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草薙家のあさ6
しおりを挟む「あおい」
優斗から目線を外した詩織が、傍であおいを呼んだ。
陽菜は意味を心得たように、静かに食事を再開させる。
「大学もあるし本当に申し訳ないのだけれど、今日はできるだけ早く帰ってきて欲しいの」
優斗も同意するように首を振った。
「あおいも分かってると思うが、今日はあの日でな」
「うちも居てあげたいけど、バイト入ってるんだよね」
珍しく陽菜を入れた三人に懇願され、あおいはクシャクシャと短く黒い前髪を掻き分けた。
「・・・・・・それは別に問題ねぇよ、今日二限で終わるし」
──────だけど、とあおいは続ける。
「俺、正直言って最近のあいつのことあんまり知らねえ。この間まで、留学で家空けてたしよ」
大学の短期留学の一環として、数ヶ月もの期間をアメリカで過ごしていたあおいは、三月に帰ってきたばかりだった。そのため、自分が不在だった時の三つ年上の兄の様子を、詳しくは知らされてなかったのだ。
「まあ。昨日の夜だけ見たら、ちょっと心配だけどな」
胸に浮かんでいる不安を思わず吐露してしまう。
しかしながら、この家ではそれが普通だった。
「助かるよ。流歌を一人にはさせておけないから」
優斗が軽く頭を下げる。
いつまで経っても頼りある、律儀な兄だ。
「でも、何かあったら僕か詩織に遠慮なく連絡しろな。
仕事中だろうと構わないからね」
隣に立つ詩織も、心配と安堵の表情を浮かばせながらうんうんと首肯する。
「この日だけは・・・僕たちも予測がつかないからな」
朝の食卓は、少しだけ焦燥な空気が混じっていた。
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