笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 血の繋がり

真緒パーティー VS 実験体M-006

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 真緒は目の前の光景に唖然としていた。もう二度と会う事は無いだろうと思っていた。安らかな表情を浮かべながら、永遠の眠りに付いた筈だった。なのに、目の前に立っている青年は元勇者の“如月聖一”に間違い無かった。



 「聖一さん……」



 死して尚、魔食に操られて働かされていた事実に対して、思わず不憫だと同情を寄せてしまう真緒。



 「にしても……まさかこんな形で魔食と合間見えるとは思わなかったな……」



 「ヴォイスさんの時もそうでしたが、どうやら死体を媒介にして活動するタイプの様ですね」



 最初こそ驚きはしたが、三度目の戦いという事もあり、さすがの真緒達も落ち着いた様子で冷静に分析していた。



 「あぁ、だがタネが分かってしまえばもう恐れる必要は無い。さっさと倒して先に進むぞ」



 「ぞれならオラが先行ずるだぁ!! オラはあいづと四回も戦っだ事があるがらなぁ!!」



 ハナコが大きく右腕を挙げて立候補した。ハナコは他の三人と異なり、一回多く魔食との戦闘を経験している。そうしたアドバンテージを生かせる機会が訪れた事に、目を輝かせている。



 「そうだな、魔食相手ならMPを持たないハナコが最適だろう。それならまずハナコを先頭に突っ走らせて……それから……」



 「ま、待って下さい……」



 皆の意見が順調に進んでいく中、突然真緒が止めに入り込んだ。その表情は何処か暗く、思い詰めている様子であった。



 「ちょっとちょっと? いったいどうしちゃったのよ?」



 「ナニカ、キニナルコトデモアルノカ?」



 無事に鎧の破壊が成功したのにも関わらず、中々攻めようとしない真緒達に、ゴルガとエレットが声を掛ける。



 「あの魔食と戦うの……止めませんか?」



 「「!!?」」



 敵を庇う真緒。そんな誰もが寄行と思う中、付き合いの浅いゴルガとエレットを除く、ハナコ、リーマ、フォルスの三人だけは何となく察していた。



 「……確かに死体とは言え、あの男はお前の数少ない元の世界の友人だからな……分かった、それなら無理に戦わなくても良い。ここは俺達だけで何とかして見せる」



 知り合いの死体蹴りは、さすがに酷であると考えたフォルスは、真緒抜きで魔食と戦う事を提案した。



 「そ、そんな!? それなら私も戦います!!」



 「いや、戦う事を迷っている奴に無理矢理戦わせても、足手まといになるだけだ。それにお前一人が抜けた程度で、負けてしまう程、俺達は柔じゃない。そうだろう、皆?」



 自分抜きで戦う事に、罪悪感を感じた真緒は戦うと告げるが、フォルスはこれを一蹴した。そして真緒を安心させる為に、他の仲間達に問い掛ける。



 「はい、いつもマオさんには頼ってばかりでしたからね。私達だけでも充分戦える事を見せて、安心して貰います」



 「マオぢゃん、今はゆっぐり休んでぐれだぁ。マオぢゃんの分まで、オラ達が頑張るだよぉ!!」



 「え、えぇ……私達は別に構わないけど……」



 「オナジク……」



 リーマとハナコは勿論、エレットやゴルガも渋々、フォルスの提案に賛同してくれた。



 「な? だから心配しなくても大丈夫、マオは俺達の勇姿を見届けてくれ」



 「…………」



 何も答えられなかった。只、黙って頷く他無かった。フォルスの言う通り、余計な情を持って戦えば、足手まといになってしまうかもしれない。



 「よし、行くぞ!!」



 何も出来ない真緒は、フォルス達が魔食に立ち向かって行く姿を見届ける事しか出来なかった。







***







 「……何て言ったは良いが……本当に俺達だけでやれると思うか?」



 魔食と向き合うフォルスだが、真緒抜きの戦いに少しばかり不安を感じていた。



 「男の癖に情けないわね。一度やるって決めた事に後からぐちぐち言うのは、カッコ悪いわよ」



 「エレットさんの言う通りですよ。マオさんがいないのは確かに不安ですが、私達だけで何とかしましょう」



 「……そうだな……悪い、少し弱気になっていた様だ。じゃあまずハナコとゴルガの二人が先行して……」



 「あの……フォルスさん……その肝心の二人なんですが、もう先に行っちゃいました」



 「な、何!?」



 フォルスが慌てて確認すると、既にハナコとゴルガの二人が魔食と激しい戦闘を繰り広げていた。



 「くそっ!! 人の話は最後まで聞けよな!!」



 「どうしますか?」



 「取り敢えず、俺達も戦うぞ。俺とリーマは後方からの攻撃。エレットは魔食が何かしようとした際、得意の雷魔法で動きを封じてくれ」



 「分かったよ」



 「行くぞリーマ!!」



 「はい!!」



 作戦を聞かない約二名のせいで、予定よりも早く戦闘が開始されてしまった。先行した二人に慌てて続く様に、フォルスは残りの二人に大雑把な作戦を告げて、戦いに参加する事になった。



 「スキル“鋼鉄化”!! ゴルガざん、頼むだぁ!!」



 「マカセロ」



 するとハナコは全身を鋼鉄に変化させ、体を出来る限り丸めた。そんなハナコをゴルガが持ち上げ、ボール投げの要領で魔食目掛けて勢い良く投げ飛ばした。



 「いっげぇえええええ!!!」



 「…………」



 迫り来る鉄の塊に魔食は一歩も退かず、そのまま両手で受け止めようとする。が、勿論そんな事が出来る筈も無く、そのまま吹き飛ばされてしまう。



 「どうだぁ!?」



 「…………」



 確かな手応えを感じたハナコ。実際、死体である聖一のあばら骨は、バラバラに折れてしまっていた。しかし、それをまるで何事も無かったかの様に、魔食が起き上がらせる。



 そして体に思い切り負担の掛かる姿勢のまま、予備動作無しの動きで一瞬にして、ハナコとの距離を縮める。



 「は、早い!!!」



 「ウォオオオオオオ!!!」



 魔食の素早い動きに反応が遅れるハナコだったが、側にいたゴルガが機転を利かせて、真横から魔食を蹴り飛ばした。



 「…………」



 「ナ、ナニ!!?」



 だがしかし、魔食は地面に根を張る事で遠くに吹き飛ばされる事を防いだ。そして剣を持っていない左手でゴルガを殴り飛ばす。人間とゴーレム。その対格差は圧倒的であり、ゴルガ自身もスキルや魔法を使用しない只のパンチなら、全然大丈夫と慢心した。



 案の定、死体とは思えない程のパワーでゴルガは後方へと吹き飛ばされてしまった。



 「ゴルガざん!!」



 「タダノパンチデ……フキトバサレルトハ……ハナコ、アブナイ!!」



 「!!!」



 「…………」



 あのゴルガが吹き飛ばされた事に驚きを隠せないでいると、その隙を突かれて魔食に剣で斬られてしまう。



 「うぐっ……!!!」



 「ハナコ、ダイジョウブカ!!?」



 「だ、大丈夫……単なる掠り傷だぁ……」



 明らかな強がりだった。斬られた腕は骨まで到達しており、血が止めどなく溢れ出ていた。すると空中からフォルスが声を掛けて来る。



 「ハナコ、無事……じゃないみたいだな。勝手に突っ走るからそうなるんだぞ」



 「うぅ、ずまねぇだぁ……」



 「後は俺達に任せて、お前達二人は下がってろ!!」



 フォルスの指示に従い、ハナコとゴルガは一旦、その場から離れた。



 「さて、今度は俺達が相手だ!! “三連弓”!! そして……“ブースト”!!」



 二人が離れた事を確認すると、フォルスは魔食目掛けて三連続の矢を放った。しかしそれは只の矢では無く、風属性魔法を纏った“加速する”矢だった。



 三本の矢がそれぞれ異なるタイミングで加速し、魔食目掛けて飛んでいく。



 「見たか!! 俺の新たに習得した技を!! “三連弓”と“ブースト”の複合技。名付けて“アクセルドライ”だ!!」



 「…………」



 すると魔食は避ける素振りも見せず棒立ちのまま、フォルスが放った加速する三本の矢をその身に受け止めた。



 「なっ!? 貫かないだと!!?」



 魔食に突き刺さった三本の矢は、貫通する事は無く、体内に吸収されてしまった。



 「くそっ、思った以上に柔軟な体の様だな」



 「“炎の槍”!!」



 その時、フォルスが放った矢に続く形で燃え盛る炎の槍を持ったリーマが、魔食目掛けて突き刺そうとしていた。



 「例え貫けないとしても、この炎に焼かれてしまえば、ひとたまりも無いでしょう!!」



 そんな炎の槍に対して、魔食は剣を持っていない左手の掌で受け止めようとする。



 が、結果は勿論散々であった。突き出される炎の槍は死体である聖一の左手を貫通し、その体へと突き刺さった。そして全身が火だるまへと化した。



 すると死体に残った僅かな水分が弾け飛び、その音がまるで呻き声の様に聞こえ始めた。



 「うっ……気持ち悪い……」



 そのあまりの気持ち悪さに慌てて炎の槍を手放し、その場から離れるリーマ。



 「ナイスだ、リーマ」



 「いや、フォルスさんが注意を惹き付けてくれたから出来たんですよ。本来ならあんな攻撃、避けられていますから」



 「そうか……奴は命令に従うだけで意思を持たない。だから何が最善なのか、判断する事が出来ないんだな」



 命令だけを受け付ける様にした末路。もしこの魔食がかつての実験体M-001の様に、本能の赴くままに行動していたら、勝負の結果はどうなっていたか分からなかっただろう。



 「えー、もう終わっちゃったの?」



 そして少し離れた所で出るタイミングを伺っていたエレットが、不満そうな表情で現れた。



 「あぁ、こいつは死体を媒介にしている分、死体その物が無くなってしまえば、死んでしまうからな」



 「せっかく暴れられると思ったのに……ちょっとガッカリ……」



 「「あははははは」」



 「…………」



 活躍出来なかった事に落ち込むエレットに対して、緊張の緩みから思わず笑みを溢してしまうリーマとフォルス。その背後で完全に白骨化した聖一を、無理矢理動かす魔食の姿があるとも知らずに……。



 全く気付かないリーマ。その隙を狙って、魔食が持っていた剣を振り上げながら襲い掛かる。



 「!! リーマ!! 後ろ!!」



 「えっ!!?」



 空中にいたフォルスが気づくも、時既に遅し。振り上げられた剣がリーマの頭目掛けて、勢い良く振り下ろす……よりも早く、リーマの危機に駆け付けた“真緒”が、白骨化した聖一の体をスキル“乱激斬”でバラバラにした。



 媒介となる死体を失った魔食は力無く倒れ、そのまま蒸発してしまうのであった。



 「リーマぢゃん!! 大丈夫だがぁ!!?」



 真緒より少し遅れて、離れていたハナコとゴルガの二人も合流した。



 「マオさん、ありがとうございます!! マオさんがいなかったら……私……」



 死に直面した事で少し涙目になっているリーマ。そんなリーマを他所に、何処か物寂しげな表情を浮かべる真緒。



 「マオ……大丈夫か?」



 リーマを助ける為とはいえ、結局自らの手で死体蹴りをしてしまった。罪悪感に苛まれて、精神を病んでしまっていないか、フォルスは心配であった。



 「大丈夫って言えば嘘になるけど……それでも仲間の命には代えられない……」



 「マオ、辛い時はいつでも俺達を頼ってくれ。一人で抱え込まないでくれよ」



 「フォルスさん……」



 「そうですよ。私達は仲間なんですから、困った時はお互い様ですよ」



 「リーマ……」



 「マオぢゃん、悲じい時は美味じい物を食べるのが一番だ。ごの戦いが終わっだら、皆で食べに行ぐだぁ!!」



 「ハナちゃん……ふふっ、ありがとう皆……」



 それまで険しい表情を浮かべていた真緒だったが、仲間達の言葉によって笑顔を取り戻す事が出来るのであった。
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