笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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過去編 二千年前

嵐が吹き荒れる真夜中

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 当時私は、田舎の小さな村に住んでいた。お世辞にも裕福とは言えなかったけど、それでも父と母の三人で仲良く暮らしていた。そんなある日、嵐が吹き荒れる真夜中の事だった。







           ドンドン!!







 「こんな真夜中にすみません!!どなたかいらっしゃいませんか!?すみません!!すみません!!」



 玄関の扉を激しく叩く音で、私は目を覚ました。正確な時刻は分からないが、少なくとも深夜零時は回っていた。



 「誰だ、こんな真夜中に……?」



 父は眠たい目を擦りながら、ゆっくりと体を起こしてベッドから出た。



 「アーメイデ、あなたは部屋にいなさい。私達はちょっと、様子を見て来るからね」



 「はぁーい…………」



 私と同じ様に目を覚ました両親は、私を部屋に残して二人で玄関の方へと向かい、扉越しに声を掛けた。



 「誰だ?」



 「あぁ、良かった!!他の何処を訪ねても返事が無かったので、不安になって来た所だったんです。あの、こんな真夜中にすみません……実は俺達、旅をしている途中でこの急な嵐に見舞われてしまい、嵐が過ぎ去る間だけこちらに泊めて頂けないでしょうか?」



 “俺達”という事は、少なくとも二人以上であると確認出来た。外では未だに嵐が猛威を振るっており、風と雨が窓を強く打ち付けていた。



 「!!……それはそれは、辛かったでしょう……こんな古ぼけた家で良ければ、どうぞ泊まって下さい」



 「今、扉を開けますね」



 当時は“泥棒”なんて言葉が存在していなかったから、両親は何の疑いもせずに助け合いの精神で、旅人達を泊める為に玄関の扉を開けた。私はそんなやり取りをこっそりと覗いていた。



 「ありがとうございます……助かりました……」



 「…………」



 扉を開けるとそこには、全身を覆い隠す程のローブを身に纏う二人組が立っていた。



 「酷い嵐だっただろう…………あぁ、服がこんなに濡れているじゃないか………風邪でも引いたら大変だ」



 「取り敢えず体を暖める為に火を起こしますから、そのローブだけでも脱ぎましょう」



 ローブを着た二人組は、嵐の影響でずぶ濡れだった。風邪を引かない様に、体を暖める為に父が物置へ薪を取りに行く。そして母は二人にローブを脱ぐ様に促す。



 「えっ……でも…………」



 「…………」



 しかし、二人組はローブを脱ぐのを躊躇った。まるで、顔を見られたく無いかの様に…………。



 「もう、恥ずかしがらなくてもいいのよ」



 「いや、あの……そうじゃなくて……どうしました?」



 「…………」



 「えっ、いいんですか……?……分かりました。あなたがそこまで言うのなら……」



 すると、ずっと喋っていたローブの方が首の所に結んである紐を解き、ローブを脱いだ。



 「あら……あなた……」



 喋っていたローブの容姿は短髪黒髪に、顔はまだ少しあどけなさが残る男性だった。年齢は私よりは少し年上に感じた。そんな男性に、母はじっくりと顔を見つめた。



 「よく見ると……可愛い顔をしてるじゃないのー!!」



 「あうぅ…………!!」



 母は、喋っていた男の子の頬をこねくり回す。無理矢理頬を動かされ、声がブルブルと震えていた。



 「薪を持って来たぞ……って、これはまた可愛らしい旅人さんだな」



 「となると……もしかしてあなたはこの子の親なのかしら?」



 「…………」



 全く一言も喋らないローブは、母の問い掛けに対して首を横に振った。



 「あらそうなの?……そうだ、それよりあなたも早く脱いだ方が良いわよ。風邪を引いてからでは遅いからね」



 「…………そうですねぇ~、それではお言葉に甘えて…………!!」



 その時、喋らないローブの声を初めて聞いた。声から察するに、もう一人も男性だと分かった。喋らないローブは首の所に結んである紐をほどくと、喋っていた男と違って勢い良く脱ぎ捨てた。



 「…………」



 「「「!!?」」」



 喋らないローブの容姿は、ローブを脱いだにも関わらず、肌を隠す様な服装をしており、何よりもその顔には仮面を被っており、それはやらしく細みがかった目に、口角を限界まで伸ばしたにやけた口、一言で表すとしたら“笑顔”だった。その為、詳しい年齢は分からなかった。



 「これまた随分と……個性的な見た目をしていますな……」



 「そ、そうね……他の人には無い、特別な雰囲気を感じるわ……」



 両親は喋らない男の容姿に対して、当たり障りの無い言葉を選んで行く。まるで、腫れ物に触れるかの様だった。



 「本当ですか~?いや~、そんな風に言って頂くのは初めての経験で、とても新鮮ですよ~。私に初めてお会いした人は大抵、無言になってしまうのに…………」



 「へ、へぇ……そうなんですか……」



 「ふ、不思議ですね…………」



 それでもギリギリだった。両親は何とか笑みを浮かべて、場を保とうとしていたが、その笑みは引きつっていた。



 「おっと、私とした事が自己紹介を忘れていました…………では改めて……」



 そして喋らない男は、両手を拡げ顔の横にやり、小刻みに振りながら明るい声を発した。



 「ど~も初めまして!!“道楽の道化師”エジタスと申しま~す!!!」



 「あっ、えっと俺は“サイトウ コウスケ”って言います。これからよろしくお願いします」



 「「「…………」」」



 そんな二人の自己紹介に私を含めて、両親も動揺を隠せなかった。そしてこれが、私とエジタスとコウスケの初めての出会いだった。
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