笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 魔王と勇者

現実は時にして残酷である

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 「スキル“ロストブレイク”!!」



 真緒の渾身の一撃が、魔王軍兵士に叩き込まれる。



 「勇者だ!!殺せ!!」



 真緒達の突然の襲撃に、魔王軍兵士達は反応が遅れた。その結果、真緒の不意打ちで約数十人の魔王軍兵士が吹き飛ばされた。



 「私だってやる時はやりますよ!!“ウォーターウェーブ”!!」



 リーマは徐に魔導書を開き、魔法を唱える。開いた魔導書から大量の水が波の様に溢れだし、魔王軍兵士に目掛けて押し寄せる。



 「「「「ぐわぁあああ!!!」」」」



 「魔法使いだ!!魔法使いは接近戦に弱い!!近づいて攻撃するんだ!!」



 リーマが魔法使いだと知った途端、魔王軍兵士達はリーマを囲いながら、集中的に攻撃を仕掛けて来た。



 「……以前の私だったら、危機的状況だったかもしれません……ですが、成長した私は今までの私とは違うんです!“炎の槍”!!」



 その瞬間、リーマの右手に赤々と燃え上がる炎の槍が形成される。リーマは、迫り来る魔王軍兵士に対して炎の槍で薙ぎ払った。それにより、魔王軍兵士の何人かは炎に包まれながら焼け死んだ。



 「こ、こいつ……魔法だけじゃなく、武器まで扱えるのか!?」



 「それだけじゃありませんよ!“水の盾”!!」



 すると今度は、リーマの左手に潤いを持った青く丸い盾が形成された。



 「そして“土の鎧”!!」



 すると今度は、リーマの体を大量の土が覆い尽くす。土は次第に固くなり、まるで頑丈な鉄の様に変化した。



 「ぶ、武器だけでなく……盾と鎧まで作り出すだと…………!?」



 「さすがに、同時詠唱は出来ませんが……それでも複数の魔法を維持する事は出来ます!!さぁ、覚悟はいいですか?」



 そう言うとリーマは、土の鎧を身につけた状態で魔王軍兵士が固まっている場所に目掛けてタックルを繰り出した。



 「「「「ぐわぁあああ!!!」」」」



 「(出来る事なら、“風の足”も唱えて移動速度を上昇させたい所ですが……無理に複数の魔法を維持させて、途中で魔力が尽きてしまっては意味がありません……今はこの状態で何処まで数を減らせるのか、そこが勝負所です!!)」



 魔力が尽きる前に、出来るだけ多くの魔王軍兵士の数を減らそうとするリーマ。



 「くそっ!!誰かあの女を止めろ!!」



 「スキル“インパクト・ベア”!!」



 「何!!?」



 「「「「ぐわぁあああ!!!」」」」



 リーマに気を取られている隙を狙って、ハナコが魔王軍兵士に渾身の一撃を放った。



 「厄介なのは、リーマぢゃんだげじゃ無いだよぉ!!」



 「くそ亜人が…………調子に乗ってんじゃねぇー!!」



 何人かの魔王軍兵士が、ハナコの背後を狙って持っていた剣で、ハナコの背中を突き刺した。



 「…………な、何だと……!?」



 しかし、剣はハナコに突き刺さる事は無かった。ハナコの背中は銀色に変色しており、まるで鋼鉄の様に魔王軍兵士の攻撃を弾いていた。



 「スキル“鋼鉄化”……殺気を感じ取れば、何処がら攻撃を仕掛げるのが手に取る様に分がるだよぉ!!」



 すると背中だけでなく、ハナコの右腕も鋼鉄の様に銀色に変色した。そんな右腕を振り返ると同時に、背後にいた魔王軍兵士に叩き込んだ。



 「「「「ぐわぁあああ!!!」」」」



 「ざぁ、次は誰が相手だぁ……?」



 ハナコとリーマ、二人の快進撃に魔王軍兵士は瞬く間に数を減らして行く。そんな中、フォルスは魔王軍兵士に囲まれていた。



 「へっへっへ……大人しく殺されるんだな……小鳥ちゃーん」



 「…………ふっ、ふふふ……あははははは!!」



 「な、何が可笑しい!!?」



 突然笑い出したフォルスに、魔王軍兵士は困惑する。



 「いや、すまない……ちょっと昔の事を思い出してな……まだ俺が空も飛べない小鳥だった頃の事を…………」



 「気味の悪い奴め……構う事はねぇ!!殺せー!!!」



 「「「「うぉおおおお!!!」」」」



 魔王軍兵士が一斉に、フォルスへと襲い掛かる。



 「だが……今の俺は違う……今の俺は……“空の支配者”だ!!」



 その瞬間、フォルスは空へと舞い上がり魔王軍兵士の攻撃を回避した。



 「飛び上がったぞ!!弓矢を放てー!!」



 「…………ん?」



 その合図と共に、後方に控えていた弓矢を持つ魔王軍兵士の弓矢部隊が、フォルス目掛けて矢を放った。無数の矢がフォルスに襲い掛かる。



 「残念だが……今の俺にはそんな攻撃は意味を成さない!!」



 迫り来る無数の矢に、フォルスは急降下と急上昇を繰り返して、見事全本避けて見せた。



 「さて……今度はこちらの番だ!!」



 そう言うとフォルスは、遠くにいる弓矢部隊目掛けて弓を構える。



 「矢が飛んで来るぞー!!盾を用意しろー!!」



 事前に気がついた魔王軍兵士が、弓矢部隊に盾で防ぐ様に指示を送る。その指示に従い、弓矢部隊は全身を隠せる程の巨大な盾を構えた。



 「…………“ブースト”」



 フォルスの矢に風がまとわりつく。強い力に、カタカタと震える弓矢をしっかりと指で押さえる。



 「食らいやがれ!!」



 放たれた矢は、真っ直ぐと弓矢部隊目掛けて飛んで行く。そしてその途中、放たれた矢は風の力を受けて肉眼では捉えきれない程の速度で、弓矢部隊が構えた巨大な盾を貫通して、そのまま魔王軍兵士の頭に突き刺さった。



 「な、何だと!?あの巨大な盾を貫通したのか!!?」



 「普通の矢だったら、防げたかもしれないな……だけど、俺の矢は加速するんだぜ……さぁ、まだまだ行くぞ!!“ブースト”!!」



 こうなってしまっては最早、フォルスの加速する矢を止める事は出来ない。弓矢部隊は成すすべも無く、蹂躙されて行った。



 「こ、こいつら……化け物か……」



 そう思わせる程に、真緒達の強さは桁外れの物だった。



 「貴様ら、何を手こずっているのだ!!」



 「し、しかし隊長……あいつら恐ろしく強いです!!」



 隊長と呼ばれるこの魔族。他の魔族と比べてとても大きく、一際目立っていた。



 「言い訳は聞かない!!結果を出せ!!」



 すると隊長は、側にいた部下の頭を握り潰した。



 「ひ、ひぃ!!」



 「いいか!今すぐに奴等を殺せないのなら、代わりに俺がお前らを殺してやる!!」



 「…………そうやって力で言う事を聞かせていては、部下はついてきませんよ……?」



 「誰だ!!?」



 すぐ側で声が聞こえ、隊長は声のした方向に顔を向ける。そこにいたのは、悠然と近づいて来る真緒だった。



 「貴様は勇者!!おい!何をしている!!今すぐ奴を殺せ!!」



 「「「「うぉおおおお!!!」」」」



 隊長の言葉に焚き付けられて、魔王軍兵士は真緒目掛けて襲い掛かる。



 「…………」



 そんな襲い掛かる魔王軍兵士に対して、真緒は平然とした態度で魔王軍兵士を斬り殺して行く。



 「何……だと……!?」



 「あなたは戦わないんですか?……命令するだけなら、誰にでも出来ますよ?」



 「く……く……くっそぉおおお!!」



 真緒の挑発に乗せられた隊長は、剣を振り上げて大声をあげながら真緒目掛けて振り下ろした。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 真緒が放った渾身の一撃は、隊長の振り下ろした剣を折り、その勢いのまま隊長の胸へと突き刺さり、仰向けに倒れた。



 「がぁあ……この俺が……人間ごときに……負けるだなんて…………」



 その言葉を最後に、隊長は絶命した。死んだ事を確認した真緒は、突き刺さっていた純白の剣を抜き取る。



 「た、隊長が殺られた!!」



 「もう駄目だ!!俺達が勝てる訳が無い!!」



 「逃げろー!!!」



 「おい、お前ら!逃げるんじゃない!!戦え!!」



 真緒達の予想以上の強さに、臆して武器を投げ捨て逃げ出す者。また強さを知っても尚、魔王サタニアの為に武器を構えて戦い抜こうとする者。結果、千人いた魔王軍兵士の殆どが武器を投げ捨て、その場から逃げ出してしまった。



 「マオさん!!」



 「マオぢゃん!!」



 「マオ!!」



 「リーマ、ハナちゃん、フォルスさん!!皆、怪我は無い!!?」



 魔王軍兵士の殆どが逃げ出した事で戦闘の数が減り、仲間達と合流する事が出来た。



 「私達は大丈夫です」



 「それにしても……よく倒す事が出来たな……魔王軍の隊長となれば、今の俺達でもかなり手こずると思っていたんだがな……」



 「それはこの純白の剣のお陰です。この剣に秘められたステータスの一部を奪う能力があったからこそ、勝つ事が出来ました」



 純白の剣の能力。斬りつけた相手のステータスからランダムに一つ奪う。隊長と戦う前に、数百人の魔王軍兵士を斬った影響で現在の真緒は、隊長を軽く捻る程の強さになった。



 「そうだったのか、それなら納得だな」



 「き、貴様ら!!」



 真緒達が、互いに無事な事を確認し合っていると、魔王軍兵士の一人が武器を構えて声を掛けて来た。



 「貴様らを……魔王様の所に行かせる訳にはいかない!!」



 「もう……無意味な戦いは止めましょう……」



 「む、無意味だと…………!?」



 「残念ですが、今の強さで私達に勝つのは不可能です。それは、あなた自身がよく分かっている筈ですよね?」



 「!!…………くっ……」



 真緒の言葉によって、それまで武器を構えていた魔王軍兵士が次々と武器を落として、その場に膝をついて崩れ落ちる。



 「…………行きましょうか……」



 「「「はい……」」」



 こうして真緒達は、魔王軍兵士千人に完勝したのであった。







***







 「マオさ~ん、こっちですよ~こっち~!!」



 「師匠!お待たせしました!!」



 魔王軍兵士との戦闘を終え、魔王城に近づく真緒達。すると、魔王城の門の前にエジタスが手を振って真緒達を待っていた。



 「ここまで来たという事は……どうやら魔王軍兵士千人を倒したみたいですね~」



 「はい!師匠に成長した私達の姿を見せたくて、頑張りました!」



 「何と!?それはそれは……私もマオさん達の成長した姿を見る事が出来て、とても嬉しいですよ~」



 自分の為に、魔王軍兵士と戦ってくれたのかと思うと、エジタスは人知れず喜びを感じていた。



 「そうそう、マオさん達が戦っている間に新しく着任した四天王を見つけましたよ~!!」



 「本当ですか!?さすがは師匠です!!」



 「こっちです、ついて来て下さ~い」



 そうして言われるがまま、真緒達はエジタスの後を追い掛ける。そしてエジタスは、ある城壁の前で立ち止まった。



 「……実はここに秘密の入口が隠されているのですよ……」



 そう言うとエジタスは、城壁の一部を押し込んだ。すると城壁が独りでに動き始め、人一人分の小さな入口が出て来た。



 「す、凄い……まるでからくり屋敷みたい……」



 「さぁ、行きましょう。この先にお目当ての四天王がいます……」



 真緒達は、城内へと先導するエジタスの背中を追い掛ける。







***







 「着きましたよ…………」



 「ここは…………?」



 秘密の入口を抜けた先は、正方形のとても広い部屋だった。家具などは一切置かれていない殺風景な部屋だった。真緒達が秘密の入口から抜けると、入口は勝手に閉じてしまった。



 「あっ、入口が……!!」



 「ここは魔王城の特別訓練場です。四方の壁には特殊な金属を使用しており、どんな攻撃も吸収してしまうのです……」



 「そ、そんな事より、入口が閉じてしまいましたよ!?」



 「大丈夫ですよ……その入口は秘密の入口……正式な入口があそこにあります……」



 そう言いながらエジタスが指差す方向には、確かに一つの扉があった。



 「よ、よかった…………それで師匠、その私達の目的である四天王はいったい何処にいるんですか?」



 「…………」



 真緒達は入口が閉じた事で閉じ込められたのではないかと不安になったが、そうでは無い事に一安心する。しかし、同時に辺りを見回すも自分達の他に誰もいない事に気がつく。



 「それでは……改めまして自己紹介をさせて頂きましょう…………」



 「…………師匠?」



 いつもと雰囲気の違うエジタスを心配して、真緒が声を掛ける。するとエジタスは真緒達の方に勢い良く振り返り、両手を拡げ顔の横にやり、小刻みに振る。



 「ど~も初めまして!!魔王軍四天王が一人、“道楽の道化師”エジタスと申しま~す!!!」



 「「「「…………えっ?」」」」
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