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第十章 冒険編 魔王と勇者
如月聖一(後編)
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聖一兄さんが亡くなって、数日が経った。しかし世間では亡くなったのは俺、聖二という扱いになっていた。
「聖一、あなたも聖二にお別れをしなさい」
「…………」
現在、俺と両親の三人は聖一兄さんもとい、俺の葬儀を執り行っていた。
「早くその写真を焼くんだ」
しかしそれは、葬儀と呼ぶにはあまりに酷い物だった。俺の部屋にあった私物を火に掛けて燃やすだけの作業だ。もう既にほとんどの家具は燃やされ、最後に残ったのは俺の写真だけだった。そんな写真を何のためらいも無く、火の中に投げ入れる。写真は勢い良く燃え上がり、これによって俺の存在は完全に抹消された。
「(俺が死んだら……こんな風に葬儀が行われるんだな……)」
別に悲しいとか、酷いとか、もっとちゃんとした葬儀を行って欲しいとか、そんな事は考えていない。今は只、聖一兄さんが何故自殺をしてしまったのか、それだけで頭が一杯だった。
「しかし、聖一の病気が治って本当に良かったわ」
「あぁ、これもきっと聖二が病気と一緒に死んでくれたからだろうな。その点に関しては、聖二に感謝しないとな」
両親は、俺と聖一兄さんが入れ替わっていた事に気がついていない。俺が検査を受ければ、病気が無いのは当たり前の事である。しかし、それには誰も気づいておらず検査した医者でさえも『奇跡だ!』の一言で済ませてしまう始末だった。
「だが、念には念を入れて数日は病室で安静にした方がいいだろう」
「そうね、この葬儀が終わったらまた病院に戻るけど大丈夫よね聖一?」
「……うん……」
俺は無気力に、母さんの問い掛けに返事をする。俺が言うのも何だが、一人の息子が死んだんだ親としてもっと悲しんだりしないのか。両親にとって俺は、そんなにもどうでもいい存在なのか。
***
「それじゃあ聖一、父さん達はもう行くが何かあったらすぐに連絡してくれいいな?」
「分かった…………」
そう言うと両親は、俺を病室に送り届けて各々の仕事場へと向かった。
「…………」
病室に戻って来た俺は、聖一兄さんが寝ていたベッドを撫でる。
「聖一兄さん……どうして……」
訳が分からなかった。何故、聖一兄さんは『僕の代わりに生きるんだ』と言ったのだろうか。俺はその場に崩れ落ちて、ベッドに寄り掛かった。
「…………?」
その時、ベッドの下に何か落ちているのを見つけた。立っていたらまず見える事の無い、俺の様にベッドに寄り掛かるかしゃがむかで、漸く見る事の出来る箇所に落ちていた。まるでだれかが意図的にそこに置いたかの様に、俺は手を伸ばしてそれを拾い上げる。
「これは……日記?」
それは一冊の本だった。表紙には“diary”と書かれており、誰かの日記だと読み取れた。
「まさか……聖一兄さんの!?」
聖一兄さんの病室に、隠される様に置かれた日記。持ち主が確定した瞬間俺は慌てて日記を開き、中身を読み進める。
◯月×日 晴れ
今日から日記をつける事にした。病室にいる間、する事が無かった為こうした趣味を身に付ける様に心掛けよう。書く内容は面白く無いかもしれないが、それでも書き続けようと思う。家族には黙っておく、読まれたら恥ずかしいしね。
「聖一兄さん…………」
意外だった。聖一兄さんがこんな日記を書いていただなんて、今の今まで気づかなかった。俺はそのまま時間の許す限り読み進めて行く。
×月◯日 晴れ
今日は聖二と、学校であった出来事や、病院での生活の話で盛り上がった。聖二の笑顔を見ると僕も嬉しい気持ちになった。
◯月◯日 晴れ
今日は聖二と、好きな女性のタイプの話をした。聖二は特に無いと言っていたけど、聖二が自分より優れた女性を求めているのを、僕は知っている。聖二らしいなと感じた。
「!!!」
まさかバレていたとは、今さらながらとても恥ずかしい。下手にカッコつけてしまったのが余計に恥ずかしかった。
×月×日 曇り
今日は父さん、母さんと話をした。毎日お見舞いに来てくれるのは嬉しいけど、わざわざ夜遅くまでいないで欲しい。心配なのは分かるけど、家で帰りを待つ聖二の事も考えて欲しい。
◯月△日 曇り
前々から感じていたが、父さんと母さんの様子がおかしい。僕に対して何をするにも褒めてくる。起床、就寝、食事、はたまた手洗いに行くまで全てにおいて、褒めてくるのだ。逆に聖二に対してとても冷たい態度を取っている。どうして……聖二の方が頑張っているのに……どうして……。
×月△日 曇り
やめてくれ……もう褒めないでくれ……僕は何もしていない……一日中病室のベッドで過ごし、たまに歩くとすれば手洗いに行く時だけ……毎日怠惰な生活を送っているのに、どうして褒めてくるんだ。そしてどうして聖二の方を褒めてくれないんだ……僕なんかより褒められるべきは聖二だろ。僕なんか褒めないで、聖二を褒めてあげてくれ……聖二にもその愛情を注いで欲しい。
△月△日 曇り
今日は聖二と中間テストの話をした。何と聖二が全教科で満点を叩き出したのだ。これほどまでの偉業を成し遂げた聖二を心から祝いたい。兄として誇りに思っている。その話を父さん、母さんに話したが二人は当たり前の事だと聖二を褒めようとしなかった。それどころか、普通に手洗いに行った僕を褒めてきた。
何故だ……何故聖二を褒めようとしないんだ……それでも親なのか……そうして悩んでいると両親がトイレに行ってくると、病室を出て行った。いつの間にか聖二もいなくなっており、それに気がついた僕は見送りをしようと車椅子に乗って病室から出ようとした。しかしその時、廊下の方から両親の会話が聞こえてきた。
僕は悪い事だと分かっていたが、それでも盗み聞きをせずにはいられなかった。会話の内容は僕と聖二の物だった。その会話の内容から聖二が家でどんな扱いを受けて来たのか察した。この日、僕は両親と自分自身の不甲斐なさに絶望した。
「……あの話を聞いていたんだ……」
盗み聞きをしていたのは、自分だけでは無かった。聖一兄さんもあの時、自分の病室から両親の話を聞いていた。皮肉にもタイミングの悪さが兄弟で似てしまった。俺は続きを読み進めた。
夜、僕は何の為に生きているのだろうと考えていた。何もせずに時間を無駄に費やす毎日。そんな自分に吐き気を催すが、それでも両親は僕を褒めてくる。自己嫌悪に陥り、どんどん自分自身と両親を呪った。そして考える、どうすれば両親の愛情を聖二に向けさせる事が出来るのか。僕なんかより聖二が褒められるべきだ、その為の方法を考えなくてはならない。出来る限り自然で気を使わせず、心の底から褒められる様にするにはどうしたら良いか…………僕が受けている愛情をそっくりそのまま聖二にあげられたらどんなに素晴らしいか…………。
そうか、その手があった。僕と聖二はとてもよく似ている。今日だって看護婦さんが言っていた。つまり、僕という存在を聖二に渡して僕は聖二としてこの世からいなくなれば、必然的に両親は僕になった聖二に愛情を注ぎ込む筈だ。
その後の行動は早かった、僕はナースステーションにあったハサミをこっそりと盗み出し、トイレで切り始めた。初めての作業に慣れない手つきで慎重に切っていく。失敗は許されない、聖二が幸せになる為にも絶対に失敗は出来ない。
「髪の毛…………」
見るとそのページには、髪の毛が挟まれていた。切った後に落ちてそのまま気づかずに閉じてしまったのだろう。俺はそのまま次のページを開く。事実上そこが最後のページとなった。
◯月×日 晴れ
結果から言うと成功した。短くなった髪の毛は聖二と全く同じになっていた。これなら誰が見ても分からないだろう。後は計画通りに進めるだけだ。もうすぐ聖二がこの病室にやって来る。その時、必ず短くなったこの髪の毛に触れてくるだろう。そしてバレないかどうか、服を交換して確かめてみようと持ち掛ける。廊下に出たらまず、わざと看護婦さんに見せつけて入れ替わった聖二と会話させて、僕であると認識させる。そして聖二と一緒に屋上へ移動する。後は僕が屋上から飛び降りるだけだ。僕が死ぬ事で看護婦さんが駆けつけて、死んだのは聖二だと思うだろう。ここで看護婦さんに見せつけたのが生きてくる。
死ぬのは怖いが、これ以上聖二が両親の愛情を受けられない所を見るのは耐えられない。いや、綺麗事はよそう。正直に言うと、僕自身がこれ以上褒められたく無いのだ。自己嫌悪に陥る毎日はもうたくさんだ…………もうすぐ聖二が来る。この日記もベッドの下に隠しておこう、きっと聖二が見つけ出してくれるだろう。最後に、この日記を読んでいるだろう聖二に書き残す。これからお前は、僕として人生を歩む事になる。今まで受けられなかった両親の愛情を、たっぷり受け取って欲しい。聖二の人生が幸せに満ち溢れる事を願っている。
「…………」
読み終えた俺は、静かに日記を閉じる。聖一兄さんがどんな気持ちで屋上から身を投げたのか。この日記を読んで漸く理解した。俺だけじゃなく、聖一兄さんも苦しんでいた。俺と正反対の悩みを抱えて、俺に幸せになって欲しいが為に自らの命まで犠牲にした。聖一兄さんの偉大さ、大いなる愛を感じた。そしてこの時不思議と涙は流れなかった。
「聖一兄さんは生きている」
聖一兄さんが歩めなかった人生を歩んで行こう。勉強、運動、そして性格、俺の力で如月聖一という完璧な人間を世の中に知らしめるんだ。
「“僕”……如月“聖一”は完璧な存在だ…………」
如月聖一という人間を否定したり、無視する奴は絶対に許さない。そう言う奴等には、その身を持って偉大なる如月聖一の完璧さを味わわせてやる。
***
そう……如月聖一は完璧な人間なんだ。完璧でなければいけないんだ……負けは許されない…………。
“もう二度と私達に関わらないで下さい…………”
如月聖一を否定する奴がいる……。
“無視して行きましょう!!”
如月聖一を無視する奴がいる……。
“はい!!無視です!!”
そう言う奴等には、その身を持って偉大なる如月聖一の完璧さを味わわせるだけじゃ物足りない…………。
「僕を……僕を……僕を“無視”するなぁあああ!!!」
死を持って、その過ちを償わせてやる!!!
「聖一、あなたも聖二にお別れをしなさい」
「…………」
現在、俺と両親の三人は聖一兄さんもとい、俺の葬儀を執り行っていた。
「早くその写真を焼くんだ」
しかしそれは、葬儀と呼ぶにはあまりに酷い物だった。俺の部屋にあった私物を火に掛けて燃やすだけの作業だ。もう既にほとんどの家具は燃やされ、最後に残ったのは俺の写真だけだった。そんな写真を何のためらいも無く、火の中に投げ入れる。写真は勢い良く燃え上がり、これによって俺の存在は完全に抹消された。
「(俺が死んだら……こんな風に葬儀が行われるんだな……)」
別に悲しいとか、酷いとか、もっとちゃんとした葬儀を行って欲しいとか、そんな事は考えていない。今は只、聖一兄さんが何故自殺をしてしまったのか、それだけで頭が一杯だった。
「しかし、聖一の病気が治って本当に良かったわ」
「あぁ、これもきっと聖二が病気と一緒に死んでくれたからだろうな。その点に関しては、聖二に感謝しないとな」
両親は、俺と聖一兄さんが入れ替わっていた事に気がついていない。俺が検査を受ければ、病気が無いのは当たり前の事である。しかし、それには誰も気づいておらず検査した医者でさえも『奇跡だ!』の一言で済ませてしまう始末だった。
「だが、念には念を入れて数日は病室で安静にした方がいいだろう」
「そうね、この葬儀が終わったらまた病院に戻るけど大丈夫よね聖一?」
「……うん……」
俺は無気力に、母さんの問い掛けに返事をする。俺が言うのも何だが、一人の息子が死んだんだ親としてもっと悲しんだりしないのか。両親にとって俺は、そんなにもどうでもいい存在なのか。
***
「それじゃあ聖一、父さん達はもう行くが何かあったらすぐに連絡してくれいいな?」
「分かった…………」
そう言うと両親は、俺を病室に送り届けて各々の仕事場へと向かった。
「…………」
病室に戻って来た俺は、聖一兄さんが寝ていたベッドを撫でる。
「聖一兄さん……どうして……」
訳が分からなかった。何故、聖一兄さんは『僕の代わりに生きるんだ』と言ったのだろうか。俺はその場に崩れ落ちて、ベッドに寄り掛かった。
「…………?」
その時、ベッドの下に何か落ちているのを見つけた。立っていたらまず見える事の無い、俺の様にベッドに寄り掛かるかしゃがむかで、漸く見る事の出来る箇所に落ちていた。まるでだれかが意図的にそこに置いたかの様に、俺は手を伸ばしてそれを拾い上げる。
「これは……日記?」
それは一冊の本だった。表紙には“diary”と書かれており、誰かの日記だと読み取れた。
「まさか……聖一兄さんの!?」
聖一兄さんの病室に、隠される様に置かれた日記。持ち主が確定した瞬間俺は慌てて日記を開き、中身を読み進める。
◯月×日 晴れ
今日から日記をつける事にした。病室にいる間、する事が無かった為こうした趣味を身に付ける様に心掛けよう。書く内容は面白く無いかもしれないが、それでも書き続けようと思う。家族には黙っておく、読まれたら恥ずかしいしね。
「聖一兄さん…………」
意外だった。聖一兄さんがこんな日記を書いていただなんて、今の今まで気づかなかった。俺はそのまま時間の許す限り読み進めて行く。
×月◯日 晴れ
今日は聖二と、学校であった出来事や、病院での生活の話で盛り上がった。聖二の笑顔を見ると僕も嬉しい気持ちになった。
◯月◯日 晴れ
今日は聖二と、好きな女性のタイプの話をした。聖二は特に無いと言っていたけど、聖二が自分より優れた女性を求めているのを、僕は知っている。聖二らしいなと感じた。
「!!!」
まさかバレていたとは、今さらながらとても恥ずかしい。下手にカッコつけてしまったのが余計に恥ずかしかった。
×月×日 曇り
今日は父さん、母さんと話をした。毎日お見舞いに来てくれるのは嬉しいけど、わざわざ夜遅くまでいないで欲しい。心配なのは分かるけど、家で帰りを待つ聖二の事も考えて欲しい。
◯月△日 曇り
前々から感じていたが、父さんと母さんの様子がおかしい。僕に対して何をするにも褒めてくる。起床、就寝、食事、はたまた手洗いに行くまで全てにおいて、褒めてくるのだ。逆に聖二に対してとても冷たい態度を取っている。どうして……聖二の方が頑張っているのに……どうして……。
×月△日 曇り
やめてくれ……もう褒めないでくれ……僕は何もしていない……一日中病室のベッドで過ごし、たまに歩くとすれば手洗いに行く時だけ……毎日怠惰な生活を送っているのに、どうして褒めてくるんだ。そしてどうして聖二の方を褒めてくれないんだ……僕なんかより褒められるべきは聖二だろ。僕なんか褒めないで、聖二を褒めてあげてくれ……聖二にもその愛情を注いで欲しい。
△月△日 曇り
今日は聖二と中間テストの話をした。何と聖二が全教科で満点を叩き出したのだ。これほどまでの偉業を成し遂げた聖二を心から祝いたい。兄として誇りに思っている。その話を父さん、母さんに話したが二人は当たり前の事だと聖二を褒めようとしなかった。それどころか、普通に手洗いに行った僕を褒めてきた。
何故だ……何故聖二を褒めようとしないんだ……それでも親なのか……そうして悩んでいると両親がトイレに行ってくると、病室を出て行った。いつの間にか聖二もいなくなっており、それに気がついた僕は見送りをしようと車椅子に乗って病室から出ようとした。しかしその時、廊下の方から両親の会話が聞こえてきた。
僕は悪い事だと分かっていたが、それでも盗み聞きをせずにはいられなかった。会話の内容は僕と聖二の物だった。その会話の内容から聖二が家でどんな扱いを受けて来たのか察した。この日、僕は両親と自分自身の不甲斐なさに絶望した。
「……あの話を聞いていたんだ……」
盗み聞きをしていたのは、自分だけでは無かった。聖一兄さんもあの時、自分の病室から両親の話を聞いていた。皮肉にもタイミングの悪さが兄弟で似てしまった。俺は続きを読み進めた。
夜、僕は何の為に生きているのだろうと考えていた。何もせずに時間を無駄に費やす毎日。そんな自分に吐き気を催すが、それでも両親は僕を褒めてくる。自己嫌悪に陥り、どんどん自分自身と両親を呪った。そして考える、どうすれば両親の愛情を聖二に向けさせる事が出来るのか。僕なんかより聖二が褒められるべきだ、その為の方法を考えなくてはならない。出来る限り自然で気を使わせず、心の底から褒められる様にするにはどうしたら良いか…………僕が受けている愛情をそっくりそのまま聖二にあげられたらどんなに素晴らしいか…………。
そうか、その手があった。僕と聖二はとてもよく似ている。今日だって看護婦さんが言っていた。つまり、僕という存在を聖二に渡して僕は聖二としてこの世からいなくなれば、必然的に両親は僕になった聖二に愛情を注ぎ込む筈だ。
その後の行動は早かった、僕はナースステーションにあったハサミをこっそりと盗み出し、トイレで切り始めた。初めての作業に慣れない手つきで慎重に切っていく。失敗は許されない、聖二が幸せになる為にも絶対に失敗は出来ない。
「髪の毛…………」
見るとそのページには、髪の毛が挟まれていた。切った後に落ちてそのまま気づかずに閉じてしまったのだろう。俺はそのまま次のページを開く。事実上そこが最後のページとなった。
◯月×日 晴れ
結果から言うと成功した。短くなった髪の毛は聖二と全く同じになっていた。これなら誰が見ても分からないだろう。後は計画通りに進めるだけだ。もうすぐ聖二がこの病室にやって来る。その時、必ず短くなったこの髪の毛に触れてくるだろう。そしてバレないかどうか、服を交換して確かめてみようと持ち掛ける。廊下に出たらまず、わざと看護婦さんに見せつけて入れ替わった聖二と会話させて、僕であると認識させる。そして聖二と一緒に屋上へ移動する。後は僕が屋上から飛び降りるだけだ。僕が死ぬ事で看護婦さんが駆けつけて、死んだのは聖二だと思うだろう。ここで看護婦さんに見せつけたのが生きてくる。
死ぬのは怖いが、これ以上聖二が両親の愛情を受けられない所を見るのは耐えられない。いや、綺麗事はよそう。正直に言うと、僕自身がこれ以上褒められたく無いのだ。自己嫌悪に陥る毎日はもうたくさんだ…………もうすぐ聖二が来る。この日記もベッドの下に隠しておこう、きっと聖二が見つけ出してくれるだろう。最後に、この日記を読んでいるだろう聖二に書き残す。これからお前は、僕として人生を歩む事になる。今まで受けられなかった両親の愛情を、たっぷり受け取って欲しい。聖二の人生が幸せに満ち溢れる事を願っている。
「…………」
読み終えた俺は、静かに日記を閉じる。聖一兄さんがどんな気持ちで屋上から身を投げたのか。この日記を読んで漸く理解した。俺だけじゃなく、聖一兄さんも苦しんでいた。俺と正反対の悩みを抱えて、俺に幸せになって欲しいが為に自らの命まで犠牲にした。聖一兄さんの偉大さ、大いなる愛を感じた。そしてこの時不思議と涙は流れなかった。
「聖一兄さんは生きている」
聖一兄さんが歩めなかった人生を歩んで行こう。勉強、運動、そして性格、俺の力で如月聖一という完璧な人間を世の中に知らしめるんだ。
「“僕”……如月“聖一”は完璧な存在だ…………」
如月聖一という人間を否定したり、無視する奴は絶対に許さない。そう言う奴等には、その身を持って偉大なる如月聖一の完璧さを味わわせてやる。
***
そう……如月聖一は完璧な人間なんだ。完璧でなければいけないんだ……負けは許されない…………。
“もう二度と私達に関わらないで下さい…………”
如月聖一を否定する奴がいる……。
“無視して行きましょう!!”
如月聖一を無視する奴がいる……。
“はい!!無視です!!”
そう言う奴等には、その身を持って偉大なる如月聖一の完璧さを味わわせるだけじゃ物足りない…………。
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