25 / 36
ケーキづくり推奨日《竜之介》
しおりを挟む
「有栖、今日は登校日だったよな?学校行くのやめて、兄ちゃんとケーキでもつくらないか?」
ある朝、兄がノックもしないで、有栖と僕が寝ている部屋にバタンとドアを開けて勢いよく入ってきた。
「うわ!び、びっくりした!兄貴、入ってくる時はノックしろよ!俺と有栖が万が一いちゃいちゃしてたらどうしてくれるんだよ!」
なにもないとは言え、有栖と同じベッドで寝ているところを兄に見られるのは照れ臭く、僕は慌てて飛び起きて乱れていた布団をなんとなく直す。
有栖は睡眠薬を服用しているせいか、朝はぼうっとしていて、ふにゃふにゃしながらむくりと身体を起こす。
パジャマの前が少しはだけていたから、僕は慌ててささっとそれも直す。兄には見せたくない(もったいないから)。
礼儀正しい兄がそんなふうにノックもせずに部屋に入ってくることは珍しい。
「なんで…?お兄ちゃん、今日仕事忙しいって言ってなかった…?」
有栖は寝ぼけた声で目をこすりながら尋ねる。
兄は僕の慌てっぷりは華麗にスルーする。
「仕事はなくなった。有休だ。そして俺は今すごく有栖とケーキを作って、食べたいんだ!兄ちゃんの急な願いを聞いてくれ……そして竜之介、おまえは今すぐ学校へ行け」
「は、はあ?なんで俺だけ…」
言いかけて、兄が有栖に見えない角度で、僕へなにかの合図を送っていることに気づく。
しきりに左手の親指で、スマホの画面をトントン叩いているのだ。
「……?」
まさか…と思いかけた時、ベッドサイドの僕のスマートフォンが鳴った。
『竜之介、しばらく有栖ちゃん学校に行かない方がいいかも。あと、外に出さないとか、ネット見せないようになんてできる?ごめんな、防ぎきれなかった。」
桃からだった。
やっぱりそうか……
絶望的な気持ちになりながら、短く返事をして電話を切る。
僕はなにげなく有栖なスマホも手にとって、パジャマの胸ポケットに収めた。
「ほんとに急用ができたから学校に行ってくるわ……そんで、俺も有栖と兄貴のケーキが猛烈に食べたくなってきたから作ってくれるとうれしい」
兄をちらっとみながら言う。
有栖はまだ眠いのか、唐突な話にぽかんとしている。
「有栖、兄ちゃんが平日休みなんて珍しすぎるじゃん。俺がいない間、じっくりケーキづくり楽しんでいてよ」
有栖に有無を言わさず、部屋を出る。有栖のことは兄に任せよう。
手早く身支度をして、冷蔵庫の中の野菜ジュースを飲んで外にでる。
忘れずに有栖のスマホも鞄に入れる。
もともと有栖はそんなにスマホをずっと触るタイプじゃないし、俺が知る限りはsnsもそれほどやっていない。
たまにInstagramを見ているくらいか。
でも見てしまうかもしれない。不用意に見せたくなくて彼女のスマホも持ち出したのだ。
玄関を出てから、深呼吸してからスマホを開きネットを見る。
父はいわゆる著名人ではあるけれど、芸能人というわけではないし、今は逮捕されて既に一線を退いている。(2年前の人を使って息子ーーーつまり僕だ---に暴行を加えようとし、庇った娘に重傷を負わせた罪で逮捕され、もろもろの犯罪もバレて、現在は懲役の実刑を受けている)
内容もゴシップだから、有名ポータルサイトやsnsのニュース欄のわかりやすく目につくところに記事はなく、少しほっとするも、小さい見出しに父親の名前を見つけて、息を止めてタップする。
「愛娘との愛欲の日々」
「元有名実業家 立花被告の野蛮な営み」
「激ヤバ 立花元社長の私生活、これ誰が撮ったの?」
『娘のことを性的に虐待していた立花被告』
『娘は父親から日常的に性被害を受けていた!』
嫌な言葉が次々と目に入ってくる。
サイトによって見出しは違ったが、どれも下劣でどこか興味本位だった。
吐き気がする。
リンク先の春夏出版のサイトに飛ぶと、「この先には露骨または猥褻な画像が表示されます」の注意書きとモザイクと黒い意味深な目線隠しに汚された有栖の裸体があった。父の身体と共に。
僕は咄嗟に口を抑えた。
上手く呼吸ができなくなっていた。
なんだ、これは。
なんだ、これは。
知っているつもりだった。
有栖が父親からされていた乱暴で卑猥な行為を。
実際に2年半前に有栖が親父に犯された時は傷跡や内出血の痕もみた。
それもひどくつらかった。
だけど、なんだこの写真は。
この写真を見ているときに湧いてくる感情はなんだ。
吐きそうだ。
僕はその画面をススライドさせた。
そこには、彼女の白い胸やら太腿からが写っていた。
モザイクがあってもわかる。
たしかに有栖だった。
こんな写真、こんな掲載、これは罪にならないのか?
ある朝、兄がノックもしないで、有栖と僕が寝ている部屋にバタンとドアを開けて勢いよく入ってきた。
「うわ!び、びっくりした!兄貴、入ってくる時はノックしろよ!俺と有栖が万が一いちゃいちゃしてたらどうしてくれるんだよ!」
なにもないとは言え、有栖と同じベッドで寝ているところを兄に見られるのは照れ臭く、僕は慌てて飛び起きて乱れていた布団をなんとなく直す。
有栖は睡眠薬を服用しているせいか、朝はぼうっとしていて、ふにゃふにゃしながらむくりと身体を起こす。
パジャマの前が少しはだけていたから、僕は慌ててささっとそれも直す。兄には見せたくない(もったいないから)。
礼儀正しい兄がそんなふうにノックもせずに部屋に入ってくることは珍しい。
「なんで…?お兄ちゃん、今日仕事忙しいって言ってなかった…?」
有栖は寝ぼけた声で目をこすりながら尋ねる。
兄は僕の慌てっぷりは華麗にスルーする。
「仕事はなくなった。有休だ。そして俺は今すごく有栖とケーキを作って、食べたいんだ!兄ちゃんの急な願いを聞いてくれ……そして竜之介、おまえは今すぐ学校へ行け」
「は、はあ?なんで俺だけ…」
言いかけて、兄が有栖に見えない角度で、僕へなにかの合図を送っていることに気づく。
しきりに左手の親指で、スマホの画面をトントン叩いているのだ。
「……?」
まさか…と思いかけた時、ベッドサイドの僕のスマートフォンが鳴った。
『竜之介、しばらく有栖ちゃん学校に行かない方がいいかも。あと、外に出さないとか、ネット見せないようになんてできる?ごめんな、防ぎきれなかった。」
桃からだった。
やっぱりそうか……
絶望的な気持ちになりながら、短く返事をして電話を切る。
僕はなにげなく有栖なスマホも手にとって、パジャマの胸ポケットに収めた。
「ほんとに急用ができたから学校に行ってくるわ……そんで、俺も有栖と兄貴のケーキが猛烈に食べたくなってきたから作ってくれるとうれしい」
兄をちらっとみながら言う。
有栖はまだ眠いのか、唐突な話にぽかんとしている。
「有栖、兄ちゃんが平日休みなんて珍しすぎるじゃん。俺がいない間、じっくりケーキづくり楽しんでいてよ」
有栖に有無を言わさず、部屋を出る。有栖のことは兄に任せよう。
手早く身支度をして、冷蔵庫の中の野菜ジュースを飲んで外にでる。
忘れずに有栖のスマホも鞄に入れる。
もともと有栖はそんなにスマホをずっと触るタイプじゃないし、俺が知る限りはsnsもそれほどやっていない。
たまにInstagramを見ているくらいか。
でも見てしまうかもしれない。不用意に見せたくなくて彼女のスマホも持ち出したのだ。
玄関を出てから、深呼吸してからスマホを開きネットを見る。
父はいわゆる著名人ではあるけれど、芸能人というわけではないし、今は逮捕されて既に一線を退いている。(2年前の人を使って息子ーーーつまり僕だ---に暴行を加えようとし、庇った娘に重傷を負わせた罪で逮捕され、もろもろの犯罪もバレて、現在は懲役の実刑を受けている)
内容もゴシップだから、有名ポータルサイトやsnsのニュース欄のわかりやすく目につくところに記事はなく、少しほっとするも、小さい見出しに父親の名前を見つけて、息を止めてタップする。
「愛娘との愛欲の日々」
「元有名実業家 立花被告の野蛮な営み」
「激ヤバ 立花元社長の私生活、これ誰が撮ったの?」
『娘のことを性的に虐待していた立花被告』
『娘は父親から日常的に性被害を受けていた!』
嫌な言葉が次々と目に入ってくる。
サイトによって見出しは違ったが、どれも下劣でどこか興味本位だった。
吐き気がする。
リンク先の春夏出版のサイトに飛ぶと、「この先には露骨または猥褻な画像が表示されます」の注意書きとモザイクと黒い意味深な目線隠しに汚された有栖の裸体があった。父の身体と共に。
僕は咄嗟に口を抑えた。
上手く呼吸ができなくなっていた。
なんだ、これは。
なんだ、これは。
知っているつもりだった。
有栖が父親からされていた乱暴で卑猥な行為を。
実際に2年半前に有栖が親父に犯された時は傷跡や内出血の痕もみた。
それもひどくつらかった。
だけど、なんだこの写真は。
この写真を見ているときに湧いてくる感情はなんだ。
吐きそうだ。
僕はその画面をススライドさせた。
そこには、彼女の白い胸やら太腿からが写っていた。
モザイクがあってもわかる。
たしかに有栖だった。
こんな写真、こんな掲載、これは罪にならないのか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる