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24歳の流歌4
しおりを挟む流歌は満面の笑みでにこにこ手渡す。
「しいちゃ、りんご、ぱくぱくしゅる?」
見た目は二十四歳の大人。
けれど中身は四歳あたりを行ったり来たりしている。
不安定な心は時に忘れ難い過去を垣間見るが、
今はただ純真無垢な気持ちがあるだけ。
もちろん、詩織は喜んで渡されたパンを受け取った。
「流歌ありがとう、美味しくいただくね」
「へへっ、しぃちゃ、うれしー?」
「うん、とても嬉しいわ」
流歌はその場で弾みながらぽてぽて手を叩く。
そのはずみで淡いベージュのカーディガンの裾がずれ落ち、折れそうな手首が露わになった。左手首の内側には彼が遠い昔につけられたカッター痕。いつの日か亡き両親に聞けば、幼少期に刃物で抉られたという。
詩織は無意識にポンポンと弟の頭を撫でていた。
「るか」
「う?」
弟は心底不思議な心地で姉の様子を窺う。
詩織は胸の下で行き場を失った流歌の両手を慈愛に満ちた温かさで包み込んだ。流歌は一瞬肩を揺らしたが、詩織の言葉を大人しく待っている。
「大丈夫だからね、皆んながついているから」
今は伝わらずとも、声を出して伝える行動に、何かしらの意味がある気がした。
「あまり気を揉まずに、流歌は流歌のまま」
「しぃちゃ、さびしぃの?・・・こわぁい?」
無垢な瞳が不安な色でたじろぐ。
詩織はなおさら強く、逞しく包み込んだ。
「ううん。私は平気よ」
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