笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 大戦争

道中の何気ない会話

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 カルド王国周辺を取り囲むゴルド軍。その圧倒的な人数の多さによって、地表は完全に多い尽くされていた。剣や槍を携える歩兵部隊、弓矢を携える狙撃部隊など、国を攻め落とすのには充分な戦力が揃っていた。



 「隊長、敵は外壁を固めて籠城作戦に出ている様です」



 「そうか……」



 その中でも一際目立つ金色の鎧を身に付けた隊長らしき男が、代表して前に歩み出た。



 「聞け!! カルド王国の者達よ!! 既にここら一体は我々ゴルド軍が包囲した!! 大人しく白旗を上げれば、危害は加えない!!」



 声を張り上げるも、一向にカルド王国からの返答は無かった。そんな様子に男は、狙撃部隊に目で合図を送った。合図を受け取った男は静かに頷くと、片手を高く上げて見せた。



 「構え!!」



 すると狙撃部隊は一斉にカルド王国目掛けて弓を構え、発射体勢に入った。



 「これが最後の警告だ!! 大人しく白旗を上げるんだ!!」



 武器をチラつかせて、再度交渉を試みるが、返答が返って来る事は無かった。



 「……放て」



 「放てぇえええええ!!!」



 隊長の発射許可に続いて、男は上げていた片手を勢い良く下ろし、放つ様に命令を下した。一度に何万という矢の雨が、外壁を飛び越えて王国内へと降り注がれて行く。



 「これで単なる脅しでは無い事を理解しただろう!! 早い所、敗北を認めた方が身の為だぞ!!」



 少し痛い目に合わせれば、交渉にも応じると思ったが、うんともすんとも言わなかった。



 「…………」



 「どうなさいますか?」



 「定期的に矢を放て。何か動きがあったら知らせろ」



 「突入なさらないのですか?」



 三十万を軽く越える軍勢。相手の出方を待たずとも、簡単に落とす事が出来そうに思えた。



 「いや、カルド王が亡くなったとはいえ、これまでゴルド帝国と対等に渡り歩いて来た連中だ。慢心は破滅を招くぞ」



 「は、はぁ……」



 過剰に警戒する隊長に、部下である男は若干引いていた。



 「…………」



 「どうかしましたか?」



 「あぁ、少し妙だと思ってな……」



 「と言いますと?」



 「籠城作戦に出るにしても、全く抵抗の意思を見せないのは不自然だと思ってな」



 「我々の戦力に恐れを成しているのでは?」



 「まるで……人のいない国を攻めている様だ」



 「考え過ぎではありませんか?」



 「だと良いのだが……」



 言い知れぬ不安を胸に抱きながら、不審に聳え立つカルド王国を見つめるのであった。







***







 ゴルド帝国がカルド王国を攻め落とそうと躍起になっている一方、真緒達とリップの五人は、ゴルド帝国に向けて歩いていた。



 「あっちは上手くいっているでしょうか?」



 そんな中、リップは頻りにカルド王国を心配していた。



 「どうだろうな、出来る限りの事はやったんだ。今は信じて突き進むしか無いと思うぞ」



 「それに例え途中でバレたとしても、あれだけの大人数を素早く動かすのは、難しいと思います」



 「づまりぞんなに心配じなぐでも、良いっで事だぁ」



 「それに大事なのは場所じゃない。そうでしょ?」



 「……そうでしたね、すみません。どうも心配性で……」



 真緒達の言葉に安心を得たリップに、少し笑顔が戻った。



 「それにしても、リップは元の姿に戻らないの?」



 現在、リップは魔族としての姿では無く、いつもの人間としての姿になっていた。



 「えぇ、こっちの姿の方が落ち着くと言うか……あの姿はあんまり好きじゃないんです」



 「そっか……私は、魔族姿のリップも好きだったんだけどな」



 「私も、初めて見た時は驚きましたけど、魔族姿の時の方が個人的には好きです」



 「ちょ、冗談は止めて下さいよ」



 「冗談じゃないよ。ね?」



 「はい、冗談でこんな事は言いません」



 「そ、そうですか……そう言って貰えると素直に嬉しいです」



 真緒とリーマの好印象な感想に、リップは頬を赤らめた。



 「……でもやっぱり、自分的にはこっちの姿の方が良いです。あっちの姿にはあまり良い思い出がありませんから……」



 「そうなんですか?」



 「はい……皆さんは存じて無いと思いますが、その昔私の様な夢魔と呼ばれるサキュバスやインキュバスは、差別の対象だったんです」



 「そんな、いったいどうして!?」



 「人間を苦しめるのでは無く、堕落させるのを得意とする種族ですから……軟弱だなんだと言われ、よく特訓という名のサンドバッグに付き合わされた事があるんです」



 「魔族の世界でも、そういうのは変わらないんだな」



 どんなに種族間で仲を取り持っても、差別や虐めは決して無くならずに存在している。そんな事実に、真緒は悔しさから唇を噛み締める。



 「でもそんな時、あの方が手を差し伸べて下さったんです」



 「あの方?」



 「二代目魔王 サタニア・クラウン・ヘラトス二世です」



 「それって……サタニアのお父さん?」



 「その通りです。ヘラトス二世は、先代のヘラトス一世とは違い、とても温厚で優しい方でした。私の様な魔族にも、分け隔て無く接してくれました」



 「へぇ、立派な人だったんだね」



 「本当に優しい方でした……だけど、その優しさが仇となってしまった」



 「どう言う事だ?」



 「皆さん、ヘラトス二世が既に亡くなられている事は知っていると思いますが、その死因は聞いていますか?」



 リップの問い掛けに、全員が首を横に振った。それを確認すると、リップは遠い目をしながら語り始めた。



 「あれは今から丁度百年前の事です。まだサタニア様が八十の頃、魔王城では内乱が勃発していました」



 「内乱……という事は、仲間同士で争っていたという事か?」



 「はい、当時魔王城は二大勢力に分かれていました。先代のヘラトス一世を指示し、各国を攻め落とそうという考えを持った過激派勢力と、現魔王ヘラトス二世を指示し、各国と友好条約を結ぼうという考えを持った穏健派勢力。私は勿論、穏健派勢力に加担していました。しかし残念ながら、戦力の差は過激派の方が圧倒的でした。それだけ、先代のヘラトス一世の影響が強いという訳です」



 「それで……結局どうなったの?」



 「……結果、私達穏健派が勝ちました」



 その言葉を聞き、ホッと胸を撫で下ろす一同。しかし、リップの表情は暗かった。



 「ですが、その代わりにヘラトス二世は亡くなられてしまったんです」



 「「「「!!?」」」」



 「穏健派は過激派の様に、戦闘は得意ではありませんでした。だから、全ての戦闘はヘラトス二世が請け負っていたんです。だけどその無理がたたって……遂には……」



 話す内、涙ぐむリップ。



 「すみません……もうこれ以上は……」



 気持ちを落ち着かせようと深呼吸を繰り返し、目に溜まった涙を拭き取った。



 「話してくれてありがとう……お陰でこれからの目標が出来たよ」



 「目標? いったい……?」



 「私達はこの一年、ありとあらゆる種族と友好的な関係を築こうと頑張って来た。けど、まずは自分達の仲を良くしないと、他の種族と仲良くなんか出来る訳が無いんだって、考えさせられました」



 「人間も魔法が扱える人、扱えない人で優劣が生まれない様にしなくてはいけませんよね」



 「熊人族だっで力強ぐ無いど、不遇な扱いを受げるだぁ。ぞんな事が無い様、考え方を変えでいぐだぁ」



 「俺達の里は大丈夫だが、他の鳥人族は分からないからな。これからはもっと視野を広げて、より多くの仲間と交流を深めなくてはいけないな」



 「リップ、話してくれてありがとう」



 「……いえ、お役に立てて嬉しいです……」



 何気ない会話ではあったが、この話を切っ掛けに少しではあるが、真緒達は確実に成長していた。



 「さぁ、そうと決まれば早い所、ゴルド帝国に乗り込んで奪われたロストマジックアイテムを取り返さないとね」



 「そうですね。皆さんと一緒なら、きっと出来ると信じています!!」



 「私達を裏切った事、リリヤ女王に後悔させてやりましょう!!」



 「「「「「おぉ!!!」」」」」



 気持ちを切り替え、ロストマジックアイテム奪還の為、心を一つにする一同であった。



 「そう上手く行くかな?」



 「「「「「!!?」」」」」



 その時、五人とは違う別の誰かの声が聞こえた。慌てて声のした方向に目線を送る。するとそこには……。



 「あ、あなたは……」



 「久し振りだね。こうして会うのは随分と久し振りじゃないかな。どうだい? 元気にしていたかい? マオさん……いや、“ソルト”さん」



 「……ヴォイスさん……」



 かつて真緒達がヘッラアーデ13支部に潜入した際、知り合った男。元レッマイル13支部の団長にして、今はヘッラアーデ13支部の司教に成り上がったヴォイスだった。
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