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2.リシェルと勇者
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魔法使いリシェル。腰まである柔らかな夕焼け色の髪と、同色の瞳。どこかふんわりした雰囲気を持つ彼女は、勇者一行の一員である。最近ではちょっとした有名人だ。
そんなリシェルは二つ上の幼なじみ、アルトに絶賛片想い中だった。
旅に出たのだって、もちろんアルトについて行きたかったから。どれだけ魔物が危険だろうが、アルトと離れるほうが耐えられない。恋する乙女とは、時に過激な選択をするものである。
もちろん足手まといにならないよう、幼い頃から魔法の修業を重ねてきた。十九歳という若い身だが、今や国で一、二を争う魔法使いだと言っても過言ではないだろう。
今日はアルトと二人、ダンジョン探査のギルドクエストに向かっている。向かう先は、最近見つかったばかりの地下ダンジョン。おそらく危険度は低いと思われるが、念のため簡単な調査をしてほしいとのことだ。
アルトならば腕は確かだし、帰還の呪文も唱えられる。もし危険な魔物に遭遇すれば、即離脱からの報告。それから後日、本格的に調査の依頼を受けることになる。そのため、アルトは一人で向かうつもりだったようだ。
勇者といえども、日々の旅資金は自分たちで賄っている。それは旅立ちの前にアルトがそう決めたことだ。王国にすべて援助してもらっては、のちにどんな要望があっても跳ねのけられない。そう危惧してのことだった。
主な収入源は魔物から採れる魔石と、採取素材。あとは冒険者ギルドのクエストになる。
旅のはじめは戸惑ったものだが、優秀なメンバーたちのおかげで資金に困ることはない。アサシンのクレスだって、僧侶のイリスだって超一流の腕を持っている。ちなみに今日は二人とも、各々息抜きに出掛けるようだ。
時刻はまだ午前。最近、陽射しが強くなってきたこともあり、早々と出かけることにした。
ダンジョンはこの草原を進んだ先にある。空気はまだ涼しく、軽やかな風がリシェルの髪を揺らす。
青々とした草原に咲く花は可愛らしくて、景色もいい。なにげない会話を交わしながら歩く時間は、まるでデートのようだ。
(このまま一生、ダンジョンに辿り着かなくてもいいのに……)
つい、そう願ってしまったが、残念ながら目的地はそれほど街から離れていなかった。
だけど二人で潜れば、灯りのないダンジョンだって観光地のようなものだ。少なくともリシェルはそう思った。
リシェルの得意魔法は火属性。初級の魔物くらい、少しの魔力を杖に込めるだけで簡単に燃やすことができる。よって、なんの脅威もない。
冒険者として培ってきた勘のおかげで、魔物の気配は察知できる。なによりアルトとの時間を邪魔されたくはない。おかげでこの日のリシェルは過去一と言えるほど冴えていた。
遠方の魔物すら片端から燃やしていく様子に、アルトが少し引いていたのは多分、気のせいだと思おう。
「やっぱり、初級レベルのダンジョンみたいだな。あとはこの先の部屋くらいか……」
アルトの手元にあるのは、簡単なマッピングをした一枚の紙。それを二人で確認しながら奥までやって来た。
今のところ、強力な魔物には遭遇していない。ボスがいたとしても、この程度の魔物の長ならば焦ることはないだろう。最奥を目指し、リシェルはアルトの後ろを進む。
そうして辿り着いた最深部。そこで突然現れた魔法陣によって「セックスしないと出られない部屋」へ導かれた、というわけだった。
そんなリシェルは二つ上の幼なじみ、アルトに絶賛片想い中だった。
旅に出たのだって、もちろんアルトについて行きたかったから。どれだけ魔物が危険だろうが、アルトと離れるほうが耐えられない。恋する乙女とは、時に過激な選択をするものである。
もちろん足手まといにならないよう、幼い頃から魔法の修業を重ねてきた。十九歳という若い身だが、今や国で一、二を争う魔法使いだと言っても過言ではないだろう。
今日はアルトと二人、ダンジョン探査のギルドクエストに向かっている。向かう先は、最近見つかったばかりの地下ダンジョン。おそらく危険度は低いと思われるが、念のため簡単な調査をしてほしいとのことだ。
アルトならば腕は確かだし、帰還の呪文も唱えられる。もし危険な魔物に遭遇すれば、即離脱からの報告。それから後日、本格的に調査の依頼を受けることになる。そのため、アルトは一人で向かうつもりだったようだ。
勇者といえども、日々の旅資金は自分たちで賄っている。それは旅立ちの前にアルトがそう決めたことだ。王国にすべて援助してもらっては、のちにどんな要望があっても跳ねのけられない。そう危惧してのことだった。
主な収入源は魔物から採れる魔石と、採取素材。あとは冒険者ギルドのクエストになる。
旅のはじめは戸惑ったものだが、優秀なメンバーたちのおかげで資金に困ることはない。アサシンのクレスだって、僧侶のイリスだって超一流の腕を持っている。ちなみに今日は二人とも、各々息抜きに出掛けるようだ。
時刻はまだ午前。最近、陽射しが強くなってきたこともあり、早々と出かけることにした。
ダンジョンはこの草原を進んだ先にある。空気はまだ涼しく、軽やかな風がリシェルの髪を揺らす。
青々とした草原に咲く花は可愛らしくて、景色もいい。なにげない会話を交わしながら歩く時間は、まるでデートのようだ。
(このまま一生、ダンジョンに辿り着かなくてもいいのに……)
つい、そう願ってしまったが、残念ながら目的地はそれほど街から離れていなかった。
だけど二人で潜れば、灯りのないダンジョンだって観光地のようなものだ。少なくともリシェルはそう思った。
リシェルの得意魔法は火属性。初級の魔物くらい、少しの魔力を杖に込めるだけで簡単に燃やすことができる。よって、なんの脅威もない。
冒険者として培ってきた勘のおかげで、魔物の気配は察知できる。なによりアルトとの時間を邪魔されたくはない。おかげでこの日のリシェルは過去一と言えるほど冴えていた。
遠方の魔物すら片端から燃やしていく様子に、アルトが少し引いていたのは多分、気のせいだと思おう。
「やっぱり、初級レベルのダンジョンみたいだな。あとはこの先の部屋くらいか……」
アルトの手元にあるのは、簡単なマッピングをした一枚の紙。それを二人で確認しながら奥までやって来た。
今のところ、強力な魔物には遭遇していない。ボスがいたとしても、この程度の魔物の長ならば焦ることはないだろう。最奥を目指し、リシェルはアルトの後ろを進む。
そうして辿り着いた最深部。そこで突然現れた魔法陣によって「セックスしないと出られない部屋」へ導かれた、というわけだった。
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