笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第五章 冒険編 幸運の巣窟

オーロカジノ(前編)

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 「…………」



 「「「「…………」」」」



 互いに向き合う案内人と真緒達。案内人はゆっくりと足を動かし、真緒達をじっくりと見回す。そして再び正面に立ち、真緒達と向き合う。



 「……この短時間でどうやって服を揃えたのか疑問ですが……まぁ、良いでしょう」



 案内人の了解を得られた事に、真緒達は喜びを分かち合う。



 「それでは武器の方をお預かりします」



 「あっ、やっぱり武器は預かるんですね」



 「当然です。お客様に安心安全に楽しんで頂きたいので、どうかご協力をお願いします」



 「仕方無いね」



 一同は頷くと持っていた武器を案内人に預けた。武器を受け取った案内人は「確かに」と言い、カジノの手前にある一室に仕舞い込んだ。扉の隙間から中を確認すると、数多くの武器や防具が丁寧に保管されていた。



 「さて、武器の方も預からせて頂きましたので、最後に金貨の交換をさせて頂きます」



 「金貨の交換?」



 「はい、当カジノではお客様が持ち合わせている所持金に応じて、こちら側が用意している専用の金貨で遊んで頂く決まりになっています。またお帰りの際は所持している金貨に応じて、所持金が増えたり減ったりするのです」



 「な、成る程……因みに専用の金貨一枚交換するのにいくら掛かる?」



 「はい!! 当カジノにはそれ程裕福では無いお客様も来られますので良心的な値段に考慮して……専用の金貨一枚に付き金貨一枚になります!!」



 「「「「!!?」」」」



 金貨一枚。約1000000k。庶民にも優しいとても良心的な値段。真緒達の所持金は1080034k。つまり……。



 「それで幾つ交換なさいますか?」



 「……えっと……あの……」



 「?」



 歯切れの悪い真緒に首を傾げる。



 「い、一枚……」



 「…………」



 「「「「…………」」」」



 終始無言の時間が流れる。案内人の真顔に対して真緒は半泣きしていた。



 「あっ、はい。それでは金貨一枚と交換という事で1000000k頂きます」



 「あっ、じゃあこれで……」



 手を差し出す案内人に真緒は1000000kする金貨を一枚手渡す。



 「はい、それではこちらが当カジノ専用の金貨になります」



 そう言いながら案内人は一枚の金貨を真緒に手渡した。専用の金貨には細かな装飾が施されており、表には天使の顔が掘られ、裏には骸骨の顔が掘られていた。何十枚もあれば目立たないが、一枚だけだとかなり目立った。



 「……ハナちゃん、悪いけど受け取って貰える?」



 「あっ、分がっだだぁ」



 あまりの羞恥に耐えられなくなった真緒は、受け取りをハナコに頼んだ。その間、リーマは下……フォルスは上に首を向けていた。なるべく直視しない様に配慮した結果である。



 「……えーっと、それでは大変長らくお待たせしました。それではごゆるりと、当カジノをお楽しみ下さい」



 「「「「…………」」」」



 そう言うと案内人は深々と頭を下げ、真緒達が奥に進むのを見送った。案内人の姿が見えなくなるまでの間、真緒達は一言も発しなかった。







***







 「さて……何とかカジノに潜入出来た訳だが……これからどうする?」



 「そりゃ勿論、このカジノの総支配人であるギャブラーっていう人を捜す」



 「でも私達、名前しか知りませんよ?」



 「うっ……」



 「顔や年齢、どんな体型なのか。何も知らないんですよ?」



 「た、確かに……」



 「案内人の方に聞いた方が良いんじゃないですか?」



 「いや、俺達は一度総支配人の話を聞いてる。改めて聞くのは危険だ」



 「じゃあいったいどうすれば……」



 「何もカジノ関係者に限らなくて良いんだ。ここのカジノを頻繁に出入りしている常連客なら、何か知っているんじゃないか?」



 「そうですね……それじゃあ……あれ?」



 リーマはふと思い出したかの様に、辺りを見回す。



 「どうかしたの?」



 「……ハナコさんは?」



 「「えっ!?」」



 慌てて周囲を確認するが、そこにハナコの姿は無かった。



 「い、いったい何処に!?」



 「ハナコさ……「大声を出すな」っ!!」



 リーマが大声でハナコに呼び掛けようとするが、フォルスに止められてしまった。



 「どうして止めるんですか!?」



 「ここはカジノだ。元は無法地帯の場所だったかもしれないが、今ここには上流階級の貴族や王族がいる。そんな場所で大声を出せば目立つ……勿論、悪い意味でだ。もし万が一出禁にでもなったら、俺達は二度とカジノに出入りする事が出来ない。そうなれば総支配人であるギャブラーを見つける事は不可能になってしまう」



 「……そう言う事だったんですね……すみません。私、何も考えないで……」



 「気にするな。それよりも今は一刻も早くハナコを……あれ?」



 フォルスはふと思い出したかの様に、辺りを見回す。



 「どうかしましたか?」



 「…………マオは何処だ?」



 「えっ?」



 慌てて周囲を確認するが、そこにマオの姿は無かった。



 「不味い……ハナコだけじゃ無く、マオまでいなくなってしまった」



 「ど、どうしましょう!?」



 「取り敢えず、二手に分かれてこのカジノを隈無く捜すんだ。中には絶対いる筈だからな」



 「分かりました」



 「あっ、ちょっと待った」



 「何ですか?」



 早速捜しに行こうとするリーマをフォルスが呼び止める。



 「くれぐれも大声は出すな。後、走るのは厳禁だ。それとなく自然に捜すんだ」



 「はい……」



 フォルスに注意されたリーマは落ち着きを払い、自然に振る舞いながらはぐれた二人を捜し始める。その優雅で可憐な佇まいにフォルスは思わず見とれてしまった。



 「凄いな……端から見れば何処ぞのお姫様の様だ……おっといかんいかん。俺も二人を捜さなくては……」



 フォルスは意識をハッキリさせ、リーマとは反対方向に歩き始めた。







***







 一方その頃、ハナコはというと……。



 「……ルーレットだがぁ?」



 「はい、こちらの回転する台に私がこの白い玉を転がします。そしてお客様にはその間に白い玉が何処の溝に落ちるのか予想して頂きます。色は三種類、赤、黒、緑。数字は00、0、1~36ございます。決まりましたらお客様の手前にある台……このルーレットと同じ色と数字が一面に表記されていますので、そこに賭ける分だけの金貨を置いて頂きます。予想を外せばそのまま没収となりますが……見事当たれば置いた分×倍率でお渡しします」



 「…………」



 黒いベストを着たディーラーからルーレットのルールを聞いていた。しかし、ハナコの頭では到底理解する事は出来なかった。どれ位理解出来なかったのかと言うと、頭から煙の幻覚が見えそうな位である。



 「そう難しく考えなくて良いんだよお嬢さん。何ならこの私がアドバイスしてあげよう」



 「本当だがぁ!?」



 理解に困っているハナコを見かねて、一人の中年が声を掛けて来た。見た目こそ豚に近かったが、着ている服やアクセサリーはどれも一級品の物ばかりだった。



 「あぁ、勿論。お嬢さんの様なタイプは下手に難しく考えたり、少しずつ稼ぐのは苦手と見える。そこで提案するのが一点賭けさ」



 「一点賭げ?」



 「一つの数字に全額賭けるのさ。当たれば億万長者。外れれば貧乏真っ逆さま。ハイリスク、ハイリターンだがやる価値はある……どうかね?」



 「……オラ、細がい事は分がらないだぁ。だがらおじざんの言う通り、一点賭げにずるだぁ」



 「うんうん、その意気だよ」



 おじさんのアドバイスにより、全額一点賭けにしたハナコ。そんな二人の様子を近くにいた他の客が見ていた。



 『あいつ……またやってるよ』



 『カジノ初心者に適当なアドバイスを授けて破滅させ、泣き叫ぶ姿を見て喜ぶ……“サディスト”シュヴァイン』



 『厄介なのはあいつの言っている事が強ち間違いでは無い事……確かに一点賭けはハイリスク、ハイリターンではあるが当たれば億万長者間違い無し』



 『だがいくら何でも全額はあり得ない。せいぜい一、二枚……可哀想だがあのお嬢さん……終わったな』



 『あぁ、一点賭けを一発で当てるのは不可能……シュヴァイン野郎……性根が腐っているぜ』



 そしてそれを知っていながら一切止めようとしないこの二人も中々に性根が腐っている。



 「それではルーレットを開始致します」



 そう言うとディーラーは台を回し始めた。しばらくクルクルと回転する台を見つめると、手に持っていた白い玉を回転する台目掛けて転がした。



 「ベットをお願いします」



 「“ベッド”? 急に寝るだがぁ?」



 「いやいや違うよ。ベットと言うのは賭けるという意味なのさ。この間に、何処に賭けるのか決めるんだ。さぁ、全額置きなさい」



 「分がっだだぁ。うーんど……じゃあごの“0”で!!」



 ハナコは、唯一持っている専用の金貨を緑色の0に置いた。



 「一枚? 全額賭けないのかね?」



 「オラ、ごれじが持っでないだぁ」



 「そ、そうなのか(ちぃ!!、身なりが良いから何処ぞの王族だと思ったが、田舎貴族か……しかも専用の金貨一枚って……少な過ぎるのも程があるだろう……もしかして親が娘を社会経験させる為にやらせているのか? だとしたらとんでもない親だな!! 破滅した顔を拝めないのは残念だが……まぁ、悲しそうな表情位浮かべるだろう。今日はそれを楽しむとするかね)」



 「残り十秒でベットする時間を終了致します。十、九、八、七、六…………」



 「おじざんは賭げないだがぁ?」



 「あぁ、今回は見守らせて頂くとするよ(危険を犯さず程々に……これが俺の流儀だ)」



 「三、二、一、終了です。これ以上のベットはお辞め下さい。それでは回転を止めさせて頂きます」



 ディーラーが台の回転を止める。次第に台の上で転がっていた白い玉の勢いは弱まり、台の溝に弾かれる。入ったと思ったら弾かれ、また入ったと思ったら弾かれる。そうして勢いが殺されていく内、遂に白い玉が溝の中に収まる。



 「おっ? ごれっで……?」



 「そ、そんな馬鹿な!?」



 収まった溝に書かれている数字は“0”、それは紛れも無いハナコが賭けた数字だった。



 「おめでとうございます。こちらが勝ち取り枚数になります」



 ハナコの目の前に専用の金貨が山積みになって置かれる。たった一枚の専用の金貨が何百枚になって帰って来た。



 「やっだだぁ!!」



 「ハナコさん、やっと見つけましたよ……って……えぇ!!? な、何これぇえええええ!!?」



 両手を上げて喜ぶハナコ。そんなハナコを見つけたリーマが側に寄って声を掛けるが、それと同時に目の前で山積みになっている専用の金貨に対して驚きの声を上げる。



 「あっ、リーマぢゃん。見で見で、ごんなに稼いだだぁ」



 「こ、この短時間でいったい何が?」



 「おじざんが色々教えでぐれだんだぁ」



 「おじさん?」



 「うん!! ねぇ、おじ……あれ?」



 ハナコが顔を向けると、そこにいた筈のシュヴァインはいなくなっていた。



 「あれ? ざっぎまでごごにいだのに……?」



 慌てて周囲を見回すも、おじさんの姿は何処にも無かった。そんな様子に先程、コソコソ話していた二人の客が再びコソコソと会話し始めた。



 『逃げたな』



 『あぁ、間違い無い逃げたな』



 仲間の存在。万が一ハナコの口からアドバイスの話が出れば、間違い無く責められる。そうなれば貴族としての面子は丸潰れ。そうなる前にシュヴァインはカジノから逃げ出したのであった。



 「おじざんに御礼が言いだがっだんだげど……まぁ、良いが。ぞれでリーマぢゃんはどうじでごごに? マオぢゃんやフォルスざんは?」



 「どうしてここにじゃありませんよ!! ハナコさんが勝手にはぐれちゃったから今の今まで捜していたんですよ!?」



 「ご、ごめんなざいだぁ……」



 「全く……ほら、早くマオさん達と合流しましょう。まだここにどんな危険が潜んでいるか分かっていないんですか……『イカサマだ!!』……っ!!?」



 その時、大声がカジノ中に響き渡った。客は勿論、ディーラーや二階にいる警備員までもが大声の主に顔を向ける。



 「ま、まさか!!? ハナコさん!! 行きますよ!!」



 「ぢょ、ぢょっど待っで欲じいだぁ。勝ぢ取っだ金貨を入れないど……」



 「もう……早くして下さいよ!!」



 そうしてハナコが勝ち取った専用の金貨を袋に積めるのを、リーマはイライラしながら待つのであった。
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