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第3.5話 モンステラの沈黙
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# 第3.5話 モンステラの沈黙
一通りの片付けを終えたルカが、満を持してモンステラに手を伸ばす。
小ぶりのサイズではあるが、ツヤのある葉が派手に広がり、
ぱっと空間を明るく照らす。
ルカはソファの背もたれにどさりと座り込み、リビング壁のスピーカーに向かって声をかける。
「じゃあそっち持ってくから、鍵開けといてな。」
しばらく間があって、スピーカーから返ってきた声は、少し曇った音質で――
『……やっぱりいいよ。そこに置いてくれたらモニターから見えるし。』
「え?これは“雪の部屋に”あげたいんだって。」
『いや、でも……あたし絶対枯らすから…。』
「別に枯れてもいいし、頑固だなぁ。」
『枯れてもって…モンステラに謝って?』
その会話を、ナオはずっと黙って聞いていた。
雲行きが怪しくなってきたのを感じ、ため息ひとつを落とす
「……その辺でやめとけって。」
「いや、だって普通にプレゼントじゃん?」
『うん、それはわかってる……けど、善意って押しつけになると、だいたい迷惑っていうか……。』
「迷惑って、それは言い過ぎだろ。」
『言わなきゃ分かってくれないじゃん。』
ルカの口元がわずかに引きつる。
「なあ、俺の気持ちは?せっかく選んできたってのに……。」
ルカはいつもそうだ。
手のひらに余った温度を、誰かに預けてしまいたくなる。
『……そういうとこだよ、ルカ兄。』
「なんだよその言い方。」
『“気持ちを受け取れ”って。そんなん言われたら断りにくくなるからやめて。』
ルカが何か言い返そうとしたその時、ナオが頭を抱えながら立ち上がった。
そしてそれ以上の言い合いを手で制す。
「……やめとけって言ったろ。今のはルカが悪い。」
「はぁ!?」
ルカが振り返る。
『ほら!ナオも言ってるじゃん!』
雪の声が弾む。
「いやでも、俺なりに考えて――」
「どう見ても勝手に買って、渡す相手の都合は無視。しかも断られて拗ねる。ほぼ満貫。」
「ちょ……!じゃーーもういい!」
ルカがモンステラをぐいとナオの方へ突き出す。
「じゃあナオにやる!育てろ!」
「……いや要らねぇって。」
『それいいじゃん!緑似合うし!』
「…どうしてそうなるんだよ。」
意見が合った途端、ふたりは急に仲直りし、会話はふたたび緩やかに転がりはじめる。
だが、問題が解決したわけでも、植物の行き先が決まったわけでもなかった。
会話だけが、何事もなかったように日常へ戻っていく。
+++
結局、モンステラはリビングの隅に置かれていた。
誰も水をやらず、誰にも見向きされず。
やがて葉はしおれ、茎は曲がり、土は乾いた。
朽ち始めたその姿にふと目を止めたルカは、しばらくじっと見下ろし――
「……捨てるか。」
その一言が重たい斧のように、音もなく空間を断ち切った。
一通りの片付けを終えたルカが、満を持してモンステラに手を伸ばす。
小ぶりのサイズではあるが、ツヤのある葉が派手に広がり、
ぱっと空間を明るく照らす。
ルカはソファの背もたれにどさりと座り込み、リビング壁のスピーカーに向かって声をかける。
「じゃあそっち持ってくから、鍵開けといてな。」
しばらく間があって、スピーカーから返ってきた声は、少し曇った音質で――
『……やっぱりいいよ。そこに置いてくれたらモニターから見えるし。』
「え?これは“雪の部屋に”あげたいんだって。」
『いや、でも……あたし絶対枯らすから…。』
「別に枯れてもいいし、頑固だなぁ。」
『枯れてもって…モンステラに謝って?』
その会話を、ナオはずっと黙って聞いていた。
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「……その辺でやめとけって。」
「いや、だって普通にプレゼントじゃん?」
『うん、それはわかってる……けど、善意って押しつけになると、だいたい迷惑っていうか……。』
「迷惑って、それは言い過ぎだろ。」
『言わなきゃ分かってくれないじゃん。』
ルカの口元がわずかに引きつる。
「なあ、俺の気持ちは?せっかく選んできたってのに……。」
ルカはいつもそうだ。
手のひらに余った温度を、誰かに預けてしまいたくなる。
『……そういうとこだよ、ルカ兄。』
「なんだよその言い方。」
『“気持ちを受け取れ”って。そんなん言われたら断りにくくなるからやめて。』
ルカが何か言い返そうとしたその時、ナオが頭を抱えながら立ち上がった。
そしてそれ以上の言い合いを手で制す。
「……やめとけって言ったろ。今のはルカが悪い。」
「はぁ!?」
ルカが振り返る。
『ほら!ナオも言ってるじゃん!』
雪の声が弾む。
「いやでも、俺なりに考えて――」
「どう見ても勝手に買って、渡す相手の都合は無視。しかも断られて拗ねる。ほぼ満貫。」
「ちょ……!じゃーーもういい!」
ルカがモンステラをぐいとナオの方へ突き出す。
「じゃあナオにやる!育てろ!」
「……いや要らねぇって。」
『それいいじゃん!緑似合うし!』
「…どうしてそうなるんだよ。」
意見が合った途端、ふたりは急に仲直りし、会話はふたたび緩やかに転がりはじめる。
だが、問題が解決したわけでも、植物の行き先が決まったわけでもなかった。
会話だけが、何事もなかったように日常へ戻っていく。
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結局、モンステラはリビングの隅に置かれていた。
誰も水をやらず、誰にも見向きされず。
やがて葉はしおれ、茎は曲がり、土は乾いた。
朽ち始めたその姿にふと目を止めたルカは、しばらくじっと見下ろし――
「……捨てるか。」
その一言が重たい斧のように、音もなく空間を断ち切った。
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