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24歳の流歌2
しおりを挟む何年一緒に暮らしても無視できない、弟の傷。
いつもの優しい笑顔の裏には一体どれほどの恐怖があるのだろうか。詩織はまだ、そこには踏み込めずにいた。
「流歌、お腹は空いてない?
サンドイッチと目玉焼き持ってきたのよ」
お盆に乗せた皿を近づければ、流歌はじいっとパンとおかずを見つめ始める。硬い耳を切り落とした米粉の食パンは詩織のお手製だ。ふわふわの柔らかい生地に、果物をそのまま使った林檎のジャムが添えられている。
「ね、少しだけ食べましょ?きっと美味しいわ」
依然として起きあがろうとしない流歌。
お腹は空いているにも関わらず、頑なに食べる気配を見せないのにはある深い訳があることを、この家の四人は十分に理解している。
だから、決して急かさず。
無理強いをしないことは暗黙の了解であった。
「しぃちゃ、おなか、ぺこぺこしゃん?」
それまで沈黙していた流歌は、詩織を見て笑った。
舌足らずな単語には正面の姉を気遣う思いがある。
「たーて、いいよぉ。おなかすいたねぇ」
「流歌・・・・・・」
「こえ、おいちいねぇ。しぃちゃ、すきねぇ」
詩織は堪らない気持ちで胸が張り裂けそうだった。
けれど、この朝ご飯は流歌に用意したモノである。
これ以上彼を痩せさせない為に、なんとしてでも食べて貰いたいというのが本音なので、今度はどうしようかと本気で思案した。
「ありがとう、流歌は優しいわね。
でもね、詩織は流歌が食べてくれたら嬉しいわ」
素朴にきょとんとする弟に、朗らかに微笑む。
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