笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 雲の木の待ち人

修行開始

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 「ほらほら!ペースが落ちてるよ!!」



 「はぁ……はぁ……」



 現在真緒達は、“クラウドツリー”の頂上で走り廻されていた。



 「どうしたどうした?そんなんじゃ、魔王と渡り合うだなんて夢のまた夢だよ!!」



 「そ、そうは言いますけど……もう十周はしているんですよ……少し休憩させて下さい……」



 「甘ったれた事を抜かすんじゃ無いよ!ハナコを見てみな、あんた達の倍近く廻っているって言うのにペースが全く落ちていないよ!」



 アーメイデが指差す方向には、一定のペースを保ちながら走るハナコがいた。



 「体力だげには自信があるだよぉ」



 「分かったかい?少しはあの子を見習いな!」



 そう言いながらアーメイデは、ペースが落ちている真緒達に喝を入れた。



 「はぁ、はぁ、はぁ…………俺もそれなりに体力はあると思っていたんだがな……まだまだ修行不足だな……」



 「ど、どうしてこんな事に…………」



 「頑張ってリーマ!一緒にアーメイデさんを安心させてあげよう!!」



 何故真緒達が、突然この様な走り込みをさせられているのか。それは、一時間前へと遡る。







***







 「あんた達、修行するわよ!!」



 「「「「えっ…………?」」」」



 突然の修行宣言に、真緒達は困惑していた。



 「ア、アーメイデさん……突然どうしたんですか?」



 「どうしたも何も……あんた達を鍛え上げてやるって言っているんだ。分かったら準備しな!」



 「ちょ、ちょっと待って下さい!!そんな急に言われても……訳を……訳を話して下さい!」



 何の脈絡も無く話を進められてしまっては、さすがの真緒達も理由を聞かずにはいられない。



 「そうだね……ちょっと急ぎ過ぎていたかもしれないね……順を追って説明するよ」



 落ち着きを取り戻したアーメイデは、真緒達に説明し始める。



 「まずはっきり言って、あんた達は弱い!びっくりする程に弱い!!」



 「それは聞き捨てならないな……これでも俺達は、元四天王のヴァルベルトを倒した事があるんだ。今の言葉は訂正して貰おうか…………」



 突然弱いと言うアーメイデの言葉に、フォルスは癪に障った。



 「訂正はしない。ヴァルベルトに勝てたのだって、あいつの力を付与したその子がいたから……付与していなかったら、手足も出せなかっただろうさ。それに、その気になればいつでもあんた達を殺せた筈だよ」



 「いい加減にしろよ……いくら初代勇者の仲間だからって言って良い事と悪い事が…………!!」



 フォルスがアーメイデに言い返そうとした瞬間、フォルスは何らかの攻撃を受けて地面へとめり込んだ。



 「フォルスさん!!」



 「く、来るな!!」



 「えっ?…………がっ!!」



 「ぼげぇ!!」



 「きゃあ!!」



 突然地面にめり込んだフォルスを心配して真緒達が駆け寄ると、案の定三人とも一緒に地面へとめり込んでしまった。



 「こ、これは…………!!?」



 「“重力魔法”さ……私はこの二千年で数え切れない程の魔法を習得した。これはその内の一種類で、対象の重力を自在に操れるのさ」



 体が全く動かせない。頭の先から足の爪先に至るまで全て動かせなかった。



 「それで……元四天王を倒した事がある……だっけ?」



 「…………」



 フォルスは、何も言う事が出来なかった。確かに実際ヴァルベルトを倒したのは、ハナコと真緒だった。自分は何も出来ず只見守る事しか出来ていなかった。



 「魔食を倒せた事で、強くなったと錯覚したみたいだけど……思い上がりもいい所だよ!」



 「くっ…………!!」



 アーメイデの言葉は的を得ていた。初代勇者が倒す事の出来なかった存在を、自分達は倒す事が出来た。しかしそれが却って慢心に拍車を掛けてしまったのだ。



 「…………その為にもあんた達は強くなる必要がある。今の弱さでは、魔王城に行って魔王と渡り合う事なんて出来ないよ」



 アーメイデは重力を解除して、今の実力では魔王と戦う事など出来ないと告げる。



 「わ、私達は別に魔王と戦うつもりはありません……只、新しく着任した四天王が誰かを調べて来るだけです……」



 「それで魔王軍が素直に教えると思っているのかい?」



 「それはそうですけど…………」



 真緒は分かっていた。自軍の最高勢力の一端を簡単に明かす訳が無い。



 「自身の身を守れる程度の力は、身に付けるべきだと思うよ」



 「…………そうですね……私達は思い上がっていました……アーメイデさんの様な強者がこの世界には沢山存在する……そんな人達に負けない力を付けたい!!アーメイデさん!ご指導よろしくお願いします!!」



 「私が最強の勇者に育ててやるよ。それで、あんた達はどうするんだい?」



 真緒の返答に頷くアーメイデは、他の三人の返答を聞く。



 「無論よろしく頼む。俺の甘ったれた根性を叩き直してくれ!」



 「オラも、皆ど一緒に強ぐなりだいだぁ!」



 「アーメイデさんに修行を付けて貰えるだなんて……光栄です!よろしくお願いします!」



 三人とも真緒と同じくアーメイデの修行を受ける事にした。



 「よし!そうと決まれば早速修行を開始するよ!始めからビシバシ行くから覚悟しな!!」



 「「「「はい!!」」」」



 「良い返事だ!じゃあまずはこの“クラウドツリー”頂上を五十周だ!!」



 「「「「…………えっ?」」」」



 突然の五十周という言葉に、一瞬で言葉を失ってしまった真緒達。



 「勿論魔法、スキル、飛行などの行為は一切禁止だよ。ちゃんと自分の足で廻り切るんだ。分かったね!?」



 「「「「…………」」」」



 「分かったら返事しなさい!!」



 「「「「は、はい!!」」」」



 「ほら!駆け足!!」



 「「「「はい!!」」」」



 アーメイデの怒鳴り声に、真緒達は慌てて頂上を廻り始めた。



 「全く……世話の掛かる連中だよ…………」



 「…………」



 そんな呆れた態度を取るアーメイデを見ながら、エジタスはあの時の出来事を思い出していた。







***







 「ちょっと提案があるのだけど…………いいかしら?」



 「??」



 村へと戻ろうとするエジタスの目の前に立ち塞がるアーメイデは、提案を持ち掛けた。



 「私があの子達を鍛え上げるわ……」



 「あなたが?マオさん達を?…………面白い冗談ですね」



 「冗談なんかじゃ無いわ!!私は本気よ!!」



 その真剣な表情に、エジタスは深い溜め息をついた。



 「はぁ~、アーメイデさん……確かにあなたは多くの弟子を持った事はありますけどね……それは全部魔法使いでしょ?」



 「だ、だからどうだって言うのよ!?」



 「いいですか?魔法使いと勇者では、全然違うんですよ?今までの生ぬるい修行方法では、マオさん達は決して成長する事は出来ません」



 「ど、どうしてあんたが私の修行方法が生ぬるいって分かるのよ!?」



 一度も弟子を鍛え上げる所を見せていない筈なのに、まるで知っているかの様な口振りに疑問を感じた。



 「それは…………見れば分かりますよ」



 「…………?」



 「修行に適さない小屋。適さない環境。そして何よりも……厳しくない師匠。これだけ修行に合わない事がありますでしょうか」



 エジタスはアーメイデを指差しながら説明した。



 「わ、私が厳しく無いですって…………!?」



 「えぇ、今まであなたの弟子が途中で辞めていないのが良い証拠です」



 「!!」



 エジタスに言われて、初めて気がついた。確かに今までの弟子は途中で根をあげたりはしなかった。だがそれはもしかしたら、アーメイデ自身が優しく接していたせいなのかもしれない。



 「…………」



 アーメイデは、何も言い返す事が出来ず黙り込んでしまった。



 「もういいですか?それではそろそろ村へと戻りましょうか」



 そう言いながらエジタスは、アーメイデの横を通り過ぎる。



 「…………それでも!!」



 「??」



 するとアーメイデは大きな声を出して、通り過ぎるエジタスの歩みを止めた。



 「それでも私は!!あの子達を鍛え上げる!!あんたのやり方では、必ず犠牲者が出てしまう!!」



 「ほぅ……あくまで私の鍛え方に異議を申しますか…………分かりました、ではこうしましょう」



 諦めを見せないアーメイデに、今度はエジタスが提案を持ち掛けた。



 「一ヶ月……一ヶ月以内にマオさん達を魔王と渡り合える実力まで鍛え上げてみて下さい。出来た場合は、素直に謝りましょう……しかし!出来なかった場合は今後一切私の鍛え方に異議を申し出ないで下さい!よろしいですか?」



 「分かったわ…………」



 「契約成立です」



 エジタスは、嬉しそうにアーメイデと握手を交わすのだった。
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