エフ --俺と妹を巡る物語の後--(仮)

夜の雨

文字の大きさ
26 / 36

守り方《竜之介》

しおりを挟む
「見たらだめだ」

声がして、スマホの画面が大きな手に遮られる。
ハッとすると、桃が目の前に立っていた。
いつになく真剣な顔。

「これは、有栖ちゃんが竜之介やお兄さんに1番見られたくないものだから……見ないであげて。下にはハイエナみたいなマスコミやユーチューバーやらがいるから、突っ切るぞ、少し先にタクシー待たせてある」
桃はぱっと僕のスマホを奪いとり、僕の腕を掴むと走り出した。

「しばらくは有栖ちゃんは家から出ない方がいいかもね」
タクシーの中で桃が言う。
桃が機転を効かせて来てくれていたから、マスコミや野次馬ユーチューバーに捕まらずにすんだ。

「あんな画像出すの、許されるのかよ……」
まだ先ほど見た写真が頭から離れない。
「許されないよ。
さっきお兄さんとも電話で話したんだ。ネットからは画像を削除してもらうようすでに手配してるって言ってた。少し時間がかかるし、もちろん判断は向こう側に委ねられるわけだけど。
あと…雑誌までは抑えられないから……竜之介は雑誌は見ない方がいい」
僕は知らなかったけど、ネットに個人情報や個人が特定される画像が出た場合、削除依頼をすることができるらしい。

兄はマスコミの話が出てからその辺の詳しい情報について調べていたらしい。さすが抜かりがない。
桃も法律には詳しいらしく(現役の法学部の学生だ)兄の相談にのったりしていてくれたみたいだ。

僕だけがただ悶々と過ごしていたのかと思うと恥ずかしい。

「竜之介は有栖ちゃんの味方になってやって。俺はお兄さんを手伝いながら様子を見るけど、有栖ちゃんはお前とじゃなきゃ上手く眠れないんだろ?」
そう言われて、頷く……でも、僕に何ができるだろう。

「竜之介、しっかりしろ、有栖ちゃんを守るんだろ。竜之介のやり方で」

桃がガシッと僕の肩を掴む。
桃はまっすぐ僕を見ている。
桃は強い。
こいつだって有栖のことがすきなんじゃないのか、だけど彼女のために、僕たちのために、彼女の乱暴されている写真を、ネットよりひどい雑誌を確認してくれたんじゃないのか。
「オレは見ても行き場のない怒りしか湧いてこないから……」
桃が僕の思考を読むように言う。

「桃がいてくれてよかった」

僕が言うと、桃はニッと笑う。
高校の頃から変わらない邪気のないゆるい笑顔だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...