笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 蘇る英雄達

一人は皆の為に

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 「スキル“ロストブレイク”!!」



 真っ直ぐと魔王サタニア目掛けて放たれる強烈な一撃。対して魔王サタニアは防御や、避けるなどといった素振りを見せなかった。



 『…………』



 そうして真緒の一撃は、魔王サタニアの体に突き刺さる……と思われたが、剣が突き刺さる事は無く、その鋼鉄の様な肉体で受け止められてしまった。



 「っ!! まだだぁ!!!」



 無傷なのが分かった途端、真緒は間髪入れずに、魔王サタニアの顔目掛けて勢い良く右足を叩き込んだ。



 「更にダメ押し!!」



 そう言うと真緒は叩き込んだ右足をそのまま魔王サタニアの首に絡ませ、そこを土台に自身の体を持ち上げる。



 そして突き刺さらなかった剣を振り上げ、今度は真上から胸目掛けて振り下ろした。



 『…………』



 しかし、そう易々と許してはくれなかった。剣を振り下ろそうとした瞬間、魔王サタニアが右手で真緒を真横から殴り飛ばす。



 「ぐっ!!?」



 あばらを殴られ、遠くに吹き飛ぶ真緒。脇腹を押さえながら何とか立ち上がるも、今ので数本折れたらしく、口から血が流れた。



 「はぁ……はぁ……まだ……終わってませんよ!!! スキル“明鏡止水”」



 その瞬間、周りの空間が静けさに包まれる。歩いてゆっくりと近付いて行く真緒。魔王サタニアは動こうとしない。



 やがて魔王サタニアの目の前まで近付いた真緒は、静かに剣を振るって魔王サタニアを切り刻もうとする。



 『スキル“ヘルブラスト”』



 「なっ!!?」



 が、魔王サタニアは突然動き出し、真緒目掛けて真っ赤に燃えた拳を勢い良く放った。



 真緒は咄嗟に“明鏡止水”の空間を解き、迫り来る拳に合わせて体を90度捻る。真緒の顔よりも遥かに大きな拳が、目から約三ミリの所を通り過ぎる。



 これ以上の深追いは危険だと判断した真緒は、急いで魔王サタニアから距離を取った。



 「あ、危なかった……もう少しで当たる所だった……」



 『“ダーク・ファンタジア”』



 魔王サタニアが魔法を唱える。すると真緒を囲う様に無数の黒い玉が生成された。黒い玉は、まるで踊っているかの様に真緒を中心に、上下に揺れながら回り始めた。更に無数の黒い玉は、真緒を覆い隠す様に包み込み始めた。最終的に、無数の黒い玉はドーム状の檻を作り出した。



 「こ、これは!!? 不味い!!」



 慌てて抜け出そうとするも、無数の黒い玉に行方を阻まれ、思う様に動けなかった。



 「このままじゃ……そうだ!! スキル“乱激斬”!!」



 次の瞬間、真緒はその場で仰向けになって倒れた。そして真上に向かって無数の斬激を繰り出す。次第に黒い玉の数は減り始め、脱出出来るだけのスペースが生まれた。



 「よし!! 今の内に!!」



 その隙を見逃さず、真緒は急いで脱出した。真緒が脱出したと同時に残った黒い玉が先程までいた真緒の所に向かって、一斉に襲い掛かる。



 「ふぅ……良かった。後、一秒でも遅かったら大変な事……に……っ!!?」



 ホッとしたのも束の間。脱出した先には魔王サタニアが先回りしていた。真緒は慌てて剣を構えようとするも、それよりも前に魔王サタニアの拳が真緒の顔面に突き刺さる。



 「ぶっ!! ばっはぁ!!?」



 まるでボールの様に何度もバウンドしながら、吹き飛ばされる。鼻は折れ、前歯は折れ、涙と鼻血が止めどなく流れ落ち、顔の周りはもうぐちゃぐちゃだった。



 「かひゅ……こひゅ……かはっ……」



 上手く息を吸う事が出来ない。たった一発貰っただけだというのに、最早虫の息だった。



 「(痛い……辛い……こんなの勝てる訳が無い……死んだら元の場所に戻れる……だったら大人しく殺されて、次回改めて挑む方が利口だよね……)」



 真緒は知らない。この最終試練、死んだらそこで本当に終わってしまう。真緒はゆっくりと立ち上がり、そして……剣を構えた。



 「(どうせ……どうせ死ぬのなら、せめて深傷を負わせてから死んでやる!!)」



 真緒の闘志はまだ死んでいなかった。いや、死ぬ覚悟を持ったと言うべきか。知らないとは言え、失う物が何も無い者程、恐ろしい者は無い。



 「(まずは相手の視界を奪う!!)」



 すると真緒は一気に距離を詰める。それに反応して、魔王サタニアは真緒目掛けて拳を振るおうとする。



 「“ライト”!!」



 その瞬間、真緒の掌から眩い光を放つ玉が生成される。それにより一瞬、魔王サタニアの目が眩み、放たれる拳の軌道がずれる。拳は真緒の頬をかすめ、地面に突き刺さる。それと交わす形で、真緒の剣が魔王サタニア目掛けて突き出される。



 「いけぇえええええ!!!」



 剣の先が魔王サタニアの首に、ほんの少しだけ突き刺さる。その瞬間、真緒は掌で剣の柄部分を思い切り押し込んだ。



 鋭利な刃が魔王サタニアの皮膚を裂き、奥へ奥へと押し込まれていく。そして遂には中に入った剣先が貫通して、首の後ろから突き出た。



 「やった!!!」



 初めて魔王サタニアに、明確なダメージを負わせる事が出来た。更に首という致命的な箇所に負わせる事が出来た。



 「人間、死ぬ気でやれば何とかなるもっ…………!!?」



 一瞬、何が起こったのか分からなかった。自身の成長に喜びを感じているその時、真緒は空中に浮かび上がっていた。最後に見えたのは、魔王サタニアの足が下から上に向かって蹴り上げられた事のみ。



 「が……はぁ!!!」



 すると魔王サタニアは両足に力を込め、浮かび上がった真緒と同じ距離飛び上がった。そしてお返しと言わんばかりに、真緒の首目掛けて足を鞭の様に振り回し、更なる追い討ちを叩き込んだ。



 咄嗟に真緒は両手を上げて首を守った。しかし代わりに蹴りを左腕が受けてしまい、ゴキリという嫌な音を立てて、そのまま勢い良く地面に向かって吹き飛ばされる。



 「あ……あぁ……おげぇ……おぇ……」



 体の自由が効かない。もう一歩も動けない。全身を激痛が襲う。そんな中、真緒にはある疑問が頭を過っていた。



 「(ど、どうして……確かに首に突き刺した筈なのに……)」



 唯一、目だけは動かせる為、真相を確かめる為に目線を向けた。するとそこには、平然と突き刺さった剣を首から引き抜く魔王サタニアの姿があった。更に首から血が一滴も流れていなかった。



 「(そ、そっか……ここは……現実じゃない……から……)」



 そう、ここはあくまでも若かりし頃の魔王サタニアが作り出した仮想の空間。つまり、真緒が相手している魔王サタニアは、血や内蔵などが無い存在。そんな相手に例え致命的な箇所に傷を負わせる事が出来ても、全く意味が無いのだ。



 「(はは……は……まぁ、でも初めてにしては……結構頑張った方じゃないかな……次はもっと健闘したいな……)」



 そうして真緒は抵抗するのを止め、殺されるのを待った。来る事の無い次を求めて。



 そして魔王サタニアの拳が真緒目掛けて勢い良く突き出される。真緒は静かに目を閉じるのであった。



























 「…………あれ?」



 いつまで経っても痛みが来ない。もしかしてもう現実に戻ってきたのか。そう思った真緒はゆっくりと目を開ける。



 「ぐぐぐ……大丈夫だがぁ、マオぢゃん!!!」



 そこには両腕で魔王サタニアの拳を防ぐハナコの姿があった。



 「ハ、ハナちゃん!!?」



 「オラだげじゃないだぁ!!!」



 すると何処から途もなく、複数本の矢が魔王サタニアに突き刺さり、雷が落とされる。



 「無事かマオ!!?」



 「フォルスさん!!?」



 「全く、心配掛けさせて……困った子だよ」



 「エレットさん!!?」



 更に炎型の巨人が突如現れ、魔王サタニアを遠くへと吹き飛ばす。



 「マオさん!!」



 「リーマ……皆、どうして?」



 これで終わりかと思われたその時、真緒の目の前に現れた仲間達。真緒は当然の如く、何故ここにいるのか訪ねる。その問いに全員が一斉に答える。



 「「「「助けに来た!!」」」」
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