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登校《有栖》
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あれから夜うまく眠れない。
睡眠薬や鎮静剤の力を借りて身体を眠らせても、無理やり呼び込んだ眠りは暴力的で、悪夢を見る。
朝起きると身体は鉛のように重く、怠かった。
「今日登校日なんだよな……顔色が悪いな……休むか?」
兄が私の頬に手を当ててた。
「ううん…ちゃんと行きたい……」
とにかく毎日をいつもどおり送ること、それが私にとってのなによりの幸福で自分のなか支えだった。
だから通信の授業も休みたくはないし、もちろん登校日にはちゃんと学校に行きたい。
また記者の男性が学校に来ていたら、家の前にいたら……。
あの日、桃くんはきっと記者とのやりとりを兄たちに話しただろう。
兄たちは何も言わないけど、もし兄や竜之介に、あの写真や動画を見られてしまうよえなことがあったなら……。
そう思うと怖くて、呼吸が苦しくなる。
そしてあの写真たちを誰が記者に渡したのかとそれを考えると気が変になりそうだった。
「渋川がいるのに?またなんか言われるのに、学校行くの?」
竜之介が歯を磨きながら言う。
「こら、竜之介、脅かすようなこというな。心配だから迎えは頼めるか?行きは俺が車で送っていく。」
「それはもちろんだけど。俺は心配してるから言ってるの。登校なんてしなくてもいいのに。」
そう言いながら、歯を磨き終わった竜之介は私の髪をとかして、ハーフアップの編み込みにとりかかる。
「ううん、たまの登校日だもん…」
今度こそちゃんと卒業したい。
竜之介に心配かけ
「わかったよ…じゃあ、無理しないで!」
竜之介は編み込んだ髪にキスをしてくれた。
たぶんこれは、おまもりの儀式だ。
兄は普段は学校の近くまで送ってくれてそこで別れるのだけれど、記者のことがあってから、学校のビルの前のロータリーまで送ってもらっている。
「じゃあ、有栖、気をつけて」
車から降りる時、私が不安そうな顔をしていたのか、兄が微笑んで頭を撫でてくれた。
その瞬間、なにか視線を感じて振り返ると、渋川さんがこちらにスマホを向けている。
「おい、無断で人の写真を撮るのはナシなんじゃないか」
兄が車のなかから渋川さんに声をかける。
「今日はお兄さまか……豪華な顔ぶれだな」
彼は戯けたように茶化して、手をひらひらさせながらどこかへ行ってしまった。
「あいつが渋川?」
兄がすこし険しい顔をして私に聞く。
「うん…そう……」
「大丈夫か?有栖」
兄が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「うん、大丈夫。」
私はそう言って笑った。
兄の車が見えなくなると、私は教室に向かった。
睡眠薬や鎮静剤の力を借りて身体を眠らせても、無理やり呼び込んだ眠りは暴力的で、悪夢を見る。
朝起きると身体は鉛のように重く、怠かった。
「今日登校日なんだよな……顔色が悪いな……休むか?」
兄が私の頬に手を当ててた。
「ううん…ちゃんと行きたい……」
とにかく毎日をいつもどおり送ること、それが私にとってのなによりの幸福で自分のなか支えだった。
だから通信の授業も休みたくはないし、もちろん登校日にはちゃんと学校に行きたい。
また記者の男性が学校に来ていたら、家の前にいたら……。
あの日、桃くんはきっと記者とのやりとりを兄たちに話しただろう。
兄たちは何も言わないけど、もし兄や竜之介に、あの写真や動画を見られてしまうよえなことがあったなら……。
そう思うと怖くて、呼吸が苦しくなる。
そしてあの写真たちを誰が記者に渡したのかとそれを考えると気が変になりそうだった。
「渋川がいるのに?またなんか言われるのに、学校行くの?」
竜之介が歯を磨きながら言う。
「こら、竜之介、脅かすようなこというな。心配だから迎えは頼めるか?行きは俺が車で送っていく。」
「それはもちろんだけど。俺は心配してるから言ってるの。登校なんてしなくてもいいのに。」
そう言いながら、歯を磨き終わった竜之介は私の髪をとかして、ハーフアップの編み込みにとりかかる。
「ううん、たまの登校日だもん…」
今度こそちゃんと卒業したい。
竜之介に心配かけ
「わかったよ…じゃあ、無理しないで!」
竜之介は編み込んだ髪にキスをしてくれた。
たぶんこれは、おまもりの儀式だ。
兄は普段は学校の近くまで送ってくれてそこで別れるのだけれど、記者のことがあってから、学校のビルの前のロータリーまで送ってもらっている。
「じゃあ、有栖、気をつけて」
車から降りる時、私が不安そうな顔をしていたのか、兄が微笑んで頭を撫でてくれた。
その瞬間、なにか視線を感じて振り返ると、渋川さんがこちらにスマホを向けている。
「おい、無断で人の写真を撮るのはナシなんじゃないか」
兄が車のなかから渋川さんに声をかける。
「今日はお兄さまか……豪華な顔ぶれだな」
彼は戯けたように茶化して、手をひらひらさせながらどこかへ行ってしまった。
「あいつが渋川?」
兄がすこし険しい顔をして私に聞く。
「うん…そう……」
「大丈夫か?有栖」
兄が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「うん、大丈夫。」
私はそう言って笑った。
兄の車が見えなくなると、私は教室に向かった。
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