草薙さん家の天使はいつもにこにこ晴れている。

しろあん粒あんぱん

文字の大きさ
15 / 19

24歳の流歌5

しおりを挟む



「しぃちゃ」


唐突にして流歌の手が詩織の頭上へ伸びてくる。
呆気に取られる詩織を他所に、流歌は手を動かした。


「よちよーち、だいじょぶよぉ」
「る、流歌?どうしたの・・・」

 
予想外の反応に、詩織は座ったまま身を硬くする。

一方の流歌はその美人な顔で笑顔をつくった。


「いたいいたいねぇ、しぃちゃだいじょぶよー」


よしよしと慰めながらも、澄み渡った流歌の焦点が翳りを見せ始めるのを敏感な姉は少しも見逃さなかった。


徐々に虚な瞳を彷徨わせながら、二つ下の弟は撫でる手を止めない。はっとして窓を確認すれば、ぽつりぽつりと小雨が降っていた。


──────予報より早い。


もう後十五分ほどで家を出なければならないのだが、弟の異変を手放しにする訳にはいかずに頭を巡らす。

朝の時間帯であることもお構いなしに取り敢えず部屋の電気を点けるが、そうしている間にも弟の様子は少しずつ悪い方向へ進んでいた。


「流歌」

 
詩織はベッドの上で震え出す流歌に手を伸ばす。


「しぃちゃ、こわあい?あめ、あめあるねぇ」
「流歌、落ち着いて」
「あめ?い、いたいねぇ、あ、あ」


両手で耳を押さえながらシーツに蹲る。
 
詩織はその薄い背中を撫でさするが、流歌の呼吸は乱れるままだ。過去にも似たことがあったが、こんなにも突発的な発作が出ることは初めてなので、詩織の首筋に嫌な悪寒が走った。


「しいちゃ、あめ、いたいねぇ、あめっ」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

好きって言ってるようなもの

鈴川真白
BL
好きなタイプを話したところで、って思ってた 一途な後輩 × 素直じゃない先輩

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

灰の底で君に出会う

鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。 それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。 これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。

処理中です...