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ご近所さんの噂ばなし
しおりを挟む都会の喧騒から離れた場所に、そのお屋敷はあった。
西洋風の邸宅は色彩豊かな庭園に囲まれており、季節によって咲く花々を変化させてゆくのが美しい。
日本であるのに、どこか異国の風を纏う家。
そこに住む〈草薙〉さん家族に馴染みのあるご近所さんたちは、彼らの人柄をそれはそれはよく存じていた。
──────桜舞う四月。
とある若夫婦が、赤ん坊を連れて引っ越してきた。
育児の専念と夫の転勤を契機に、ここへ決めたのだ。
「ねぇ翔吾、やっぱりここにして正解だったよね」
「そうだな。立地も良いし、東京より随分穏やかだよ」
妻の陽子はお腹に抱っこ紐を抱えて、翔吾と呼ばれた夫はドラッグストアの買い物袋を両手に下げている。
結婚して早三年となる仲睦まじい二人はゆっくりと住宅街の路地を歩いていたが、少し先の視界が開けた場所にアンティーク調の立派な屋敷が見え、思わず足を止めた。赤レンガ造りの外観に、たくさんの青い窓がある。
三角屋根の塔が連なり、まるで物語のようだった。
「え、こんなに立派なお家あったんだね」
「違う道を使ってたから全然気づかなかったな・・・」
玄関へと続く曲がりくねった石畳が、庭園の敷地を縫うように伸びている。新築の一戸建てが多いここらではまず見慣れない光景が広がっていた。
「おや、橘さんじゃないか。夫婦お揃いで良いねぇ」
敷居の前で呆然とする夫妻に声を掛けたのは、斜めお向かいのアパート住む、園田のおばさんだった。
「あっ!美菜子さん、こんにちは~」
振り返った陽子は、ぱあっと顔を輝かせる。
越してから今までとてもお世話になっているのだ。
「こんにちは、今日も良い天気ですね」
翔吾も微笑んで挨拶を交わす。
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