《完結》エフ --双子の姉と僕だけの二人きりの誕生日--

夜の雨

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僕と有栖だけの時間 《竜之介》end

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「ただいまー」

翌日兄は出張のお土産を携えて帰ってきた。
「お兄ちゃん、おかえりなさい!」
有栖はうれしそうに駆け寄っていく。

僕と有栖だけの時間はおしまい。
彼女のちいさな背中を苦笑いをしながら見送る。小さなため息が出てしまう。

「有栖、いいこにしてたか?」
「うん。お兄ちゃんもリュウのお誕生日にいられたら良かったのにね。今日もお祝いしちゃう?」
兄は、無邪気に笑う有栖の顔やゆるい部屋着の身体を、どこか点検するようにじろじろ見ている(ように僕には見える)。
「んーーそうだね。……まあ、かな?」
兄は、有栖の肩に手を置き、つむじにキスして言った。ちなみに僕だって有栖のつむじにキスはできるけど、長身の兄のように余裕で身をかがめてってわけにはいかず、なにげに嫌味な兄である。
「なに?って」
無邪気に小首を傾げて尋ねる有栖。
「いやいや、こっちの話。竜之介、になったみたいだな…2人のスマホの電源まで切ってお祝いなんて、本格的でなかなか良かっただろうな…」
兄は煽るように、自分の左の耳朶をとんとんと叩きながら、にやにやしてくる。
「あ、うん……まあね」

ばれてたか。
笑ってて怖いな…。
有栖との時間を誰にも邪魔されたくなかったから電源切ってたんだよな。
有栖はちょっと鈍だから、途中から自分のスマホの電源を切られていても気づきはしない。

「お兄ちゃん、竜之介のピアス似合ってるでしょ?」
有栖が無邪気に言う。
兄は、目を細めて微笑む。
「うん、とってもよく似合ってる……有栖、趣味いいな」
兄に褒められて有栖はうれしそう。

昨晩の、背中の傷跡にキスしたあの濃密な時間はふたりだけの秘密だ。

僕は兄と有栖のやりとりを見ながら、ポケットの中のちいさな箱をそっと握りしめた。
来年の有栖の誕生日には、何をプレゼントしようか……気が早いけど、そんなことをぼんやり考えていた。
一生の宝物になるようなものをプレゼントしたい。

毎年、半年だけ先に、誕生日がやって来る僕の双子のお姉ちゃんに。

end




最後まで読んでいただき、
ありがとうございました

こちらを気に入っていただけましたら、
より、ヘビー🐍な、本編「エフ -- ありすと、ある兄弟をめぐる物語 --」のほうも、読んでいただけたら幸いです。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/62059879/237766375


雨の夜
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