笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 血の繋がり

真緒パーティー VS 大司教エイリス

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 遂に祭壇まで辿り着いた真緒達。その手前で待ち構えるのはヘッラアーデの指導者にして、かつてエジタスの姉であった大司教エイリス。



 だが、ノーフェイスと戦う際に見掛けた時よりも、何処と無く雰囲気が違っている様に感じられた。



 「これはこれは……まさかノーフェイスを倒すとは……それで? どうでしたか? かつての友人を斬り殺した感想は?」



 以前よりも陰湿な、暗い感じになっていた。そんな雰囲気を誤魔化す様に、わざとらしい挑発をして来る。



 「心配しなくても、あなたを倒したら確りと埋葬してやるつもりです」



 「そう……残念ね、もう少し葛藤してくれるかと思ったんだけど……どうやら思った以上に冷たい人間だった様ね」



 「それはお互い様じゃありませんか? 既に亡くなっている人を、あんな冒涜的な扱い方をするだなんて……」



 「冒涜的だなんて人聞きの悪い。私は只、魂の入っていない肉体を再利用しただけよ。大事なのは思いやる心であって、体は生きる為に必要な器に過ぎない。だからこそ私はその体が朽ち果てるまで使い続け、人々の役に貢献させた。それが私の彼に対する思いやりだから……果たしてそれを冒涜的と言えるのかしら?」



 「…………もう、あなたには何を言っても伝わらない様ですね……」



 そう言いながら真緒達は各々、武器を構える。その様子を見たエイリスは、側にいるリップに『離れていなさい』と、その場から少し遠ざけた。



 「これが最後の戦い……全力であなたを止めて見せる!! “ライト”!!」



 真緒の掌から、思わず目を覆いたくなる程の強い光の玉が生成される。するとエイリスは静かにゆっくりと目を閉じる。



 その隙を狙って、真緒達は一斉に攻撃を仕掛ける。真緒は真正面から剣で斬り伏せようと、フォルスは空中から矢を放とうと、リーマは真横から魔法で援護しようと、そしてハナコは背後に回り、拳で吹き飛ばそうとする。



 「「「「っ!!?」」」」



 が、先程までいた場所にエイリスの姿は無かった。何処かに移動した様子も見受けられない。そもそも四方向からの攻撃の為、逃げ場など存在しなかった。それなのに忽然と姿を消した。



 「い、いったい何処に行ったのよ!?」



 そんな様子を少し離れた所から観察していたゴルガとエレットの二人。ゴルガは落ち着いた様子であったが、エレットは姿を消したエイリスに対して、酷く動揺している様子だった。



 「エレットさん、落ち着いて下さい。エイリスは師匠と同じ転移魔法の使い手だった筈です。つまり今、何処か私達から見えない場所に移り、油断した所で襲い掛かると思われっ……!!?」



 そう説明している瞬間、エイリスが真緒の背後に何の前触れも無く突然現れた。手にはナイフが握り締められており、真緒の首を切り落とそうと振り被る。



 「ごぶっ!!?」



 しかし、持ち前の反射神経により、ナイフの刃が皮膚に触れる瞬間、持っていた剣で弾いて見せた。そしてがら空きになった腹目掛けて、真緒が鋭い蹴りを入れる。



 一瞬、何が起こったのか理解出来なかったエイリス。吹き飛ばされた先で涙目になりながら、蹴られた腹を両手で押さえる。



 「はぁ……はぁ……っ!!!」



 「“炎の槍”」



 そんな情けない姿の彼女目掛けて、赤々と燃え盛る炎の槍が襲い掛かる。転移して避ける時間が無く、その場に転がる事で慌てて回避する。



 「スキル“インパクト・ベア”」



 「!!!」



 が、回避した先で待ち構えていたハナコによる強烈な一撃を貰い、その衝撃から空中に吹き飛ばされた。



 「“アクセルドライ”」



 「がはっ!!?」



 休む暇が無い。空中に吹き飛ばされているエイリス目掛けて、加速した三連続の矢が突き刺さる。幸いにも三本共、左肩に刺さり、致命傷には繋がらなかった。しかしそれでも、充分にダメージを負わせる事に成功している。



 「うっ……あがぁ……」



 「す、凄い……これがマオ達の本当の実力……」



 真緒達の息を飲む程の連携攻撃に、エレットは唖然としていた。



 これまでギリギリの戦いを繰り広げて来た真緒達だが、それはあくまでも感情が左右されていた面がある。



 真緒達は良い意味で人間が出来てしまっている。その為、例え相手が敵であろうと同情してしまい、実力をフルに発揮する事が出来なかった。



 しかし、エイリス相手にその必要は無い。エジタスの姉という点はある物の、あまり関わりの無い相手。つまりは同情するにまで値しない敵。よって容赦無く、叩き潰す事が出来る。



 「生憎だけど、私達はあなたの様な敵と一度戦った事がある。しかも相手はあなたよりも遥かに格上だった」



 更に真緒達にはエジタスという、エイリスよりも遥か彼方の転移魔法の実力者と戦った事がある。その為、同じ転移魔法を扱う相手には有利なのだ。



 「それに本格的に戦うのは、今回が初めてですよね?」



 「…………」



 「転移魔法は使い慣れているみたいだったけど、動きにムラがあった。恐らく今まで、転移魔法で背後に回ってからのナイフ攻撃で片が付いていた。だからその初撃を防がれてしまった時の対応に遅れた。違う?」



 「…………」



 何から何まで図星だった。前世の記憶が全てあるエイリスだが、それはあくまで知識であり、今の体が経験した事では無い。



 加えてエイリスが動き始めたのが一年前、それまでは何の苦労もしない上流階級の生娘だった。勿論、筋力を上げる為の運動らしい事は何もして来なかった。その為、知識量に対して体が付いて行けて無いのだ。



 「転移魔法の強さに慢心したあなたは、不意打ちでしか敵を倒せない卑怯者ですよ」



 「は……ははは……ははははは!!!」



 すると突然笑い出したエイリス。まるで生まれたての小鹿の様に震えながら、泥塗れで何とか立ち上がる。



 「まだ立ち上がるんですか……」



 「当たり前よ!! 私はまだ負けていない!! この首が体と繋がっている限り、決して諦めたりしない!!」



 「そこまでして師匠に会いたいんですね……当然ですよね、家族ですもんね……」



 「そうよ!! 姉として!! 家族として!! 私はエジタスに会いたい!! 愛する弟をもう一度、この手に抱き締めたいのよ!!」



 「ならどうして周りを巻き込むんですか!!? あなた程の知恵者なら、被害を一切出さずに出来た筈です!! それなのに何故ですか!!?」



 「…………私にとってエジタス以外、価値が無いからよ」



 「……そうですか……よく分かりました。もう、あなたの声を聞きたくありません。決着を付けましょう」



 真緒が剣を構える。対してエイリスは息を荒くしながら、転移魔法でその場から姿を消した。



 「皆、手出しは無用だからね」



 真緒の言葉に他の三人が静かに頷いた。



 真緒はゆっくりと息を整える。心臓の鼓動がうるさく聞こえる。一分、五分、十分と時間が過ぎて行く。長時間、緊張が張り詰める中、その瞬間は遂に訪れた。



 「うわぁああああああ!!!」



 それは意外、真正面からの突撃であった。何を思ったのか、戦闘経験豊富な真緒に小細工無しの正面から勝負を挑んだ。



 「これで……最後です!!」



 迫り来るエイリス。迎え撃つ真緒。両者の武器が交わろうとしたその時!!







          ドゴン!!!







 「「「「「「「!!?」」」」」」」



 「な、なんだ今の音は!!?」



 「み、見て下さい!! 祭壇が!!?」



 けたたましい音が響き渡る。真緒達やエイリスは思わず音のした方向に顔を向ける。するとどうした事か、祭壇が青白く発光していた。



 そして祭壇にはある一人の人物が立っていた。不適な笑みを浮かべながら、こちらを見ていた。その人物にエイリスは信じられないという表情を浮かべながら、問い掛ける。



 「い、いったいこれはどういう事なの……説明しなさい……“リップ”」



 リップは呆れた様子で、わざとらしく大きな溜め息を漏らす。



 「あなたは本当に哀れな操り人形ですね。私という掌の上で躍り続けていたんですから!! くくく、あはははははははははは!!!」



 そう言いながらリップは、エイリスを指差しながら、ゲラゲラと大声で笑うのであった。
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