成人の儀―特別侍従―

gooneone(ごーわんわん)

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2.初めての城2

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 リゲンスが歩き始め、建物の入り口に向かった。番人らしき男がリゲンスに頭を下げる。

「リゲンス様! お疲れ様です」
「今日から私の仕事の補佐につくケネルだ」
「はっ」
「あ、あの、よろしくお願いします」
「こちらこそ」

 補佐役。仕事内容は他言無用だからか。
 石でできた城だが、中は窓から差し込む光で思ったよりも明るい。

「必要な部屋については追々案内する」
「はい。ありがとうございます」

 こんなところ、一人で歩いたら迷子になりそうだ。置いていかれないよう、足の長いリゲンスの歩調に合わせて小走りをする。

 廊下で数人の騎士や使用人らしき人とすれ違った。皆一様に足を止め、リゲンスに敬礼をしたり、頭を下げたりして通り過ぎるのを待っていた。みんなが敬っているのはリゲンスだとわかっていても、なんだか落ち着かない気持ちになった。

 螺旋階段で二階に上がる。まっすぐに伸びる廊下を進むと、リゲンスが足を止めた。

「ここがそなたの部屋だ」

 リゲンスが開けたドアは、村長の家の玄関よりも立派なものだった。視線は吸い寄せられるようにその室内に向かう。

 右手に大きなベッド、奥の窓際には丸いテーブルとイスが二脚置かれていた。ベッドの横や部屋の壁際にはいくつもの棚。装飾が施されているので、触らないようにしようと心に決める。

 リゲンスに続いて中に入ると、広い部屋の床には、一面に柔らかな毛皮が敷かれていた。

(わあ……)

 踏んだら可哀想だ。けれどごろごろと転がってもみたい。触れてみると、馬車のそれよりも柔らかい。違う動物のものなのだろうか。

「仕事の説明をする」

 リゲンスが椅子に座った。敷物を撫でる手を止め、ケネルも慌ててその正面に腰を下ろす。

「約三か月後、王子の成人の儀が執り行われる。ケネルにはその相手役を担ってもらう」
「成人の儀……」

 首を捻ると、リゲンスが一つ咳払いをした。

「王子は二十歳になるとすぐに他国から妻を娶ることになる。その前に男としての機能が正常であるかを確認するのだ」
「ぁ……あ、はい……」

 よく理解しないまま頷く。

「……わからぬか」
「あ、その、えっと……」
「王子がそなたの後孔……尻の穴に男根を入れて体内に子種を出す。その行為を立会人が確認することを成人の儀というのだ」
「あ……あ、はい。わかりました」

(立会人……?)

 疑問に思ったが、口を挟める空気ではなかった。ひとまず最後まで聞こうと口を結ぶ。

「しかし性に不慣れな相手では、王子に性感を高めていただくことはできない。だからそなたにはそれまでに後孔での快楽を覚え、王子の気を高める手段を学んでもらうということだ。その方法はこれから私が指導する」

 今度はわかりやすかった。はい、と頷いておく。

「成人の儀までは残り三か月。途中で男根切除手術も行うが、それがいつになるかはそなたの習得ペース次第となる」
「あ、はい。よろしくお願いします」

 深く頭を下げる。何も言われなかったのでゆっくりと顔を上げると、リゲンスはわずかに眉根を寄せていた。しかしすぐに感情のない表情に戻った。

「指導は毎日行うが、一日中訓練をするわけではない。私には他の仕事もある。時間外は自由にしていてかまわない。ただし、決して特別侍従としての仕事内容や、そなたが特別侍従であることを他人に漏らしてはならない。もちろん成人の儀についてもだ」
「はい」

 具体的な訓練の内容はわからないが、ここに来た以上、やり遂げる他ない。

「そなたが王子の相手役だと知る者は王、宮廷長官、教育係である私とあと一人、ケネルが城に住む手配をした執務官の四人だけだ」
「え……ですが、馬車の人も――」
「目を欺くために数人連れてきている。それにそもそも彼らは儀式のことすら知らない。ただ城の人手不足を補うためと思っているだろう。儀式自体内密に行われるのだ」
「そうなんですね。……あれ、でもレフィナード様は」
「王子もまだ儀式については知らぬ。伝えるのは儀式が近くなってからだ」
「はぁ」

 徹底されている。これはぽろりと言ってしまったら大変なことになるぞ、と改めて気を引き締める。

「仕事は明日からだ。今日は体を休めなさい。食事の時間になったら呼びに来る。必要なものはそこの棚に入っている。好きに使え」
「ありがとうございます」

 リゲンスは壁にあったドアを指して「厠(トイレ)と湯殿(風呂場)だ」と端的に告げると、足早に部屋を出て行った。
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