笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 雲の木の待ち人

真緒パーティー VS 魔食(後編)

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 「ハナちゃん!!」



 真緒達は危機的状況に立たされていた。片足を失い倒れた魔食は、一瞬の隙を突いてハナコを掴み上げた。



 「ううう…………!!」



 握り締める力が次第に強くなる。ハナコの体から骨が軋む様な、酷く鈍い音が鳴り響く。



 「不味い!!このままではハナコが握り潰されてしまう!!」



 「ハナちゃん!!」



 「ハナコさん!!今助けます!!」



 そう言いながらリーマは、魔導書を開いた。



 「駄目だよリーマ!!」



 しかし、いざ魔法を唱えようとすると真緒に止められてしまった。



 「どうして止めるんですか!?」



 「無闇に魔法を放てば、魔食はハナちゃんを盾にするかもしれないよ!!」



 「仮にもし、魔食に魔法が当たったとしても、それで手を離すかどうかは分からない。寧ろその反動でハナコを一気に握り潰すかもしれない…………」



 「じゃあ!いったいどうすればいいんですか!?」



 「「…………」」



 リーマの問い掛けに、真緒とフォルスは言葉が出て来なかった。無闇に攻撃すれば、ハナコにも当たる可能性がある。かと言って、何もせず突っ立っていれば遅かれ早かれハナコは握り潰されてしまう。真緒達がこの絶望的状況で、必死に頭を捻っているその時だった……。



 「ううう…………!!ス、スキル“鋼鉄化”」



 スキルを発動した途端、魔食の手に掴まれているハナコの皮膚が、銀色へと変色した。そしてそれと同時に、先程まで聞こえていた骨が軋む酷く鈍い音が聞こえなくなっていた。



 「ハナちゃん!?」



 「み、皆……オラなら大丈夫だがら……今の内に魔食を倒じでぐれだぁ……」



 魔食に掴まれながらも、体を鋼鉄の様に固くする“鋼鉄化”で時間を稼ぐハナコ。



 「フォルスさん!!」



 「分かっている!!」



 このチャンスを逃す訳にはいかない。フォルスは、真緒に声を掛けられるよりも早く空中へと舞い上がり、行動に移していた。



 「魔食の腕を打ち落とす!!貫通しなかった時は、後押しを頼むぞ!!」



 「任せて下さい!!」



 後押しの準備を整えるリーマ。フォルスは魔食の周りを飛び、後ろの死角からハナコを掴んでいる腕に狙いを定めた。



 「“ブースト”!!」



 フォルスの矢に風がまとわりつく……。強い力に、カタカタと震える弓矢をしっかりと指で押さえる。



 「ハナコを……離しやがれ!!」



 放たれた矢は風の力によって肉眼では捉えきれない速度となり、ハナコを掴んでいる腕に目掛けて一直線に進む。しかし、それを予期していたかの如く腕を上げて、放たれた矢を避けた。



 「な、何だと!!?完全に死角からの攻撃だった筈だ!!」



 フォルスは気づいていなかった。魔食はバカだがアホでは無い。自我を持たず考える事すら出来ない魔食であるが、凄まじい本能が体を突き動かして自身に迫る危機から無意識に回避したのだ。特に一度受けた事のある物なら尚更である。



 「くそっ!!もう一度だ!!」



 フォルスは再び魔食の周りを飛び、今度は真上から放つ事にした。



 「食らえ!!“ブースト”!!」



 放たれた矢は風の力によって肉眼では捉えきれない速度となり、真上からハナコを掴んでいる腕に目掛けて一直線に進む。そして今度は腕が横に動いて、放たれた矢を避けた。



 「そ、そんなバカな…………」



 「死角からの攻撃を、二度も避けられるだなんて…………」



 一度ならず二度までも、フォルスの矢を回避した。真緒達は、まさかの事態に硬直してしまう。



 「ううう…………!!み、皆早ぐしでぐれぇ……長ぐは持ぢぞうに無いだぁ…………!!」



 “鋼鉄化”と言っても、絶対に壊れないという訳では無い。少しずつ、少しずつ、耐えきれなくなって来た。



 「い、いったいどうすれば……フォルスさんの矢が当たらなければ、私も後押しのしようがありません……」



 「…………フォルスさん!!ちょっと来て下さい!!」



 「どうした!!?」



 攻撃すら当たらない現状に、真緒はフォルスを呼び戻した。



 「少し……試したい事があるんですが……聞いて貰えますか?」



 「何だ!?言ってみろ!」



 「ハナコさんを救う為なら、何でもしますよ!!」



 仲間達の同意を得た真緒は、自身の考えを口にした。



 「二人とも“フィーリングストライク”を覚えている?」



 「それって確か……マオさんがあの、セイイチ……という人と戦った時に身に付けたスキルですよね?」



 “フィーリングストライク”それは、真緒が聖一との戦いの最中で身に付けたスキル。能力は実にシンプルで、真緒の現在抱いている感情が強ければ強い程、その威力に比例する。



 「うん、結局一歩届かなかったけど…………このスキルに私はある一つの可能性に気がついたの……」



 「「可能性……?」」



 「この“フィーリングストライク”…………もしかしたら、自分以外の人の感情も上乗せさせられるんじゃないかな?」



 「…………それって……つまり……」



 「俺達の感情を上乗せして、威力を高めるって事か?」



 「…………やってみる価値はあると思う…………」



 仲間達の感情を一つにする。そんな事が本当に可能なのかどうか。時間の猶予が無いこの状況で、決断が迫られる。



 「…………やろう!!」



 フォルスが大きな声をあげて、真緒の考えに賛成した。



 「そうですね……考えるだけじゃ何も始まりませんものね!!私もマオさんの考えに賛成します!!」



 フォルスに続く様に、リーマも真緒の考えに賛成した。



 「皆…………ありがとう……」



 「おいハナコ!!今の話!聞こえてたか!!?」



 「バ……バッヂリ……聞ごえでいだだよぉ…………オラの感情もマオぢゃんに送るだぁ……」



 ハナコは、魔食に握り潰されそうになりながらも必死に答えた。



 「ハナちゃん……ありがとう……それじゃあ行くよ!!」



 「「「了解!!」」」



 仲間達の返答と同時に、真緒は魔食に向かって純白の剣を構える。



 「スキル“フィーリングストライク”!!」



 純白の剣が、真緒の感情に反応して光輝く。



 「皆!お願い!!」



 「よし!今だ!!」



 「マオさんの剣に、私達の感情を……」



 「マオぢゃん…………」



 三人は目を瞑り、真緒の剣に感情を注ぎ込む。こんな不確かな方法で、威力が高まるとは到底考えられない。そんな事は真緒達だって理解していた。しかしこの方法しか残されていなかった。練習無しのぶっつけ本番、真緒達は只ひたすらに願うしか無かった。



 「…………!!」



 そして奇跡は起こった。真緒達の感情が純白の剣に注ぎ込まれ、更に強い光を放ち始めたのだ。



 「やったぞ!!」



 「成功です!!」



 「凄い綺麗だぁ!!」



 「行ける……これなら絶対に!!」



 勝利を確信した真緒は、仲間達の感情が注ぎ込まれた純白の剣を、魔食の胸を突く様に飛び出した。



 「スキル“フィーリングストライク”!!」



 「「「いっけぇぇぇぇ!!!!」」」



 真緒の放った一撃は見事魔食の胸に突き刺さり、そして…………貫いた。



 「凄い……私とフォルスさんの二人でやっと貫けた皮膚を……」



 「意図も簡単に貫いた…………」



 胸にぽっかりと穴が空いた魔食は、ゆっくりと仰向けに倒れた。土煙が舞い上がり、何も見えない。



 「ハナちゃん!!大丈夫!!?」



 「ハナコさーん!!」



 「ハナコー!!」



 ハナコの安否を心配して土煙が舞い上がる中、呼び掛ける。



 「ご、ごごだよぉ!!」



 「ハナちゃん!!」



 声のした方向に駆け寄ると、魔食の手から離れて一緒に仰向けで倒れているハナコがいた。



 「無事で良かった!!何処か痛む所は無い!?」



 「ぜ、全身が痛むげど……何どが生ぎでるだぁ……」



 つい先程まで、握り潰されそうになっていたのだから仕方の無い事である。



 「い、急いでアーメイデさんの所に戻ろう!!あの人なら回復できるかもしれない!!」



 そう言って真緒は、ハナコを担ぎ上げ様とするが中々持ち上がらない。



 「お、重い…………!!」



 「手伝うぞ!!」



 「私も手伝います!!」



 ハナコを担ぎ上げようとする真緒を見かねて、空かさずフォルスとリーマが一緒に持ち上げた。



 「よーし!行くよー!一、二、一、二、一、二…………」



 「「一、二、一、二、一、二…………」」



 ハナコを持ち上げ、バランスを崩さない様にリズムに合わせて、村まで戻る真緒達だった。その間、魔食はピクリとも動く事は無かった。
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