笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 魔王と勇者

平行する想い

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 「…………う、うーん……」



 太陽の光が窓の隙間から漏れ入る。その眩しさから真緒は、眠たい目を擦りながら目を覚ました。



 「マオさん……おはようごさいます……」



 「リーマおはよう……」



 真緒と同じく、眠たい目を擦りながら目を覚ましたリーマ。



 「ハナちゃんは?」



 「相変わらず、まだ寝ています」



 前日、道具屋でポーションを購入した真緒達は、安全な場所として宿屋で回復を行い、そのまま寝泊まりをしていた。



 「起こそうか」



 「そうですね」



 男女分かれて泊まった真緒達は、未だベッドで寝ているハナコを起こしに掛かる。



 「ハナちゃん、起きて。もう朝だよ……」



 「うー、後二時間は寝がぜで欲じいだぁ…………」



 「寝過ぎですよ、早く起きて下さい。朝御飯が食べられなくなりますよ」



 「!!……ざぁ、ぐずぐずじでいないで行ぐだよぉ!!」



 朝御飯という言葉を口にした瞬間、それまで一向に起き上がろうとしなかったハナコが何事も無かったかの様に目を覚ました。



 「もう……調子がいいんだから……」



 「ハナコさんらしいですけどね」



 完全に目が覚めた真緒達は、壁に掛けてあったローブを身に付け部屋から出た。



 「皆、起きた様だな」



 「フォルスさん、おはようごさいます」



 「おはようごさいます」



 「フォルスざん、おはようございまずだぁ」



 部屋を出ると、丁度向かい側の扉からフォルスが出て来ており、真緒達はフォルスと合流した。



 「昨夜、エジタスさんと会った」



 「えっ!?師匠とですか!?」



 「あぁ、その後すぐに転移でいなくなってしまった……」



 そう言いながら、フォルスは懐から一通の手紙を取り出した。



 「それは…………?」



 「エジタスさんが去り際に渡して来た物だ。全員、揃った状態で開封して欲しいと…………」



 真緒はその手紙を受け取り、全員に見せる様に内容を確認し始める。







 『皆さんへ



 私は、一足先に魔王城へ偵察に行って皆さんをお待ちしています。それと、どうやら皆さんが魔王城に向かっているという情報が漏れています。現在分かっている情報としては、魔王城で千人の魔王軍兵士が皆さんを迎え撃つ準備をしている様です。厳重な注意をしながら来る事をおすすめします。それでは、魔王城で皆さんの事をお待ちしています



                     エジタスより』







 「「「「…………」」」」



 千人。以前ヴァルベルトの城で戦ったゾンビ百人の十倍の数が、真緒達を魔王城で迎え撃とうとしている。あまりの情報に困惑した表情を隠せない。



 「マオ……どうする?」



 「取り敢えず……様子だけでも見に行こうか……」



 「そうですね……もしかしたら、千人というのは誇張されていて実際はもっと少ないかもしれません……」



 「ぞうだなぁ…………でもぞの前に…………」



 「「「??」」」



 「朝御飯にじないだぁ?」



 「「「……ぷっ、あはははは!」」」



 どんな状況でもぶれる事の無いハナコに、真緒達は束の間の安らぎを得るのであった。







***







 見晴らしの良い丘。真緒達の目の前には、禍々しい巨大な城がそびえ立っていた。



 「あれが……魔王城ですか…………」



 「ヴァルベルトの城とはまた違った恐ろしさを感じるな…………」



 「オラもざっぎがら、毛が逆立っで収まらないだぁ…………」



 「城が恐ろしいのには同感ですけど…………それよりも私は、その城の前で並んでいる兵士に恐怖しています……」



 リーマが示す目線の先。そこに立っていたのは、隊列を組む千人の魔王軍兵士だった。全員が同じ鎧を身に付け、鎧の上からでも見て取れる鍛え上げられた屈強な体。今まで出会った魔族達とは明らかに違っていた。



 「……それで……どうする?」



 「どうする……というと……?」



 圧倒的な戦力差を前に、フォルスが真緒に問い掛ける。



 「どう考えても……友好的な関係を築く事は出来ない……近づけば間違い無く、激しい戦闘が始まる。下手をすれば俺達も死ぬかもしれない……それでも行くのか…………」



 「…………」



 「アーメイデさんとの約束を心配しているなら、気にしない事だ……さすがにこの状況を知ればアーメイデさんも納得してくれるだろう……」



 「……そうでは無いんです……只、師匠が……この先で待ってくれているんです…………」



 真緒の言葉に、いまいち理解が出来ず三人は首を傾げる。



 「エジタスさんなら……大丈夫だろ?」



 「エジタスざんなら、転移魔法があるがら簡単に戻っで来るだよぉ」



 「それに、エジタスさんは私達よりも強いですから、心配は不要ですよ」



 「それは分かっているんだけど……そうじゃないんだ……」



 三人は、真緒がエジタスの安否を心配しているのかと思い、その心配を取り除こうと元気付けるが真緒はそれを否定した。



 「ずっと……この旅を続けて考えていたんだけど……私達は師匠に甘え過ぎていたんじゃないかな…………?」



 「「「はい?」」」



 「ここまで私達は、自分自身の力で乗り越えて来たのかもしれない……でもそれは……師匠の助けがあったからこその功績だったんじゃないかなって……最近分かって来たんだ……」



 「「「…………」」」



 真緒の言葉に対して三人は、これまでのエジタスの行動を振り返る。



 「…………俺が過去のトラウマで悩んでいる時、敢えて冷たい言葉をぶつける事で俺の中に眠る闘志を呼び起こしてくれた……」



 「…………大食いのオラに文句一つ言わずに毎日美味じいご飯を作っでぐれだだぁ……」



 「…………私が魔法に上手く成功すると、エジタスさんは自分の事の様にとても喜んでくれていました…………」



 「…………そして異世界から転移して、路頭に迷っていた私をここまで導いてくれた……師匠がいなかったら……今の私達はありませんでした…………」



 真緒達は知らない。その行動は全て、勇者を監視する過程でエジタスが仕方無く行っていたという事を……しかし、そんな事は真緒達にとっては問題では無かった。大事なのは結果、エジタスの行動が結果的に真緒達を成長させたのだ。



 「だから……これは恩返しです……私達はここまで成長したんだと、師匠に見せてあげたいんです!!」



 「成る程……それは引き下がる訳には行かないな」



 「オラ達の成長じだ姿をエジタスざんに、見ぜであげるだぁ」



 「それこそが……エジタスさんに送る、私達なりの恩返しですね」



 ここまで成長させてくれた、エジタスへの恩返し。真緒達はそれぞれ武器を構える。



 「それでは……師匠の元まで行きましょうか!!」



 「「「おぉ!!!」」」



 真緒の掛け声と共に全員、魔王城へと突入するのであった。







***







 「どうやら……マオさん達が魔王城に突入して来る様ですね~」



 魔王城玉座の間。サタニア、クロウト、そして四天王全員が揃っており窓から外の様子を伺っていた。



 「やっぱり駄目だったか……千人の兵士を見せつければ諦めて帰ってくれると思ったんだけどな……」



 真緒達の行動に、溜め息をついて項垂れるサタニア。



 「ねぇ~、だからマオさん達を甘く見ない方が良いって言いましたでしょ~」



 「そんな事より……分かっているんだろうな?」



 「何がですか~?」



 「もしも勇者達が、千人の兵士を突破したら……その時はお前が終止符をつけるんだぞ……」



 シーラは、もしも真緒達が千人の魔王軍兵士を突破したその時、エジタスが真緒達を殺す様にと釘を刺した。



 「…………えぇ……分かっていますよ……悲しいですが……マオさん達にはお別れを告げる事になるでしょう……」



 エジタスは魔王軍千人と対峙する真緒達に、憐れみの目を向けるのだった。
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