笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
159 / 300
第九章 冒険編 雲の木の待ち人

アーメイデの決断

しおりを挟む
 「それじゃあそろそろ、マオさん達の所に戻りましょうか?」



 そう言うとエジタスは、砂と化してしまった魔食をその場に放り投げて、マオ達がいる村へと戻ろうとする。



 「…………ま、待ちなさい!!」



 するとアーメイデが、戻ろうとするエジタスを引き止めた。



 「どうしましたか~?」



 「…………あなたは……あの子達を何処まで成長させる気でいるの?」



 アーメイデは、聞かなければならないと思った。エジタスが真緒達に何処までの成長を望んでいるのか。



 「それは勿論……魔王と対等に戦えるまでですよ?」



 「!!……本気で言っているの…………?」



 魔王と対等に戦える。それは言わば、サタニアと互角の戦いが繰り広げられるという事だった。アーメイデは、エジタスの言葉に耳を疑った。



 「本気も本気、大真面目ですよ~。私の目的を成就させる為には、その位まで成長して頂く必要があります…………勇者は魔王と戦う運命にある。アーメイデさんだって理解していますよね~?」



 「そ、それは分かっているけど……そもそもあの子達が勇者になれると決まった訳じゃ無いでしょ!?」



 エジタスがこれからやろうとしている事に、真緒達の成長は欠かせない物であるがその高みに登り着くまで、どれ程の苦難を強いられるか想像もつかない。



 「いえ、マオさん達はもう勇者ですよ」



 「えっ…………?」



 平然と答えるエジタスに、アーメイデは一瞬思考が停止してしまった。



 「お忘れですか~?勇者は名乗るものではありません。誰かに認めて貰うものですよ~?」



 「そ、そんなの分かっているわよ!!」



 「なら、マオさん達は勇者だって分かりますよね~?」



 「何を…………!!」



 その時アーメイデは思い出した。村を出る前、魔食の脅威から救われた村人達が真緒達に感謝している事を……。







 “あなた方は命の恩人です!!”



 “あんな巨大な生き物を倒せるだなんて……もしやあなた方は、伝説に伝えられる“勇者”様ではありませんか?”







 「…………!!」



 「運命というのは…………非常に都合良く働いてくれる……」



 誰かに認めて貰う事が勇者であるのなら、真緒達はあの時に勇者としての道を歩み始めた。



 「まさか……この事も計算に入れて魔食を復活させたの…………!?」



 「いやいや、さすがにそこまでは期待していませんでしたよ…………ですが、期待以上の結果が得られたのは事実ですね~」



 期待していなかった。つまり、組み込まれてはいた。村の危機を真緒達に救って貰う事で勇者としての成長を促し、あわよくば村人達から認めて貰おうとしていた。真緒達の性格を利用したエジタスの計画に、アーメイデは人知れず恐ろしさを感じていた。



 「後は成長だけなんですけど……今のマオさん達では、到底魔王に太刀打ち出来ません。だから今度はもっと厳しい試練をマオさん達に与えようと思っているんですよ~」



 「正気なの!?こんな無茶な事を続けていたら命がいくつあっても足りないわよ!!」



 真緒達の命が危ない。そう思ったアーメイデは、エジタスを説得しようとする。



 「そうは言いますけどね~。こうでもしなければマオさん達は成長出来ないんですよ~」



 「あなたが指導すればいいじゃない…………」



 「私が?ご冗談を……私が教えられるのは基本的な所だけ、勇者を育てるだなんてとてもとても…………」



 そう言いながらエジタスは、首を横に振って否定する。



 「何を言ってるのよ。あなたなら簡単でしょ……“初代勇者の師匠”なんだから……」



 「アーメイデさん……いったい何千年前の話をしているんですか~。あの時と今じゃ、環境が違いすぎますよ~」



 「(環境が違う…………その程度の事で、あなたが衰えるとは思えないけどね……)」



 しかしそれは、敢えてエジタスには言わない事にした。何故なら話したとしても結局否定の言葉が返って来て、水掛け論になってしまうからだ。



 「話は以上ですか?それじゃあ今度こそ村に戻りましょうか~」



 「(このままでは、あの子達の命が危ない。だけど……私には勇者を救う資格が無い……それでも…………!!)」



 何かを決断したアーメイデは、エジタスの前に立ち塞がる。



 「もう~、今度は何ですか~?」



 「ちょっと提案があるのだけど…………いいかしら?」



 「??」







***







 「勇者様!お飲み物をどうぞ!」



 「勇者様!お腹は空いていませんか?村一番の料理人が腕を振るいましょう!」



 「勇者様!肩をお揉みしましょうか?」



 村では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。勇者である真緒達に感謝して、村人達が次から次へと奉仕しようとしていた。



 「お、お気持ちはありがたいですけど……そこまでして貰う訳には行きません……」



 「何を仰るのですか!?あなた方は村の救世主!この位の奉仕は受けて当然です!!」



 「で、ですが…………」



 どんどん迫って来る村人達に、真緒達は無下にも出来ず困惑していた。



 「か、囲まれた!」



 「マオさんどうしましょう……」



 「オ、オラ何だが……怖ぐ感じるだよぉ…………」



 「だ、誰か助けて…………」



 村人達に逃げ道を塞がれた真緒達は、助けを祈るしか出来なかった。すると突然、真緒は肩を掴まれた。



 「!!?」



 「マオさん大丈夫ですか~?」



 真緒達が振り返ると、そこには村の外から戻って来たエジタスがいた。



 「「「エジタスさん!!」」」



 「し、師匠!!ど、何処に行っていたんですかー!?こっちは大変だったんですよ!」



 「いや~、すみませんね~。ちょっとアーメイデさんと一緒に散歩していたものですから~」



 「さ、散歩ですか…………?」



 戻って来たかと思えば、アーメイデと散歩していたと言うエジタスに、真緒達は呆れていた。



 「そ、そう言えばアーメイデさんは何処にいるんですか?」



 辺りを見回すも、アーメイデの姿は何処にも無かった。



 「その前に一旦この場所から離れましょうか。皆さん、私の体に捕まって下さい」



 「は、はい!」



 真緒達は急いでエジタスの体にしがみついた。そしてエジタスは指をパチンと鳴らして、その場から一瞬で姿を消した。



 「ゆ、勇者様!?何処ですか!?」



 村人達は、突然消えた真緒達に驚きながら辺りを捜索するのであった。







***







 「はい、到着しましたよ」



 「こ、ここは……“クラウドツリー”の頂上?」



 エジタスの転移で来た場所は、“クラウドツリー”の頂上だった。



 「来たわね!」



 「アーメイデさん…………?」



 目の前にはアーメイデが仁王立ちで、真緒達を待っていた。



 「あんた達、修行するわよ!!」



 「「「「えっ…………?」」」」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...