感じがするんです…………」
「!!!」
真緒の言葉にアーメイデは、雷に打たれたかの様な衝撃を受けた。確かに、二千年前の当時より戦闘する数は減ってしまったかもしれない。そのせいか、戦うという行為に面倒臭さを感じていた。そしてそれがいつの間にか、アーメイデの強敵に立ち向かうという意思を鈍らせ、比較的楽な道へと歩む様になってしまっていた。年を取っていない若々しいアーメイデだったが、気付かない内に心は年を取っていた。
「すみません、私はやっぱり諦めたくありません。例え死ぬのが確実な戦いだと分かっていても、何もせず死ぬより……何かをしながら死にたいんです!!」
そう言いながら真緒は走り出した。
「ま、待ちなさい!!」
アーメイデの呼び止めを無視して、真緒はクラウドツリーを飛び降りてしまった。
「!!!」
アーメイデが、真緒が飛び降りた事に驚いていると、それに続くかの様にフォルス、ハナコ、リーマが一斉に走り出していた。
「あ、あんた達!!?」
「悪いが俺も、何もせずに諦めるってのは性に合わなくてな」
「オラは、マオぢゃんの行ぐ所にづいで行ぐだげだぁ」
「アーメイデさん……私はあなたの事を尊敬していますが、“今”のあなたには軽蔑すら感じています」
そう言いながら、三人は真緒を追い掛ける為にクラウドツリーから飛び降りた。
「…………分からない……どうして……勝てない相手に立ち向かう事が出来るの…………?」
アーメイデは、真緒達の行動を理解出来ずに混乱していた。
「“世代”というやつですよ……」
戸惑いを見せているアーメイデに、エジタスが声を掛ける。
「あなたはずっと、過去の栄光に囚われている。初代勇者の亡霊を求めて、今の現実を受け止めようとしない時代遅れのおばさんに、今の若き者達の考えを理解出来る訳が無いでしょう~?」
「…………」
「理解したいのなら、今すぐマオさん達の後を追い掛けて一緒に戦うのです!そうすれば、昔のあなたを取り戻す事が出来ますよ!」
「昔の私…………っ!!」
エジタスの言葉に、真緒達の後を追い掛け様とするアーメイデだったが、どうしても一歩踏み出す事が出来ずに、結局小屋の方へと戻ってしまった。
「…………がっかりですね……」
そんなエジタスの一言が、アーメイデの心に深く突き刺さった。
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