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守り方《竜之介》
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「見たらだめだ」
声がして、スマホの画面が大きな手に遮られる。
ハッとすると、桃が目の前に立っていた。
いつになく真剣な顔。
「これは、有栖ちゃんが竜之介やお兄さんに1番見られたくないものだから……見ないであげて。下にはハイエナみたいなマスコミやユーチューバーやらがいるから、突っ切るぞ、少し先にタクシー待たせてある」
桃はぱっと僕のスマホを奪いとり、僕の腕を掴むと走り出した。
「しばらくは有栖ちゃんは家から出ない方がいいかもね」
タクシーの中で桃が言う。
桃が機転を効かせて来てくれていたから、マスコミや野次馬ユーチューバーに捕まらずにすんだ。
「あんな画像出すの、許されるのかよ……」
まだ先ほど見た写真が頭から離れない。
「許されないよ。
さっきお兄さんとも電話で話したんだ。ネットからは画像を削除してもらうようすでに手配してるって言ってた。少し時間がかかるし、もちろん判断は向こう側に委ねられるわけだけど。
あと…雑誌までは抑えられないから……竜之介は雑誌は見ない方がいい」
僕は知らなかったけど、ネットに個人情報や個人が特定される画像が出た場合、削除依頼をすることができるらしい。
兄はマスコミの話が出てからその辺の詳しい情報について調べていたらしい。さすが抜かりがない。
桃も法律には詳しいらしく(現役の法学部の学生だ)兄の相談にのったりしていてくれたみたいだ。
僕だけがただ悶々と過ごしていたのかと思うと恥ずかしい。
「竜之介は有栖ちゃんの味方になってやって。俺はお兄さんを手伝いながら様子を見るけど、有栖ちゃんはお前とじゃなきゃ上手く眠れないんだろ?」
そう言われて、頷く……でも、僕に何ができるだろう。
「竜之介、しっかりしろ、有栖ちゃんを守るんだろ。竜之介のやり方で」
桃がガシッと僕の肩を掴む。
桃はまっすぐ僕を見ている。
桃は強い。
こいつだって有栖のことがすきなんじゃないのか、だけど彼女のために、僕たちのために、彼女の乱暴されている写真を、ネットよりひどい雑誌を確認してくれたんじゃないのか。
「オレは見ても行き場のない怒りしか湧いてこないから……」
桃が僕の思考を読むように言う。
「桃がいてくれてよかった」
僕が言うと、桃はニッと笑う。
高校の頃から変わらない邪気のないゆるい笑顔だった。
声がして、スマホの画面が大きな手に遮られる。
ハッとすると、桃が目の前に立っていた。
いつになく真剣な顔。
「これは、有栖ちゃんが竜之介やお兄さんに1番見られたくないものだから……見ないであげて。下にはハイエナみたいなマスコミやユーチューバーやらがいるから、突っ切るぞ、少し先にタクシー待たせてある」
桃はぱっと僕のスマホを奪いとり、僕の腕を掴むと走り出した。
「しばらくは有栖ちゃんは家から出ない方がいいかもね」
タクシーの中で桃が言う。
桃が機転を効かせて来てくれていたから、マスコミや野次馬ユーチューバーに捕まらずにすんだ。
「あんな画像出すの、許されるのかよ……」
まだ先ほど見た写真が頭から離れない。
「許されないよ。
さっきお兄さんとも電話で話したんだ。ネットからは画像を削除してもらうようすでに手配してるって言ってた。少し時間がかかるし、もちろん判断は向こう側に委ねられるわけだけど。
あと…雑誌までは抑えられないから……竜之介は雑誌は見ない方がいい」
僕は知らなかったけど、ネットに個人情報や個人が特定される画像が出た場合、削除依頼をすることができるらしい。
兄はマスコミの話が出てからその辺の詳しい情報について調べていたらしい。さすが抜かりがない。
桃も法律には詳しいらしく(現役の法学部の学生だ)兄の相談にのったりしていてくれたみたいだ。
僕だけがただ悶々と過ごしていたのかと思うと恥ずかしい。
「竜之介は有栖ちゃんの味方になってやって。俺はお兄さんを手伝いながら様子を見るけど、有栖ちゃんはお前とじゃなきゃ上手く眠れないんだろ?」
そう言われて、頷く……でも、僕に何ができるだろう。
「竜之介、しっかりしろ、有栖ちゃんを守るんだろ。竜之介のやり方で」
桃がガシッと僕の肩を掴む。
桃はまっすぐ僕を見ている。
桃は強い。
こいつだって有栖のことがすきなんじゃないのか、だけど彼女のために、僕たちのために、彼女の乱暴されている写真を、ネットよりひどい雑誌を確認してくれたんじゃないのか。
「オレは見ても行き場のない怒りしか湧いてこないから……」
桃が僕の思考を読むように言う。
「桃がいてくれてよかった」
僕が言うと、桃はニッと笑う。
高校の頃から変わらない邪気のないゆるい笑顔だった。
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