笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 雲の木の待ち人

魔食の真実

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 「アーメイデさん!!何処ですか!?」



 真緒達は負傷したハナコを担ぎ上げ、アーメイデに治療をお願いする為、村まで戻って来た。



 「マオ!!こっちだ!!」



 声のした方向に顔を向けると、村の中央にエジタス、アーメイデ、そして村民の人達が避難していた。



 「皆さ~ん、ご無事でしたか~」



 「師匠!!」



 真緒達は、手を振るエジタスの下へと駆け寄った。



 「大きな地響きがしたけど、何かあったの!!?」



 「その前にハナちゃんの……ハナちゃんの回復を……お願いします!!」



 そう言いながら真緒達は、負傷したハナコをアーメイデの前に下ろした。



 「これは……!?」



 「おぉ~、ハナコさん大丈夫ですか~?」



 負傷しているハナコを見て、アーメイデとエジタスは驚きの声をあげた。



 「お願いします、アーメイデさん……ハナちゃんを助けて下さい……」



 「俺からも頼む……」



 「アーメイデさん……お願いします……」



 「分かったわ……皆少し離れてて……」



 必死に頼み込む姿を見たアーメイデは、回復をする為離れる様に言った。真緒達はその言葉に従い、少し距離を置いた。



 「…………」



 側には、負傷したハナコしかいなかった。そんな中でアーメイデは、ハナコの体にゆっくりと触れて“回復魔法”を唱えた。



 「“オールライフ”」



 するとハナコの体がピンク色の光に包まれた。次第に光は薄れて行き、ハナコの体は完璧に回復していた。



 「ハナちゃん!!」



 「マ、マオぢゃん……苦じいだよぉ…………」



 怪我が治ったハナコを見て、真緒は思いっきり抱き締めた。



 「これでもう大丈夫よ」



 「アーメイデさん!ありがとうございます!!」



 「凄いな……あの怪我が一瞬で治るだなんて……」



 「さすがはアーメイデさん!あれはどう言った魔法なんですか?」



 あまりの凄さに、リーマは一人の魔法使いとして、アーメイデに問い掛けた。



 「“オールライフ”は回復魔法の中でも、かなり上位に入る魔法だ。その能力は、対象者のダメージを全て回復させる。言わば究極の回復魔法だよ」



 「凄いです……そんな魔法を使えるだなんて、やっぱりアーメイデさんは私の目標です!!」



 アーメイデの底知れぬ魔法に、いつになく興奮するリーマ。



 「それは嬉しいけど……それより、あんた達の方は大丈夫だったの?」



 「はい、何とか魔食を倒す事が出来ました!!」



 「倒しただって!!?」



 まさかの発言に、アーメイデが驚きの声をあげているとそれに反応して村人達が集まる。



 「そ、その話は本当ですか?」



 「はい、もう安心して大丈夫ですよ」



 「「「おぉー!!!」」」



 安心して大丈夫という真緒の言葉に、村中が歓喜の声に包まれた。



 「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」



 「あなた方は命の恩人です!!」



 「あんな巨大な生き物を倒せるだなんて……もしやあなた方は、伝説に伝えられる“勇者”様ではありませんか?」



 「えっ!?ち、違います!!私達は勇者なんかじゃありません!!」



 村人の発した一言に、真緒は慌てて否定する。



 「いやはや、これだけの偉業を成し遂げても謙遜なさるとは……あなた方は勇者に間違いありません!」



 しかし、その謙遜が村人達の株を爆上げした。



 「勇者様!!この度は村を救って頂きありがとうございます!!」



 「「「「ありがとうございます!!!」」」」



 真緒達を勇者として認識し、村人達は深々と頭を下げた。



 「そ、そんな頭を上げて下さい!私達は、対価を求めて助けた訳ではありません!あくまで自分自身の為に行っただけです!」



 このまま勇者として認識されるのを嫌った真緒は、村の為に魔食を倒したのでは無いと公言する。



 「おぉ!!お優しいだけでなく、とても謙虚でいらっしゃる!とても素晴らしい!!」



 だがしかし、またしても村人達の株を爆上げしてしまった。真緒が喋れば喋る程、裏目に出てしまった。



 「勇者様、バンザーイ!」



 「勇者様、バンザーイ!」



 「「「勇者様、バンザーイ!勇者様、バンザーイ!」」」



 「ちょ、ちょっと皆さん止めて下さい!は、恥ずかしいですよ!!」



 「…………」



 村人達による突然の万歳コールに、真緒達はとても恥ずかしくなった。そして、そんな一連の出来事をアーメイデが見つめていた。その目は何処か寂しそうに感じられた。



 「懐かしいですね~」



 「!!?」



 アーメイデが、真緒達と村人達を見つめていると、背後からエジタスが声を掛けた。



 「まるで“あの時”の初代勇者を思い出しませんか~?」



 「…………えぇ……そうね……」



 アーメイデは、感謝する村人達とそれに恥ずかしがる真緒達を見て、昔の事を思い出していた。



 「…………」



 するとアーメイデは踵を返して、村の外へと足を運ぶ。



 「おや~?どちらへ行かれるのですか~?」



 「魔食の所よ……あの子達を信じていない訳じゃ無いけど……どうしても自分の目で確かめたいの……」



 「私もついて行きますよ~」



 そう言いながらエジタスは、アーメイデの後を追い掛けるのであった。







***







 村の外に出ると魔食は、真緒に胸を貫かれた状態のまま倒れていた。



 「そんな……あの魔食がこんなにもあっさりと倒されているだなんて……」



 アーメイデは未だに信じられなかった。二千年前、初代勇者がどんなに頑張っても倒す事が出来ず、封印するしか無かった魔食が意図も簡単に倒されている事に……。



 「ほぉ~!見事に胸が貫かれていますね~!!」



 「魔食は、空気中に魔力が存在する限り死ぬ事は無い。こんな傷、一瞬で直せる筈なのにどうして…………」



 アーメイデが不思議に思い魔食に触れると、魔食の体は一瞬にして砂と化してしまった。



 「こ、これって…………!?」



 「“脱け殻”ですよ……」



 「脱け殻!?」



 突然砂と化してしまった魔食にアーメイデが驚いていると、エジタスが魔食の真実を話始める。



 「二千年も封印されていたんですよ?とっくの昔に吸収していた魔力は底をつき、枯れ果ててしまった。言わばミイラ状態、もはや復活する事など不可能だったという訳です…………」



 一度枯れた木は元には戻らない。長い封印が、魔力を糧とする魔食の生命を枯らしたのだ。



 「まぁ、それでは面白く無いので私が封印の剣を抜く時に、ちょこっと私の魔力を流し込んで一時的に復活させたんですけどね~」



 「まさか!!?封印を解いたのはあんただったの!?それに魔力を流し込んだって……下手を打っていたら完全に復活していたかもしれないんだよ!?」



 エジタスが漏らした聞き捨てならない言葉に、アーメイデは激しく反応した。



 「大丈夫ですよ~。魔力を流し込んだと言っても残りカス……せいぜい動くのがやっとですから~」



 「そうだとしても……何で復活なんかさせたんだ!!?」



 「それは勿論……マオさん達を成長させる為ですよ」



 「成長…………?」



 エジタスは砂と化してしまった魔食を片手で掬い上げて、指で弄る。



 「正直言って……マオさん達は弱いです。このままでは、魔王軍の兵士にすら負けてしまいます。そこで今回は、圧倒的存在を前にしても立ち向かえるかどうかと、精神的な成長を試みました…………結果は大成功!!マオさん達は、また一つ成長の階段を登ったのですよ~!!」



 「何よそれ……そんな事であの子達を危険な目に遭わせたって言うの!?あんた……あのハナコって子を見たでしょ!?万が一死んでいたらどうするつもりだったのよ!!?」



 アーメイデは恐怖を感じていた。成長という名目で、真緒達を危険な目に遭わせるエジタスがまともに思えなかった。



 「その時は代わりを捜しますよ」



 「!!!」



 恐怖を通り越して、狂気を感じた。何よりも恐ろしかったのは、何の迷いも無く平然と答えるエジタスの心だった。



 「…………あなたは……狂ってる……」



 「私の考えをどう思おうが、個人の自由……あなたから見れば私は狂っているのかもしれませんが、他の誰かから見れば私は正常かもしれませんよ……」



 アーメイデは改めて認識する。エジタスは異常な存在であると、そしてそんな異常な存在の言葉に納得してしまう自分がいるという事を…………。
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