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24歳の流歌5
しおりを挟む「しぃちゃ」
唐突にして流歌の手が詩織の頭上へ伸びてくる。
呆気に取られる詩織を他所に、流歌は手を動かした。
「よちよーち、だいじょぶよぉ」
「る、流歌?どうしたの・・・」
予想外の反応に、詩織は座ったまま身を硬くする。
一方の流歌はその美人な顔で笑顔をつくった。
「いたいいたいねぇ、しぃちゃだいじょぶよー」
よしよしと慰めながらも、澄み渡った流歌の焦点が翳りを見せ始めるのを敏感な姉は少しも見逃さなかった。
徐々に虚な瞳を彷徨わせながら、二つ下の弟は撫でる手を止めない。はっとして窓を確認すれば、ぽつりぽつりと小雨が降っていた。
──────予報より早い。
もう後十五分ほどで家を出なければならないのだが、弟の異変を手放しにする訳にはいかずに頭を巡らす。
朝の時間帯であることもお構いなしに取り敢えず部屋の電気を点けるが、そうしている間にも弟の様子は少しずつ悪い方向へ進んでいた。
「流歌」
詩織はベッドの上で震え出す流歌に手を伸ばす。
「しぃちゃ、こわあい?あめ、あめあるねぇ」
「流歌、落ち着いて」
「あめ?い、いたいねぇ、あ、あ」
両手で耳を押さえながらシーツに蹲る。
詩織はその薄い背中を撫でさするが、流歌の呼吸は乱れるままだ。過去にも似たことがあったが、こんなにも突発的な発作が出ることは初めてなので、詩織の首筋に嫌な悪寒が走った。
「しいちゃ、あめ、いたいねぇ、あめっ」
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